論理プログラミング言語Prologを用いた定検工事実施計画の自動作成による保全最適化の検討

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カテゴリ: 第7回
1.緒言
原子力発電所の定期検査時に行われる保全作業は、 非常に多くの機器を対象としているため、多数の作業 員が動員され、作業現場は非常に錯綜した状況となる。 また、原子炉の安全性や電源の確保、物理的な条件な ど、作業計画を立てる上で考慮すべき制約条件がさま ざま存在する。このように、定期検査時の工事計画は 膨大かつ複雑な情報を取り扱うため、これまで専門家 の長い経験と勘に基づいて立案されてきた。 工事計画 は出来るだけ無理のない、効率的な計画になるように 配慮され、工夫により最適化が進んできているが、そ の計画にさらなる最適化の余地が無いか確認するこ とは難しい。このような実情を踏まえ、我々は論理プログラミン グ言語 Prolog を用いた定検工事実施計画の最適化ツ ールの開発に取り組んでいる。本報告では、この最適 化ツールの特徴および、自動作成結果について紹介す る。 、検査・ ・工事を 2.定検工事実施計画の自動作成 - 定検工事実施計画を作成するためには、検査・工事 対象となる機器の選定と作業内容、検査・工事を担当 する作業チームの確保、作業を安全に進めるための制 約条件の把握、規制当局等による立会検査日の設定な ど、さまざまな情報を総合的に検討する必要がある。 連絡先:児玉典子 〒110-0008 東京都台東区池之端 2-7-17 株式会社IIU 電話:03-5814-5350、E-mail:kodama@iiu.co.jpよびサブクリティカル以下に属する作業の最適化で ある。
定検工事実施計画の最適化ツールは、このような多く の情報を基に、人間の思考と同じ検討過程を経た最適 と考えられるスケジュールの自動作成を目指してい る。2.12.1 論理プログラミング言語 PrologProlog は非手続き型プログラミング言語の一つで あり、論理型言語に分類される。1972 年ごろにフラ ンスのアラン・カルメラウアーとフィリップ・ルーセ ルにより考案された。Prolog はトップダウン式の問題 解決と相性が良いため、人工知能研究やエキスパート システムの開発のための主要言語として広く採用さ れていた)。本ツールでは、Prolog が制約条件などの 判断式を通常使用している言語に似た形で簡便に追 加できる特色があり、計画作成の手順を構築していく 過程で非常に扱いやすいため、採用することとした。 2.2 プログラムの概要定検工事実施計画の自動作成ツールは、データベー ス、インターフェース、そして工程作成プログラムか ら構成されている。作業対象となる機器の情報など基 本情報はデータベースに収められており、その情報を 基に工程作成を行う流れになっている。工程作成フロ ーを Fig.1 に示す。定検時にクリティカルパスとなる 作業はあらかじめ入力する形になっており、自動作成 ツールによる工程作成対象は、系統に対する作業、お よびサブクリティカル以下に属する作業の最適化で ある。基本的にスケジューリング問題は、定められた期間 という枠内に対して、作業というブロックを積んでい く積木問題として捉えることができる。今回の定検工 事実施計画自動作成ツールも、クリティカルパス内と いう枠に対して、複数の作業を最適に積んでいく積木 問題として捉えている。ブロックに対応する『作業』 は、作業日数と作業者数によりさまざまな大きさを持 つ。枠自体は制約条件によっても大きさが変わってく るため、ブロックを与えられた条件下でどのように積 むかが重要になる。この積み方をいろいろな考えの下 に規定するために、ツールでは作業や作業の積み方ル ールに対する重要度を外部から操作できる形になっ ている。定検クリティカルパス工程検討●保安規定定検クリティカルパス計画 ●工程●戸内点検 ●機器修繕・工事設定内に機器の点検作業が可能か?>NOYES定檢期間決定● 保安規定各系統の作業計画 工程●機器点検内容いく設定内に機器の点検作業が可能か>YESYES定検・系統作業期間決定系統期間変更必要か?NO各機器の作業計画 ●工程 ● 作業員等の動員計画●作業員スキル ●作業チーム機器制的条件<設定内に機器の点検作業が可能か?