原子力発電所における電動弁の状態監視保全について
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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
当技術は、従来の電動弁診断の主であった現場作 原子力発電所では、1 プラントあたり約2万台の業(弁改造・歪ゲージ、センサー取り付け等)を排 バルブ(弁)が設置されており、点検は時間計画保 除し、モータコントロールセンタ(以下、MCC)か原子力発電所では、1プラントあたり約2万台の バルブ(弁)が設置されており、点検は時間計画保 全(以下、TBM) を中心とした方法を採用していた。 2009年1月より施行された新検査制度に伴い、原子 力発電所における保全活動の最適化を図る観点から、 状態基準保全(以下、CBM)に沿った手法を導入す る必要性が検討された。特に、原子力施設情報ライブラリー「ニューシア」 の過去の弁トラブル実績を紐解くと、本来 TBM に よる効果が期待できるとされる“疲労・磨耗等の経 年劣化”よりも時間依存性のない故障“いじり壊し” が多い事が確認されている。また、米国においては、 1980 年代より状態監視保全技術の導入により保全 の合理化が進み稼働率の向上が実現されている。1980 年代より状態監視保全技術の導入により保全 の合理化が進み稼働率の向上が実現されている。 2.経緯と適用技術
3. 状態監視保全の導入 3.1 背景東京電力(株)(本店・福島第一・福島第二・柏崎刈 羽)では、弁点検方法を検討する「弁点検合理化 WG」を設置し、 ・ 分解点検台数の削減(点検メニューの簡素化) ・ 弁特性に応じた点検方法の設定(弁保全の信頼原子力発電所において、CBM への移行を検討する 際、特に検討すべき点として、 1 安全性の向上 2 作業効率の向上 * 原子力発電所において、CBM への移行を検討する 際、特に検討すべき点として、1 安全性の向上 12 作業効率の向上3 環境改善の効果 が期待されるものでなければならない。この状況も踏まえ、数年前より電動弁の状態監視 保全技術として試験的に導入していた電動弁診断装 置(以下、AVD 診断装置)を用いた状態監視保全の 可能性について紹介する。連絡先: 永岩慶一朗,〒800-8601 福岡県北九州市 門司区中町 1-14, 岡野バルブ製造株式会社 技術部技術研究所 電話:093-372-1131, E-mail: k-nagaiwa@okano-valve.co.jp当技術は、従来の電動弁診断の主であった現場作 業(弁改造・歪ゲージ、センサー取り付け等)を排 除し、モータコントロールセンタ(以下、MCC)か らの電流・電圧測定のみで診断が可能となるもので ある。これにより、従来と比べ人的過誤及び保守施 行不良が激減すると共に、作業時間の大幅な短縮に よる診断台数の増加、被ばく線量の低減等に繋がる ことが期待できる。特に、東京電力(株)福島第一原子力発電所において は、当時のプラント設計にメンテナンス思想が十分 に反映されていなかったこともあり、狭隘な現場が 多く、弁の分解点検が困難、且つ高線量下作業が多 い為、当技術の採用は有効と評価した。 3.1 背景 - 東京電力(株)(本店・福島第一・福島第二・柏崎刈 羽)では、弁点検方法を検討する「弁点検合理化 WG」を設置し、 ・ 分解点検台数の削減(点検メニューの簡素化) ・ 弁特性に応じた点検方法の設定(弁保全の信頼性向上を図る) を目的に検討を行い、適切な状態監視技術の併用に よる点検方針の見直しを実施している。CBM を実施するにあたり、電動弁に対して活用が 期待されている電動弁診断装置は各社で開発されて いるが、他社製は現場での取り付け作業等が必要で あるのに対し、本装置では MCC での診断が可能で ある為、作業時間の短縮(20 台/日作業可能)及び 被ばく線量低減の観点からもその効果は大きい。 - 5103.2 弁不適合の傾向および状態監視保全の必 要性 - 米国の原子力発電所では、1980年代より CBM の 導入が進められており、今日までに保全の合理化や 設備利用率の向上が実現されている。国内原子力発電所における過去の弁トラブル実 績情報を、原子力施設情報公開ライブラリー「ニュ ーシア」(1966~2009)に基づき評価した。