IAEA報告及び基準と福島事故

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カテゴリ: 第8回
1. 緒言
2011年(平成 23 年)3月11日 14時46分18秒,日本 の太平洋三陸沖を震源としてマグネチュード 9.0 の巨大 地震が発生した。その 50分後に高さがy約5m という 巨大な津波が福島第一原子力発電所を襲った。地震後に は原子力発電所は自動的に停止し、1号機は IC により、 2,3 号機は RCIC により炉心は冷却され、原子力の安全の 3原則である”止める”冷やす”閉じ込める”は達成された。 しかしその後の巨大津波により、非常用電源とポンプな どが機能喪失し、冷やす機能が無くなり、燃料が露出し て、いわゆる水ージルカロイ反応により大量の水素が発 生した。このような事態を防ぐために、炉心に水を注入 することが必須であるが、このような異常事態の体制の 欠如と訓練不足などから、注水が大幅に遅れ、水素の大 量発生を招いたことは本当に悔やまれる事態となった。 この水素が原子炉圧力容器に充満し、逃し安全弁から原 子炉格納容器に流れこんだ。これも想定内の事象である。 ここで格納容器の圧力が上昇した。この時のために PCV ベント系があり、ベントをすれば問題は発生しなかった が、このベント作業も遅れてしまい、水素は原子炉 建屋に進入し、軽いため建屋の点上部に充満し、爆発今回の事故は、この注水とベントの時間遅れが原因で あり、どうして遅れたのかの原因究明が、事故調査委員 会で進められている。この福島第一原子力発電所の事故は世界中の原子 力関係者に大きな波紋を与えた。IAEA は5月から6月 にかけて、イギリス HSE の Weightman をリーダーに、12 ケ国から 18 人の国際的専門家による調査団を日本に派 遣し、福島の現地調査を含む調査分析を行い、15の事故 原因と 16の教訓を纏め、ウィーンの IAEAA本部におけ る閣僚会議に報告した。一方アメリカのNRC も「21世 紀の原子力の安全性目指した勧告」 12 項目を7月に発表した。また福島周辺住民は強制的に避難生活を強いられている が、復帰する条件は規定されていない。IAEA では、避難 及び復帰の条件を明確に定めている。また食品の放射能 レベルについても、ほうれんそうから始まり、小女子、 お茶、そして牛肉の出荷制限を日本独自の暫定基準で行 っているが、IAEA や WHOの基準とはかけ離れ ている。このような国際的な指標は、世界中の専門家が 結集して定めたものであり、日本独自の指標は世界の孤 児となってしまうおそれがある。国際標準に従うのが本 筋であろう。
2.1AEA 事故調査団の事故原因結果と教訓 5月24日から6月2日まで、イギリス HSE の Weightman をリーダーに、柏崎の地震調査団のリーダ| ーだったフランスASNの Jamet をサブ・リーダーとした、12ヶ国から 18 人の国際的専門家による調査団 を日本に派遣し、福島の現地調査を含む調査分析を行 い、162 ページの報告書を作成し、15 の事故原因 と 16 の教訓を纏め、ウィーンの IAEA本部におけ る閣僚会議に報告した。IAEA メンバーの日本滞在 は、わずか10日であったが、精力的に調査し、日本 滞在の最終日に、この報告書を纏めたことは、昼夜を 問わずに大変な努力をされたことに敬意を表するもの である。また多方面の人と面接して、偏りのない立派 な報告書となっている。その内容は、事故の詳細な経緯に続き、15 の結論と 16の教訓として纏められている。まず最初に、現地で 大変苦労して働いている人々はじめ、規制機関の人々 も、大変忙しい中を、IAEAに協力してくれて全ての ことに答えてくれたことに感謝の意を述べている。15 の結論の内、重要な3点を記しておく。 1 設計条件の定期的な見直しが必要。 * 今回の津波の条件を見ると、設置許可時は高さ3. 1m であり、2002 年に1回見直して 5.7m としているが、 実際に起こった津波は、14.5m であった。その間に 1100年前の869年7月13日に起こった貞観地震での大 津波の記録も議論させていたが、設計条件の見直しが 行われていなかった。このような地震や津波などの自 然災害に関する事象の定期的な見直しは必須である。 * 私も、この貞観地震について調べたところ、今回の 東日本地震と同様に、三陸地方は津波で壊滅的な状況 が記されている。また夜間に昼間のように明るい閃光 が走ったとの記述もある.貞観地震は大変な地震であり、 その後も古今和歌集などにも読まれている。その一つ に「わたつみの我が身こす浪立ち返り 海人の住 むてふうらみっるかな」と読まれている。また清少 納言の父で有名な歌人である清原元輔も「君をおきて あだし心をわがもたば末の松山 波も超えなn」 と歌っている。この時、日本を治めていた清和天皇は [今回の災害は、住民に罪なし、我に罪あり。税金は 全て免除し、生き残った人々は結束して立ち上がれる よう援助する。]と言って、伊勢神宮に平安を祈願し ている。このような大地震と津波の記録を残した人々は、将 来の警鐘の気持ちがあったものと思われる。このよう な偉人の警告は、十分に反映されていなければならな かった。