>YES<作業チームごとの計画が適切か>Prologで自由定検計画決定Fig.1 定検工事実施計画の自動作成フロー2.3 工程の最適化一般にプラントシステムの保全最適化とは、システ ム全体の安全性と経済性をそれぞれ最大化しつつ、両 者をバランスさせることであるが、ここでは決定され た保全計画に従って実施する定検工事計画の最適化 がテーマであるので、経済性について最適化すること を検討対象とする。 一定検工事の経済性は下記によって決まると考えら れる。・工事工程 ・作業員数 ・調達資機材これらの要素で決まる定検工事計画は下記の条件を 満足していることが望ましい。 ・プラントの全体工程に亘って作業者数の平準化が為されていること ・動員する作業員数が最少化されていること工程最適化に求めることすべてが一緒に成り立つ ことは難しい。そのため、条件ごとに工程を作成し、 簡単に比較することが出来れば、工程作成に資するこ とができると考えられる。現在、定検工事実施計画自 動作成ツールでは、Table 1 に示したパラメータを重要 度として変更できるようにしている。また、定検期間 自体を変更することにより、作業日数ごとの工程の変 化を見ることができる。Table 1 最適化パラメータ | 1 作業チームごとの動員数の最少化 | 2 プラントの全体工程に亘る作業者数の平準化 | | 3 作業エリアごとの作業者数の最少化 10 作業日数の最少化(定検日数変化による影響)|3. 自動作成結果 3.1 作成対象および最適化条件 - 現在、再循環系および残留熱除去系に属する機器を 対象に定検工事実施計画自動作成ツールの検証を行 っている。工程作成対象とした機器および作業内容は Table 2 のとおりである。Table 2 工程自動作成の対象機器 系統 作業?象機器作業内容 ポンプ分解/簡易/性能試験 電動機分解/性能試験|分解/簡易/漏えい試験 弁 RHR(A・B系)/性能試験 PLR(A・B系) 計裝特性試験、 熱交換器開放、 発電機分解/外観/性能試験 配管など | UT/PT/VT通常定検における通常作業を前提としており、定検 の設定期間を2カ月半、作業対象は 96 機器 114 作業 とした。 * 再循環系および残留熱除去系については、プラント 停止中であっても原子炉施設保安規定によって各種 の安全確保上の制約が課されている。また、定検中は 保安規定以外の制約も保全作業に課されていること がある。これらについては、制約条件としてプログラ ム中に組み込み、自動的に制約条件を満足する定検工 事実施計画が立案されるようになっている。また、最適化の条件としては、プラントの全体工程 に亘って作業者数が平準化されることを最も重要な 要素とし、作業工数が大きいほど作業日程を優先して 確保するようにパラメータを設定した。5243.2 工程作成結果3.1 に示した条件を基に作成した工程による作業員 増減を Fig.2 に示す。残留熱除去系はA系とB系に対 して同時に作業が出来ないため、それぞれの隔離期間 内での作業量に応じて作業者数の増減が見られるが、 再循環系を含めて全体的に人数の増減が少なくなっ ている。Fig.3 は、自動作成した工程に対して最低限 必要な作業チームと、作業期間を示したものである。 このようにパラメータの設定によって目的に沿って 最適化された工程を得ることができた。 * 今後、現実の定検工事に沿った工程の自動作成に向 けて、以下のような課題が挙げられる。取扱データの細分化。実際の作業は、手入れや検査 など機器に直接関わるものから、作業準備や片づけ | のように間接的なものまで多岐に渡っており、現実 に近付けるためにデータの単位を詳細にすること が必要である。 作業に関する制約条件の追加。実際の作業では物理 的な条件や放射線管理等によって、作業できる期間 が限られており、考慮が必要である。 工程最適化に関するパラメータの検証。パラメータ の組み合わせにより、どのように工程が変化するの か検証し、重視すべき条件を明確化する。 工程作成に大きく関わる要素が他にも存在しないか 実際に作成されている工程の検証を行う。 