(図.1)その他疲労摩耗 劣化%317%7疲労摩 耗・劣化0.09その他 \136施工不良 33%施工不良 34異物混入0.07異物混入0.08仕様不足 27%仕様不足 29%製造不良 7%1966~19791980~1989疲労・摩 耗・劣化 14%その他疲労・摩耗・その他劣化 24% 4%施工不良 44一施工不良 351%異物混入 17%異物混入、 \15%0.12480.05仕様不足製造不良 仕様不足製造不良145 1990~19992000~2009 図1 ニューシア登録情報に基づく年代別原因比率1 特に施工不良については、当初の 30%台であっ たものが 50%台に増加している。これはプラン ト数の増加に伴う、熟練技術者の不足・技術継 承不足に起因する保全技量の相対的低下が主な 原因と推測される。 2反して、製造不良・仕様不足は減少傾向を示している。これは過去の故障やトラブル事例を反 映し対策を講じてきた結果と考えられる。 3 異物混入については不適合事象報告制度の厳格 化に伴い一時増加傾向にあったが、近年異物混 入防止の「しくみ」構築後は減少傾向を示して いる。近年発生しているトラブル原因の大多数は時間 依存性がなく、無用な分解作業が引き起こす「ヒュ ーマンエラー」「いじり壊し」など保守起因のエラー である。TBM 主体の保全では、部品故障の有無に関 わらず点検手入れ・交換作業の実施が前提となる。 ゆえに CBM の導入は単にヒューマンエラーの防止 に留まらず、合理的な点検内容および周期を求める 為の予知保全活動としても有効であるといえる。4. 装置概要 4.1 測定原理AVD 診断技術は、電動弁に使用されている誘導モ ータ、または直流モータに入力される電流と電圧を 用いて、トルクおよび回転速度を推定するものであ る。よって、現場に設置された電動弁本体には手を 加えることなく、MCC 内部の制御回路に計測センサ ーを接続する事により診断が可能となる。動作に伴う電動弁の負荷挙動はトルクに同期し て変動する為、故障や劣化によって生じるトルク変 動および微細なトルク変動を捉えることで、電動弁 内部の状況を把握する事ができる。 4.2 AVD 診断装置の概要AVD 診断装置は、電動弁の状態を迅速に効率よく 把握する為の簡易診断装置を目的としており、オフ ライン(定期)診断システムとして開発された。図.2 に AVD 診断装置の外観を示す。持ち運びに便 利なポータブル装置としてアタッシュケース型を採 用しており、ケース内に全ての計測備品が収納され る構成である。図2 AVD 診断装置 測定された電流および電圧は、自動的にシステム 内部でトルクおよび回転速度に換算される。図.3 に 画面表示例として測定画面、解析画面、周波数解析 (FFT)画面を示す。 測定画面解析画面FF3の施を定してください。| FFT 画面図3 画面表示例4.3 作業手順電流および電圧を測定する為の計測センサーを、 図.4 に示すように MCC 内部の制御回路に設置し測 定を行う。作業は非常に簡素化しており、設置作業 は約5分、測定および判定には約 10分、弁一台あた り 15 分程度の短時間で診断が可能である。511図4 作業状況 4.4 弁動作挙動と波形の相関性一般的に電動弁は、モータトルクを歯車機構によ って弁の開閉に必要な駆動トルクに増幅する事で作 動を行う。このことから、電動弁の動作状態は、主 に駆動トルクを判定する事により評価が可能といえ る。すなわち、求められた駆動トルクは弁負荷と同 期して変動する為、電動弁の作動特性を時系列的に 把握する事が可能となる。(図.5,図.6)更に、回転速度が既知となれば、モータの回転数 を弁体のリフト量として推定できる為、トルクの時 系列変化と合わせて評価を行うことにより、更に弁 状態のより詳細な解析が可能となる。GO図5 電動弁鳥瞰図 1モータ起動1モータ定格回転数 2無負荷区間2ヘリカルギア回転数 3ハンマーブロー3ヘリカルギア回転数側帯波 4ステムブッシュねじクリアランス TOウォームギア回転数 5弁体移動開始」 6パッキン摩擦力図6 波形パターンとの相関性 4.5 診断可能項目トルクの解析結果(周波数解析含む)からは、駆 動部内部品の状況(軸受や歯車等回転部品の損傷の 有無)、弁内部品の状況(パッキンの劣化や弁棒の偏 心など)及び操作部の駆動力量変化に対する評価が 可能であり、更にリフト量との組み合わせによって、 開度と弁挙動の相関性評価が可能となる。