配管減肉管理改善の為の原子力・火力規格の比較分析

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カテゴリ: 第8回
1. はじめに
全性の確保がより一層求められることとなった。このため、配管減肉管理においても、高い安全性を確 国内における配管減肉管理は、現在、実機測定に保しつつ、科学的合理性に基づいた効率的な管理を 基づく管理により行なわれている。一方、海外にお行うため、研究成果を反映した管理改善の検討が必 いては減肉予測コードと実機測定に基づく管理を組要である。 み合わせることによって行われている。実機測定にそこで、本研究では一般産業設備である火力発電 よる日本の管理は海外の管理と比べて減肉事象の報所とより厳しい安全管理が求められる原子力発電所 告件数や貫通事故件数がより少なく、信頼性の高いの配管減肉管理規格を比較分析し、それぞれの安全 ものとなっている17118。しかし、その一方で、海外要求との関係を検討し、原子力特有の要求事項の根 の管理と比べて、計測箇所が多い、プラント停止中拠を明確にした。更に、美浜三号機における配管破 でないと実施できない、時間がかかる等の問題点が損事故報告書の実測データを基に配管減肉管理の定 挙げられている。美浜三号機の事故以降、これらの量分析を行い、米国 ASME 規格の局所減肉評価基準 問題を解決するため配管減肉メカニズムの解明とよの導入が余寿命評価に与える影響について考察した。 りすぐれた検査方法の開発に向けた配管減肉管理改21h給料を甘r A仏の西ユカでは2 1. はじめに 国内における配管減肉管理は、現在、実機測定に 基づく管理により行なわれている。一方、海外にお いては減肉予測コードと実機測定に基づく管理を組 み合わせることによって行われている。実機測定に よる日本の管理は海外の管理と比べて減肉事象の報 告件数や貫通事故件数がより少なく、信頼性の高い ものとなっている7]8。しかし、その一方で、海外 の管理と比べて、計測箇所が多い、プラント停止中 でないと実施できない、時間がかかる等の問題点が 挙げられている。美浜三号機の事故以降、これらの 問題を解決するため配管減肉メカニズムの解明とよ りすぐれた検査方法の開発に向けた配管減肉管理改 善の為の研究が開始されている。 - 原子力発電では放射性物質の放出による周辺住民 の被ばくを防止するため安全機能の重要度に応じた 厳重な品質管理がなされているが、美浜三号機の事 故以降放射性物質を内包しない配管の配管減肉管理 に関しても高い安全性を求める社会的な要求が強く 存在している。また、今回の震災により発生した福 島第一原子力発電所の事故により原子力に対する安管減肉管理の改善の方向性について取りまとめた。 の放出による周辺住民 機能の重要度に応じた2. 現行規格の成り立ち るが、美浜三号機の事 い配管の配管減肉管理美浜3号機の配管破損事故以降、高経年化対策と る社会的な要求が強くしての配管減肉の重要性が指摘された。そこで、日 震災により発生した福本機械学会では国の法律と省令を満足する規格の要 より原子力に対する安件を学会規格「発電用設備規格配管減肉管理に関する規格」にまとめると共に、各種発電設備がその要 371 大阪府吹田市件を満足するようにそれまでの管理の実施経験や設 三工学研究科備の仕様、運用方法を基に、原子力(PWR、BWR)規格、 g.osaka-u.ac.jp火力規格を別々に制定した。その為、各規格の規定 連絡先:鈴木 翔太、〒565-0871 大阪府吹田市 山田丘2-1、大阪大学大学院工学研究科 E-mail:s-suzuki@ne.see.eng.osaka-u.ac.jp11- 102全性の確保がより一層求められることとなった。こ のため、配管減肉管理においても、高い安全性を確 保しつつ、科学的合理性に基づいた効率的な管理を 行うため、研究成果を反映した管理改善の検討が必そこで、本研究では一般産業設備である火力発電 所とより厳しい安全管理が求められる原子力発電所 の配管減肉管理規格を比較分析し、それぞれの安全 要求との関係を検討し、原子力特有の要求事項の根 拠を明確にした。