オリフィス下流における流れ加速腐食機構に関する数値的研究
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カテゴリ: 第7回
1.緒言
る. これは減肉量の多い箇所と乱流エネルギーの高 2004年8月美浜原子力発電所3号機の二次系配管 い箇所が比較的良く一致しているという過去の研 が破損する事故が起きた.これは配管減肉によるも 究に基づいている[2]. しかし両者の因果関係は十 のであり,流れ加速腐食機構(FAC)によるものと考 分に明らかになっておらず, 現在も研究が進められ えられている[1]. FAC は水単相流や蒸気-水二相流 ている.そこで,本研究では数値解析を用いてオリ のオリフィス下流やエルボなどの偏流部における フィス下流の流動場を計算し,特に粗面形状の影響 流れの乱れによって,炭素鋼配管内表面に形成され について考察する. るマグネタイトの溶解を加速し,減肉が進行すると いう考え方である. FAC を予測する上で有用な流動 要因の一つとして乱流エネルギーが考えられてい
2.解析条件・計算手法 本研究では STAR-CCM+を用いて三次元非圧縮粘 性流れを取り扱い, オリフィス管径dと円管径Dの 比,すなわち開口率 d/D=0.62 のオリフィス下流(図 1)における乱流場を LES を用いて計算した. また 開口率の異なる d/D=0.7, d/D=0.8 の場合も計算し比 較した.流動実験装置寸法に合わせて円管の直径 をD=0.0453m, オリフィスの直径を d=0.0281m とし た.計算領域は円管入口からオリフィスまでの助走 距離を 45D, オリフィス下流から円管出口までを 20D とし, Re 数は流動実験に一致させ Re=2.5×10^ とした.流入条件は 0.5m/s の一様流, 作動流体は水 (密度 997kg/m2,粘性係数 8.8×10“Pas,温度 298K) と設定した.壁は静止壁とし,格子数は約 620 万点, 格子形状はポリヘドラルとして, 壁付近はプリズム レイヤーメッシュを用いて壁から1層目までの距 離を 1.69×10m, 層数 8, 伸張係数 1.2 とした. サブ グリッドスケールモデルには Wale Subgrid Scale を 用いた.また, 図2に示すような粗面形状をオリフィス 下流の配管に設置した. 粗面形状は、オリフィス下 流に同心円状のリブを設置することにより形成し た. リブ高さは配管径の 2.5%とし、幅は 5%とし た. リブどうしの間隔は 0.05D として、下流 x/D=3 までリブを設けた.3.結果図3に流れ方向平均速度の等値面を示す. オリフ ィス直下では噴流のような早い流れが形成され, 壁 近くでは上流に向かう逆流が形成される.開口比p が小さいほどオリフィス部で流れは大きく加速さ れ、その影響の及ぶ範囲も開口比Bが小さいほど下 流に及んでいる.壁近くではいずれの開口比におい ても逆流領域が形成され、開口比率が小さいほど大 きな領域となっている.図4に乱流エネルギー分布を示す.オリフィス先 端で 剥離した流れが, 乱流エネルギーの大きな領 域を形成している. 乱流エネルギーが最大となる位 置は, 壁から y/D~0.2 までほぼ一定である.開口比Bが小さいほど、乱流エネルギーのピークは下流に できている.また、開口比 B=0.8 の場合には、中 心部の流れはオリフィスの影響をほとんど受けて いないことがわかった.図5に開口比 =0.62 における乱流エネルギーの 分布を壁からの距離別に流れ方向に対してプロッ トした.流動実験では, y/D = 0.2 においては x /D 三1で乱流エネルギーは最大値を示した[3]. しかし、 数値計算の結果では、同一開口比でも乱流エネルギ ーが最大となる位置はx/Do 2 となり,流動実験 と異なる結果となった. また,図6に示すように、壁に近いy/D-0.00038 に おいても乱流エネルギーのピークは他の壁からの 無次元距離と同様に x/ D22 となった.図7に粗面の場合の流れ方向平均速度の等値面 を示した. 滑面の場合と比較すると、粗面の影響は 壁近くの上流へ向かう逆流を弱める効果がうかが えた.そのため、中心部の速い流速の領域が外壁側 に広がってることが観察された. * 図 8 に粗面の場合の乱流エネルギー分布を示し た. 滑面に比べ,逆流領域の流れが抑制されること から、オリフィスの下流部での乱流エネルギーは小 さな値をとっていた.