(リフト量 の変化、ステムブッシュのねじ磨耗量など) 5. 状態監視保全がもたらす効果 5.1 異常・劣化検出事例 5.1.1 パッキンの劣化 - 弁には可動部のシールの目的でグランドパッキ ンが使用されている。図.7 はパッキンの劣化によって、作動時における摺動抵抗の増大が確認されたも のである。- グランドパッキン- 健全時 劣化時まにい2 50cclside ins/5255 ラインションの自分ら3885年の発言にショタコンクリニストック図7 パッキン劣化の影響 5.1.2 弁停止位置の調整不良 * 作業ミスなどにより弁停止位置の調整不良があ った場合、仕切弁のシート部割れまたは容器内の異 常昇圧現象に繋がることがある。この状況は図.8 に 示すような引き抜きトルクの発生によって確認する 事ができる。押し付け力過大健全時劣化時 引き抜きトルクsmo onditieramminokitent.comoles」仕切弁図8 引き抜きトルクの確認 5. 1.3 ステムブッシュのねじ磨耗弁には、駆動部の回転運動を弁の往復運動に変換 して伝える為にステムブッシュと呼ばれる内面にね じ加工を施した部品が使用される。(図.9)一般的なステムブッシュは弁棒ねじ部金属面と の焼付きを防止する目的で弁棒材よりも柔らかい銅 合金で製作されており、経年的にねじ面の磨耗が進 行する。図.10 は正規品と磨耗が進行した同部品の比 較結果である。 ステムブッシュねじ面驅動部内部図9 駆動部とステムブッシュ健全時劣化時 クリアランスが増加(FCストローク(mm)13000ステムブッシュ正品ステムラッシュ、ストローク図 10 ステムブッシュねじ磨耗の確認5125. 1.4 駆動部の軸受損傷 - 電動弁に限らず、回転駆動機器における最も多い 故障箇所は軸受と言われる。図.11 は軸受が損傷した 際に確認されたデータである。- 損傷した軸受軸受、壓動部内部軸受周波数- 健全時 劣化時ない時もあり、図 11 軸受損傷の影響 5.1.5 駆動部の歯車損傷 一般的に電動弁の駆動部は、モータの回転を減速 しモータトルクを増幅する目的で歯車機構を用いた 減速機が使用されているが、潤滑不良や取り付け不 良が発生した場合、歯車の損傷に繋がる場合がある。 図.12 はヘリカルギア歯面に引っかき磨耗が発生し た際に確認されたデータである。損傷した歯車 | 歯車、驅動部内部歯車周波数健全時 劣化時)側帯波図 12 歯車損傷の影響5.2 状態監視に基づく保全活動 PDCA への展開前項に示した事例の通り、当技術は電動弁の状態 を把握する為の「状態監視技術」として非常に有用 なツールである。電動弁の作動特性の確認を CBM として実施する ことは保全活動において有効であり、当該 CBM に より取得したデータはプラント内の保全活動 PDCA サイクルを確立する一つの要素になると考えられる。5.3 保全活動 PDCA の業務プロセス 1 弁診断装置を用いた保全活動のPDCA を有効に回 す為の業務プロセスは概ね以下の手順にて運用する ことが考えられる。(図.13)設計・技情報管理工事情報管理診断作高管理リソース管理正台MBEMSシステム3新作計]年0罰年新春!韓断作業定期保全「長期保全計画への保全管理Dシステム管保全Plan断・保全状態監視 PDCAサイクルCheckバックト相互計島・ベース 力データ井保守As found 価設:51データ3記得点検記種計 -------- ---- --- --- ---- -----図 13 診断装置による PDCA プロセス図 A)初期準備」 選定した対象弁の仕様整備、管理基準の設定、ベースデータの採取などを実施する。 B) 測定 ポータブルの AVD 診断装置を MCC に持ち込 み、弁開閉時の電流および電圧を測定する。 測定頻度は対象弁の重要度、運転形態などを 考慮して設定するが、原則として定期検査時 に実施する。 分析・評価 簡易診断としてトルクの波形パターン評価や 周波数分析による駆動部および弁内部状況の 傾向管理を実施する。波形パターン評価や周 波数解析結果については、弁メーカの経験に 基づいた推奨基準を適用している。 D)評価結果に応じた対応と保全計画への反映 診断結果に応じ、継続監視・監視強化・保全 の計画(点検時期の決定など)・緊急対応など を検討・実施する。