更に、美浜三号機における配管破 損事故報告書の実測データを基に配管減肉管理の定 量分析を行い、米国 ASME 規格の局所減肉評価基準 の導入が余寿命評価に与える影響について考察した。 そしてこれらの検討を基に今後の原子力における配 管減肉管理の改善の方向性について取りまとめた。美浜3号機の配管破損事故以降、高経年化対策と しての配管減肉の重要性が指摘された。そこで、日 本機械学会では国の法律と省令を満足する規格の要 件を学会規格「発電用設備規格配管減肉管理に関す る規格」にまとめると共に、各種発電設備がその要 件を満足するようにそれまでの管理の実施経験や設 備の仕様、運用方法を基に、原子力(PWR、BWR)規格、 火力規格を別々に制定した。その為、各規格の規定 る。方が全体的に減肉率は高く、判定基準厚さ(tm (火力設備配管減肉管理解説より、社会ニーズの差) ら必要最小厚さ(tsr)になるのが早い。そのた ・原子力規格では、次の検査まで技術基準を満たし PWR 規格では全数管理を、BWR 規格では高減肉率 ていることを定期検査で確認することが法律で求め が見られる部分においても、同一環境中として られており、小口径においてもこれに対応する事がせるならば、判定基準厚さまでは、代表点管理 必要と考えられる。用し、減肉傾向が出れば全数点検に移行する事 (規制による差、社会ニーズの差) ている。 12 (プラントの運用条件の差) 表1に規格における管理対象の比較結果を示す。 ・原子力発電では次の定期検査までの期間は技 表 1 管理対象の比較準を満たしている事を保障しなければならない 常時通水状態にある配管厳密な管理が求められている。 50A より大きい配管(規制による差、社会ニーズの 復水、給水、ドレン系- 表3に規格における代表測定の比較結果を示 表 1 管理対象の比較 常時通水状態にある配管 50A より大きい配管 復水、給水、ドレン系 その他減肉の恐れのある範囲(火力規格 第4節) 使用時間が短く減肉の発生が無視できる流れのない 計装用配管等は除外することができる。 (減肉の可能性のある配管は全て対象とする考え方)(PWR規格 CA-1100 BWR 規格 C-1220 )
4.24.2 詳細測定の有無 ・火力規格では詳細測定の具体的な方法は規定され ていないが、原子力規格では詳細測定が規定に定め られた方法で機械的に行われる様に明記されている。 原子力発電では次の定期検査まで技術基準を満たす ことを確認する事が求められている。その為に、厳 密に減肉の状態を管理するように規定されている。(規制による差、社会ニーズの差) 表2に規格における詳細測定の比較結果を示す。 ことを 密に減表2表2 詳細測定の比較 ル 有意な減肉の進行が認められた場合,計測ピッチを 「力 | 狭めて、滅肉傾向を詳細に把握すること。(火力規格 7節 7.2)原子力判定基準厚さ tm を下回る場合には, tm を下回った 測定点の周辺に対して測定間隔 20mm 程度の格子点 を設けて超音波厚さ測定を行うことで,配管厚さが tm を下回る範囲を把握し、最小測定厚さを特定する。(PWR規格 CA-2320,CB-2320 BWR規格 CA-3320,CB-3320)4.37 ? BWR 4.3 代表測定の比較 ・BWR 規格では減肉率が低い箇所 (FAC-1)のみ火力規 格と同じ考え方に基づいている。低減肉率部位分で は、内部の流体の溶存酸素濃度が高く管理されてい る為、減肉が抑制されている。その為に PVR と違い 全数測定が求められておらず、火力と同等の配管減 肉管理が行われている。(プラントの運用条件の差) ・PWR と BWR では溶存酸素濃度の違いにより PWR の ““DWIN ては内平 / AV'画 (EAR 1ノリタハリ別 格と同じ考え方に基づいている。