従って,オリフィス近くでは 乱流エネルギーは小さくなり,その最大値も滑面に 比べて約 18%小さくなっている. 図9は,粗面の場合の乱流エネルギーの分布を壁 からの距離別に流れ方向に対してプロットした. 粗 面は乱流エネルギーのピークが滑面よりやや下流 側に移っているが, 壁からの距離に依存せず乱流エ ネルギーのピークが x/D=2 付近に存在している滑 面と比べ, 粗面は壁に近づくにつれ、乱流エネルギ ーのピークが下流側へ移っているという違いが見 られた. 実機は滑面ではなく,鱗片状粗面が形成されてお り, この結果を考慮すると乱流エネルギーの分布か ら物質伝達率の分布を予測することは困難である と考えられる。1901/08/094. まとめ (1)乱流エネルギーの分布はオリフィス開口比Bに 依存した位置でその最大値を示す.しかしその位置 は滑面の場合,壁近くではほとんど変わらない. (2)粗面形状では,乱流エネルギーが最大を示す位 置は壁からの距離によって変化する.従って粗面に おいては乱流エネルギーの分布のみから物質伝達 率の分布を予測することは困難と考えられる.5. 参考文献 [1] 関西電力株式会社, 美浜発電所 3 号機「2次系配管破断事故」発生原因の調査について(2004) [2] 稲田文夫,“軽水炉冷却材流れが構造に及ぼす影響に関する研究動向““, ながれ 27, (2008) [3] 米田公俊, 森田良,“流れ加速腐食に対する影 響因子の定量的な評価(その 1)-流体力学因子と減 肉率の相関““,電力中央研究所報告, 4-9 (2008)謝辞 謝辞 :本研究は、原子力安全・保安院の高経年化 対策強化基盤整備事業からの援助を受け, INSS か らの受諾研究として実施しました. おいては乱流エネルギーの分布のみから物質伝達Hammemem mamaリブ間隔LDL 3D図1. 流動場(滑面)図 2. 流動場(粗面)3107/06/01CB130Vansyamal さいたま...000iu開口比p = 0.62バックダンスYoon cryomi1900/01/01 2:42:43開口比B%3D0.7トップホップダンスのもっともに23店のうちのに ランデーシーラーマシーンいか/ A11900/01/020開口比B = 0.8図 3. 流れ方向平均速度等値面- 588 -1911/03/25 2:52:48.12.00-43125ccernateクーラー開口比B = 0.622009/07/16 2:52:481.20138888888889E-022040/06/15開口比B%3D0.74.131012007:237_50003115,001900/01/01o r277a開口比p=0.8図 4. 乱流エネルギー等値面0.15Re-25000 dD=0.62Turbulence energy000NYL LLLLLLLLY .. 01. 02. 03.0 405.06.0 ?.y/D=0.2XDay/D=0.1図 5. 乱流エネルギー分布 B=0.62(滑面).y/D-0.05 マv/D=0.01Turbulence energy(m*s*9)02.5E-06 2.0E-06 1.5E-06 1.0E-06 5.0E-07 0.0E+0002 14 680図 6. 壁面近傍(y/D=0.00038)乱流エネルギー分布- 589 -開口比 B = 0.62suitentitlelieversist/reseasussyicdCOMTOPHY 13TOYオーナーFE会計時110275-100107730Mean of Vislacity.k) (m/s),4121_ 087110図 7. 流れ方向平均速度コンター(粗面)1900/01/22開口比p = 0.62いわTE5103.113a027250,0005305 56ad009/1904/09/10図 8. 乱流エネルギーコンター(粗面)0.15 TTTRe-25000 dD=0.62 rough wallTurbulence energy000m 10. 01. 02. 03. 04. 05.1900/01/05xD.D=0.2図 9. 乱流エネルギー分布 (粗面,開口比 =0.62)a :yD=0.1 * yD=0.05 マ.y/D=0.01590 -
“ “オリフィス下流における流れ加速腐食機構に関する数値的研究-壁面近傍流れにおける数値解析“ “七條 慎太郎,Shintaro SHICHIJO,古谷 真伍,Shingo HURUYA,近藤 昌也,Masaya KONDO,辻 義之,Yoshiyuki TSUJI