3.2 工程作成結果 13.1 に示した条件を基に作成した工程による作業員 増減を Fig.2 に示す。残留熱除去系はA系とB系に対 して同時に作業が出来ないため、それぞれの隔離期間 内での作業量に応じて作業者数の増減が見られるが、 再循環系を含めて全体的に人数の増減が少なくなっ ている。Fig.3 は、自動作成した工程に対して最低限 必要な作業チームと、作業期間を示したものである。 このようにパラメータの設定によって目的に沿って 最適化された工程を得ることができた。 * 今後、現実の定検工事に沿った工程の自動作成に向 けて、以下のような課題が挙げられる。4RPVIE 748450_5152535455ウェル水抜・取扱データの細分化。実際の作業は、手入れや検査 など機器に直接関わるものから、作業準備や片づけ のように間接的なものまで多岐に渡っており、現実 に近付けるためにデータの単位を詳細にすること が必要である。 ・作業に関する制約条件の追加。実際の作業では物理 的な条件や放射線管理等によって、作業できる期間 が限られており、考慮が必要である。 ・工程最適化に関するパラメータの検証。パラメータ この組み合わせにより、どのように工程が変化するのか検証し、重視すべき条件を明確化する。 ・工程作成に大きく関わる要素が他にも存在しないか、 実際に作成されている工程の検証を行う。ウェル水1|sow燃料 _10_11_12_1314 15 16 17 18 1920_21222 24 25 20 27 28 29 30 31 32333435_25_17_13_194041424344541本以上4.結言 1) 最適な定検工事実施計画の自動作成に向けてツールの開発を行っている。 2) 再循環系および残留熱除去系の機器を基に、通常の定検期間における作業工程の自動作成を試みた。 3) 全体人数の平準化を重視したパラメータ設定の上で自動作成した結果、目的に沿った作業日程が得られた。 4) 現実の定検工事に沿った工程の自動作成に向けた今後の課題を検討した。7 8参考文献 [1] http://ja.wikipedia.org/wiki/Prolog65(平成 22 年6月11日)4 ウェル水JRPVARPV冷温停止」通常水位フランジ付近「高温クリティカルバス原子炉の状態PLRAPLRBRHRARHRBFig.2 自動作成した工程での作業員増減結言 最適な定検工事実施計画の自動作成に向けてツー」 ルの開発を行っている。 再循環系および残留熱除去系の機器を基に、通常 の定検期間における作業工程の自動作成を試みた。全体人数の平準化を重視したパラメータ設定の上 で自動作成した結果、目的に沿った作業日程が得 られた。 現実の定検工事に沿った工程の自動作成に向けた 今後の課題を検討した。 参考文献 [1] http://ja.wikipedia.org/wiki/Prolog(平成 22 年6月11日)Fig.2- 525 -PTA| PLRA.PP PLAポンプVTR PLAB SCP 003123FLRB, LP,00U IRUTPLAG.EPSE 0012PLRA VOM #BEXT 19 PURB VOM. INTEGERRPVIBFウェルカム 304041424344 45 464748400 S152 535455.IDSセットSDM 燃料PLRB PPPLAUS EN(時間帯PLRA CV CAF57PLRA OG UFMG.LF MOREPURA EP,002 F BUTPURA.LP 005 REWUT PURA EP 003 IE BUT PLRB EP 002 RRUTPLRB PM ESTPURA TEV SPTF #F87PLRS SCPS 002 P28支話しPLAB EMV.EMF1PLRB HM.BRRHRSTOV FLT TB SFPLRB SCPS 005資格PLRA.PP PLAポンプ場RHAD TOV SCLTTBUSPURO TEV SP, TFFBRHRBESARジV RHRB VAL 00175RHRB VAL.002.75EVT.RHRB.FV.F機分解...RHRB TEV FLT.TBSPLAB TEV ACV TEPURA. LP 008.12 MUT PLAD LP,000 ISUT・ RHRD.SCP-002.02背UTPLAORMAREA 13234 35 36 37PLRA TEV_ACV TE#韓械性能 PLRB, TEV SPTF#抜住職RHRD FJALATRHREPP.AHRT談所AHRE TBV FLT.T8#気性能VPHAB.TAV.PCVSTA成分線RHRD.HTEC.