低減肉率部位分で は、内部の流体の溶存酸素濃度が高く管理されてい る為、減肉が抑制されている。その為に PWR と違い 全数測定が求められておらず、火力と同等の配管減 肉管理が行われている。(プラントの運用条件の差) ・PVR と BWR では溶存酸素濃度の違いにより PWR の4.5 余寿命の算出の相違 ・火力規格では減肉率の変化が直線則でない 転状態の変化)に対しても対応できるように to point 法(各測定点での肉厚の差を基に直 肉率を計算する)によって求められる。これ 力発電では出力調節運転を行う為、配管内の- 104 -)か方が全体的に減肉率は高く、判定基準厚さ(tm)か ら必要最小厚さ(tsr)になるのが早い。そのために、 PWR 規格では全数管理を、BWR 規格では高減肉率減肉 が見られる部分においても、同一環境中としてみな せるならば、判定基準厚さまでは、代表点管理を採 用し、減肉傾向が出れば全数点検に移行する事とし ている。(プラントの運用条件の差) ・原子力発電では次の定期検査までの期間は技術基 準を満たしている事を保障しなければならない為に 厳密な管理が求められている。(規制による差、社会ニーズの差) 表3に規格における代表測定の比較結果を示す。表3 代表測定の比較 減肉の発生傾向が同じと判断できる範囲で、減肉が 力 | 一番進行しやすい部分、または余寿命が一番少ないとされる部分を選定。 (火力規格 第5節) 減肉率の低い部分では、減肉が一番進行しやすい部 分を選定する。減肉率の高い部分では、全く同じ環 境条件や構造条件の場合、減肉が一番進行のしやす い部分を選定。その後、判定基準厚さ tm を割ったら、 一度全数点検を行う。 (BWR規格 CA-2100) 全数点検のみ(PWR規格 CA-2300)原子力廊原子力発電では、定格出力運転である為に、配管内 の流体の状態がほぼ一定であると考えられる。しか し、火力発電では、出力を変動させながら運転をす る為に、配管内の流体の状態が変化し、内部の蒸気 の湿り度で区分する事ができない。(プラントの運用条件の差) 表4に規格における FAC と LDI の区別の比較結果 100 4.4 FAC とLDI の区別の有無 す 。・火力規格では FAC と LDI の区別を行っていない。 原子力発電では、定格出力運転である為に、配管内 の流体の状態がほぼ一定であると考えられる。しか し、火力発電では、出力を変動させながら運転をす る為に、配管内の流体の状態が変化し、内部の蒸気 の湿り度で区分する事ができない。(プラントの運用条件の差) 表4に規格における FAC と LDI の区別の比較結果を示す。 一点1 表4 FAC と LDI の区別の比較 流れ加速型腐食(FAC) と液滴衝撃エロージョン(LDI) の区別は行っていない。。差。.2)った火力原子力流れ加速型腐食(FAC)と液滴衝撃エロージョン(LDI) 子の区別を行っており、別々の管理体制がとられる。| (PWR 規格 C-1200 BWR 規格 C-1210)4.5 余寿命の算出の相違 ・火力規格では減肉率の変化が直線則でない場合(運 転状態の変化)に対しても対応できるように point to point 法(各測定点での肉厚の差を基に直前の減 肉率を計算する)によって求められる。これは、火 力発電では出力調節運転を行う為、配管内の環境が 一定でないため、減肉率が変化するからである。そ の為直前の減肉率を基にして、余寿命を算出してい 一定でないため、減肉率が変化するからである。そ 4.7 試験期間の設定 の為直前の減肉率を基にして、余寿命を算出してい ・火力規格では試験期間の設定の考え方が具体的に る。また、原子力発電では、定格出力運転によって 明記されておらず、評価者の判断に任されるところ 運転されている。その為に、配管内の環境がほぼ一 が大きい。