また、保全の有効性を評 価し、分解点検周期の延長・保全方式の変更・ 管理基準値の見直しなどを実作業へフィード バックする。5.4 適用実績東京電力(株)では、福島第一原子力発電所をはじめ 福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所にお いて、現在までに約 2000 台の電動弁についてベース データの取得および評価を行っている。また、電動 弁の状態監視保全を行うにあたっての管理基準の定 量化についても検討している。5.5 オンライン(運転中)保全への適用 ・ 当技術は、電動弁に対するオンライン保全の適用 にあたって有効なものであると考える。オンライン 保全の採用により、運転中と停止中の保全活動の平 準化が実施でき、被ばく線量低減にも繋がる為、保 全の信頼性を更に高めることが期待できる。5136.結言原子力発電所における電動弁の状態監視技術と して AVD 診断装置を採用することにより、 1)センサーの設置作業が簡易であること、および MCC で測定することから、作業時間の短 縮・診断台数の増加・被ばく線量の低減が期 待できる。 2)測定した波形データと弁動作挙動との相関性を評価することで、電動弁の作動特性および 内部状況の評価が可能である。 縮・診断台数の増加 待できる。 2)測定した波形データと 参考文献 [1] 原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」トラブル等情報検索 http://www.nucia.jp/ [2] 日本保全学会, 原子力発電所 保全の現状と今後の在り方について, 70-76(2006). [1] 原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」トラブル等情報検索 http://www.nucia.jp/ [2] 日本保全学会, 原子力発電所 保全の現状と今- 514 -“ “?原子力発電所における電動弁の状態監視保全について“ “永岩 慶一朗,Keiichiro NAGAIWA,田中 孝治,Koji TANAKA,大山 賢一,Kenichi OYAMA,曳田 史朗,Shiro HIKITA,川本 敦則,Atsunori KAWAMOTO
当技術は、従来の電動弁診断の主であった現場作 原子力発電所では、1 プラントあたり約2万台の業(弁改造・歪ゲージ、センサー取り付け等)を排 バルブ(弁)が設置されており、点検は時間計画保 除し、モータコントロールセンタ(以下、MCC)か原子力発電所では、1プラントあたり約2万台の バルブ(弁)が設置されており、点検は時間計画保 全(以下、TBM) を中心とした方法を採用していた。 2009年1月より施行された新検査制度に伴い、原子 力発電所における保全活動の最適化を図る観点から、 状態基準保全(以下、CBM)に沿った手法を導入す る必要性が検討された。特に、原子力施設情報ライブラリー「ニューシア」 の過去の弁トラブル実績を紐解くと、本来 TBM に よる効果が期待できるとされる“疲労・磨耗等の経 年劣化”よりも時間依存性のない故障“いじり壊し” が多い事が確認されている。また、米国においては、 1980 年代より状態監視保全技術の導入により保全 の合理化が進み稼働率の向上が実現されている。1980 年代より状態監視保全技術の導入により保全 の合理化が進み稼働率の向上が実現されている。 2.経緯と適用技術
3. 状態監視保全の導入 3.1 背景東京電力(株)(本店・福島第一・福島第二・柏崎刈 羽)では、弁点検方法を検討する「弁点検合理化 WG」を設置し、 ・ 分解点検台数の削減(点検メニューの簡素化) ・ 弁特性に応じた点検方法の設定(弁保全の信頼原子力発電所において、CBM への移行を検討する 際、特に検討すべき点として、 1 安全性の向上 2 作業効率の向上 * 原子力発電所において、CBM への移行を検討する 際、特に検討すべき点として、1 安全性の向上 12 作業効率の向上3 環境改善の効果 が期待されるものでなければならない。この状況も踏まえ、数年前より電動弁の状態監視 保全技術として試験的に導入していた電動弁診断装 置(以下、AVD 診断装置)を用いた状態監視保全の 可能性について紹介する。