渦電流探傷試験による応力腐食割れの深さサイジングに対するき裂分岐構造と充填酸化物の影響評価

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カテゴリ: 第7回
1.緒言
物を系統的に充填し、その酸化物の違いによる渦 信号の差異を確認する。これらの結果を考慮して * 渦電流探傷試験は、表面き裂に対して高い感度を有の電磁応答モデルを検討する。 することから、原子力発電設備構造物の非破壊検査に
2. 試験片 適用されている。しかし、その対策が課題となってい る応力腐食割れ(SCC)は、渦電流探傷試験によって。 1. 本研究では SCC や疲労き裂を導入するため、 SCC の深さを正確に評価することは困難である。SCC に示す WOL(Wedge Opening Loading)試験片を
物を系統的に充填し、その酸化物の違いによる渦電流 1. 緒言信号の差異を確認する。これらの結果を考慮して SCC 渦電流探傷試験は、表面き裂に対して高い感度を有。 の電磁応答モデルを検討する。 SCC の深さを正確に評価することは困難である。SCC は複雑なき裂分岐構造を持ち、さらにき裂中に充填酸 化物が存在するためにき裂面の接触状態が複雑である ことに起因していると考えられる。この問題を克服す るために、いくつかの SCC の電磁応答モデルが提案さ
物を系統的に充填し、その酸化物の違いによる渦電流 1.緒言信号の差異を確認する。これらの結果を考慮して SCC 渦電流探傷試験は、表面き裂に対して高い感度を有の電磁応答モデルを検討する。 することから、原子力発電設備構造物の非破壊検査に2. 試験片 適用されている。しかし、その対策が課題となってい る応力腐食割れ(SCC)は、渦電流探傷試験によって 本研究では SCC や疲労き裂を導入するため、図 1 SCC の深さを正確に評価することは困難である。SCC に示す WOL(Wedge Opening Loading)試験片を作製 は複雑なき裂分岐構造を持ち、さらにき裂中に充填酸 した。供試材にはオーステナイト系ステンレス鋼 化物が存在するためにき裂面の接触状態が複雑である SUS316 を用いた。化学組成を表 1 に示す。試験片の ことに起因していると考えられる。この問題を克服す。形状は応力腐食割れ標準試験法基準[2]を基にした。ノ るために、いくつかの SCC の電磁応答モデルが提案さ ッチ先端はワイヤカットにより 2mm 延伸した。WOL れている。しかし、SCC のき裂分岐構造と充填酸化物 試験片に SCC を導入するために、ノッチ先端に疲労試 の影響と整合した電磁応答モデルは提案されていない 験により予き裂を導入した。その後、図2に示すように過重負荷用のボルトとピンを用いて試験片のノッチ そこで本研究では、SCC の深さサイジングにおける先端に負荷をかけ、その状態でチオ硫酸ナトリウム 電磁応答モデルを提案するために、渦電流探傷試験に (Na,S,O,)水溶液(0.5mol/L)に浸し,SCC を導入し よる深さサイジングの主要なノイズ因子と考えられるた。また、電磁応答の SCC の比較や充填酸化物の検討 SCC のき裂分岐構造と充填酸化物の影響を評価する。 のために、疲労試験によって疲労き裂を導入した試験 そのためにき裂分岐構造を持つ SCC を導入した試験片を2個それぞれ作製した。導入した SCC と疲労き裂 片を作製し、き裂分岐構造の有無による渦電流信号の を撮影した写真を図 3、4に示す。試験片表面での SCC 差異を確認する。また、SCC のき裂中の充填酸化物のの長さは約 12mm である。疲労き裂については、試験 影響を検討する前段階として、単純な疲労き裂に酸化片をき裂に垂直に切断し、確認したところ、No.1 は約
れている。しかし、SCC のき裂分岐構造と充填酸化物 の影響と整合した電磁応答モデルは提案されていない SCC のき裂分岐構造と充填酸化物の影響を評価する。 そのためにき裂分岐構造を持つ SCC を導入した試験 片を作製し、き裂分岐構造の有無による渦電流信号の 差異を確認する。また、SCC のき裂中の充填酸化物の
Fig. 1 Schematic drawing of WOL specimen.Fig.2 WOL specimen with the loading bolt and pin.6mm、No.2 は 8mm であった。 3. SCC に対する渦電流3. SCC に対する渦電流探傷試験SCC と疲労き裂を導入した試験片に対して、渦電流 探傷装置(アスワン電子販売社、ASSORT PCI)と渦 電流プローブを用いて、渦電流探傷試験を行った。過 電流探傷装置は、周波数出力範囲が 500Hz~2MHz、励 磁電圧が 4.8V である。図5に使用する渦電流プローブ を示す。渦電流プローブはコイル径 5mm、高さ 3mm の自己誘導自己比較型プローブである。コイルの巻き 数は 337 回である。試験前には、幅 0.5mm、深さ 2mm の2次元スリットを持つ SUS316 の校正用試験片を用 いて、そのスリット上を走査した際の渦電流信号が、 振幅が 1V、位相が 90°になるように校正を行った。
