磁束漏洩法を用いた配管減肉の定点監視に関する基礎検討
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カテゴリ: 第8回
1. 緒言
東日本大震災による福島第一原発の事故後、反原発・ 脱原発の声が多く挙がっているが、原発の即時全面停止 は非現実的と考えられる。一方、新規炉の建設等はこれ まで以上に難しくなり、稼動中の炉を継続利用すること になる。よって、高経年化した発電プラントの健全性評 価についてはこれまで以上に確実性が要求されることと なる。高経年化問題のひとつに配管減肉があり、その評 価手法として磁束漏洩法(MFL)が候補のひとつに挙げら れる。MFLは磁気ヨーク等の磁化器に磁界センサを固定 したプローブを走査して減肉を評価することが一般的で ある[1, 2]。しかし、減肉評価においては定点で状態監視 の要求があり、この場合、プローブは固定して検出する ので、プローブと減肉との相対的位置の違いで検出信号 が異なる。そこで、本研究では MFL 手法の定点状態監視 への適用を念頭にプローブと減肉の相対位置が異なる場 合における MFL 信号の振る舞いを系統的に検討した。
2. 実験方法2.1 磁気ヨーク及び試料 * Fig.1に本研究で用いた磁気ヨークの形状・寸法および 測定系を示す。 磁気ヨークの材質はケイ素銅版で、励磁 コイルの巻数は 150 ターンとした。また、測定試料は 200連絡先: 菊池弘昭, 〒020-8551 盛岡市上田 4-3-5, 岩手大学,電話 : 019-621-6890,E-mail: hkiku@iwate-u.ac.jp×200 mm2の SS400 鋼の板材で厚みは5mm とした。その 中央に減肉を模擬したスリットを設けた。スリットの幅 は5, 10 mm、スリットの深さは 1, 2 mm とした。 2.2 測定方法 - 試料表面の磁界の計測にはガウスプローブ(F. W. Bell 5080) を用いた。磁気ヨークは試料上に固定し、磁気ヨー クの足間でガウスプローブを走査させ、磁界分布を計測 する。磁気ヨークの中央を x = 0、ヨークの長手方向をr 方向とし、試料表面と垂直方向をz方向とした。 磁界はr 方向成分 B、およびz方向成分 B, を計測した。測定におい ては、磁気ヨーク中央とスリット中央の位置の距離dを0 から 28 mm まで変化させて行った。3. 実験結果Fig. 2 はスリットなしの板材の磁界分布を示した図で ある。 r 方向成分 B, はヨークの足に近づくにつれて増加Excitation coilUnit: mm Magnetic yoke Fe-Si steel801969/04/12Gauss meter1900/01/092:24:00SpecimenFig.1 Dimension of magnetic yoke and measurement setup.CB-BMagnetic flux densityXXXX~~Magnetic flux density B. (mt)-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20Position x (mm) Fig.2 Distribution of magnetic flux density for specimen without slit.d (mm).... +412Magnetic flux density B (mt)+16 +20 +24 +28ムームームーももくかいおん!!1900/01/0915 20-20 -15 -10 -5 0 5Position.x(mm) (a)x-component Byd (mm)Magnetic flux density B (mT)一+8 ロー+12+-+16 - -+20+24 ムー+28・・org...............-40-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)101520(b) z-component B2 s Distribution of magnetic flux density for specimenwith slit of 5 mm width, 2 mm depth.Fig.3する。一方、z方向成分 B.は単調に減少している。 - Fig.3は幅5mm, 深さ2mmのスリットを有する試料に 対して磁界分布を測定した結果を示している。d=0 の場 合、すなわち、スリット中央が磁気ヨークの中央にある 場合、r方向成分 B,は、=0 において磁界強度がピーク 値を取る。また、スリットの端部において磁界強度の減 少がみられ、その後磁気ヨーク足に近づくと増加する。z 方向成分 B.はスリット端部に対応する位置で磁界強度がd (mm)-O-+49申01919+16 +20+24 - +28Magnetic flux densityコメントAcksacotaくらいにならなくてもいきなり400rationsorder4010メインスタ0000:00350000001900/01/08~10/のでやって10 1520-20-15-10-50 5 Position x (mm)(a)x-component ABd(mm)418ロー+12 +-+16 ...+20+24 ーーー+28Magnetic flux density AB (MT)マイスマススペースの000kg 8-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)1900/01/091900/01/1420(b) z-component AB Fig.4 Distribution of differential magnetic flux densityfor specimen with slit of 5 mm width, 2 mm depth.