マイクロ波時間領域測定法を用いた配管減肉計測の周波数依存性
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カテゴリ: 第7回
1.緒言
1. 近年、配管減肉に起因した事故がたびたび報告され ている。安全・安心な社会を構築するため、高経年エ ネルギー機器の状態監視技術の更なる高度化は必要 不可欠である。その中でも、配管の状態監視技術の実 現は、そのニーズが非常に高いにもかかわらず、いま だ確立されていない状況にある。 - これまで円型導波管内マイクロ波の伝播原理に基 づき、マイクロ波を配管内に伝播させ、マイクロ波の 波長が配管の内径に依存する特徴を利用して計測を 行った。この手法は、減肉量に伴い変化する共振周波 数を測定することにより、広範囲、高速かつ簡便に減 肉量を定量評価できる。しかし、この手法では、減肉 の位置を特定することは難しい。そこで、時間領域測 定法を用いることにより減肉位置の評価を試みた。本 研究では、配管内に伝播させるマイクロ波の周波数帯 に対する測定感度の影響を調査し、減肉位置を定量的 に評価することを目的とした。
2. 測定原理 - 時間領域測定とは、ある周波数領域におけるマイク ロ波信号の応答を時間領域に変換する手法であり、マ イクロ波信号の波形の変化からマイクロ波が反射さ れた位置を特定することができる。周波数領域として 得た結果に逆フーリエ変換を適用することで、マイク ロ波が欠陥や端部で反射した時間を測定することが連絡先: 巨陽 名古屋大学大学院工学研究科 〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町 E-mail: ju@mech. nagoya-u.ac.jpできる。配管内径が変化する箇所では、特性インピー ダンスが変化し、マイクロ波が反射される。その反射 波を検知することによって減肉の位置を特定するこ とが可能となる。3.実験方法Fig. 1 はマイクロ波による配管減肉測定システム手 真を示している。本実験では、長さ 900 mm、内径 17 mm、肉厚 1 mm の軸対称の直線銅配管を用いた。配 管の一端は、マイクロ波同軸ケーブルセンサと接続さ れ、もう一端に長さ 17 mm の減肉ジョイント及び長 さ 51 mm の配管延長ジョイントを接続した。減肉ジ ョイントは減肉率の 3 %から 80%のものを使用し た。さらに、マイクロ波信号の反射によって配管端部 の位置を確認するために、脱着可能な金属の短絡キャ ップを装着し、配管端部で短絡端を形成した。Fig. 2 に配管のモデル図を示す。
Fig. 2 Model of a pipe with a wall thinningjoint , extend pipe joint and a cap4.実験結果及び考察 - Fig.3 及びFig. 4, Fig. 5 に 10 MHz~40 GHzのマイク ロ波を伝送した結果、Fig. 6にこれまでの研究で得ら れた、10 MHz~67 GHzのマイクロ波を伝送した結果 について示す。Fig. 3 は 900 mm配管にキャップのみを 装着した結果、Fig. 4 はFig. 3 の 6.0 × 10°~8.0 × 10““ secの部分を拡大した波形である。Fig. 5 は 900 mm配 管に20 %の減肉ジョイント及び配管延長ジョイント、 キャップを装着した結果を示す。Fig. 3 より配管のセ ンサー側端部と減肉ジョイント側端部の反射によ るピークが確認できる。配管のセンサー側端部の最 大ピークは 0.42 nsec、減肉ジョイント側端部の最大 ピークは 7.12 nsecとなった。このマイクロ波の伝播 距離は 1800 mmであるため、今回の配管の内径、伝播 モードによるマイクロ波の伝播速度が求められる。こ の伝播速度を考慮してFig. 5 の丸で囲まれている部分 をFig. 4 の丸で囲まれている部分と比較すると、配管 延長ジョイント端部による反射であることがわかり、 四角で囲まれている 2 つのピークは減肉ジョイント と配管及び配管延長ジョイントとの接続部による反 射であることが確認でき、減肉長さの評価も可能であ る。また、その他の減肉ジョイントを取り付けた場合 の結果も同様の結果となった。 * Fig. 6 は Fig.5 と同じ配管を用い、10 MHz~67 GHz の周波数帯で測定された結果である。丸は端部による 反射、四角は減肉ジョイントによる反射を示す。Fig.5 と Fig.6を比較すると、周波数帯が狭い Fig. 5 の方は ノイズが低減され、減肉ジョイントの両端部における 反射が明瞭となった。さらに、減肉ジョイント側端部 におけるピークが1つになったことで、減肉位置の測 定が容易になった.この原因は Fig. 5 には Fig. 6 より も低周波のマイクロ波を伝播させているため、配管内 を伝播するマイクロ波のモードが少なくなったため だと考えられる。5.結言 - 減肉部による影響が測定可能な分解能を保ちなが ら、ノイズを可能な限り低減させるように選定した周 波数帯を持ったマイクロ波を配管内に伝播させるこ とにより、減肉位置を定量的に評価可能であることが わかった。