連絡先: 永岩慶一朗,〒800-8601 福岡県北九州市 門司区中町 1-14, 岡野バルブ製造株式会社 技術部技術研究所 電話:093-372-1131, E-mail: k-nagaiwa@okano-valve.co.jp当技術は、従来の電動弁診断の主であった現場作 業(弁改造・歪ゲージ、センサー取り付け等)を排 除し、モータコントロールセンタ(以下、MCC)か らの電流・電圧測定のみで診断が可能となるもので ある。これにより、従来と比べ人的過誤及び保守施 行不良が激減すると共に、作業時間の大幅な短縮に よる診断台数の増加、被ばく線量の低減等に繋がる ことが期待できる。特に、東京電力(株)福島第一原子力発電所において は、当時のプラント設計にメンテナンス思想が十分 に反映されていなかったこともあり、狭隘な現場が 多く、弁の分解点検が困難、且つ高線量下作業が多 い為、当技術の採用は有効と評価した。 3.1 背景 - 東京電力(株)(本店・福島第一・福島第二・柏崎刈 羽)では、弁点検方法を検討する「弁点検合理化 WG」を設置し、 ・ 分解点検台数の削減(点検メニューの簡素化) ・ 弁特性に応じた点検方法の設定(弁保全の信頼性向上を図る) を目的に検討を行い、適切な状態監視技術の併用に よる点検方針の見直しを実施している。CBM を実施するにあたり、電動弁に対して活用が 期待されている電動弁診断装置は各社で開発されて いるが、他社製は現場での取り付け作業等が必要で あるのに対し、本装置では MCC での診断が可能で ある為、作業時間の短縮(20 台/日作業可能)及び 被ばく線量低減の観点からもその効果は大きい。 - 5103.2 弁不適合の傾向および状態監視保全の必 要性 - 米国の原子力発電所では、1980年代より CBM の 導入が進められており、今日までに保全の合理化や 設備利用率の向上が実現されている。国内原子力発電所における過去の弁トラブル実 績情報を、原子力施設情報公開ライブラリー「ニュ ーシア」(1966~2009)に基づき評価した。(図.1)その他疲労摩耗 劣化%317%7疲労摩 耗・劣化0.09その他 \136施工不良 33%施工不良 34異物混入0.07異物混入0.08仕様不足 27%仕様不足 29%製造不良 7%1966~19791980~1989疲労・摩 耗・劣化 14%その他疲労・摩耗・その他劣化 24% 4%施工不良 44一施工不良 351%異物混入 17%異物混入、 \15%0.12480.05仕様不足製造不良 仕様不足製造不良145 1990~19992000~2009 図1 ニューシア登録情報に基づく年代別原因比率1 特に施工不良については、当初の 30%台であっ たものが 50%台に増加している。これはプラン ト数の増加に伴う、熟練技術者の不足・技術継 承不足に起因する保全技量の相対的低下が主な 原因と推測される。 2反して、製造不良・仕様不足は減少傾向を示している。これは過去の故障やトラブル事例を反 映し対策を講じてきた結果と考えられる。 3 異物混入については不適合事象報告制度の厳格 化に伴い一時増加傾向にあったが、近年異物混 入防止の「しくみ」構築後は減少傾向を示して いる。近年発生しているトラブル原因の大多数は時間 依存性がなく、無用な分解作業が引き起こす「ヒュ ーマンエラー」「いじり壊し」など保守起因のエラー である。TBM 主体の保全では、部品故障の有無に関 わらず点検手入れ・交換作業の実施が前提となる。 ゆえに CBM の導入は単にヒューマンエラーの防止 に留まらず、合理的な点検内容および周期を求める 為の予知保全活動としても有効であるといえる。4. 装置概要 4.1 測定原理AVD 診断技術は、電動弁に使用されている誘導モ ータ、または直流モータに入力される電流と電圧を 用いて、トルクおよび回転速度を推定するものであ る。よって、現場に設置された電動弁本体には手を 加えることなく、MCC 内部の制御回路に計測センサ ーを接続する事により診断が可能となる。動作に伴う電動弁の負荷挙動はトルクに同期し て変動する為、故障や劣化によって生じるトルク変 動および微細なトルク変動を捉えることで、電動弁 内部の状況を把握する事ができる。 4.2 AVD 診断装置の概要AVD 診断装置は、電動弁の状態を迅速に効率よく 把握する為の簡易診断装置を目的としており、オフ ライン(定期)診断システムとして開発された。