極小値および極大値をとる。d=0 以外の場合もスリット 中央に対応する位置でぶ方向成分 B,はピークを取り、ス リット端部の位置で大きく減少する。ただし、dが大きく なるにつれてピーク値は大きくなる。 d が 20 mm 以上で はピークの判別が難しくなっており、これはスリット位 置がヨークの足間から外の範囲にあるためと考えられる。 z方向成分 B, はスリット端部に対応する位置で磁界強度 の極小値および極大値をとっており、極値の差分が d の 増加により増加する。ただし、dが 16 mm を超えると極 大値しか得られず、d=24 mm では極値は得られなかった。 また、d = 28 mm の変化は、スリットなしの結果と近いも のとなった。これらも、スリット位置がヨークの足間か ら外の範囲にあることの影響と考えられる。 - Fig.4は、Fig.3 の結果からFig.2 のスリットなしの結果 を差し引き、その分布を位置に対して図示したものであ る。 x 方向成分の変化分AB,はスリットの中央部でピーク を取り、スリット端部で磁界強度が大きく減少する結果 となった。z方向成分の変化分AB.はスリット端部で極値 をとる。これらは、磁気ヨークとセンサを一体化したプ ローブを走査した場合に得られる結果[1]と一致する。d (nan)Magnetic flux density AB (mt)...- +8ロー+12 -+-+16+20 --- +2428............1001a4a4050%~もしももういい!きかんしれんから~10L-20-15-10-50 510 1520 Position x (mm)(a) x-component AB,d(mm):1008今““1514+-+16 ・イー+20・MINE---+28Magnetic flux density AB (mT)-10 15-15-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)101520(b) z-component AB, Fig.5 Distribution of differential magnetic flux densityfor specimen with slit of 5 mm width, 1 mm depth.- Fig. 5はスリット幅 5 mm, 深さ 1 mm の試料において Fig.4 と同様、スリットを有するときの磁界分布からスリ ットなしの結果の差分をとり、位置に対して示した図で ある。 Fig. 4の結果と同様の傾向を示すが、AB、について はピーク値がスリット深さ 2 mm のときと比べて小さく なっているのがわかる。 AB,についても傾向は一致するが 極値の絶対値がスリット深さ2mm に比べ減少する。Fig. 6はスリット幅 10 mm, 深さ 2 mm の試料において Fig.4 と同様、スリットを有するときの値からスリットな しの結果の差分をとり、位置に対して示した図である。 AB、についてはスリット幅5mm のときと比べて、ややピ ーク値が小さいことがわかる。また、スリット幅が広い 分、ピークの半値幅が大きくなっていることが明らかで ある。AB,については、スリット端部の位置で極値をとる 傾向は一致する。幅が広い分、5mm のときより大きい位 置で極値をとる。また、極値は 5 mm のときと近い値と なっている。 - 以上の結果から、初期状態、すなわち、減肉のない状d(en)?ー0してもいい12-Magnetic flux density AB (MT)-+16 - +20+24 -+28|---??????????????????それなりする1000!--10-4269-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)10151900/01/19(a) x-component ABd(mm)ーロ.. 112-+16 ーー+20+24 - +28Magnetic flux density AB (mT)...ローカ...io-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20Position x (mm)(b) z-component AB, Fig.6 Distribution of differential magnetic flux densityfor specimen with slit of 10 mm width, 2 mm depth.態と測定した結果の差分をとれば、磁気ヨークを設置し ている範囲内に減肉があれば、その位置や形状に対応し た、信号変化が得られることが明らかとなった。よって、 MFLにより磁気ヨーク設置範囲内にある減肉の位置、寸 法の推定が可能になると考えられる。参考文献 [1] H. Kikuchi, Y. Kurisawa, Y. Kamada, S. Kobayashi, K.Ara, “Feasibility Study of Magnetic Flux Leakage Method for Condition Monitoring of Wall Thinning on Tube”, International Journal of Applied Electromagnetics andMechanics, Vol. 33 Numbers 3 4/2010, pp. 1087- 1094. [2] Y. Zhang, G. Yan, “Detection of Gas Pipe Wall ThicknessBased on Electromagnetic Flux Leakage”, Russian Journal of Nondestructive Testing, Vol. 43,2007, pp. 123-132.(平成23年8月 25 日)72“ “磁束漏洩法を用いた配管減肉の定点監視に関する基礎検討“ “佐藤 界斗,Kaito SATO,清水 勇,Isamu SHIMIZU,菊池 弘昭,Hiroaki KIKUCHI