それに対し、原子力規格では、BWR、PWR 定であるため減肉率を一定であると仮定して最小二 共に試験期間の設定方法について厳密に規定されて 乗法(各測定点での肉厚変化から最小二乗法により いる。原子力では計画外停止をする事が難しいなど、 求めた減肉率)を用いて余寿命を算出している。 自由度の少ない運転となっているが、火力発電では(プラントの運用条件の差) 需給に合わせて停止を行う事が可能である為、柔軟 ・原子力規格では最大減肉率を最小厚さの部分に仮 に管理が行えるような規定となっていると考えられ 定して、余寿命を判断する。これは、原子力では次 る。 (プラントの運用条件の差、社会ニーズの差) の定期検査までの期間、技術基準に適合している事表7に規格における試験期間の設定の比較結果を を保証しなければならない。その為に、火力規格に 1示す。 比べてより高い信頼性を求められている。表 7 試験期間の設定 (規制による差、社会ニーズの差)| 初回点検と対象部位から求められた余寿命に対し 表5に規格における余寿命の算出の比較結果を示 「カ」て、余裕のある時期に行う。| 二回目以降は計測結果から求められた余寿命に対し、 の為直前の減肉率を基にして、余寿命を算出してい る。また、原子力発電では、定格出力運転によって 運転されている。その為に、配管内の環境がほぼ一 定であるため減肉率を一定であると仮定して最小二 乗法(各測定点での肉厚変化から最小二乗法により 求めた減肉率)を用いて余寿命を算出している。(プラントの運用条件の差) ・原子力規格では最大減肉率を最小厚さの部分に仮 定して、余寿命を判断する。これは、原子力では次 の定期検査までの期間、技術基準に適合している事 を保証しなければならない。その為に、火力規格に 比べてより高い信頼性を求められている。(規制による差、社会ニーズの差) 表5に規格における余寿命の算出の比較結果を示表 5 余寿命の算出の比較 測定結果を用いて、point to point 法により減肉率 を算出する。これを各測定点において行い、それぞ れ余寿命を算出し、最も短いものを測定部位での余 寿命とする。(火力規格 第6節) 測定を二回実施時は point to point 法を用いるが、 三回目以降は最小二乗法を用いて減肉率を算出す る。また、測定部位で得られた最大の減肉率を最小 の厚さ部分で発生すると仮定をし、余寿命を算出す る。 (PWR 規格 CA, CB-3000、BWR 規格 CA, CB-5000)す。火力原子力4.6・超 して 4.6 検査方法活用の相違 ・超音波測定法は従来から用いられている手法で、 実機における適用実績があり精度も保証されている。 しかし、火力規格では、事業者のニーズに応えて柔 軟に適用できる様に、超音波測定法に比べて実機に おける使用実績が少ない様々な検査方法を採用して いる。この違いは、火力規格と原子力規格において 求められる試験方法に対する説明性の要求の差によ るものと考えられ、原子力ではより信頼性のある手 法を選んで説明性を高めていると考えられる。(社会ニーズの差) 表6に規格における検査方法活用の比較結果を示肉厚測定、代表点算出時の場合において認められる | カ | 評価手法に対して様々な手法の使用を認めている。(火力規格 第7節 7.1) 既存の方法(超音波測定法)による評価を基本として いる。その他の具体的な測定法に関して、言及はし ていない。(BWR、PWR 規格 CA-3000)原子力ころ PWR 4.7 試験期間の設定 ・火力規格では試験期間の設定の考え方が具体的に 明記されておらず、評価者の判断に任されるところ が大きい。それに対し、原子力規格では、BWR、PWR 共に試験期間の設定方法について厳密に規定されて いる。原子力では計画外停止をする事が難しいなど、 自由度の少ない運転となっているが、火力発電では、 需給に合わせて停止を行う事が可能である為、柔軟 に管理が行えるような規定となっていると考えられ る。 (プラントの運用条件の差、社会ニーズの差) - 表7に規格における試験期間の設定の比較結果を初回点検と対象部位から求められた余寿命に対し て、余裕のある時期に行う。 二回目以降は計測結果から求められた余寿命に対し て余裕の時期に行う。 (火力規格 第6節) 減肉ポテンシャルの大きさによるが、余寿命の5年 「前までに計測する事や、10年周期で計測する事が求 められる。(BWR規格 CA,CB-2200) 余寿命の5年前までに計測する事が求められる.(PWR規格)火力原子力4.8円 4.8 比較分析結果のまとめ 表8に比較分析結果を取りまとめた。表 8 比較分析表規格の相違点原因凡例管理対象の相違A,B,C | A: 規制要求の差 詳細測定の有無A,C , 代表測定の有無A,B,C [B:プラントの運用 FAC と LDI の有無条件の差 余寿命の算出の相違 A,B,C | 検査方法の活用法の相違 |c |c : 社会ニーズの 試験期間の設定A,C | 差 プラントの運用条件の差による相違点については、 プラントの設備の違いに基づくものと考えられるた め、管理を行う上で必要と考えられる。規制要求の差である「次の定期検査までの間、技 術基準への適合の維持を保証する」ための相違点に ついては技術の高度化により改善の余地がある。こ こでは規制要求を満たすことに加え、社会ニーズに 沿う形で保守管理が行われていると考えられる。現 在は実機測定のみによる管理で、作業量や時間を多 く必要とする管理を行っているが、今後の技術導入 により、次の定期検査までの技術基準への適合の維そきなて持を保証することに対する高い説明性が満たされる 様な工学的根拠に基づく新たな管理手法が求められ ると考えられる。実機測定に基づく管理に関する規 格の要件での火力規格との具体的な相違点としては 詳細測定の有無、代表測定の有無などが挙げられる。 5. 実機データを用いた定量分析 - 火力規格と大きな差となる詳細測定の有無に対し て、美浜三号機の事故報告書のオリフィス下流部に おける詳細測定データに基づき、定量分析を行った。 詳細測定と通常測定の概略図を図 2, 3 に示す。 持を保証することに対する高い説明性が満たされる。 と仮定した場合の累計測定箇所数を括弧書きとして 様な工学的根拠に基づく新たな管理手法が求められ 合わせて表 9, 10 に示した。 ると考えられる。実機測定に基づく管理に関する規 詳細測定で求められた最小肉厚部と通常測定で求 格の要件での火力規格との具体的な相違点としては められた最小肉厚部の減肉量の相対差は、A 系統で 詳細測定の有無、代表測定の有無などが挙げられる。 は 5.5%、B 系統では 12%と推定された。 2 ケースではあるが、通常測定による減肉量は誤差が大きく、そ 5. 実機データを用いた定量分析の結果から最小板厚を管理するためには、より大き 1. 火力規格と大きな差となる詳細測定の有無に対しな裕度を確保しなければならないことが明らかとな て、美浜三号機の事故報告書のオリフィス下流部にった。また、通常測定と比べ、詳細測定を継続して おける詳細測定データに基づき、定量分析を行った。 行うことにより、取り替えるまでの計測箇所数が約 詳細測定と通常測定の概略図を図 2, 3 に示す。200~300 倍となることが明らかとなった。また、詳 細測定 1回目終了時まででも、計測箇所数が 100~ 200 倍となることが明らかとなった。また、米国 ASME 規格の局所滅肉評価基準を適用で は、美浜三号機の配管の様な広範囲の減肉の場合、 必要最小板厚の1割減まで減肉が認められる規定と なっており、これを導入すれば、今回のケースで、 A, B いずれの場合も配管の余寿命が約1年伸びると いう結果が得られた。これらの結果から明らかな様に、現在の詳細測定 図 2 詳細測定概要図 (PWR)管理では、一部位の最小肉厚部分を求めるために、 数多くの箇所を検査しなければならない。一方、通 常測定で最小肉厚を求めるとするとバラつきが大き く裕度を大きくとらなくては信頼性を確保すること が難しい。