RCIC タービン制御装置の国産化更新工事

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カテゴリ: 第8回
1. 緒言
- ABWR及びBWR の一部のプラントでは、デジタル式 RCIC タービン制御装置が適用されているが、島根原子力 発電所第2号機では、輸入品アナログ制御装置”を使用し ていた。制御性、信頼性及び保守性を向上させるととも に、改造範囲を最小化した制御システムを開発し、島根 原子力発電所第2号機に適用した。 * 今回開発した制御装置の特徴及び制御システム更新工 事について紹介する。
2. 原子炉隔離時冷却系(RCIC 系統)
図1に示すように原子炉隔離時冷却系 (RCIC : Reactor Core Isolation Cooling System)は、原子炉隔離時何らかの原 因で原子炉への給水が停止した場合に、復水貯蔵タンク または、圧力抑制プールの水を原子炉に供給し、燃料の 崩壊熱を除去するために設置されている。給水のためのポンプ(RCIC ポンプ)は、原子炉蒸気を使 用した蒸気タービン(RCIC タービン)により駆動される。また、給水は起動信号から 30 秒以内に系統定格流量を 得られる仕様となっている。連絡先:生田親男,〒690-0393 島根原松江市鹿島町片句 654-1, 中国電力(株) 島根原子力発電所 保修部 (計装), 電話:0852-82-2220, E-mail:499381@pnet.energia.co.jp原子炉格納容器ーー一番気タービンへ- 凡例一 P蒸気 → 給水原子炉圧力容器RCICポンプ TRCICタービンにゃん圧力抑制プール 復水貯蔵タンクFig.1 RCIC system configuration3. RCIC タービン制御装置3.1 信頼性向上RCIC タービン制御装置は、給水制御装置からの給水信 号に従い、タービン回転速度を制御している。表1に RCIC タービン制御装置の更新前後の構成比較を示す。ま た図2 更新前制御システム、図3に更新後制御システム を示す。更新前制御システムは、アナログ単一構成であったが、 更新後制御システムはデジタル多重化(2 重化)し、故障診 断機能を備え、故障レベルにより待機系への自動切換を 行い、単一故障での機能喪失を防止し信頼性を向上させ た。また、速度検出器についても多重化するとともに、タ ービン過速を防止する電気式非常調速機についても、多57重化することにより信頼性を向上させた。Table1 Comparison of Control Composition 項目更新後更新前 | 方式デジタル アナログ 制御装置 多重化 2重化 故障診断 有DC+AC 電源入力DCのみ 制御電源(多重化) 電源装置 | 2台(多重化) 1台 速度検出器 員数 3個(多重化) 1個 蒸气加?分員数 2個(多重化) 開度検出器 電気式非常多重化 2 out of 3 1 out of 1 調速度機RCICタービン制御装置i DC電源起動 指令ランプレート 堯生器給水低?優先 回路PD「給水信号! 制御装置速度信号 速度信号過速度検出(1/1)流量信号入口弁蒸気止め弁サーボ弁蒸気加減弁速度 検出器内蔵 ポンプ油圧シリンダRCIC タービンタービン軸受油へ (p).2RCICポンプ 一凡例一給水 ・- - 蒸気電気信号 油圧油ポンプ (タービン駆動)・Fig.2 RCIC turbine control configuration (existing)起動 指令RCICタービン制御装置 .. 3DC電源 A系コントローラトAC電源、切換給水 制御装置給水信号→B系コントローラ速度信号過速度検出(2/3)入口弁し 蒸気止め弁問度検出器 「蒸気加減弁 速度 検出器、サーボ弁、< ......... ボンプ 油圧シリンダリタービン RCIC RCIC軸受油へ ポンプ(PA-L一 給水 電気信号油ポンプ(タービン軸駆動) ・- - 蒸気油圧 多重化範囲Fig.3 RCIC turbine control configuration (upgrade)3.2 制御性向上 1更新前後での制御装置の機能比較を表2、図4~7 に示す。 (1)制御モード区分RCIC は、運転モードとしてタービン停止状態から、 給水開始までの起動制御と、給水信号に基づく給水制 御の2つがある。更新前制御装置では、この2つの運 転モードに対して1つの制御設定(制御ゲイン設定) であったが、更新後はこの2つのモードの切換えを行 うことによりそれぞれに最適な制御設定とすることが 可能となった。また、タービンおよびポンプの運転特性は、原子炉 圧力に依存することから原子炉圧力をタービン起動時 の回転速度制御に取り込み、原子炉圧力に対応した制 御定数とすることによりタービン起動の安定化を図っ ている。 (2)起動時特性RCIC タービン停止中は、タービン流入蒸気を調整す る蒸気加減弁を全開にして待機している。起動時には タービン上流に設置された入口弁を開きタービンを起 動する。タービン起動に伴い、蒸気加減弁を駆動する ための油圧が軸駆動油ポンプにより確立し、蒸気加減 弁が動作を開始する。このため起動時には蒸気加減弁 が油圧確立による制御を開始するまでの間、回転速度 の一時的なピークが存在する。更新前は、起動時の速度指令をランプ状に上昇させ る制御としていたため、起動時の一時的な回転速度ピ ークの後、速度指令に基づき速度を下降させていた。更新後は、加速度制御とし、起動時の一時的な回転 速度ピーク後は、加速度設定に基づく制御を行い、更 新前のように速度を一旦下降させることなく安定的に 給水制御まで速度を上昇させる方式とし安定的な起動が可能となった。 (3)油圧シリンダ位置フィードバック更新前は、蒸気加減弁油圧シリンダフィードバック を、油圧を用いた機械的な機構で行っていたため、調 整必要時の作業が容易ではなかった。更新後は、油圧シリンダ開度のフィードバック制御 を採用し、単独でフィードバックゲインを調整でき、 調整の簡素化および制御を安定化させた。