PD 資格試験開始から5年の実施状況

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カテゴリ: 第8回
1. はじめに
(電力中央研究所は平成17年11月に材料科学研 究所に PD センターを設立し、平成18年3月より日 本非破壊検査協会規格 NDIS 0603-005の附属書に従っ て沸騰水型軽水炉原子力発電所のオーステナイト系 ステンレス鋼配管溶接部におけるき裂深さ測定の PD 資格試験を実施している。これまでに第1期から第9期までの PD 資格試験 の結果について報告1-3]を行った。今回は第 11 期ま での PD 資格試験結果の報告に加え、これまでの試 験結果の傾向について報告する。
2. PD 資格試験の実施状況2.1. PD 試験結果 - 平成22年度は第10期と 11期に試験を計3回実施 した。全受験者は5名であり、そのうち合格基準に 達したものは4名であった。第1期から 11 期までの全 受験者は 49 名(再受験を含む、延べ受験者 : 69 名) であり、合格基準に達したものは 38 名で、合格率は 79%であった。 - 第1期から11期までの各期の新規受験者と再受験者 の受験者数、合格者数と SCC 深さ測定値の RMSE(Root Mean Square Error:平均自乗誤差)を表1に示す。RMSE連絡先:(財)電力中央研究所 材料科学研究所 PD センター 〒240-0196 神奈川県横須賀市長坂 2-6-1http://criepi.denken.or.jp/pd/index.html驗RMSE““表1 各期の新規受験者と再受験者の試験結果 試驗時期 実施新規受験者再受験者 (回数) 時期| 格|RMSE | 受験 | 合格 第1期(6回) | H18.3-6 | 18 18 | 3.38|7|1| 3.62 第2期(4回) | H18.7-9 | 8|1| 6.13 | 41.55 第3期(2回) | H19.2-3 | 3 |1| 3.63 | 3 | 2 1 2.14 第4期(3回) | H19.7-84.63 4 | 3 | 2.16 第5期(3回) | H20.1-34.01| 2 11月 2.794第6期(3回) | H20.6-832|2.03第7期(2回) H21.1-2 | 1221 1.86 第8期(2回) | H21.7-8 | 3 | 3 | 1.89 | 1 |1 第9期(1回) | H22.2 | 2|0|4.22 | 0|0| / | 第10期(2回) | H22.7-8 | 2 |1 | 2.23 | 2|2 | 1.47 |第11期(1回) | H22.3-6 | 2 | 2| 1.92| 1 | 1 | 計29回 | | 47 | 18 | /| 29 | 19 |* 受験者の RMSE を算術平均(1名の場合は示さず) ** 再認証受験者は(1)のような式で表されるもので、受験者の測定技量 を示す指標である。TrinRMSE = | i-1(m - ta) ||| n | ... (1) MSE = | i=11m - th) | |m;:SCC 深さ測定値 th: SCC 深さの真とする値、53n:試験体数 表1より、新規受験者の RMSE は各期でばらつきが あるのに対して、再受験者のそれは比較的安定してい ることがわかる。これは初回受験者と再受験者との間 でのき裂測定の経験に起因するものと考えられる。な お,PD 認証更新の最大期間は5年であるため,第 11 期には PD 資格試験開始後最初の再認証試験を実施し た。当該受験者は2名で、いずれも合格している。日受験 ■合格」受験者数)改良UT 手動UT PA主体その他 図1 PD試験で使用された探傷手法図1は第11期までに PD試験で使用された探傷手順 とその結果を示す。図中の数字は受験者の延べ人数で ある。ここでは手動超音波探傷器と横波,縦波および モード変換波用探触子を組み合わせた手順を「手動 UT 法」, 手動 UT 法にフェーズドアレイ探傷法を組み合わ せた手順を「改良 UT 法」, フェーズドアレイ法を主と する手順を「PA 法」とした。図1より改良 UT 法での 受験者及び合格者が他の方法のそれより圧倒的に多い こと及び手動 UT 法での合格率が低いことがわかる。 手動 UT 法で合格した3名はいずれも第1期の受験者 である。 第11期までの合格者及び不合格者の RMSE と誤差 (解答値一真とする値) の平均値の関係を図2に示す。 既報のとおり、PD 資格試験結果は以下に示す1及び2 の合否判定基準で評価される。 1 「SCC 深さ測定値の RMSE が 3.2 mm を超えな - いこと。」 2 「測定値は真とする値に対し 4.4 mm を超えて下回わらないこと」 図2中の点線は PD 資格試験の合否判定基準の一つ である1を示しているが、RMSE が 3.2 mm 以下であ っても、2の合否判定基準により不合格となった受験。合格 × 不合格 - - RASE-32](uu)3S4!* | Xxx1 x x1xalorされ-412。 合格× 不合格 - - RASE32]RASE(mm)|XXX※ンドール測定誤差の平均値(mm) 図2 受験者の RMSE と誤差の平均値者が存在することがわかる。また、90%以上の合格者 における平均誤差の範囲が±1 mm 以内に入っている ことがわかる。合格者のうち RMSE が 2.5mm を超え平 均誤差がほぼ 1mm にあるのは少数のき裂を過大に測 定した者である。一方,RMSE が 2.5mm 程度で測定誤 差の平均値が 1mm を超えている受験者はき裂深さを 大きめに測定する傾向のある者であるといえる。2.2. PD試験受験者の傾向 - 第11 期までの PD 受験者数と結果の推移を図3に示 す。この図より第1期から4期までは期数が進むにつ れて受験者数が減少しているものの、その後はほぼ一 一定の受験者数で推移していることがわかる。