ニッケル基600合金用被覆アーク溶接金属の高温高圧純水中の応力腐食割れ感受性に及ぼすCr濃度の影響

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カテゴリ: 第7回
1.緒言
範囲は, 182 合金 (JIS Z3224 DNiCrFe-3) の濃度範囲であるのに対し, 82 合1近年,沸騰水型原子炉(BWR)の炉内構造物の一部に 用いられているニッケル基 600 合金溶接金属に,応力 「腐食割れ (SCC) が定期検査で検出されている). BWR に用いられる 600 合金溶接金属は,主として被覆アー ク溶接金属である 182 合金と, ティグやサブマージア ーク溶接金属等の 82 合金がある.しかし,これまでに 国内の BWR で SCC が検出されているのは 182 合金で あり, 82 合金では SCC の発生は報告されていない. ま た, 過去の研究においても 82合金は 182 合金より SCC の発生寿命が長いことが報告 294) されているため、最近 の BWR プラントの炉内構造物では SCC の発生を防止 する目的で,182 合金に替わり 82 合金が多く用いられ る傾向にある. SCC は「材料」, 「環境」,「応力」の三 要因が重なったときに生じることが知られている. BWR炉水環境下の 600 合金溶接金属では, 材料要因の 一つとして Cr 炭化物の粒界析出に伴う Cr 欠乏層の形 成が挙げられている 3) -5), 182 合金と 82 合金では溶接 方法以外に規格成分範囲も異なり,JIS 規格の Cr 濃度範囲は, 182 合金 (JIS Z3224 DNiCrFe-3) で 13-17mass% の濃度範囲であるのに対し, 82 合金(JIS Z3334 YNiCr-3)では 18-22mass%であり, 82 合金の方が 182 合金より Cr 濃度が高く規定されている.また,Nb 濃 度においても, 182 合金では 1-2.5mass%であるのに対 し, 82 合金では 2-3mass%と JIS で規定されており,溶 接金属では 82 合金の方が 182 合金より Nb 濃度が高い 場合が多い,Saito ら は, 82 合金における柱状晶粒界 の Cr 濃度は,182 合金と比較して高いことを示してい る.しかし,この原因が 82合金の Cr 濃度が高いこと によるものか,または Nb 濃度の上昇により Cr 炭化物 の粒界析出に伴う Cr 欠乏層の形成が抑制されたため か,どちらが有効かは明らかにされていない.そこで本研究では,溶接金属の Cr 濃度に着目し, Cr 濃度が 82 合金相当の 182 合金を作製してBWR環境を 模擬した高温高圧純水中において, Cr 濃度と SCC 感受 性との関係を調査した.そして,その原因について主 に金属組織学的な観点から検討を加えた.2. 実験方法2.1 評価試験体の作製溶接金属の化学組成を供試母材とともに Table 1 に 示す.標準材,および Cr 濃度が 82 合金の規格範囲の
下限側である高 Cr材1と上限側の高 Cr材 2 の 600 合 金被覆アーク溶接試験体を製作した.製作した溶接継 手の外観写真を Fig. 1 に示す.開先加工した 600 合金 板に多重熱サイクルの影響を避けるため,1パスで溶 接を行った. 溶接条件は溶接棒をプラス極として,直 流で電流 130 A,電圧 25 V,溶接速度 1 mm/s とした. 溶接試験体に 893 K で 72 ks 保持の熱処理 (SR) と 673 Kで 720 ks 保持の低温熱時効(LTA)を行った.前者 の 893 K の SR は,原子炉圧力容器の製造時の応力除 去焼鈍中にニッケル基合金溶接金属が受ける熱履歴を 模擬したもので,後者の 673 K で実施した LTA0), )は 実機運転温度下で受ける熱履歴の加速条件である.Table 1 Chemical compositions of the weld metals andthe base metal used (mass%).(pp)228Materials C Si In P SNi Cr Fe Nb Ti N (ppa) Standard 10,06910.485,390,012 0.005169.33 14.80 16,5911.2410.62 | 120 High Cr 10 .059 10.43 15.33 10.011 10.005166.57 18.5017.111.3810.49 118 High Cr 2 10.057 10.38 14.84 10.011 10.005164.37 | 21.44 1.14 11.23 0.38 1 126 Base getal | 0.120 10.36 10.28 10.005 10.008 | 12.89 17.376.93| 0.21 | 11218269※201850100000-19150 160715020020202025250411Plate thickness%3D25mmFig. 1 Appearance of welded joint of the Ni-base alloyfrom which specimens for the CBB test were cut.2.2 応力腐食割れ試験隙間付き定ひずみ曲げ(Creviced bent beam:以下 CBB)試験により SCC 感受性を評価した.