このことから、今後減肉管理の高度化を進めるためには、工学的根拠に基づいた、測定対象 AA矢視図箇所の低減が求められる。 (12545日以下は4方位) 図 3 通常測定概要図 (PWR)表9 美浜三号機 A 系統01mHT11「 [TECTION FEATLETEHT嫌NTE IEEEEEELANCIENAIL 年11HTERIETTITLETTITFITレビッチャリ)定感彼れATHEN LOUISIO TEETWITTLEILITEさを出しのSITE]TTTTTTTTTT 「あんまり!37す-48詳細測定無 | 12.1 | 詳細測定有 | 11.7 |4.41 4.70192 \28,671144)通常測定とはあらかじめ決められた定点を計測 することにより減肉管理する方法である。それに対 し、詳細測定は基準値以下となった部分を詳細に把 握し減肉管理を行う方法である。 - 美浜三号機配管破損事故発生時のオリフィス下流 部の配管の厚さの詳細データをA系統、B系統共に 参照し、運転期間から減肉率を求め、線形的に減肉 をすると仮定して余寿命の評価を行った。また、試 験期間は PWR 規格に規定された方法を参照し、余寿 命の5年前から1年ごとに実機測定を行うものとし することにより減肉管理する方法である。それに対 し、詳細測定は基準値以下となった部分を詳細に把 握し減肉管理を行う方法である。 - 美浜三号機配管破損事故発生時のオリフィス下流 部の配管の厚さの詳細データをA系統、B系統共に 参照し、運転期間から減肉率を求め、線形的に減肉 をすると仮定して余寿命の評価を行った。また、試 験期間は PWR 規格に規定された方法を参照し、余寿 命の5年前から1年ごとに実機測定を行うものとし て、累積計測回数を推定した。なお、現在の発電所では、今回の様な短期間で幅 広い減肉が見られる場合は対策材に取り替えること が一般的であり、このことを考慮に入れて、詳細測 定一回目に幅広い範囲で判定基準厚さが下回ること が確認されたことを受けて、詳細測定一回目で計測 を終了し、次回定期検査時に対策材に配管を変えた表 10 美浜三号機 B系統 寿命 | 最小薄さ 累積計測回数(年) | (mm) | 規格 | 詳細1回 詳細測定無 | 15.4 | 4.05 120 | (48) | 詳細測定有 | 13.7 | 4.70 | 38,658 | (9218)6. 減肉管理高度化に向けた提案今回の規格要件の比較結果を基に、現在進められ ている配管減肉改善研究成果の規格要件高度化への 反映について検討した。現在進められている研究内容を表 11 にまとめた、 また表 12 に規格の要件と余寿命の延長に対して、研 究中の新しい知見の反映が可能と考えられる内容を- 106 - 命の5年前から1年ごとに実機測定を行うものとし て、累積計測回数を推定した。なお、現在の発電所では、今回の様な短期間で幅 広い減肉が見られる場合は対策材に取り替えること が一般的であり、このことを考慮に入れて、詳細測 定一回目に幅広い範囲で判定基準厚さが下回ること が確認されたことを受けて、詳細測定一回目で計測 を終了し、次回定期検査時に対策材に配管を変えた と仮定した場合の累計測定箇所数を括弧書きとして 合わせて表 9, 10 に示した。 * 詳細測定で求められた最小肉厚部と通常測定で求 められた最小肉厚部の減肉量の相対差は、A系統で は 5.5%、B 系統では 12%と推定された。2ケースでは あるが、通常測定による減肉量は誤差が大きく、そ の結果から最小板厚を管理するためには、より大き な裕度を確保しなければならないことが明らかとな った。また、通常測定と比べ、詳細測定を継続して 行うことにより、取り替えるまでの計測箇所数が約 200~300 倍となることが明らかとなった。また、詳 細測定 1回目終了時まででも、計測箇所数が 100~ 11 ノートパーカり、以り質んJ な ( 51 200~300 倍となることが明らかとなった。