東日本大震災による福島第一原発の事故後、反原発・ 脱原発の声が多く挙がっているが、原発の即時全面停止 は非現実的と考えられる。一方、新規炉の建設等はこれ まで以上に難しくなり、稼動中の炉を継続利用すること になる。よって、高経年化した発電プラントの健全性評 価についてはこれまで以上に確実性が要求されることと なる。高経年化問題のひとつに配管減肉があり、その評 価手法として磁束漏洩法(MFL)が候補のひとつに挙げら れる。MFLは磁気ヨーク等の磁化器に磁界センサを固定 したプローブを走査して減肉を評価することが一般的で ある[1, 2]。しかし、減肉評価においては定点で状態監視 の要求があり、この場合、プローブは固定して検出する ので、プローブと減肉との相対的位置の違いで検出信号 が異なる。そこで、本研究では MFL 手法の定点状態監視 への適用を念頭にプローブと減肉の相対位置が異なる場 合における MFL 信号の振る舞いを系統的に検討した。
2. 実験方法2.1 磁気ヨーク及び試料 * Fig.1に本研究で用いた磁気ヨークの形状・寸法および 測定系を示す。 磁気ヨークの材質はケイ素銅版で、励磁 コイルの巻数は 150 ターンとした。また、測定試料は 200連絡先: 菊池弘昭, 〒020-8551 盛岡市上田 4-3-5, 岩手大学,電話 : 019-621-6890,E-mail: hkiku@iwate-u.ac.jp×200 mm2の SS400 鋼の板材で厚みは5mm とした。その 中央に減肉を模擬したスリットを設けた。スリットの幅 は5, 10 mm、スリットの深さは 1, 2 mm とした。 2.2 測定方法 - 試料表面の磁界の計測にはガウスプローブ(F. W. Bell 5080) を用いた。磁気ヨークは試料上に固定し、磁気ヨー クの足間でガウスプローブを走査させ、磁界分布を計測 する。磁気ヨークの中央を x = 0、ヨークの長手方向をr 方向とし、試料表面と垂直方向をz方向とした。 磁界はr 方向成分 B、およびz方向成分 B, を計測した。測定におい ては、磁気ヨーク中央とスリット中央の位置の距離dを0 から 28 mm まで変化させて行った。3. 実験結果Fig. 2 はスリットなしの板材の磁界分布を示した図で ある。 r 方向成分 B, はヨークの足に近づくにつれて増加Excitation coilUnit: mm Magnetic yoke Fe-Si steel801969/04/12Gauss meter1900/01/092:24:00SpecimenFig.1 Dimension of magnetic yoke and measurement setup.CB-BMagnetic flux densityXXXX~~Magnetic flux density B. (mt)-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20Position x (mm) Fig.2 Distribution of magnetic flux density for specimen without slit.d (mm).... +412Magnetic flux density B (mt)+16 +20 +24 +28ムームームーももくかいおん!!1900/01/0915 20-20 -15 -10 -5 0 5Position.x(mm) (a)x-component Byd (mm)Magnetic flux density B (mT)一+8 ロー+12+-+16 - -+20+24 ムー+28・・org...............-40-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)101520(b) z-component B2 s Distribution of magnetic flux density for specimenwith slit of 5 mm width, 2 mm depth.Fig.3する。一方、z方向成分 B.は単調に減少している。 - Fig.3は幅5mm, 深さ2mmのスリットを有する試料に 対して磁界分布を測定した結果を示している。d=0 の場 合、すなわち、スリット中央が磁気ヨークの中央にある 場合、r方向成分 B,は、=0 において磁界強度がピーク 値を取る。また、スリットの端部において磁界強度の減 少がみられ、その後磁気ヨーク足に近づくと増加する。z 方向成分 B.はスリット端部に対応する位置で磁界強度がd (mm)-O-+49申01919+16 +20+24 - +28Magnetic flux densityコメントAcksacotaくらいにならなくてもいきなり400rationsorder4010メインスタ0000:00350000001900/01/08~10/のでやって10 1520-20-15-10-50 5 Position x (mm)(a)x-component ABd(mm)418ロー+12 +-+16 ...+20+24 ーーー+28Magnetic flux density AB (MT)マイスマススペースの000kg 8-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)1900/01/091900/01/1420(b) z-component AB Fig.4 Distribution of differential magnetic flux densityfor specimen with slit of 5 mm width, 2 mm depth.極小値および極大値をとる。