図.2 に AVD 診断装置の外観を示す。持ち運びに便 利なポータブル装置としてアタッシュケース型を採 用しており、ケース内に全ての計測備品が収納され る構成である。図2 AVD 診断装置 測定された電流および電圧は、自動的にシステム 内部でトルクおよび回転速度に換算される。図.3 に 画面表示例として測定画面、解析画面、周波数解析 (FFT)画面を示す。 測定画面解析画面FF3の施を定してください。| FFT 画面図3 画面表示例4.3 作業手順電流および電圧を測定する為の計測センサーを、 図.4 に示すように MCC 内部の制御回路に設置し測 定を行う。作業は非常に簡素化しており、設置作業 は約5分、測定および判定には約 10分、弁一台あた り 15 分程度の短時間で診断が可能である。511図4 作業状況 4.4 弁動作挙動と波形の相関性一般的に電動弁は、モータトルクを歯車機構によ って弁の開閉に必要な駆動トルクに増幅する事で作 動を行う。このことから、電動弁の動作状態は、主 に駆動トルクを判定する事により評価が可能といえ る。すなわち、求められた駆動トルクは弁負荷と同 期して変動する為、電動弁の作動特性を時系列的に 把握する事が可能となる。(図.5,図.6)更に、回転速度が既知となれば、モータの回転数 を弁体のリフト量として推定できる為、トルクの時 系列変化と合わせて評価を行うことにより、更に弁 状態のより詳細な解析が可能となる。GO図5 電動弁鳥瞰図 1モータ起動1モータ定格回転数 2無負荷区間2ヘリカルギア回転数 3ハンマーブロー3ヘリカルギア回転数側帯波 4ステムブッシュねじクリアランス TOウォームギア回転数 5弁体移動開始」 6パッキン摩擦力図6 波形パターンとの相関性 4.5 診断可能項目トルクの解析結果(周波数解析含む)からは、駆 動部内部品の状況(軸受や歯車等回転部品の損傷の 有無)、弁内部品の状況(パッキンの劣化や弁棒の偏 心など)及び操作部の駆動力量変化に対する評価が 可能であり、更にリフト量との組み合わせによって、 開度と弁挙動の相関性評価が可能となる。(リフト量 の変化、ステムブッシュのねじ磨耗量など) 5. 状態監視保全がもたらす効果 5.1 異常・劣化検出事例 5.1.1 パッキンの劣化 - 弁には可動部のシールの目的でグランドパッキ ンが使用されている。図.7 はパッキンの劣化によって、作動時における摺動抵抗の増大が確認されたも のである。- グランドパッキン- 健全時 劣化時まにい2 50cclside ins/5255 ラインションの自分ら3885年の発言にショタコンクリニストック図7 パッキン劣化の影響 5.1.2 弁停止位置の調整不良 * 作業ミスなどにより弁停止位置の調整不良があ った場合、仕切弁のシート部割れまたは容器内の異 常昇圧現象に繋がることがある。この状況は図.8 に 示すような引き抜きトルクの発生によって確認する 事ができる。押し付け力過大健全時劣化時 引き抜きトルクsmo onditieramminokitent.comoles」仕切弁図8 引き抜きトルクの確認 5. 1.3 ステムブッシュのねじ磨耗弁には、駆動部の回転運動を弁の往復運動に変換 して伝える為にステムブッシュと呼ばれる内面にね じ加工を施した部品が使用される。(図.9)一般的なステムブッシュは弁棒ねじ部金属面と の焼付きを防止する目的で弁棒材よりも柔らかい銅 合金で製作されており、経年的にねじ面の磨耗が進 行する。図.10 は正規品と磨耗が進行した同部品の比 較結果である。 ステムブッシュねじ面驅動部内部図9 駆動部とステムブッシュ健全時劣化時 クリアランスが増加(FCストローク(mm)13000ステムブッシュ正品ステムラッシュ、ストローク図 10 ステムブッシュねじ磨耗の確認5125. 1.4 駆動部の軸受損傷 - 電動弁に限らず、回転駆動機器における最も多い 故障箇所は軸受と言われる。図.11 は軸受が損傷した 際に確認されたデータである。- 損傷した軸受軸受、壓動部内部軸受周波数- 健全時 劣化時ない時もあり、図 11 軸受損傷の影響 5.1.5 駆動部の歯車損傷 一般的に電動弁の駆動部は、モータの回転を減速 しモータトルクを増幅する目的で歯車機構を用いた 減速機が使用されているが、潤滑不良や取り付け不 良が発生した場合、歯車の損傷に繋がる場合がある。 