Fig.6 Comparison of EC signals between SCC andfatigue crack.疲労き裂中の充填酸化物の影響の検討 4.1 酸化膜に対する渦電流探傷試験充填酸化物の影響の評価の予備試験として、試験片 表面に付着する酸化膜の渦電流探傷試験における影響 を評価した。そのために、SUS316のブロック試験片(30 ×30×20mm)に、電気炉を用いて加熱温度と加熱時間 を変化させ、様々な酸化膜を導入した。400°C-4h、450°C -2h、500C-2h、550°C-2h、600C-2h、650C-2h、620°C図6にプローブをき裂中央付近で、垂直に走査した 際の SCC と疲労き裂 No.2 の渦電流信号である。図7 から SCC に対する渦電流信号は、疲労き裂と比べて、 非常に小さいことがわかった。今後、き裂分岐構造の 有無による渦電流信号の差異を確認する。
4.疲労き裂中の充填酸化物の影響の検討
4.1 酸化膜に対する渦電流探傷試験 - 充填酸化物の影響の評価の予備試験として、試験片 表面に付着する酸化膜の渦電流探傷試験における影響 を評価した。そのために、SUS316のブロック試験片(30 ×30×20mm)に、電気炉を用いて加熱温度と加熱時間 を変化させ、様々な酸化膜を導入した。400°C-4h、450°C -2h、500°C-2h、550°C-2h、600°C-2h、650°C-2h、620°C -24hの7条件で、大気中で加熱した。その後、それらの 試験片に対して渦電流探傷試験を行った。装置と校正 条件については、3章と同様である。図7にその際の渦電流信号を示す。それらは疲労き裂 に対する渦電流信号の値と比べて非常に小さく、それ ぞれの試験片についてほとんど変化していないことが わかった。 4.2 疲労き裂に対する渦電流探傷試験 1. 疲労き裂を導入した2つの試験片に対して、渦電流 探傷試験を行った。装置と校正条件については、3 章 と同様である。試験後、電気炉を用いて、No.1 は 450°C -2h、No.2 は 600C-24h の条件で、大気中で加熱し、疲 労き裂に酸化物を布埴した酸化物を本植した後計 ぞれの試験片についてほとんど変化していないこ わかった。 4.2 疲労き裂に対する渦電流探傷試験疲労き裂を導入した2つの試験片に対して、 探傷試験を行った。装置と校正条件については、 と同様である。試験後、電気炉を用いて、No.1 は -2h、No.2 は 600°C-24h の条件で、大気中で加熱 -2h、No.2 は 600°C-24h の条件で、大気中で加熱し、疲 労き裂に酸化物を充填した。酸化物を充填した後,試 験片の表面を研磨し,同条件で渦電流探傷試験を行っ -24hの7条件で、大気中で加熱した。その後、それらの 試験片に対して渦電流探傷試験を行った。装置と校正 条件については、3章と同様である。図7にその際の渦電流信号を示す。それらは疲労き裂 に対する渦電流信号の値と比べて非常に小さく、それ ぞれの試験片についてほとんど変化していないことが わかった。 4.2 疲労き裂に対する渦電流探傷試験 1疲労き裂を導入した2つの試験片に対して、渦電流 探傷試験を行った。装置と校正条件については、3 章 と同様である。試験後、電気炉を用いて、No.1 は 450°C -2h、No.2 は 600C-24h の条件で、大気中で加熱し、疲 労き裂に酸化物を充填した。酸化物を充填した後,試 験片の表面を研磨し,同条件で渦電流探傷試験を行っ た.き裂先端付近で垂直に20mm走査した際の酸化物充 填前後の渦電流信号を図8に示す。どちらの試験片につ いても、酸化物の充填前後で有意な渦電流信号に変化 が見られた。これにより、き裂内部の充填酸化物によ り、渦電流信号が変化することがわかった。また、試 験片の加熱条件によって、その変化の仕方が異なるこ とがわかった 4.3 疲労き裂中の充填酸化物の分析 * 渦電流探傷試験後、それぞれの試験片を疲労き裂に 対して垂直に切断し、疲労き裂破面の酸化物に対して、 ラマン分光分析を行い、酸化物の同定を行った。ラマ ン分光測定装置(JOBIN YVON社)は、波長が632.8mm のレーザー光とCCD検出器から構成される。ラマン分
(b) No.2 Fig.8 EC signals for each fatigue crack before and afterfilling oxides.