熱交換器ECTRHAB.RM.藤電器計特性FLRA OPSE 001128PTウェル水RHAB VB 0023F AVTIPLRB, SCPP 00123 24 25 20 2720_29_20_312PLRA LP_007 NE MUT PLRB.LP.004.1murRHRB SCP 001 RUTPLRA EMV EMSTIREARHRO PP RHRTRHRB VB 002.V[PLRA.HIM度計装ESVPURB SCPS 001RHAB.SDN.SD機械分解RHRE SPSV SPSRHAB.PM,圧力計RHRB PPRHRTEREPLRA LP 004 IR BUT PLRA.EPSE 001 27ASPLAB OG LFMG.LFMGRENSPURE SCPP.003 ホンプVTIVT RHRB VO_001.TRUT PLRA LP 006 PLROUP 007 REUTRHRD_HM BILLARHRB.ES.OBTINE13 14 15 10 17 13 1920_21 22FLRA EMV EMSTEPLAB.VOM.H度計結性能PLRA ESPURB,PPPLRポンプ]inuarzoon endPLRA, LP 002./22 UTPURE_TEVACY TE電気分時計 [ AHRA_TOV FLT.TOP | PURATEV ACV.TESTE*RHRA.PPRHRポンプ電気性RHRA TEV,FLT,TB #PUR FCV FC#*RHRA TEV_SOLT, TB TERMSRHRA.SPSV.SPS機械えBHRA LFP_002.12 MUT12RHRA SCP 000.12 BUTRHRA RM10PURA.DCF002,フラン 支持 RHRA SCPS_002.25 RHRA_SCP_001.12 UTRHRA LFPS 002.12 RHRA LFP 0212AHRA LFP3,001.12 RHRA SCPS.00329 RHRA SCPS 001 RHRA.SCP.002.配管UTVT11AHRA.PPAIRポンプ使減簡易10RHRA,TBV,FLT,TOSRHRA.PP.RHRボンブえい | AHRA.TAV.TLTAHAHRA.TAV.PCVS.TA機替えい RHRA.TAV.EV.TA弁RHRA.SDV.SD機構9RHRA.FVF井機械性8JRHRA.PM.圧力計装特RHRA.HM温度計展RHRA FM BLASTRHRA ES LATABASTRHRA LFP_0032EUTRHRA.LFP.001.管UT7]6U5PLRA.FCV.FC井機械分解「PLRA.TFV.SP.TFPLRA_VOM,弁開度計 |4 ウェル水PLRA RM NORTEPLRB,CVCPLRA LP.000.RPLRDLP 005 ROUTPLRA EP 001.02 UTPURB ES 002 Cact放PURB. SCPP 002., お支V3 A PVII RPV 「止ま停止し切 「高温face | IKEFIER1時クリティカルバス原子炉の状師水位PLRA、SPS潟えいPLRERHRARHREPUMPS PUREPUMPPUせエエエまちFURI袋[VALV40分VALV.MEM分線VALV.機械.F分解[VALV.機械,SD分解・・・。VALV.機械.FC分解VALVON DENEVALVAREMATEECTVALV31就圧力特性PUMANVALYPUMPVALY.PUMP,VALV.Fig.3 作業チームごとの工程526“ “?論理プログラミング言語 Prolog を用いた定検工事実施計画の自動作成による保全最適化の検討日野TFXによる保全取週1の使討“ “児玉 典子,Noriko KODAMA,高瀬 健太郎,Kentaro TAKASE,青木 孝行,Takayuki AOKI,宮 健三,Kenzo MIYA
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