また、詳 細測定1回目終了時まででも、計測箇所数が 100~ 200倍となることが明らかとなった。また、米国 ASME 規格の局所減肉評価基準を適用で は、美浜三号機の配管の様な広範囲の減肉の場合、 必要最小板厚の1割減まで減肉が認められる規定と なっており、これを導入すれば、今回のケースで、 A, B いずれの場合も配管の余寿命が約1年伸びると いう結果が得られた。これらの結果から明らかな様に、現在の詳細測定 管理では、一部位の最小肉厚部分を求めるために、 数多くの箇所を検査しなければならない。一方、通 常測定で最小肉厚を求めるとするとバラつきが大き く裕度を大きくとらなくては信頼性を確保すること が難しい。このことから、今後減肉管理の高度化を 進めるためには、工学的根拠に基づいた、測定対象 箇所の低減が求められる。表9 美浜三号機 A 系統 寿命 | 最小薄さ | 累積計測回数 (年) (mm)規格 詳細1回 詳細測定無し | 12.1 4.41 192(48) | 詳細測定有 | 11.7 | 4.70 [ 28,671 | (4144) |表 10 美浜三号機B系統 寿命 | 最小薄さ」 累積計測回数、 (年) (mm)規格 詳細1回 詳細測定無 | 15.4 4.05 120 | (48) 詳細測定有 | 13.7 4.70 38,658 | (9218)* 今回の規格要件の比較結果を基に、現在進められ ている配管減肉改善研究成果の規格要件高度化への 反映について検討した。 * 現在進められている研究内容を表 11 にまとめた、 また表 12 に規格の要件と余寿命の延長に対して、研 究中の新しい知見の反映が可能と考えられる内容を て示した。7. まとめ 、配管減肉管理の高度化を進める上で、現在本研究では、原子力規格と火力規格を比較し、得 で行われている予測シュミレーションコードられた相違点の原因が、規制要求の差、プラントの 技術の活用は2の詳細測定への適用や3の代運用条件の差、社会ニーズの差に分類されることを に活用し、相対的な減肉傾向を把握して最小 明らかとした。また、原子力発電では次の定期検査 所の選定に用いることが期待される。また、8 まで技術基準の適合を保証しなければならないため 命の延長については、米国と日本の減肉基準火力発電に比べてより厳しい安全要求が存在するこ した場合、必要最小板厚に一割の裕度が存在とを確認した。このため、次の定期検査までの最小 り、これによる余寿命の延長は美浜三号機の肉厚が技術基準に適合していることを保証する管理 ケースでは1年程度と考えられるが、今後、を行うため、現在では作業量と時間をかけた管理が 命延長効果について検討が必要である。 行われており、今後、科学的合理性に基づいた効率 、減肉予測モデルを取り入れることで、従来- 的な管理を導入するため、現在進められている配管 整理して示した。今後、配管減肉管理の高度化を進める上で、現在 の研究で行われている予測シュミレーションコード や検査技術の活用は2の詳細測定への適用や3の代 表測定に活用し、相対的な減肉傾向を把握して最小 肉厚箇所の選定に用いることが期待される。また、8 の余寿命の延長については、米国と日本の減肉基準 を比較した場合、必要最小板厚に一割の裕度が存在 しており、これによる余寿命の延長は美浜三号機の 事故のケースでは1年程度と考えられるが、今後、 その寿命延長効果について検討が必要である。また、減肉予測モデルを取り入れることで、従来 低減肉率とされている部分やLDI の管理を効率的に 行うことが期待される。更に、将来は冷却材漏えい 時の影響や稼働率への影響を取り入れたリスク情報 活用を図ることにより、現在、同じ基準で管理され ている配管に、リスク重要度に基づいた効率的な管 理を導入することが可能となると考えられる。