る. これは減肉量の多い箇所と乱流エネルギーの高 2004年8月美浜原子力発電所3号機の二次系配管 い箇所が比較的良く一致しているという過去の研 が破損する事故が起きた.これは配管減肉によるも 究に基づいている[2]. しかし両者の因果関係は十 のであり,流れ加速腐食機構(FAC)によるものと考 分に明らかになっておらず, 現在も研究が進められ えられている[1]. FAC は水単相流や蒸気-水二相流 ている.そこで,本研究では数値解析を用いてオリ のオリフィス下流やエルボなどの偏流部における フィス下流の流動場を計算し,特に粗面形状の影響 流れの乱れによって,炭素鋼配管内表面に形成され について考察する. るマグネタイトの溶解を加速し,減肉が進行すると いう考え方である. FAC を予測する上で有用な流動 要因の一つとして乱流エネルギーが考えられてい
2.解析条件・計算手法 本研究では STAR-CCM+を用いて三次元非圧縮粘 性流れを取り扱い, オリフィス管径dと円管径Dの 比,すなわち開口率 d/D=0.62 のオリフィス下流(図 1)における乱流場を LES を用いて計算した. また 開口率の異なる d/D=0.7, d/D=0.8 の場合も計算し比 較した.流動実験装置寸法に合わせて円管の直径 をD=0.0453m, オリフィスの直径を d=0.0281m とし た.計算領域は円管入口からオリフィスまでの助走 距離を 45D, オリフィス下流から円管出口までを 20D とし, Re 数は流動実験に一致させ Re=2.5×10^ とした.流入条件は 0.5m/s の一様流, 作動流体は水 (密度 997kg/m2,粘性係数 8.8×10“Pas,温度 298K) と設定した.壁は静止壁とし,格子数は約 620 万点, 格子形状はポリヘドラルとして, 壁付近はプリズム レイヤーメッシュを用いて壁から1層目までの距 離を 1.69×10m, 層数 8, 伸張係数 1.2 とした. サブ グリッドスケールモデルには Wale Subgrid Scale を 用いた.また, 図2に示すような粗面形状をオリフィス 下流の配管に設置した. 粗面形状は、オリフィス下 流に同心円状のリブを設置することにより形成し た. リブ高さは配管径の 2.5%とし、幅は 5%とし た. リブどうしの間隔は 0.05D として、下流 x/D=3 までリブを設けた.3.結果図3に流れ方向平均速度の等値面を示す. オリフ ィス直下では噴流のような早い流れが形成され, 壁 近くでは上流に向かう逆流が形成される.開口比p が小さいほどオリフィス部で流れは大きく加速さ れ、その影響の及ぶ範囲も開口比Bが小さいほど下 流に及んでいる.壁近くではいずれの開口比におい ても逆流領域が形成され、開口比率が小さいほど大 きな領域となっている.図4に乱流エネルギー分布を示す.オリフィス先 端で 剥離した流れが, 乱流エネルギーの大きな領 域を形成している. 乱流エネルギーが最大となる位 置は, 壁から y/D~0.2 までほぼ一定である.開口比Bが小さいほど、乱流エネルギーのピークは下流に できている.また、開口比 B=0.8 の場合には、中 心部の流れはオリフィスの影響をほとんど受けて いないことがわかった.図5に開口比 =0.62 における乱流エネルギーの 分布を壁からの距離別に流れ方向に対してプロッ トした.流動実験では, y/D = 0.2 においては x /D 三1で乱流エネルギーは最大値を示した[3]. しかし、 数値計算の結果では、同一開口比でも乱流エネルギ ーが最大となる位置はx/Do 2 となり,流動実験 と異なる結果となった. また,図6に示すように、壁に近いy/D-0.00038 に おいても乱流エネルギーのピークは他の壁からの 無次元距離と同様に x/ D22 となった.図7に粗面の場合の流れ方向平均速度の等値面 を示した. 滑面の場合と比較すると、粗面の影響は 壁近くの上流へ向かう逆流を弱める効果がうかが えた.そのため、中心部の速い流速の領域が外壁側 に広がってることが観察された. * 図 8 に粗面の場合の乱流エネルギー分布を示し た. 滑面に比べ,逆流領域の流れが抑制されること から、オリフィスの下流部での乱流エネルギーは小 さな値をとっていた.従って,オリフィス近くでは 乱流エネルギーは小さくなり,その最大値も滑面に 比べて約 18%小さくなっている. 