また、表 1及び図3 より、新規受験者、再受験者ともに7期を 最小としてその後はほぼ一定に推移していることがわ かる。この推移は、PD 資格試験創始期における PD 有 資格者を一定数輩出する必要性および PD 有資格者所 属先の教育的な位置づけとしての PD 資格取得段階と に起因するものと考えられる。日不合格者 ■合格者第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 第7期 第8期 第9期 第10期 第11期図3 PD 受験者数と結果の推移■合格者 ■不合格者12 102030 40 50_ 60 板厚に対するき裂高さ区分(%)7090図4 き裂高さと測定誤差の標準偏差測定誤差の標準偏差(mm)10_22.3. PD 資格試験の統計分析図4はき裂深さ区分毎の測定誤差の標準偏差を合格 者と不合格者に分けて示す。合格者の標準偏差はき裂 の深さに関わらず約 1mm から 2mm の範囲内にある。 一方, 不合格者の標準偏差は板厚の 20%から 70%の範 囲で大きくなっている。これは不合格者の深さ測定値 がこの範囲のき裂に対してばらついていることを示し ている。不合格者はこの深さ範囲のき裂について重点表2 PD 試験の統計分析結果データ数 | 平均 | 標準偏差 |n(個) u(mm) o(mm) 全受験者数 | 7600.653.773700.311.9合格者 不合格者3900.984.91的に練習を重ねる必要があると考えられる。第 11 期までの全受験者のき裂深さ測定誤差の統計 分析結果を表2に示す。表2 より全受験者の平均誤差 は 0.65 mm、標準偏差は 3.77 mm であるのに対し合格 者のそれは各々0.31 mm、1.90 mm であり、これらの結 果は PD 資格試験合格者のき裂深さ測定精度の高さを 示すものである。第11期までの PD試験合格者の測定誤差のヒストグ ラムに PD 試験合格者の測定誤差の度数分布から求め た確率密度曲線を図5に示す。平均値ム、標準偏差oと する正規分布 N()の確率密度は(2)式で表される。f(x) = 1 e-““) .201903/04/24-N (0.0 1.907)N (0.31 1.907)ol ... . ..。トant1 113579 11 13 15171902527293133 35373941 434547図5 PD 試験合格者の計測誤差の分布 なお、正規分布はヒストグラム及び PD 試験合格者の 測定誤差の度数分布から求めた確率密度曲線の偏りを 明らかにするため、誤差がゼロの分布 N(0.0, 1.90)によ り求めた確率密度曲線を併せて示した。度数分布の裾 野はいずれも左右対称に広がっているが、PD試験合格 者の度数分布の位置が若干プラス側に偏っているよう に見受けられる。この度数分布のプラス側への偏りは、 前述の合格基準2による受験者の自制作用回避のため に大きい値へ読むヒューマンエラーに起因すると思わ れる。 - 既報のとおり、PD 資格試験合格者が実際の現場で SCC 深さを測定する場合、合格基準2を考慮する必要 はないことから実際の測定誤差の分布はより正規分布 に近づくと考えられる。PD 資格試験合格者の測定値 が合格基準のに抵触する確率 P(x)は、合格者の正規分 布 N (0.31, 1.903)と以下の(3)式に示す下側累積確率 P(x) で計算できる。P(x) = fx) dt .. (3)(3)による結果から P(x)= 0.0066(0.66%)となる。これは、 古川らが算出した「ある誤差を有する集団が PD 試験 に合格して SCC を測定した時に、誤差が -4.4mm を超 える確率」である最大5%より下回っており、PD 資 格者が十分に信頼できる精度でき裂深さを測定可能で あることを示すものである。553. まとめPLR 配管溶接部に発生するき裂の深さ測定に関する PD 資格試験を開始してから5年が経過した。これまで、計 29 回の試験を実施し、合格基準に達した人は再認証者も 含めて 38 名となった。これまでの試験結果の解析で得ら れた結果は以下の通りである。 1) PD 資格試験ではフェーズドアレイと手動探傷を組み合せた手順書を用いた受験者の合格率が高い。 2) PD 試験合格者の測定精度はいずれのき裂深さにお いても高精度で測定できる。一方、不合格者は肉厚 に対して 20~70%深さのき裂測定での誤差が大きい。 3) 全受験者の平均誤差は 0.65 mm、標準偏差は 3.77 --mm であるのに対し、PD 資格試験合格者の平均誤差は 0.31 mm、標準偏差は 1.90 mm であることから、PD 資格試験合格者のき裂深さ測定の精度の高さを確認 できた。4) PD 資格試験合格者の測定値が真とする値に対して 4.4mm を超えて下回る確率は 0.66%であり PD制度設 計時の計画値である 5%を十分にクリアしている。参考文献 [1] 笹原,直本, 秀, 神戸 “PD 資格試験開始から一年の実施状況”第4回保全学会予稿集, 福井, 2007. [2] 直本, 笹原, 秀““PD 資格試験開始から2年の実施状況” 第5回保全学会予稿集, 水戸, 2008. [3] 秀,笹原,直本,渡辺 “PD 資格試験開始から4年の実施状況”第7回保全学会予稿集,静岡, 2010. [4] 笹原,直本,秀,井上“SCC 深さ測定の PD 試験受験者の技量評価”保全学, Vol.9 No.1, p.44, 2010. [5] 古川, 古村,米山,山口 “超音波探傷試験によるき裂深さサイジングにおける教育訓練目標の指標 について”保全学, Vol.4 No.3, p.54, 2005.56“ “PD 資格試験開始から5年の実施状況“ “渡辺 恵司,Keiji WATANABE,東海林 一,Hajime SHOHJI,秀 耕一郎,Koichiro HIDE
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