ステンレスにおける水素同位体透過挙動の解明

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カテゴリ: 第7回
1. 緒言
定数の導出を行うことでトリチウム透過に向けての 1 原子力施設において、様々な核反応過程により生成データベースを構築することを目的とした。 するトリチウムは、原子力施設の主要な構造材である ステンレス材料を透過・拡散し、環境中に放出されるステンレス試料 ことが知られており、Fig.1 のような過程を経て放出 されることが予想される。ここで、透過したトリチウ再結合 ムが水形(H,0)の化学種に変化することで人体への影 響が大きくなることが報告されている。また、ステン溶解 レス材料は表面に酸化層を形成し、ステンレス中を透 過した水素同位体が表面酸化層において捕捉・脱捕捉拡散、 などの相互作用を通し、水形にて放出することが考え られ、原子力エネルギーの社会的受容性の向上および水形 安全性の観点からステンレス材料におけるトリチウ ムの透過挙動を明らかにすることが必要である。そこ1 :水素同位体 で、本研究では、原子力施設で広く用いられている
: 酸化膜中の酸素 SS316に対して水素同位体透過実験を行い、透過挙動
Fig.1 Model of permeation process 原子力エネルギーの社会的受容性の向上およ で、本研究では、原子力施設で広く用いられている。 SS316に対して水素同位体透過実験を行い、透過挙動
2. 実験手法- 透過実験を行う際のステンレス試料としてニラコ 株式会社製 SS316(0.1 mm)を用い、静岡大学に設置さ れた透過回収分析システムにて水素同位体である重 水素透過実験を行った。金属材料中に溶解する水素同 位体量はジーベルトの法則により見積もることがで き、同様にステンレスにも適応できる。ジーベルト則 は以下の式で表わされる。J-SWP-UP)ここで、J は水素同位体透過量、S が表面積、Koが 透過係数、dが試料厚、P,がガス導入圧力、Pが試料 透過圧力を示している。化学系および透過の活性化エ ネルギー算出のために重水素曝露温度依存性実験を、 水素同位体におけるジーベルト定数および透過係数 の算出を目的とし重水素曝露圧力依存性実験を行っ た。2.1 重水素曝露圧力依存性実験初めに不純物除去を目的として加熱温度 673 Kとして 加熱処理を真空下にて行った。その後試料温度を 673 K と固定し、曝露圧力を 0.05-100 Pa に変化させ、重 水素透過挙動を四重極質量分析計(QMS)を用いて観 測した。2.2 重水素曝露温度依存性実験上の実験と同様に不純物除去を目的とした加熱処理 を行った後、曝露圧力を 100 Pa に固定し、試料温度 を 423-673 Kに変化させて重水素透過挙動の観測を行 った。3.実験結果3.1 重水素曝露圧力依存性実験- Fig.2 に重水素圧力 100 Pa、試料温度 673 K におけ」 る透過重水素の各化学形を示す。
Fig.2 Chemical forms of permeated deuteriumFig.2 の結果より透過重水素の化学形はほとんどがガ ス系(H,)で表面酸化層における酸素と結合して放出し ないことが明らかとなった。また Fig.3 に各曝露圧力 における重水素透過量のジーベルト則のフィッティ ングを示す。
Pressure''? / Pa'2 Fig.3 The amount of permeated deuterium with thefitting results using Siebert rule この結果、ステンレスに対する重水素透過はジーベル ト則に従い、673 K のステンレスに対するジーベルト 定数は 4.95×10'' mol m's Pa' であることが明らか! となった。3.2 重水素曝露温度依存性実験- 本実験においても透過重水素の化学形はほとんど がガス形であることが明らかとなり、重水素透過に関 して表面酸化膜における酸素と重水素が結合し水形 として放出することはほとんどないことが明らかと なった。ここで 3.1 にて求めた透過係数よりアレニウ スの式を用いて活性化エネルギーの算出を行った。 Fig.4 に各圧力における透過係数に対するアレニウス プロットを示す。
することが明らかとなった。フィッティング式を以下 に示す。
以上の式により各温度における重水素透過量を見積 もることが可能ということが示唆された。
4. 総括
本実験の結果より透過重水素の化学形はほとんど
Fig.4 Arrhenius plot to the permeation constant at pressuredependence experimentFig.4 の結果より、温度変化による透過量の変化によ い相関性がみられ、ステンレスに対する重水素の透過 における活性化エネルギーは 0.30±0.01 eV となり、 C. San Marchi らの報告したステンレスに対する重水 素透過の活性化エネルギーと比べおよそ半分の値を 示した。 また彼らは、重水素と水素におけるエネル ギーの関係として水素のエネルギーは重水素の 2 の 平方根倍に比例することを示しており、重水素のエネ ルギーが明らかになることによって他の水素同位体 のエネルギーおよび透過量を見積もることができる ことが示唆された。 また Fig.5 に各温度における重水素透過量プロットお よびフィッティングを示す。
Fig.5 The amount of permeated deuterium with elevatedtemperature試料温度を変化させた際の重水素透過量は、フィッテ ィングの結果、試料温度上昇に伴い指数関数的に上昇以上の式により各温度における重水素透過量を見積 もることが可能ということが示唆された。4. 総括1. 本実験の結果より透過重水素の化学形はほとんど がガス形であることが明らかとなった。この結果より、 ステンレス表面の酸化膜は温度領域673 K以下におい て、拡散してきた重水素と表面再結合することはなく、 ステンレス中を拡散してきた重水素は、酸化膜中にお いても同様に拡散し、透過した重水素はパージ側の表 面にて重水素と再結合をし、ガス形で放出されている ことが示唆された。また今回の結果より、ステンレス におけるトリチウム透過時の化学形が明らかとなり、 透過量を見積もることが可能であることが示唆され た。このことよりステンレスに対するトリチウム透過 における安全性の評価が可能であることが考えられ る。参考文献[1] C.San Marchi, B.P.Somerday, S.L.Robinson “Permeation, solubility and diffusivity of hydrogen isotopes in stainless steels at high gass pressures” International Journal of Hydrogen Energy, 32, 100-116 (2007)593“ “ステンレスにおける水素同位体透過挙動の解明“ “押尾 純也,Junya OSUO,倉田 理江,Rie KURATA,小林 真,Makoto KOBAYASHI,鈴木 優斗,Masato SUZUKI,王 万景,Wanjing WANG,大矢 恭久,Yasuhisa OYA,奥野 健二,Kenji OKUNO
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