原子力材料の照射劣化予測

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カテゴリ: 第7回
1. はじめに
フラックスを確率論的に扱うことで,従来考慮されていなかったボイド核生成の解析を行うことを可能にし 現存しない核融合炉の材料劣化や超長時間照射によた.なお,対象材料はタングステンとした. 1.はじめに現存しない核融合炉の材料劣化や超長時間照射によ る原子炉材料の劣化を評価するには、既存の核分裂炉 やイオン加速器などの照射場を用いつつ,加速照射に よって得られる材料照射データをもとに,物理的に根 拠のある方法で材料挙動を予測することになる.しか し,それらの照射場は,入射粒子フラックス・入射エ ネルギー・入射粒子数・照射時間などが実際の照射条 件とは異なるため,材料劣化を予測するには材料劣化 の損傷速度依存性を明らかにする必要がある.また材 料劣化は,照射による材料のミクロ構造組織変化に起 因することが知られており,欠陥の生成,拡散過程の ような極めて短い時間,微小な空間スケールの領域も 含めた現象の理解が必要である. 1. 本研究では,原子炉や核融合炉で使われる材料の照 射による体積膨張(スエリング)の要因であるボイド (空孔集合体)形成を対象に,その核生成の損傷速度 依存性評価を行った. 臨界サイズに満たないボイド(エ ンブリオ)は、ボイドサイズが大きくなるほど核生成 エネルギーが増大する状態であるため,ボイドは平均 的に収縮に向かう.そのため、従来の反応速度論によ って核生成過程を解析することは不可能である.本研 究では,モンテカルロ法を用いて空孔・格子間原子の
2. 方法- サイズが R のボイドに点欠陥i(iは格子間原子およ び空孔)が流入する確率,およびボイドから点欠陥i が放出される確率をそれぞれJN=4mRD,C32, JOUT=4nRD,CI/2 に比例すると考え,乱数を使って実 際に起こる事象を決定した(R:ボイド半径、C; : マト リクス中の点欠陥濃度,C9:欠陥集合体周辺の点欠陥 濃度,D, : 点欠陥の拡散係数, 2:原子体積). ボイド への正味の欠陥流入量は JJA-JOUTで決まる.この解 析の特徴は,欠陥フラックスの統計的ゆらぎも考慮し ている点である. Fig.1 はボイドサイズの時間変化を表 しており,欠陥が過飽和に達してからボイドの臨界核 が生成するまでの時間を潜伏期間と定義している.ま た,ボイドサイズ 1 のときに格子間原子が流入する事 象も考慮しているため、エンブリオが消滅する場合も 有り得る.各照射条件での潜伏期間を求める際、どの 条件においても 100 回核生成するまで試行を行い、最 後に試行回数分の潜伏期間,核生成率の平均をとって 評価を行った.3.結果と考察1 まず,モンテカルロ法を用いて損傷速度,温度ごと の核生成潜伏期間を算出した. Fig. 2 は潜伏期間におけ る損傷速度依存性と温度依存性を表している.同一温- 515 -度では,損傷速度が速くなるほど潜伏期間は短くなっ ている.これは,損傷速度が速いほど空孔過飽和度が 上昇するためである.また,同一の損傷速度では,温 度が高いほど潜伏期間が短くなっている.これは温度 が高いほど空孔拡散が活発になるためである.さらに, 潜伏期間における損傷速度依存性と温度依存性は非線 形の関係にあることが明らかになった.次に,求めた潜伏期間からボイド核生成の温度領域 を算出した. 損傷速度 103dpa/sにおけるタングステン の核生成温度領域は 600K から 1200K だった. 照射プロ セスにおけるボイド核生成温度領域は,Fig.3 のよう に上限と下限がありピーク温度をもつ.このような特 徴を示すのは,下限は温度が低いことで空孔が拡散し にくい状態であり,上限は温度が高いことでボイドが 熱的に不安定になるためである. Fig.4は核生成率におけるピーク温度の損傷速度依Incubation timeVoid size ONAのおおおおおおDamage rate: 10-5 dpa/s Temperature: 1200K Sink concentration Interstitial atom: 106m2 Vacancy:0.78×100m20.80.0 10. 20.40.6Time (S) Fig. 1 Incubation time for void nucleationんでDamage rate: 10-dpa/sSink concentration Interstitial atom: 106m2 Vacancy: 0.78 X 10m 2Nucleation ratel(s-1)0500600700 800900 1000 110012001300Temperature(K)Fig. 3 Temperature rage for void nucleation存性を示す. 縦軸は規格化するために核生成率を損傷 速度で割った指標である. ボイド核生成においても, 損傷速度が遅くなると,核生成のピーク温度が低温側 にシフトしていることがわかる.温度が上昇すると, 空孔過飽和度は低下し,損傷速度が速くなると,空孔 過飽和度が上昇する.そのため、損傷速度が速いほど, より高温側でもボイドが核生成できると考えられる.参考文献 [1] 森下和功, Shahram Sharafat, “今,核融合炉の壁が熱い! -数値モデリングでチャレンジ 第7回 VI-2. 壁の中は傷まないか”, 日本原子力学会誌 Vol.50, No. 12 (2008) pp. 803-808. [2] 森下和功,“マルチスケールでのプラズマ・壁相互作用の理解の現状 5-2 核融合材料のマルチス ケールモデリング”, プラズマ・核融合学会誌 Vol. 84, No. 12 (2008) pp. 941-945| 10-7dpals10-6dpals2014| 10-5dpalsIncubation time (s)10-4dpalsバーリー| 100dpals500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300Temperature (K) Fig. 2 Dose-rate dependence of incubation time forvoid nucleation1800107dpa/s10-6dpa/sNormalized nucleation10-5dpa/s , 10-4dpa/s105dpa/s.~500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300Temperature(K) Fig. 4 Dose-rate dependence of peak temperature forvoid nucleation516“ “原子力材料の照射劣化予測“ “森下 和功,Kazunori MORISHITA,吉松 潤一,Junichi YOSHIMATSU,山本 泰功,Yasunori YAMAMOTO,泉 裕太,Yuta IZUMI,渡辺 淑之,Yoshiyuki WATANABE
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