水中レーザ溶接装置の開発

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カテゴリ: 第8回
1. はじめに
近年、国内外の経年化 PWR プラントの冷却材出入口 (RCS)管台異材溶接継手部には、応力腐食割れ(SCC) の発生が確認されており、当該部位の予防保全・補修溶 接の必要性が高まっている。東芝は、これまでにレーザを用いた原子炉内構造物向 けのさまざまな予防保全、補修技術を開発し、国内の加 圧水型原子炉(PWR)及び沸騰水型原子炉(BWR) プラ ントに適用してきた。上記RCS 管台の予防保全、補修に 対応するものとして、東芝は Fig.1 に示すような、水中で 施工可能な、レーザを用いた溶接工法を開発した[1] [2] [31。 シールドガス(Ar)を供給することで、溶接施工部 に局所的な空洞を形成する。その空洞内で、レーザ光を 照射しながらフィラーワイヤを供給することで溶接する。 本工法では、炉水を抜く必要が無く遠隔で施工が可能な ため、工期短縮、被ばく低減の点でメリットがある。本研究では、PWR の RCS 管台を対象とした、水中レ ーザ溶接による予防保全、補修技術開発の中で、特に装 置の構成を中心に報告する。
2. レーザ溶接ヘッド光学系構成レーザ溶接ヘッドの概観図を Fig.2 に示す。 レーザ発振器からレーザビーム(波長 1070nm)を出力 し、光ファイバケーブルを伝送させてレーザ溶接ヘッド 内へ入射している。ミラーで反射してレーザビームの方 向を変え、レンズで集光させて管台へ照射する。溶接品 質の管理上、フィラーワイヤに対するレーザビームのス ポット位置と径が重要である。そこで、上記のミラーカ 向とレンズ位置を変えることで、スポット位置と径を調 整しできるようにしている。 溶接施工部からの光をダイクロイックミラーで反射し、11フィルタを通してカメラへ入れることで、溶接施工部の 観察が可能であり、溶接前の位置調整や溶接中の状態を 確認することができる。一般的に、溶接中にはスパッタなどの異物が発生する 可能性がある。仮にそれらがウィンドウといった光学部 品の表面に付着すると、レーザビームに対する光学部品 の吸収率が上昇する。すると、レーザ溶接ヘッド出口で のレーザ出力低下や光学機器の焼損の原因となり、さら には溶接欠陥の原因となりうる。そこで、カメラの前に 移動式のレンズを挿入して焦点位置を変え、保護窓ガラ スやダイクロイックミラーといった光学部品の表面を観 察できるようにした。そうすることで、光学部品の表面 に付着した異物を検知して、溶接欠陥が発生する前に対 処することが可能となる。Optical Laser welding head fiber cableMirrorCameraLaser beamMolten pool image-LensFilter toMovable LensDichroic mirrorリックスMirror・・・・・Window Base metal (RCS nozzle)Molten poolFig.2 Arrangement of optical elements in welding head3. 水中レーザ溶接装置PWR の RCS 管台向けの水中レーザ溶接システムの構 成をFig.3 に、水中レーザ溶接装置の外観をFig.4に示す。150m と 50m の2本の光ファイバケーブルと、2つの中 継器を介して溶接装置とレーザ発振器を接続しており、 発振器から200m離れた位置で溶接施工が可能である。中 継器には、光ファイバケーブルの破損を検知する機能を 持たせてあり、高出力のレーザビームが漏れ出さないよ うな安全設計となっている。溶接装置は、回転しながらレーザ光を出射して、管台 内面全周を溶接できる。Fiber couplerOptical fiber cable(50m)RCS NozzleOptical fiber cable(150m)、 Laser beam oscillatorReactor VesselLaser weldingmachine Fiber couplerContainment Vessel Fig.3 System configuration of underwater laser beamwelding for PWR RCS nozzleFig.4 Appearance of laser welding machineレーザ発振器を放射線管理区域に設置する必要が無い ので、オペフロ占有スペース低減、工程短縮、放射線管 理の観点でメリットがある。また、光ファイバケーブル を2本に分けることで、原子炉容器へ入れる 50m の防水 光ファイバケーブルを管理区域外から引き回す必要がな くなるため、光ファイバケーブルを破損して防水性を損 なうリスクを低減している。4. 溶接装置検証試験PWRのRCS 管台の溶接施工部の形状を模擬した低合金鋼から成る試験片(内径の700mm の円筒形状に、深さ 4mm の溝加工)に対して、溶接装置を用いて水中レーザ 溶接の検証試験を行った。なお、溶加材は 690 系合金を 使用した。 Fig.5 に管台内面施工部の外観を、Fig.6 に溶接 部の断面マクロ観察結果を、Fig.7 に Fig.6 の A部の断面ミクロ観察結果を示す。溶接ビードは光沢面を呈し、表 面に有害な欠陥は認められず、浸透探傷試験でも有意な 指示模様なかった。また、溶接部の内部にも有害な欠陥 は認められず、健全な溶接であることが確認できた。Fig.5 Weld bead on inner surface of test nozzleWeld metalBase metal1010150,100-2170, :Fig.6 Cross-sectional observation of test nozzleWeld metal50μmBase metalFig. 7 Microstructure of the area ““A““ in Fig.65. まとめPWR の RCS 管台予防保全、補修について、溶接品質 を確保できるように、レーザビームの位置とスポット径 を調整する機能、光学部品観察機能を持った溶接ヘッド を開発した。また、工期、コスト、被ばく線量の点でメ リットの大きい水中レーザ溶接のシステムを構築した。PWR 実機管台を模擬した試験片に対して溶接施工試 験を行い、健全な溶接施工が可能であることを確認した。参考文献 1] M. Tamura, et al, “Development of Underwater LaserCladding and Underwater Laser Seal Welding Technique for Reactor Components”, ICONE13-50141, Beijing,China, 2005 2] 福田他、“水中レーザによるテンパービード溶接技術の開発”、日本保全学会 第7回学術講演会、静岡、2010 3] 千田他、“原子力プラント向けレーザ溶接技術に関する研究”、第16回動力・エネルギー技術シンポジウ ム、大阪、2011平成23年8月 12 日)“ “水中レーザ溶接装置の開発“ “徳永 泰明,Yasuaki TOKUNAGA,千田 格,Itaru CHIDA,椎原 克典,Katsunori SHIIHARA,田村 雅貴,Masataka TAMURA,福田 健,Takeshi FUKUDA,前原 剛,Takeshi MAEHARA,依田 正樹,Masaki YODA
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