3次元フェーズドアレイ法による超音波探傷技術

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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
フェーズドアレイ UT 法は、アレイセンサ内部の複 数の圧電素子に遅延時間を与え、超音波の位相を制御 して送受信することにより、任意の位置に超音波ビー ムを集束させるとともに、電子的なビーム走査を可能 とする検査技術である。単一素子による探傷法に比べ 高 SN 比で高速検査が可能であり、近年、発電プラン トをはじめとして、様々な工業分野で適用が広がりつ つある[1]。 - 現在普及しているフェーズドアレイ法は、リニアア レイセンサで生成される集束ビームを2次元走査し、 検査対象内部の断面画像を用いて検査を行う方法(以 下、2D-PA 法) が一般的である。この手法を高度化し、 2次元アレイセンサ(マトリクスアレイセンサ)によ る集束ビームを3次元走査し、測定結果を立体表示す るのが、3次元フェーズドアレイ法(以下、3D-PA 法) である。Fig.1 に 3D-PA 法の概念図を示す。
これまでに3次元超音波探傷システム 3D Focus-UT を開発し、テストピースを用いて基本性能の確認を行 ってきた[2][3][4]。3D Focus-UT では3次元走査データ に内挿処理を施して3次元正方格子データ(ボクセル データ)に変換し、それをボリュームレンダリング法 によりディスプレイ上に3次元表示する。ボクセルデ ータの任意断面において、距離計測などの定量的評価 をすることも可能である。更に、ボクセルデータを検| 2D array probe| 3D scanning| Focus pointFig. 1 Schematic image of 3D phased array.査対象の 3D-CADデータと重ねて表示させることがで きるため、反射エコーと、反射源となっている部位と の対応付けが容易である[5]。また、専門知識を持たな い第三者への説明が容易になるという利点もある。こ れらの機能により、走査だけでなく評価も効率的に行 えるため、2D-PA 法に比べ検査時間を大幅に短縮できる。2. 課題と目的- 3D-PA 法は、3次元走査により同じ体積領域で比較 すると 2D-PA 法に比べて検査時間が短くて済む。特に、 検査対象領域がセンサ直下であれば、センサを固定し て探傷することが可能である。しかし、ある程度広いPositions of matrix array probe55 -分布をより正確に把握することができる利点も 本稿では、テストピースを用い、複数測定デー の3次元画像生成について検討した結果を述べ 領域を検査する場合には、従来と同様にセンサを走査 して探傷する必要がある。この際、各センサ位置で得 られた測定データから個別に3次元画像を生成して評 価することも可能であるが、測定データをまとめて一 つの3次元画像を合成できれば、探傷領域の全体像を 把握することができる。特に発電プラント内の検査対 象機器は大型のものが多く、この技術により検査が効 率的に実施できる。また同一領域を複数の方向から測 定し、それらを合成して3次元画像を生成すれば、反 射源の分布をより正確に把握することができる利点も ある。本稿では、テストピースを用い、複数測定デー タからの3次元画像生成について検討した結果を述べ10る。Test piece3.結果と考察センサ位置を固定して得られた単一の3次元走査デ ータから画像を生成する技術は既に報告済みである [2][3][4]。 異なるセンサ位置で得られた測定データであ っても、超音波の入射点座標と入射方向が分かれば画 像を合成することが可能である。これに関し、テスト ピースを用いて検討を行った結果を以下に示す。50|50把握することができる。特に発電プラント内の検査対 象機器は大型のものが多く、この技術により検査が効 率的に実施できる。また同一領域を複数の方向から測 定し、それらを合成して3次元画像を生成すれば、反 射源の分布をより正確に把握することができる利点も ある。本稿では、テストピースを用い、複数測定デー タからの3次元画像生成について検討した結果を述べ る。い3.結果と考察センサ位置を固定して得られた単一の3次元走査デ ータから画像を生成する技術は既に報告済みである [2][3][4]。異なるセンサ位置で得られた測定データであ っても、超音波の入射点座標と入射方向が分かれば画 像を合成することが可能である。これに関し、テスト ピースを用いて検討を行った結果を以下に示す。3.1 平底穴テストピース 平底穴(FBH: Flat Bottom Hole)を施したステンレス製 テストピース(Fig.2)の複数位置にセンサを設置して 試験を行った結果を示す。