図.12 はヘリカルギア歯面に引っかき磨耗が発生し た際に確認されたデータである。損傷した歯車 | 歯車、驅動部内部歯車周波数健全時 劣化時)側帯波図 12 歯車損傷の影響5.2 状態監視に基づく保全活動 PDCA への展開前項に示した事例の通り、当技術は電動弁の状態 を把握する為の「状態監視技術」として非常に有用 なツールである。電動弁の作動特性の確認を CBM として実施する ことは保全活動において有効であり、当該 CBM に より取得したデータはプラント内の保全活動 PDCA サイクルを確立する一つの要素になると考えられる。5.3 保全活動 PDCA の業務プロセス 1 弁診断装置を用いた保全活動のPDCA を有効に回 す為の業務プロセスは概ね以下の手順にて運用する ことが考えられる。(図.13)設計・技情報管理工事情報管理診断作高管理リソース管理正台MBEMSシステム3新作計]年0罰年新春!韓断作業定期保全「長期保全計画への保全管理Dシステム管保全Plan断・保全状態監視 PDCAサイクルCheckバックト相互計島・ベース 力データ井保守As found 価設:51データ3記得点検記種計 -------- ---- --- --- ---- -----図 13 診断装置による PDCA プロセス図 A)初期準備」 選定した対象弁の仕様整備、管理基準の設定、ベースデータの採取などを実施する。 B) 測定 ポータブルの AVD 診断装置を MCC に持ち込 み、弁開閉時の電流および電圧を測定する。 測定頻度は対象弁の重要度、運転形態などを 考慮して設定するが、原則として定期検査時 に実施する。 分析・評価 簡易診断としてトルクの波形パターン評価や 周波数分析による駆動部および弁内部状況の 傾向管理を実施する。波形パターン評価や周 波数解析結果については、弁メーカの経験に 基づいた推奨基準を適用している。 D)評価結果に応じた対応と保全計画への反映 診断結果に応じ、継続監視・監視強化・保全 の計画(点検時期の決定など)・緊急対応など を検討・実施する。また、保全の有効性を評 価し、分解点検周期の延長・保全方式の変更・ 管理基準値の見直しなどを実作業へフィード バックする。5.4 適用実績東京電力(株)では、福島第一原子力発電所をはじめ 福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所にお いて、現在までに約 2000 台の電動弁についてベース データの取得および評価を行っている。また、電動 弁の状態監視保全を行うにあたっての管理基準の定 量化についても検討している。5.5 オンライン(運転中)保全への適用 ・ 当技術は、電動弁に対するオンライン保全の適用 にあたって有効なものであると考える。オンライン 保全の採用により、運転中と停止中の保全活動の平 準化が実施でき、被ばく線量低減にも繋がる為、保 全の信頼性を更に高めることが期待できる。5136.結言原子力発電所における電動弁の状態監視技術と して AVD 診断装置を採用することにより、 1)センサーの設置作業が簡易であること、および MCC で測定することから、作業時間の短 縮・診断台数の増加・被ばく線量の低減が期 待できる。 2)測定した波形データと弁動作挙動との相関性を評価することで、電動弁の作動特性および 内部状況の評価が可能である。 縮・診断台数の増加 待できる。 2)測定した波形データと 参考文献 [1] 原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」トラブル等情報検索 http://www.nucia.jp/ [2] 日本保全学会, 原子力発電所 保全の現状と今後の在り方について, 70-76(2006). [1] 原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」トラブル等情報検索 http://www.nucia.jp/ [2] 日本保全学会, 原子力発電所 保全の現状と今- 514 -“ “?原子力発電所における電動弁の状態監視保全について“ “永岩 慶一朗,Keiichiro NAGAIWA,田中 孝治,Koji TANAKA,大山 賢一,Kenichi OYAMA,曳田 史朗,Shiro HIKITA,川本 敦則,Atsunori KAWAMOTO