d=0 以外の場合もスリット 中央に対応する位置でぶ方向成分 B,はピークを取り、ス リット端部の位置で大きく減少する。ただし、dが大きく なるにつれてピーク値は大きくなる。 d が 20 mm 以上で はピークの判別が難しくなっており、これはスリット位 置がヨークの足間から外の範囲にあるためと考えられる。 z方向成分 B, はスリット端部に対応する位置で磁界強度 の極小値および極大値をとっており、極値の差分が d の 増加により増加する。ただし、dが 16 mm を超えると極 大値しか得られず、d=24 mm では極値は得られなかった。 また、d = 28 mm の変化は、スリットなしの結果と近いも のとなった。これらも、スリット位置がヨークの足間か ら外の範囲にあることの影響と考えられる。 - Fig.4は、Fig.3 の結果からFig.2 のスリットなしの結果 を差し引き、その分布を位置に対して図示したものであ る。 x 方向成分の変化分AB,はスリットの中央部でピーク を取り、スリット端部で磁界強度が大きく減少する結果 となった。z方向成分の変化分AB.はスリット端部で極値 をとる。これらは、磁気ヨークとセンサを一体化したプ ローブを走査した場合に得られる結果[1]と一致する。d (nan)Magnetic flux density AB (mt)...- +8ロー+12 -+-+16+20 --- +2428............1001a4a4050%~もしももういい!きかんしれんから~10L-20-15-10-50 510 1520 Position x (mm)(a) x-component AB,d(mm):1008今““1514+-+16 ・イー+20・MINE---+28Magnetic flux density AB (mT)-10 15-15-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)101520(b) z-component AB, Fig.5 Distribution of differential magnetic flux densityfor specimen with slit of 5 mm width, 1 mm depth.- Fig. 5はスリット幅 5 mm, 深さ 1 mm の試料において Fig.4 と同様、スリットを有するときの磁界分布からスリ ットなしの結果の差分をとり、位置に対して示した図で ある。 Fig. 4の結果と同様の傾向を示すが、AB、について はピーク値がスリット深さ 2 mm のときと比べて小さく なっているのがわかる。 AB,についても傾向は一致するが 極値の絶対値がスリット深さ2mm に比べ減少する。Fig. 6はスリット幅 10 mm, 深さ 2 mm の試料において Fig.4 と同様、スリットを有するときの値からスリットな しの結果の差分をとり、位置に対して示した図である。 AB、についてはスリット幅5mm のときと比べて、ややピ ーク値が小さいことがわかる。また、スリット幅が広い 分、ピークの半値幅が大きくなっていることが明らかで ある。AB,については、スリット端部の位置で極値をとる 傾向は一致する。幅が広い分、5mm のときより大きい位 置で極値をとる。また、極値は 5 mm のときと近い値と なっている。 - 以上の結果から、初期状態、すなわち、減肉のない状d(en)?ー0してもいい12-Magnetic flux density AB (MT)-+16 - +20+24 -+28|---??????????????????それなりする1000!--10-4269-20 -15 -10-5 0 5 Position x (mm)10151900/01/19(a) x-component ABd(mm)ーロ.. 112-+16 ーー+20+24 - +28Magnetic flux density AB (mT)...ローカ...io-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20Position x (mm)(b) z-component AB, Fig.6 Distribution of differential magnetic flux densityfor specimen with slit of 10 mm width, 2 mm depth.態と測定した結果の差分をとれば、磁気ヨークを設置し ている範囲内に減肉があれば、その位置や形状に対応し た、信号変化が得られることが明らかとなった。よって、 MFLにより磁気ヨーク設置範囲内にある減肉の位置、寸 法の推定が可能になると考えられる。参考文献 [1] H. Kikuchi, Y. Kurisawa, Y. Kamada, S. Kobayashi, K.Ara, “Feasibility Study of Magnetic Flux Leakage Method for Condition Monitoring of Wall Thinning on Tube”, International Journal of Applied Electromagnetics andMechanics, Vol. 33 Numbers 3 4/2010, pp. 1087- 1094. [2] Y. Zhang, G. Yan, “Detection of Gas Pipe Wall ThicknessBased on Electromagnetic Flux Leakage”, Russian Journal of Nondestructive Testing, Vol. 43,2007, pp. 123-132.(平成23年8月 25 日)72“ “磁束漏洩法を用いた配管減肉の定点監視に関する基礎検討“ “佐藤 界斗,Kaito SATO,清水 勇,Isamu SHIMIZU,菊池 弘昭,Hiroaki KIKUCHI