き裂先端付近で垂直に20mm走査した際の酸化物充 填前後の渦電流信号を図8に示す。どちらの試験片につ いても、酸化物の充填前後で有意な渦電流信号に変化」 が見られた。これにより、き裂内部の充填酸化物によ 填前後の渦電流信号を図8に示す。どちらの試験片につ いても、酸化物の充填前後で有意な渦電流信号に変化 が見られた。これにより、き裂内部の充填酸化物によ り、渦電流信号が変化することがわかった。また、試 験片の加熱条件によって、その変化の仕方が異なるこ とがわかった。 4.3 疲労き裂中の充填酸化物の分析 * 渦電流探傷試験後、それぞれの試験片を疲労き裂に 対して垂直に切断し、疲労き裂破面の酸化物に対して、 ラマン分光分析を行い、酸化物の同定を行った。ラマ ン分光測定装置(JOBIN YVON社)は、波長が632.8mm のレーザー光とCCD検出器から構成される。ラマン分
(b) No.2 Fig.8 EC signals for each fatigue offilling oxides.とがわかった。 4.3 疲労き裂中の充填酸化物の分析渦電流探傷試験後、それぞれの試験片を疲労き裂に 対して垂直に切断し、疲労き裂破面の酸化物に対して、 ラマン分光分析を行い、酸化物の同定を行った。ラマ ン分光測定装置(JOBIN YVON社)は、波長が632.8mm Fig. 7 EC signals of oxide films of each specimen. Fig.8 EC signals for each fatigue crack before and after - 619 -光計の入射口には光学顕微鏡が設置してあり、測定に は 50 倍のレンズを用いた。それぞれの試験片の疲労き裂中の酸化物のラマンス ペクトルを図9に示す。図 9 中の(1)、(2)は、試験片 No.1、(3)、(4)は試験片 No.2 の疲労き裂中の酸化物の ものである。場所によって酸化物が異なる可能性があ るので、それぞれ2箇所ずつ示した。 (1)、(2)の 300cm 以下及び 400cm'付近に見られる3 つの強いピークは a-Fe,O,だと考えられる。大気中で酸化した場合の酸化 膜はa-Fe2O, と Fe,O』で構成されることが知られている ので[3]、いずれの試験片についても 670~700cm”にか けてのピークには Fe,O』は含まれており、NiFe2O』、 FeCr2O』が混在しているものと考えられる。(1)の 730cm' 付近にある肩の部分は、y-Fe,O, と推定され、 これはFe,O』がa-Fe,O,に変化する過程に見られるもの である[4]。これらのことから、(a)には非磁性体であるa-Fe,O, が、(b)には磁性体であるFe,Oが多く含まれると考えら れ、それらが渦電流信号に変化をもたらしたものと推 定される。今後、SCCへの充填酸化物についても検討 を行う。5.結言本研究では、応力腐食割れの深さサイジングにおけ る電磁応答モデルを提案することを最終的な目標とす る.そのために,SCC に対する渦電流探傷試験,試験 体表面の酸化膜及び内部に酸化物を充填した疲労き裂 に対して渦電流探傷試験を行った。また、充填酸化物 に対してラマン分光分析を行った。これらのことから、以下の知見を得た. 11. SCC に対する渦電流信号は、疲労き裂と比べ、非常に小さいことを確認した。今後、き裂分岐 構造の有無による渦電流信号の差異を確認する。 2. 試験体表面の酸化膜の渦電流信号への影響はき裂の信号と比べて、非常に小さいことを確認 した。また、疲労き裂への酸化物の充填前後で、 渦電流信号に有意な変化が見られた。その酸化 物によって変化の仕方も異なることを確認し た。今後 SCC への充填酸化物の影響についても検討する。 これらの結果を踏まえて、電磁応答モデリングを行」 い,実験結果と比較し,その有効性を検討する.
「謝辞本研究を進める上で、試験片及び治具の作製、実験 装置の操作についてご協力頂いた、東北大学流体科学 研究所渡邉勉技術職員、高橋喜久雄技術職員、佐藤武 志技術職員、浦山良一産学官連携研究員に感謝の意を 表します。 参考文献 [1] N. Yusa, H. Hashizume, “Evaluation of stress corrosion cracking as a function of its resistance to eddy currents,” Nuclear Engineering and Design, .239, 2713-2718, (2009) [2] 日本材料強度学会編,“応力腐食割れ標準試験法一 日本学術振興会第 129 委員会基準一,““ pp.8-17, 1985 [3] N. Birks, G. H. Meier, “Introduction to the HighTemperature Oxidation of Metals,” 1983 [4] D. L. A. de Faria, S. Venancio Silva, and M. T. DeOliveria, “Raman Microspectroscopy of Some Iron Oxides and Oxyhydroxides,” Journal of Raman Spectroscopy, 28, 873-878, (1997)620“ “?渦電流探傷試験による応力腐食割れの深さサイジングに対するき裂分岐構造と充填酸化物の影響評価“ “大瀧 啓太郎,Keitaro OHTAKI,内一 哲哉,Tetsuya UCHIMOTO,高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,竹田 陽一,Yoichi TAKEDA
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