950keVライナックX線源によるその場検査用X線測定システム

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カテゴリ: 第7回
1.緒言
原子力発電所の安全確保・稼働率向上のために状 態監視保全、すなわちプラントを稼動させながら検 査評価する保全手法が重要となってきている。発電 所の内部で最も故障事象の多い機器としてポンプ などの回転機器、部品としてはベアリングが挙げら れる。現在ベアリングの余寿命評価は振動計によっ て加速度信号発生頻度の上昇カーブをフィッティ ングし、破壊までの余寿命を推測する手法が一般的 である。しかし機器や運転条件によって結果のバラ ツキがあり、重大な被害を起こす可能性がある。本 研究においては、可搬型 X-band Linac X 線源による ベアリングのリアルタイム撮像による回転機器非 停止静止画像取得と装置の安定化の向上に取り組 み、放射線とその他の検査手法とを融合させた新し いベアリング余寿命評価法の構築を目指す。
2.Linac を用いたX線非破壊検査装置2.1 装置概要 1. 本研究で使用する 9.4 GHz X-band Linac は最大電 子エネルギー950 keV であり、放射線障害防止法に 規定されている管理区域の設置が必要なく局所遮 蔽のみで使用可能である。加速管本体の写真を Fig.1 に示す[1][2]。装置の主要パラメータを Table.1 に示 す。エネルギーはほぼ設計どおりであるが、ビーム 電流が少ない。それに従って線量率も設計値より少 なくなってしまっている。
RF WindowBeamegunFig.1 X-band Linac 試験体系図この原因としては、加速管中で電子ビームが振動 し、電流が不安定になっていることが挙げられる。 今後装置開発を進めていく上で、加速管の構造を変 え、より効率の良いものに設計をしなおす必要があ るが、本研究においては将来的にこのような小型加 速器を使った非破壊検査装置としての適用を目指 した応用についての研究を行った。Table.1 装置パラメータExperimentDesign 950 keVEnergy~950 keVBeam Current200mA60 mADose rate @ 1 m200 mGy/min7.5 mGy/min2.2 装置分割案可搬型 X 線源を現場で使用するためには現場か らの要請として1ユニット 30 kg 程度が理想である。 しかし、加速管やマグネトロンのユニットは導波管 やイオンポンプなどが組み込まれており、70 kg 程 度となってしまう。そこで、加速管+イオンポンプ531などの真空を保持しなくてはならない部分と導波 管+マグネトロンなどの部分に分割することを考 えている。接合部は RF 窓が加速管に溶接されてい るため、単純なねじ止めでかまわない。出力も小さ いので導波管を真空にする必要がないため、組み込 み作業も短時間でできると考えている。Fig.2 に分割 案のブロック図を示す。Vacuum PartsIon Pump e Gunan PumpX-ray ConverterLinacRF WindowserjetronWater-cooled TubeWaveguidesMagnetronFiring BaseNo Vacuum PartsFig.2 X 線源部分割案2.3 高周波源安定化本実験装置に採用されている高周波源は気象用 レーダーなどに使用される 250 kW のマグネトロン である。このマグネトロンは重量が 7.5 kg と小型で、 最大 250 kW と比較的低出力であるため、電源も小 型になり、「可搬型」として適しているといえる。 しかし、自励発振器であるマグネトロンは周波数が 時間によって変化しやすい。実際、マグネトロンを 使用している医療器ではロボットアームなどによ って稼動すると周波数がずれ、不安定となることが ある。通常高エネルギー加速器には高周波源として クライストロンと呼ばれる速度変調(VM)管を採用 するが、高い周波数安定度に対して初期電圧が高い など装置が大型化しやすい。そこで、小型かつ安定 な高周波源として低電圧の熱陰極を複数使用する ことで電源などを小型にできるマルチビームクラ イストロン(Multi-Beam Klystron, MBK)の設計を行 っている。MBK はその名のとおり、複数のビーム により高周波を誘起させるクライストロンである 「31。これにより通常のクライストロンに比べて初期 電圧が低く安定な高周波源とすることができる。 Table.2 にマグネトロン・クライストロン・MBK の 比較表を示す。Table.2 高周波源比較表Magnetron Self-excitedKlystronVM|Type Cathode Voltage Stability Power SizeLow UnstableLow SmallHigh Stable High BigMBKVM Multi Low Stable Low-HighSmallMBK の出力としては2 MW 程度を考えており、 適用する Linac のエネルギーは本装置よりも高エネ ルギーな 3.95 MeV や6MeV 程度を考えている。こDれにより非破壊検査ならびに医療用 X 線源として も小型かつ安定な線源として使用できると期待で きる。ビーム計算は MAGIC と呼ばれる2次元 PIC コードを使用している。今現在は空洞の最適化なら びに3次元構造の設計を行っており、博士論文では 1 つのクライストロンシステムの設計を完成させた い。Fig.3 に MBK における1ビーム空洞図と MAGIC によるビーム計算例を示す。MBK の空洞は通常の クライストロンと同様に1空洞のビーム計算を基 に複数のビーム空洞を束ねる形で計算が可能であ る。よって、1 ビーム空洞のビーム計算を十分に行 う必要がある。2.3 装置性能評価 [4] - 加速管から生成される X 線の性能評価として識 別能・分解能評価を行った。