表 11 配管減肉管理改善研究内容 研究内容項目研究内容 減肉予測モデルの FAC, LDI の発生メカニズムの 開発解明等 B. シミュレーションコ | 配管 レイアウトによる ードの開発影響の解明等 C. リスク情報の活用 蒸気漏えい、稼働率へのリスクを用いた管理等 D. 広域・定点点検技術 渦電流による広範囲の監視オンラインモニタリング等 E.水化学、材料水質を変える事による防食等 による防食 | F. 局所減肉評価基準 | 米国での技術基準の導入等 | F. 局所減肉評価基準 | 米国での技術張準の導入等[6] 波木井 順一ら「沸騰水型原子力発電所の配管 表 12 研究内容の反映減肉に関するフィールドデータの分析」,日本機械学会論文集(A 編) 75 巻 749 号(2009-1) 規格の要件 研究内容[7] 千葉 五郎「海外原子力発電所における2次系 リスク情報の活用配管減肉不具合の発生状況」 INSS JOURNAL 13 技 1.管理対象 減肉予測モデルの開発術システム研究所報告 2006 シュミレーションコードの活用 2.詳細測定[8] 千葉 五郎「海外原子力発電所における2次系 広域点検技術配管の減肉管理状況と国内との比較」INSS シュミレーションコードの活用 3.代表測定| JOURNAL 12 技術システム研究所研究報告 2005規格の要件研究内容リスク情報の活用 1.管理対象| 減肉予測モデルの開発シュミレーションコードの活用 2.詳細測定広域点検技術シュミレーションコードの活用 3.代表測定広域点検技術| 減肉予測モデルの開発 4. FAC と LDI の区別リスク管理 5.余寿命の算出 なし、6.検査方法の活用| 広域・定点点検技術7.試験期間の設定なし 減肉の評価基準 水化学、材料による防食8.余寿命の延長本研究では、原子力規格と火力規格を比較し、得 られた相違点の原因が、規制要求の差、プラントの 運用条件の差、社会ニーズの差に分類されることを 明らかとした。また、原子力発電では次の定期検査 まで技術基準の適合を保証しなければならないため、 火力発電に比べてより厳しい安全要求が存在するこ とを確認した。このため、次の定期検査までの最小 肉厚が技術基準に適合していることを保証する管理 を行うため、現在では作業量と時間をかけた管理が 行われており、今後、科学的合理性に基づいた効率 的な管理を導入するため、現在進められている配管 減肉管理改善のための研究成果の反映が大いに期待 される。 参考文献 [1] 日本機械学会「発電用設備規格配管減肉管理に 関する規格(2005 年版)」 [2] 日本機械学会「発電用原子力設備規格 沸騰水 型原子力発電所 配管減肉管理に関する技術規格 (2006年版)」 [3] 日本機械学会「発電用原子力設備規格 加圧水 型原子力発電所 配管減肉管理に関する技術規格 (2006年版)」 [4] 日本機械学会「発電用火力設備規格 火力設備 配管減肉管理技術規格(2009 年版)」 [5] ASEM Section XI,Division 1 CaseN-597-2 TRequirements for Analytical Evaluation of Pipe Wall Thinning 」 [6] 波木井 順一ら「沸騰水型原子力発電所の配管 減肉に関するフィールドデータの分析」,日本機械学 会論文集(A編) 75 巻 749 号(2009-1) [7] 千葉五郎「海外原子力発電所における2次系 配管減肉不具合の発生状況」INSS JOURNAL 13 技 術システム研究所報告 2006 [8] 千葉 五郎「海外原子力発電所における2次系 配管の減肉管理状況と国内との比較」 INSS JOURNAL 12 技術システム研究所研究報告 2005 - 107 -“ “配管減肉管理改善の為の原子力・火力規格の比較分析“ “鈴木 翔太,Shota SUZUKI,中村 隆夫,Takao NAKAMURA
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