製作した試 験体の溶接始終端部を避け, ビード表面に近い位置か ら板厚 2 mm, 幅 10 mm,長さ 50 mm の試験片を,溶 接線垂直方向に溶接金属が中心となるよう採取した. 10 mm×50 mm の面を鏡面に仕上げ,この面を試験面 とした. Fig. 2 に試験片を治具にセットした時の模式図 を示す,600 合金製の治具を用いて,試験片表面に 1% の曲げひずみが一様に付与されるようセットした. CBB 試験片数は,各条件につき6枚とした. セットし た治具を BWR の運転温度に相当する 561 K で,試験 圧力を8MPa として 3.6 Ms 浸漬した.ここで,入口側 の水質は溶存酸素量8ppm,導電率 0.1 μS/cm 以下とした. 浸漬後,試験片に 5%の曲げひずみを付与して割れ を開口させた後,溶接金属の割れ深さを測定して,試 験片6枚中の最大深さを求めた.さらに, 深さが 30 μ m 以上の割れを十分に進展した SCC と判断し、試験片 1枚当りの平均割れ個数を求めた. SpacerSpecimen Graphite fiber wool101R15Weld metal5020190 Fig. 2 Schematic set up of the CBB test. 2.3 引張試験 - 溶接試験体より,溶接線直交方向が荷重引張方向と なるように Fig. 3 に示す引張試験片を採取した.標点 間の領域全てが溶接金属になるよう試験片を作製した. 精密万能試験機を用いて大気中で試験温度 561 K, 標 点間ひずみ速度 5X 10““ s'で引張試験を行った.2-03.2不a903.0w 13.4w 6.8w 7.0W304056Thickness=1 mmFig. 3 Schematic diagram of the tensile test specimen. 2.4 硬さ計測 - 2.2 節の応力腐食割れ試験後の CBB 試験片表面近傍 のマイクロビッカース硬さを荷重9.8Nで計測した. 2.5 金属組織評価 - 溶接金属部の組織観察は光学顕微鏡,および電界放 出型透過型電子顕微鏡 (FE-TEM)を用いて行った. FE-TEM の加速電圧は 200 kV で, EDS 元素分析時のビ ーム径は約1mm である.また,熱力学的平衡状態計算 ソフトウェア Thermo-Calc8) Ver.S と SGTE 固溶体デー タベース Ver.4(SSOL4) を用いて状態図を作成し,観 察された金属組織の評価を行った.3.実験結果および考察3.1 応力腐食割れ感受性に及ぼす Cr 濃度の影響 - Fig. 4 に AW での高 Cr 材1に発生した SCC を示す.545発生した SCC は柱状晶粒界を起点として,柱状晶粒界 に沿って進展する IGSCC であり,AW での高 Cr 材2 に発生した SCC も同様の傾向を示した. Cr濃度の変化 に伴う最大割れ深さを Fig. 5 に,試験片1枚当りの平 均割れ個数を Fig. 6に示す.SR+LTA 処理を受けた溶接 金属では, Cr 濃度が 14.8mass%の標準材で高い SCC 感 受性を示した.しかし, 82 合金相当の Cr 濃度を有す る高Cr材1と高Cr材2に SCC の発生は見られず,SCC 感受性は低かった.また,溶接のまま(AW)では Cr 濃 度の増加で SCC 感受性にほとんど変化は見られず, 割 れ深さは SR+LTA 処理を受けた標準材と比較して浅く, 個数も少なかった.したがって,182 合金も 82 合金と 同等の Cr 濃度にすれば AW, SR+LTA 処理を受けた場 合ともに SCC 感受性は低いと判断できることから, 82 合金の SCC 感受性が 182 合金より低い理由の一つとし て, Cr 濃度が 182 合金より高いことが考えられる.100mFig.4 Optical micrographs of SCCs observed in a crosssection of a CBB test specimen (high Cr 1 weld metals in the as-welded state).300...AW-O-SR+LTAMaximum crack depth (um)12 14 16 18 20 22 24Cr content (mass%) Fig. 5 Effect of Cr contents on the maximum crack depthobserved after the CBB test in the as-welded specimens and specimens subjected to the SR+LTA treatment.・・◆AW -SR+LTANumber of crack more than 30 um depthenoania12 14 16 18 ) 20 22 24Cr content (mass%) Fig. 6 Effect of Cr contents on the number of SCCs morethan 30 u m in depth observed after the CBB test in the as-welded specimens and specimens subjectedto the SR+LTA treatment. 