IAEA の指摘の前に、十分な反省が必要である。2 苛酷事故時の対応の強化 ; あり得ない前提で訓 練を実施している。真剣な対応を * 昨年10月22日に浜岡3号機において、給水喪失と 全ECCS 喪失により、外部への放射性物質の放出のシ ナリオで菅総理大臣も参加した防災訓練を実施してい る。この訓練が本当に起こる事故との認識で真剣に行 われていれば、いろいろな対策が取られて、今回のよ うな事故を未然に防げた可能性もあろ。 3 責任分担の明確化。特に国の規制機関の役割りの明 確化。 IAEA は、日本政府の要請により、2007年に IRRS (International Regulatory Review Service)を行い、政府、 原子力安全委員会、原子力安全・保安院、資源エネ ルギー庁等の責任分担が不明確と指摘したが、政府 から回答がない内に今回の事故が起きてしまった。3.1AEA閣僚会議の結論6月20から24日まで、ウィーンのIAEA本部におい て福島の事故に関する閣僚会議が行われた。 その目的は、上記IAEA 調査団による報告と、日本政 府からの公式な事故調査報告を受けた上で、事故か らの教訓及び安全対策の強化等について討議するす るものである。参加国は、IAEA に所属する 151 加盟 国の内、123 ケ国が参加し、人数は900名であった。 最終日に議長声明が行われ、28項目の Recommendation が採択された。以下にその主な点を 纏めておく。 1 IAEA の Safety Standard の強化と1年以内の見直し。 特に深層防護の強化、苛酷事故時のマネージメン ト,Multi Unit Site の評価と使用済み燃料プールの安 全対策。 2 世界の 436 全原子力発電所の安全性につき、系統的なレビューを行う。 3 国際的な専門家による、IAEA のピア・レビューの実施。 4 各国の規制当局の有効性と独立性の強化。 5 グローバルな防災対策と苛酷事故システムの強化。 各国への情報伝達及び情報入手に関して、IAEA の役割を強化する。43、4. 各国からの日本への要望 上記会議において各国代表から日本への要望が出された。主な要望を纏めておく。 1 日本政府から 700 ページを越す報告書を配られた が、肝心な事実がよく判らないので、事実を明確に 透明性を持って説明してほしい。 2 起こってしまった事故はしかたないが、避難住民 の帰還が遅れたり、汚染が拡大すれば批判が増す。 世界の土壌汚染除去の専門家を早急に集め、ワーク ショップを開いて、解決策を求めるべき。 3 サイト、地元の腹毛画最も酸 期に実施すべき。5. 日本の公約日本政府は、以上のような指摘に対し、次のよう な国際公約をした。 1 福島事故のデータを速やかにわかりやすく公開する。 2 日本の規制機関が複雑で、責任分担も必ずしも明 1確でなく、規制機関の一元化を図り、責任分担を明 - 確にする。 3 今回の津波のような新知見が出た場合、バック・フィットを確実に行う。 4 IAEA をはじめ国際原子力機関と連携を深め、協 調していく。6. アメリカのNRC発行 「21世紀の原 子炉の安全性を目指した勧告]オバマ大統領は3月17日に、「日本の原子力発電所 事故から教訓を学び、アメリカの原子力発電所の安全 性につき、包括的にレビューすること。」という指示 をだし、NRCは、それに答えて首記の12項目の勧告 を発表した。以下に主な点を記しておく。 1 設計基準地震及び洪水に対する防御機能を再評価し、 必要なら改良を行う。また基準は10年毎に 再評価すること。 2 外部電源喪失及び所内AC電源なしで、8時間炉心損 * 傷しないこと、及び核燃料と使用済み燃料は 1 72 間冷却状態を維持できること。3 全電源喪失及び複数の原子炉が巻き込まれる事態に * 対する緊急時計画を策定すること。 1 使用済み燃料プールの冷却設備の追加。 5 マークー I及びマークーII型BWR の信頼性のあ るベント設計。格納容器内及び他の建屋の水素制御及び緩和対策。7.日本も国際的な基準により規制をヨーロッパでは日本の事故を見て、原子力発電所の 運転は継続して、苛酷事故などに対する尤度を 検討するストレス・テストを今年中に行うことにして いる。日本では定期検査後の再立ち上げの条件に同テ ストを位置付けており、いわば超法規的なテストにな っている。また牛の出荷停止問題でも、日本独自の 500 ベクレル/kg を閾値としているが、WHOの基準よ り 10倍以上厳しい条件である。朝食のワカメは1700 ベクレル/kg であることを知っ ていれば日本の非常識がわかるであろう。放射線は見えないから怖いが、それならば国的な専門 家が大議論して定めた規則に従うのが当然である。今後、TM で事故後の処理をしたマネージャーなど を招聘し、福島一TMIセミナーとチェルノビル事故の 後処理をした放射線の責任者を招聘して 福島一チェルノビル・セミナーを開催する予定であ り、福島及び周辺地区の改善の参考としたい。1900/02/12“ “IAEA報告及び基準と福島事故“ “水町 渉,Wataru MIZUMACHI
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