“ “マイクロ波時間領域測定法を用いた配管減肉計測の周波数依存性 “ “近藤 佑輔,Yusuke KONDO,細井 厚志,Atsushi HOSOI,巨 陽,Yang JU
1. 近年、配管減肉に起因した事故がたびたび報告され ている。安全・安心な社会を構築するため、高経年エ ネルギー機器の状態監視技術の更なる高度化は必要 不可欠である。その中でも、配管の状態監視技術の実 現は、そのニーズが非常に高いにもかかわらず、いま だ確立されていない状況にある。 - これまで円型導波管内マイクロ波の伝播原理に基 づき、マイクロ波を配管内に伝播させ、マイクロ波の 波長が配管の内径に依存する特徴を利用して計測を 行った。この手法は、減肉量に伴い変化する共振周波 数を測定することにより、広範囲、高速かつ簡便に減 肉量を定量評価できる。しかし、この手法では、減肉 の位置を特定することは難しい。そこで、時間領域測 定法を用いることにより減肉位置の評価を試みた。本 研究では、配管内に伝播させるマイクロ波の周波数帯 に対する測定感度の影響を調査し、減肉位置を定量的 に評価することを目的とした。
2. 測定原理 - 時間領域測定とは、ある周波数領域におけるマイク ロ波信号の応答を時間領域に変換する手法であり、マ イクロ波信号の波形の変化からマイクロ波が反射さ れた位置を特定することができる。周波数領域として 得た結果に逆フーリエ変換を適用することで、マイク ロ波が欠陥や端部で反射した時間を測定することが連絡先: 巨陽 名古屋大学大学院工学研究科 〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町 E-mail: ju@mech. nagoya-u.ac.jpできる。配管内径が変化する箇所では、特性インピー ダンスが変化し、マイクロ波が反射される。その反射 波を検知することによって減肉の位置を特定するこ とが可能となる。3.実験方法Fig. 1 はマイクロ波による配管減肉測定システム手 真を示している。本実験では、長さ 900 mm、内径 17 mm、肉厚 1 mm の軸対称の直線銅配管を用いた。配 管の一端は、マイクロ波同軸ケーブルセンサと接続さ れ、もう一端に長さ 17 mm の減肉ジョイント及び長 さ 51 mm の配管延長ジョイントを接続した。減肉ジ ョイントは減肉率の 3 %から 80%のものを使用し た。さらに、マイクロ波信号の反射によって配管端部 の位置を確認するために、脱着可能な金属の短絡キャ ップを装着し、配管端部で短絡端を形成した。Fig. 2 に配管のモデル図を示す。
Fig. 2 Model of a pipe with a wall thinningjoint , extend pipe joint and a cap4.実験結果及び考察 - Fig.3 及びFig. 4, Fig. 5 に 10 MHz~40 GHzのマイク ロ波を伝送した結果、Fig. 6にこれまでの研究で得ら れた、10 MHz~67 GHzのマイクロ波を伝送した結果 について示す。Fig. 3 は 900 mm配管にキャップのみを 装着した結果、Fig. 4 はFig. 3 の 6.0 × 10°~8.0 × 10““ secの部分を拡大した波形である。Fig. 5 は 900 mm配 管に20 %の減肉ジョイント及び配管延長ジョイント、 キャップを装着した結果を示す。Fig. 3 より配管のセ ンサー側端部と減肉ジョイント側端部の反射によ るピークが確認できる。配管のセンサー側端部の最 大ピークは 0.42 nsec、減肉ジョイント側端部の最大 ピークは 7.12 nsecとなった。このマイクロ波の伝播 距離は 1800 mmであるため、今回の配管の内径、伝播 モードによるマイクロ波の伝播速度が求められる。こ の伝播速度を考慮してFig. 5 の丸で囲まれている部分 をFig. 4 の丸で囲まれている部分と比較すると、配管 延長ジョイント端部による反射であることがわかり、 四角で囲まれている 2 つのピークは減肉ジョイント と配管及び配管延長ジョイントとの接続部による反 射であることが確認でき、減肉長さの評価も可能であ る。また、その他の減肉ジョイントを取り付けた場合 の結果も同様の結果となった。 * Fig. 6 は Fig.5 と同じ配管を用い、10 MHz~67 GHz の周波数帯で測定された結果である。丸は端部による 反射、四角は減肉ジョイントによる反射を示す。Fig.5 と Fig.6を比較すると、周波数帯が狭い Fig. 5 の方は ノイズが低減され、減肉ジョイントの両端部における 反射が明瞭となった。さらに、減肉ジョイント側端部 におけるピークが1つになったことで、減肉位置の測 定が容易になった.この原因は Fig. 5 には Fig. 6 より も低周波のマイクロ波を伝播させているため、配管内 を伝播するマイクロ波のモードが少なくなったため だと考えられる。5.結言 - 減肉部による影響が測定可能な分解能を保ちなが ら、ノイズを可能な限り低減させるように選定した周 波数帯を持ったマイクロ波を配管内に伝播させるこ とにより、減肉位置を定量的に評価可能であることが わかった。
“ “マイクロ波時間領域測定法を用いた配管減肉計測の周波数依存性 “ “近藤 佑輔,Yusuke KONDO,細井 厚志,Atsushi HOSOI,巨 陽,Yang JU