3.2 応力腐食割れ感受性と金属組織との関係3.1 節より, SR+LTA 処理を受けた高 Cr材1と高 Cr 材2はほぼ同じ SCC 感受性を有していたことから,標 準材と高 Cr材1とを比較して,SR+LTA 処理を受けた 高 Cr材1の SCC 感受性が低い理由を検討した. 一般 に SCC は「材料」, 「環境」,「応力」の三要因が重なっ たときに発生することが知られている.環境は一定の 条件で試験しているため,「応力」が SCC 感受性に及 ぼす影響について検討する.Fig.7 に SR+LTA 処理を受 けた標準材と高 Cr 材 1, および AW での高 Cr 材1の 561 Kでの引張試験結果を示す. SR+LTA 処理を受けた 高Cr材1の1%ひずみでの負荷応力は 253 MPaであり, SR+LTA 処理を受けた標準材の 273 MPa と比較して, その差は僅か 20 MPa程度であった.そのため, SR+LTA 処理を受けた標準材と高 Cr 材1の 1%ひずみでの負荷 応力に有意な差は無く, CBB 試験時の試験片表面に負 荷されていた応力はほぼ同じと判断できる.なお, AW の高 Cr材1は1%ひずみでの負荷応力が 239 MPa であ り,高 Cr 材1 は SR+LTA 処理を受けた場合, 1%ひず みでの負荷応力に大きな変化は見られなかった. Fig.8 に溶接金属の Cr 濃度と硬さとの関係を示す. Cr 濃度 の増加,および SR+LTA 処理の有無に関わらず硬さに 大きな変化は見られなかった.硬さがほとんど同じで あれば、1%のひずみを付与するのに要する応力はほぼ 同じになることが想定されるため,CBB 試験時の試験 片表面に負荷される応力に有意な差は無いと思われる. - 以上より, SR+LTA 処理を受けた高 Cr 材 1 と高 Cr 材2の SCC 感受性が低いのは, CBB 試験時の試験片表546面に負荷される応力が特に低いためでは無いと思われ ることから,SCC の三要因である「材料」の要因から 検討した. Fig. 9 に SR+LTA 処理を受けた高 Cr材1の 柱状晶粒界の TEM 観察結果を示す. SR+LTA 処理を受 けた高 Cr材1は, 柱状晶粒界に大きさが 0.1~0.5 um の析出物が緻密に析出しているのが観察され,EDS分 析と電子線回折像より,Cr を主体とした Marchと同定 された. 標準材では Cr を主体とした M,C,が観察され たことから, SR+LTA 処理を受けた高 Cr 材1の柱状晶 粒界に析出する炭化物は,標準材と種類が異なり,Cr 濃度が炭化物の種類に影響を及ぼすことが示唆された. Fig. 10 に SR+LTA 処理を受けた標準材と高Cr材1の柱 状晶粒界近傍における Cr 濃度分布を, FE-TEM により EDS分析した結果を示す.なお,両溶接金属の Cr濃度 差を明確に示すため,30mass%までを表示している. 高Cr材1は M23C6が柱状晶粒界で緻密に析出し, 分析 領域に炭化物が含まれたために柱状晶粒界の Cr 濃度 が上昇し,最大で 72.9mass%を示した.柱状晶粒界近 傍の最低 Cr 濃度は,SR+LTA 処理を受けた標準材で 3mass%,高 Cr材1 では 10mass%になっており,高 Cr 材1の方が標準材より柱状晶粒界近傍の最低 Cr濃度が 高くなる傾向が見られた.したがって,SR+LTA 処理 を受けた溶接金属が Cr 濃度の増加で SCC 感受性が低 下した理由として, 柱状晶粒界近傍の最低 Cr 濃度が上 昇したことが考えられる. - 以上より,本研究の SCC 試験条件では硬さが Fig. 8 で示した程度であれば,柱状晶粒界近傍の Cr 濃度が 10mass%以上で SCC の発生は抑制されると考えられる.600Standard (SR+LTA) -High Cr 1 (AW) -High Cr 1 (SR+LTA)Stress (MPa)Gamesmootprope10_0.5 11.52Strain (%) Fig. 7 Stress-strain curves of weld metals at 561 K in airatmosphere.300◆AW ●SR+LTAHardness (Hv 9.8N)レー150 1 1214_ 16_ 18 20 22 24Cr content (mass%) Fig. 8 Effect of Cr contents on the hardness of thespecimens in the as-welded state and those subjected to the SR+LTA treatment.311200001mMSC1/[112] Diffraction patternTEM imageCourts0010200104050001001010 1000EDS analysis Fig. 9 TEM micrograph observed in a high Cr 1 weldmetal subjected to the SR+LTA treatment.A Standard - High Cr 1Cr content (mass%)-150 -100 -50_ 0_ 50 100 150Distance from the grain boundary (nm) Fig. 10 Distribution of Cr contents across grainboundaries in standard and high Cr 1 weld metals subjected to the SR+LTA treatment.5473.3 SR+LTA 処理を受けた高 Cr 材1と高 Cr 材2のSCC 感受性が AW より低い理由 Fig. 5 と 6 で示したように,高 Cr 材 1 と高 Cr 材2 は AW において SCC の発生がわずかに認められたが, SR+LTA 処理を受けた場合に SCC は発生せず, SCC 感 受性は AW よりさらに低下する傾向が見られた. Fig.7 より,高 Cr材 1 の CBB 試験時の試験片表面に負荷さ れる応力は AW, および SR+LTA 処理を受けた場合と もにほぼ同じと見なせるため,柱状晶粒界近傍の Cr 濃度に着目した. Fig. 11 に高 Cr材1の AW における柱 状晶粒界近傍の Cr 濃度分布を,FE-TEM により EDS 分析した結果を示す.柱状晶粒界から 10 nm の領域で Cr欠乏が生じ,柱状晶粒界の平均 Cr濃度は 12.9mass% であった.Fig. 12 に高 Cr材1 の AW における柱状品粒 界の TEM 観察結果を示す.柱状晶粒界に大きさが 0.1 um の析出物が観察され,EDS 分析と電子線回折像よ り, Cr を主体とした March と同定された.したがって, 高Cr材1は溶接時に M2sChが柱状晶粒界に析出し,そ の周囲に Cr 欠乏が生じて柱状晶粒界の Cr 濃度が 12.9mass%まで低下したと考えられる.しかし, 3.2 節 で示したように, 柱状晶粒界の Cr 濃度が 10mass%以上 であれば SCC は抑制されることから,高 Cr材1の AW では SCC の発生を抑制するのに十分な Cr 濃度を有し ている.そのため,高 Cr材 1 が SR+LTA 処理を受ける と AW よりさらに SCC感受性が低下するのは別の要因 が考えられることから, SCC が発生しなかった SR+LTA 処理を受けた高 Cr材1の柱状晶粒界を詳細に 観察して,その理由を明らかにすることを試みた. Fig. 13 に SR+LTA 処理を受けた高 Cr 材 1 の柱状晶粒界の TEM 観察結果を示す. 柱状晶粒界に M2sCsとほぼ同じ 大きさである 0.1~0.5 um の析出物が M25C6の近傍で 析出しているのが観察され,EDS 分析と電子線回折像 より,この析出物は Nis(Cr, Mn),Si, (G 相)と同定さ れた.そして,EDS分析より G 相から高濃度のPが検 出された. Fig. 14 に高 Cr材1 の AW での柱状晶粒界近 傍におけるP濃度分布を, FE-TEM により EDS分析し た結果を示す. AW では柱状晶粒界で P 濃度がわずか に高くなり,柱状晶粒界に P が偏析する傾向が見られ た.また,AW では柱状晶粒界近傍にG 相の析出は見 られなかったことから,柱状晶粒界に偏析した P が SR+LTA 処理を受けて析出した G 相に取り込まれたも のと考えられる.これまでに,溶接金属中の P濃度の 増加により SCC の進展速度が速まることが報告されていることから, 柱状晶粒界に偏析したPは SCC 感受 性に対して悪影響を及ぼす可能性がある.したがって, 柱状晶粒界の Cr 濃度が 10mass%以上であるにも関わ らず高Cr材1のAWにSCCがわずかに発生したのは, 柱状晶粒界に偏析した P の寄与が考えられる.そして, 柱状晶粒界に偏析した P が SR+LTA 処理を受けて析出 した G 相に取り込まれたため,SR+LTA 処理を受けた 高Cr材 1 の SCC 感受性は AW よりさらに低下したも のと考えられる.また, Fig. 5 と Fig. 6で示したように, 高 Cr材2の SCC 感受性は AW, SR+LTA 処理を受けた 場合ともに高 Cr 材1とほとんど同じであることから, SR+LTA 処理を受けた高 Cr 材2は高 Cr 材 1 と同じ機 構でSCC 感受性が AW より低下したと考えられる.りん)Cr content (mass%)Th Average:12.9mass%-150 -100 -50_ 0_ 50 100 150Distance from the grain boundary (nm) Fig. 11 Distribution of Cr contents across a grainboundary in a high Cr 1 weld metal of the as-welded state.10203000LA0.14 mIM, C1/[101] Diffraction patternTEM imageCLEOCounts2.01002001004005E+29EDS analysis Fig. 12 TEM micrograph observed in a high Cr 1 weldmetal of the as-welded state.548-20010.5μmIME| Nii (Mr,Cr),Si,//[101] TEM image Diffraction patternmementeriennecreamBERRETTER1.20010100500001E+24EDS analysis Fig. 13 TEM micrograph observed in a high Cr 1 weldmetal subjected to the SR+LTA treatment.P content (mass%) |0-150 -100 -50 0_ 50 100 150Distance from the grain boundary (nm) Fig. 14 Distribution of P contents across a grainboundary in a high Cr 1 weld metal of theas-welded state. 以上より,G相は柱状晶粒界に偏析する P を取り込 む効果があり, G相の析出で SCC 感受性はさらに低下 することが明らかとなった.4.結論1) 182 合金も 82 合金と同等の Cr 濃度にすれば AW,SR+LTA 処理を受けた場合ともに SCC 感受性は低 かった. したがって, 82 合金の SCC 感受性が低い 理由の一つとして,Cr濃度が 182 合金より高いことが挙げられる. 2) Cr濃度の増加で SCC感受性が低下した理由として,柱状晶粒界近傍の最低Cr濃度が上昇したことが考えられた. 3) SR+LTA 処理を受けた Cr 濃度が 18.5mass%の溶接金属の柱状晶粒界では, M25C6 とともに Nin(Cr, Mn),Si, (G 相)が析出した. G 相から高濃度のP が検出されたことから,柱状晶粒界に偏析した P が SR+LTA 処理を受けて析出したG 相に取り込ま れたため,SR+LTA 処理を受けた Cr 濃度が 18.5mass%の溶接金属は AW よりさらに SCC 感受 性が低下したと考えられる.参考文献1) 青木孝行,服部成雄,安齋英哉,住本秀樹,“BWR環境下で長期間使用されたニッケル基合金の応力腐食割れ,““保全学,4[1], 34-41(2005). 2) R. A. Page, ”Stress Corrosion Cracking of Alloy 600and 690 and Nos.82 and 182 Weld Metals in HighTemperature Water,” Corrosion, 39[10], 409-421(1983) 3) N. Saito, S. Tanaka and H. Sakamoto, “Effect ofCorrosion Potential and Microstructure on the Stress Corrosion Cracking Susceptibility of Nickel-Base Alloys in High-Temperature Water,” Corrosion, 59[12],1064-1074(2003). 4) 鈴木俊一,福田俊彦,国谷治郎,山内清,中城 憲行,“高温純水中における Alloy600, 182 及び 82 の 粒界型応力腐食割れ挙動,材料と環境 2000 講演集,87-90(2000). 5) 山内清,浜田幾久,岡崎朝彰,横野智美,“安定化パラメータのコントロールによるニッケル基溶接 金属の耐粒界腐食性並びに耐粒界型応力腐食割れ性の向上,““防食技術, 35,605-615(1986). 6) P. L. Andresen, “Observation and Prediction of theEffects of Water Chemistry and Mechanics on Environmentally Assisted Cracking of Inconels 182Weld Metal and 600,““Corrosion, 44[6], 376-385(1988). 7) L. G. Ljungberg and M. Stigenberg, “Stress CorrosionCracking Propagation in Low-strength Nickel-base Alloys in Simulated BWR Environments,” gth International Symposium on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems-Water Reactor, 704-711(1997). 8) B. Sundman, B. Jansson and J-O. Andersson, “TheThermo-Calc databank system,” CALPHAD, 9[2], 153-190(1985).549“ “?ニッケル基 600 合金用被覆アーク溶接金属の高温高圧純水中の応力腐食割れ感受性に及ぼす Cr 濃度の影響 “ “西川 聡,Satoru NISHIKAWA,大北 茂,Shigeru OKITA,山口 篤憲,Atsunori YAMAGUCHI,池内 建二,Kenji IKEUCHI
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