識別能はある厚さに対 してどの程度までの厚さの違いが判別できるかで 評価する。識別能はある厚さt の試験体に JIS Z2306 規格で定められた Hole 透過度計の厚さ tc の比とし て評価した。このとき識別能DはDEC-1で表される。測定は鉄製の試験体の厚さ t を変化さ せ、透過度計のホールが視認できる最薄の透過度計 厚さを測定するという方法で行った。試験体系を Fig.4 に示す。試験体厚さは同じ厚さの鉄板を重ね合 わせることで変化させた。また1枚目には JIS Z2306 規格の Hole 透過度計を貼り付け、フラットパネルデ ィテクターで取得した画像上で Hole が視認できる もっとも薄い透過度計厚さを測定した。\?ample33.Type PengtoninteroFig.4 識別能評価試験体系試験結果を Fig.5 に示す。水色のラインが X 線コ リメータのない試験結果・赤色のラインがX線コリ メータを挿入した試験結果である。コリメータのあ りなしに関わらず 15 mm 以上の厚さにおいては識 別能3%程度であることがわかった。コリメータな しの状態で 20 mm 以上の識別能が悪くなっている 原因はビームの広がりなどが関わっていると考え られる。この結果から本試験装置では 20 mm 程度の 鉄板に対して 600 um 程度の厚さの差を区別するこ532とができる。------ No Collimator- CollimatorDisorlminatlan Ability10510 152025.30350Fe Plate Thickness [mm]Fig.5 識別能評価試験結果3.X線による回転機器同期静止画撮像 試驗Linac から生成される X 線はパルスであるので、 回転機器の回転周期と X 線パルスの繰り返し間隔 を同期させることで回転機器が回転中であっても 静止画として取得できることになる。このことを実 証するために以下のステップで試験を行ってきた。(1) PC ファンと IP による原理実証試験[8] (2) 送風機と FPD による原理実証試験 (3) ベアリングを用いた実証試験(1)によって回転機と同期が取れていれば撮影可能 であることを実証し、(2)によって PC 上で状態を監 視できる FPD とも同期させることによりオンライ ンで視認可能であることを実証した。(3)では実際に 現場で使用されている玉軸受けを使用し、(1)(2)の内 輪との同期手法と異なり、転動体に同期させた画像 取得を行った。これにより1つずつの転動体が静止 しているように見える。試験で使用した玉軸受けの 場合、転動体である玉が周方向の自転だけでなく 3 次元的に回転するため、玉軸受けの場合の転動体損 傷を静止画取得することは事実上困難であるが、こ ろ軸受けなどであればこの手法は有意義である。試 験では転動体の公転周期を電磁信号としてピック アップするため、電磁センサーを使用し同期信号と した。試験体系をFig.6に試験結果をFig.7に示す[9]。 結果を見るとたしかに、転動体1つ1つを区別して 視認できるが、非回転時に比べて像がぼけているこ とが分かる。これは EM センサーに起因するジッタ ーが原因であると考えられる。しかし、この手法で あれば、外から視認できない転動体であってもX線 透過画像としては静止画像として取得できるとい うことがわかった。Flat Panel DetectorControllerEM SensorMotorX-rayFig.6 ベアリング同期画像取得試験体系StopNot Sync.Sync.Fig.7 EM センサーを用いた画像取得結果4.結論・今後の研究方針 Linac から生成されるX線を用いた原子力状態監視 保全応用について要素実験を行った。今後はパルス X線によるベアリングのリアルタイム監視・静止画 取得を成功させ、さらなる精度向上のための同期信 号系の構築を行い、現場に適用できる装置の配置な どの検討を行う。また、東京大学大学院工学系研究 科上坂研究室で行われている中性子ビーム、放射光 による残留応力測定によって従来の余寿命評価に 定量的な機軸を導入し、新しい評価法の構築を目指 す。本研究によってベアリング余寿命評価の新手法 を構築し、現場への適用を目指す。参考文献 [1] T. Yamamoto et al., Proc. of IVEC2007, IEEEElectron Devices Society, 07EX1526, pp.443-444,(2007) [2] 山本智彦他、日本原子力学会 関東・甲越支部若手研究者討論会 (2007) [3] A. Larionov, V. Teryaev et al., “Design ofMulti-Beam Klystron in X-Band” [4] 山本智彦他、日本保全学会第6回学術講演会要旨 (2009) [5] M. Uesaka et al. Proc of 7th NDE (2009) [6] 上坂充他、日本保全学会第6回学術講演会要旨(2009) 「7] 清水茂夫、“機械系のための信頼性設計入門”数理工学社,2006 [8] T. Yamamoto et al., The American Institute ofPhysics Conference Proceedings Series, 1009,pp.95-98, (2009) [9] 山本智彦他、日本 AEM 学会誌 Vol.17, No.2,pp211-215 (2009)533“ “950keVライナック X線源によるその場検査用X線測定システム“ “山本 智彦,Tomohiko YAMAMOTO,藤原 健,Takeshi FUJIWARA,上坂 充,Mitsuru UESAKA,平井 俊輔,Shunsuke HIRAI
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