図9は,粗面の場合の乱流エネルギーの分布を壁 からの距離別に流れ方向に対してプロットした. 粗 面は乱流エネルギーのピークが滑面よりやや下流 側に移っているが, 壁からの距離に依存せず乱流エ ネルギーのピークが x/D=2 付近に存在している滑 面と比べ, 粗面は壁に近づくにつれ、乱流エネルギ ーのピークが下流側へ移っているという違いが見 られた. 実機は滑面ではなく,鱗片状粗面が形成されてお り, この結果を考慮すると乱流エネルギーの分布か ら物質伝達率の分布を予測することは困難である と考えられる。1901/08/094. まとめ (1)乱流エネルギーの分布はオリフィス開口比Bに 依存した位置でその最大値を示す.しかしその位置 は滑面の場合,壁近くではほとんど変わらない. (2)粗面形状では,乱流エネルギーが最大を示す位 置は壁からの距離によって変化する.従って粗面に おいては乱流エネルギーの分布のみから物質伝達 率の分布を予測することは困難と考えられる.5. 参考文献 [1] 関西電力株式会社, 美浜発電所 3 号機「2次系配管破断事故」発生原因の調査について(2004) [2] 稲田文夫,“軽水炉冷却材流れが構造に及ぼす影響に関する研究動向““, ながれ 27, (2008) [3] 米田公俊, 森田良,“流れ加速腐食に対する影 響因子の定量的な評価(その 1)-流体力学因子と減 肉率の相関““,電力中央研究所報告, 4-9 (2008)謝辞 謝辞 :本研究は、原子力安全・保安院の高経年化 対策強化基盤整備事業からの援助を受け, INSS か らの受諾研究として実施しました. おいては乱流エネルギーの分布のみから物質伝達Hammemem mamaリブ間隔LDL 3D図1. 流動場(滑面)図 2. 流動場(粗面)3107/06/01CB130Vansyamal さいたま...000iu開口比p = 0.62バックダンスYoon cryomi1900/01/01 2:42:43開口比B%3D0.7トップホップダンスのもっともに23店のうちのに ランデーシーラーマシーンいか/ A11900/01/020開口比B = 0.8図 3. 流れ方向平均速度等値面- 588 -1911/03/25 2:52:48.12.00-43125ccernateクーラー開口比B = 0.622009/07/16 2:52:481.20138888888889E-022040/06/15開口比B%3D0.74.131012007:237_50003115,001900/01/01o r277a開口比p=0.8図 4. 乱流エネルギー等値面0.15Re-25000 dD=0.62Turbulence energy000NYL LLLLLLLLY .. 01. 02. 03.0 405.06.0 ?.y/D=0.2XDay/D=0.1図 5. 乱流エネルギー分布 B=0.62(滑面).y/D-0.05 マv/D=0.01Turbulence energy(m*s*9)02.5E-06 2.0E-06 1.5E-06 1.0E-06 5.0E-07 0.0E+0002 14 680図 6. 壁面近傍(y/D=0.00038)乱流エネルギー分布- 589 -開口比 B = 0.62suitentitlelieversist/reseasussyicdCOMTOPHY 13TOYオーナーFE会計時110275-100107730Mean of Vislacity.k) (m/s),4121_ 087110図 7. 流れ方向平均速度コンター(粗面)1900/01/22開口比p = 0.62いわTE5103.113a027250,0005305 56ad009/1904/09/10図 8. 乱流エネルギーコンター(粗面)0.15 TTTRe-25000 dD=0.62 rough wallTurbulence energy000m 10. 01. 02. 03. 04. 05.1900/01/05xD.D=0.2図 9. 乱流エネルギー分布 (粗面,開口比 =0.62)a :yD=0.1 * yD=0.05 マ.y/D=0.01590 -
“ “オリフィス下流における流れ加速腐食機構に関する数値的研究-壁面近傍流れにおける数値解析“ “七條 慎太郎,Shintaro SHICHIJO,古谷 真伍,Shingo HURUYA,近藤 昌也,Masaya KONDO,辻 義之,Yoshiyuki TSUJI