マイクロ波を用いた配管減肉の位置検出に関する基礎研究

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カテゴリ: 第7回
1. 序論
化学プラント等の配管群に対する検査の高速化は、 非破壊検査における重要な課題のひとつである。既 存技術の大半はプローブ近傍における探傷を行うた めのものであるが、大規模構造物における複雑かつ 長大な配管系の検査においては、プローブを移動さ せることなく、配管を広範囲にわたって一度に検査 することができる技術が望まれている。そのような技術の一つとして、現在、主にガイド 波を用いた手法が研究されている。ガイド波は管壁 を長手方向に伝播するため、広範囲の検査が行える という特徴がある[1][2][3]。しかしながら、配管の接続 部での反射等、実用上の問題点も少なくはない。同 様に広範囲の検査が可能である検査手法として、マ イクロ波を用いた検査法が研究されている[4][5)。 こ れは配管群を導波管とみなし、マイクロ波の反射及 び透過から欠陥の検出及び評価をおこなうものであ り、マイクロ波が導体に囲まれた自由空間を低損失 で伝播することから、配管接続部の影響をうけるこ となく、広範囲の検査が行えると考えられている。 最近の研究により配管内部の減肉によってマイクロ 波の周波数応答が有意に変化すること、またをマイ クロ波の透過エネルギーから評価することが可能で ある可能性が高いことが数値解析により確認された。 しかしながら、体系が単純化されている、時間応答 については十分に検討がなされていないなどの、実 用面での課題は依然として大である。 --以上の背景により、本研究においてはマイクロ波 の時間応答からの減肉検出能評価のため、ネットワ ークアナライザおよび模擬試験体を用いた検証試験 を実施する。2. 手法 - 配管を導波管とみなした場合、ある特定の周波数 以上のマイクロ波は配管内をほぼ減衰せずに伝播す る。しかしながら、減肉等の損傷はマイクロ波の伝 播特性を変化させ、減衰とともに反射波を生じさせ る。この反射波を観測し、その伝播速度と観測され た時間(time of flight, TOF)によって反射波が生じた 位置、すなわち減肉の位置が特定できると考えられ る。図1に検証の為の実験体系を示す。体系は配管を 模擬した長さ 1120mm の真鍮管と、その端部に取り 付けられたマイクロ波入射のための同軸コネクタお よびケーブルからなる。同軸コネクタはアンリツ製 K-101F、同軸ケーブルは同じく K-118 であり、真鍮 管に取り付けるために真鍮板に半田付されている。 マイクロ波は portl より発振され、portl および port2 へ伝播する。マイクロ波の発振および計測はネット ワークアナライザ(Agilent PNA, E8363B)によって行 われる。周波数は 10GHz から 25GHz に設定した。 管内の減肉は矩形断面を持つ全周減肉であり、減肉 の位置は管端部から 290mm と 790mm の2通りにつ いて実験を行った。尚、本研究ではマイクロ波の測 定は周波数領域において行われるので、逆フーリエ 変換によって時間領域のデータを取得する。
31 0.3 |port2portt microwaveTeflonwall thinning (relative permittivity : 1.687)Fig. 1 the experimental model5343. 結果と考察図2に各種条件下での時間領域での反射波の計測 結果を示す。図から明らかなように、減肉によって 反射波に大きな違いが表れていることが分かる。 TOF からの減肉位置評価について検討を行うため、Lcoaxial V?, L pipe TOF = Tcoaxial +T pipe = _“-1v = c/h ( 24048xc)8 1 | 2naf J にて与えられる TOF の値と、実際に測定された TOF の値の比較を行った。ここで、Tcoaxial は同軸ケー ブル及びコネクタ部をマイクロ波が通過する時間、 Tpipe はコネクタ部から減肉部までをマイクロ波が 配管内部を伝播する時間である。cは光速、Erは同 軸ケーブルの比誘電率、a は管の半径、fは周波数で ある。vは管内で TM01 モードが支配的であるとし て計算したが、実際には管内でのマイクロ波の伝播 速度は周波数依存性を持つので、最も透過エネルギ ーが大である 17GHz と伝播速度が速い 25GHz のと きの TOF を計算し、この2つの値を上限値と下限値 とした。図2において減肉からの反射波の立ち上が りは理論的に求められた TOF の範囲の中に納まっ ていることが確認できる。このことから、マイクロ 波は確かに減肉において反射していること、TOF を 用いて減肉の位置特定を行える可能性があることが 明らかになった。また、減肉からの反射波の振幅は 減肉の位置が遠くなるに従い小さくなった。これは 管内の分散によるものであると考えられ、より長い 配管への応用を考えるときに、減肉からの信号が小 さくなるなどの問題が考えられる。4.結論 * マイクロ波を用いた減肉の位置特定について実験 を行った。マイクロ波の伝播速度と減肉からの反射 波の観測される時間からマイクロ波の位置特定が行 える可能性が示された。配管内部を伝播するマイク ロ波のモードを定量的に把握し、実効的な TOF を定 義すると共に、分散による信号の減少を抑えること でことで、より精度の高い評価が可能になると考え られる。参考文献 [1]D. N. Alleyne, M. J. S. Lowe, P. Gawley, The reflection of guided waves from circumferential notches in pipes, Journal of Applied Mechanics 65 (1998) 635-641. [2]P. D. Wilcox, A rapid signal processing technique to remove the effect of dispersion from guided wave signals, Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control 50 (2003), 419-427. [3]Joon-Hyun Lee, Seung-Joon Lee, Application of laser-generated guided wave for evaluation of corrosion in carbon steel pipe, NDT&E
International 42 (2009) 222-227 [4]Kavoos Abbasi, Study of Microwave Nondestructive Technique to Detect Crack and Predict Its Location in Piping System, Tohoku University Doctoral Dissertation, (2007) [5]Y. Ju, L. Liu, M. Ishikawa. Quantitative evaluation of wall thinning of metal pipes by microwaves. Materials Science Forum 614 (2009), 111-116連絡先:酒井康智 東北大学橋爪・江原・遊佐研究室 〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-01-2 Tel/Fax 022-795-7906535“ “マイクロ波を用いた配管減肉の位置検出に関する基礎研究“ “酒井 康智,Yasutomo SAKAI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME
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