58Table2 Comparison of control function更新後 。 更新前 制御設定起動制御と給水 | 単一設定制御を分離 原子炉圧力による 設定?補正 起動制御加速度制御 ランプレート制御油圧信号油圧シリンダ位置 電気信号 | フィードバックワンプレート発生谷らし給水量「起動信号速度指令 低?優劣P+D 回路[(比例・微分)ランプレート発生器 給水信号低?選択 △:起動人:起動完了 Fig.6 Schematic character of RCIC turbine start-up withexisting controller速度検出器速度信号加減弁開度指令... 給水信号,タービン回転速度蒸気加減弁 ーサーボ弁------------油圧シリンダ 油圧 -------- -----ニードル弁 -凡例一- 電気信号 ----- 油圧 Fig.4 RCIC turbine control logic (existing)RUKA!加速度設定停止し加減弁開度炉圧会?起動制御切替給水制御炉圧炉圧給水信号一 速度検出器給水制御P+I (比例・積分)切換加減弁開度指令 回路加速度設定起動制御P+1 (比例・積分)起動信号サーボアンプサーボ弁・・蒸気加減弁 油圧シリンダ油圧 -------開度フィードバック一凡例一- 電気信号 ----- 油圧 Fig.5 RCIC turbine control logic (upgrade)給水信号給水信号タービン回転速度・タービン回転速度 加減弁明度ランプレート発生器全開」全開速度制御ランプレート発生器給水指令低?選択△:起動A:起動完了 Fig.6 Schematic character of RCIC turbine start-up withexisting controller給水信号...ーーーーー..タービン回転速度、REAA!{加速度設定停止し全開加減弁開度全閉起動制御切替)| 給水制加速度設定給水指令△:起動△:起動完了しFig. 7 Schematic character of RCIC turbine start-up withupgrade controller3.3 保守性向上制御装置のデジタル化に伴い、制御装置特性調整をソ フトによるパラメータ設定とし、メンテナンスツールに より容易に操作、確認が可能となった。また、制御基板は他の制御装置(給水制御装置等)と 共用化を図り、保守部品を最小化した。4. 更新工事4.1 更新工事島根原子力発電所2号機第 16回定期検査(2010年3月 18日~2010年12月6日)中に更新工事を実施した。図8 にRCIC タービン全景を示す。また、図9に RCIC タービ ン制御盤を示す。59!Fig.8 RCIC steam turbineFig. 9 RCIC steam turbine controller4.2 原子炉起動前試験制御装置更新後、原子炉起動前試験として所内蒸気を 使用して以下の試験を実施し、各運転において制御状態 が安定していることを確認した。 (1)RCIC タービン無負荷試験RCIC タービンとポンプとのカップリングを切り 離し、RCIC タービンを無負荷状態として、起動・停 止および連続運転を実施した。 (2)ポンプミニマムフロー運転RCIC タービンとポンプを組合せて、ポンプミニマ ムフローの条件で起動・停止および連続運転を実施した。 4.2 原子炉起動後試験原子炉起動に合わせ、各原子炉圧力段階において、制 御系切換試験、急速起動、ステップ応答試験、運転状態 確認を実施し、いずれも良好な結果が得られた。図 10、 図 11 に原子炉通常運転圧力での RCIC 急速起動 試験を行った結果を示す。起動指令投入後、約17秒で規定給水流量に到達している。起動信号投入後、タービン停止状態では、蒸気加減弁 は全開状態であるが、タービン回転速度上昇開始と同時 に蒸気加減弁は閉動作を開始し、起動に伴う一時的な回 転速度上昇を抑制後は、直ちに加速度制御に移行し規定 給水流量となるよう安定的にタービン回転速度を制御し ている。100定格流量到達 約17秒給水流量(%)時間(s)Fig. 10 Character of RCIC feed water flow during start upwith upgrade controller回転速度,加減弁開度(0)--時間(S)Fig.11 Character of RCIC turbine speed and steam controlvalve during start up with upgrade controller5.結言RCIC タービン制御装置の制御性、信頼性及び保守性向 上を目的に島根2号機について国産化更新工事を実施し、 所定の性能が得られることを確認した。現在、1号機 RCIC タービン制御装置についても本制御 装置の適用を実施中である。また、本制御装置は、高圧 注水系(HPCI : High Pressure Coolant Injection System)蒸気 タービン制御装置にも適用可能なシステムとしており、1 号機 HPCI タービンにも適用をしていく。参考文献 [1] Terry Turbine Maintenance Guide, RCIC Application:Replaces TR-105874 and TR-016909-R1, EPRI, Palo Alto, CA: 2002. 1007460(平成23年8月31 日)“ “RCIC タービン制御装置の国産化更新工事 “ “生田 睦男,Takeo IKUTA,牛尾 嘉宏,Yoshihiro USHIO,荻原 邦弘,Kunihiro OGIHARA,戸村 孝,Takashi TOMURA,高島 博之,Hiroyuki TAKASHIMA,大田 博司,Hiroshi OTA
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