用いたマトリクスアレイセ から画像を生成する技術は既に報告済みである ][4]。 異なるセンサ位置で得られた測定データであ も、超音波の入射点座標と入射方向が分かれば画2 FBH。。105 mm1000(b)01 FBH100Fig.3 (a) Po, P1, P2, P3 and P4 indicate the probe positions for the rotational sector scan. The scan was performed at each position in order. (b) 3D ultrasonic testing image of FBHs.Fig.2 FBH test piece.5 mm- 56 -ンサは 2MHz、256 素子 (16×16)であり、走査方法は いずれの位置でも±30°のセクタを 7.5 ° ピッチで 1/2 回転させる走査法である。焦点距離は約 50mm に設 定した。テストピース上面および側面4ヶ所(計5ヶ所)に 順次センサを設置してデータを収録し、得られた複数 の測定データから3次元画像を合成した結果を Fig.3 に示す。側面4ヶ所については、センサ中心が FBH の 真横に位置するようにセンサを設置した。焦点距離に 近い、試験体中央付近の FBH のみを画像化している。 5方向からの反射信号を合成することにより、FBH の 立体形状を再現することに成功している。13.2 応力腐食割れテストピース人工的に応力腐食割れ (SCC: Stress Corrosion Cracking)を付与した平板テストピースをSCCと反対面 から3次元探傷した結果を Fig.4 に示す。材質はニッケ ル基合金で板厚は 23mm である。見易さを考慮し、SCC 信号付近のみを3次元画像化してある。破線は画像化Top viewTranslationProbeTranslationSectorFanning Motion (+45deg)(a)5 mm(b)Fig.4 (a) Schematic image of 3D scanning for SCC and (b) 3D ultrasonic image of SCC.範囲を示している。用いたマトリクスアレイセンサは 5MHz、256 素子 (16×16)であり、センサを SCC に 沿う方向に 1mm ピッチで移動させながら測定した。各 位置では頂角 60°のセクタを±45 ° に扇動させてい る。複数方向の反射信号を合成しているため、複雑な SCC のプロファイルに対応した信号強度分布が得られ ている。特に中央付近には端部エコーが現れており、 この付近で最もSCC が深くなっていることを示唆して いる。開口面での SCC 長さは約 30mm であるが、セン サを移動させることにより、このような広範囲の3次 元探傷が可能となっている。4.結言3次元超音波探傷システム 3D Focus-UT を用い、複 数のセンサ位置で取得した測定データを合成して3次 元画像を生成する技術を開発した。本技術により 3D-PA 法での探傷領域を拡大することが出来ると同時 に、同じ領域を多角的に探傷することにより、反射源 の位置や分布を従来より正確に把握することが可能と なる。特に SCC のような屈曲点が多数あるような反射 源には有効であると考えている。今後、本技術を様々 な対象部位に適用し、その有効性を検証していく予定 である。参考文献 [1] 横野 泰和:“フェーズドアレイ UT の適用事例及び標準化の世界的動向”、非破壊検査、Vol.56, No. 10, - pp. 510-515(2008). [2] 馬場淳史、北澤聡、河野尚幸、安達裕二、小田倉満、菊池修:“3次元超音波探傷システム「3DFocus-UT」の開発”、日本保全学会 第5回学術講演 - 会 要旨集、155(2008). [3] 北澤聡、河野尚幸、馬場淳史、安達裕二、小田倉満:“3次元フェーズドアレイ超音波探傷技術”、第 17回 超音波による非破壊評価シンポジウム 講 演論文集、1(2010). [4] 北澤聡、河野尚幸、馬場淳史、安達裕二、小田倉満、菊池修:“3次元フェーズドアレイ超音波探傷シ ステム”、日本工業出版社 検査技術、23 Vol.14 No.2(2009). [5] 公開特許公報(A) 特許出願公開番号 特開 2009-288129.“ “3次元フェーズドアレイ法による超音波探傷技術“ “北澤 聡,So KITAZAWA,河野 尚幸,Naoyuki KONO,馬場 淳史,Atsushi BABA,安達 裕二,Yuji ADACHI,小田倉 満,Mitsuru ODAKURA
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