共同溝暑熱環境最適化への取り組み(1) 蒸気配管放散熱量の改善
公開日:
カテゴリ: 第8回
1. 諸言
核燃料サイクル工学研究所構内の共同溝には、所内各 施設へ供給する電気、水(上水・工業用水)及び蒸気等、ユ ーティリティに係る配線及び配管等が設置されている。共同溝内は、蒸気配管が設置されていることから配管 等からの放熱により暑熱環境にある。調査の結果、小口 径バルブ周辺の保温材の末設置部分及び蒸気配管保温材 の表面からの放熱が多いため、高温環境となることが判 明した。このため、小口径弁でも適用できるフレキシブ ルな保温材の採用と蒸気配管への保温材の追加施工をす ることで、配管等からの放熱を低減させることができた。本報告では、共同溝内の温度分布の調査、熱源の特定 及び取り組んだ改善策について述べる。
2. 暑熱環境改善の必要性
対象とした共同溝は、総延長約 2.7km である。このう ち蒸気配管は、同一箇所で最大 3 系統敷設されており、 蒸気配管の総延長は約 3.8km となる。共同溝及び蒸気配管等の設置概要を図1に、共同溝の内観を図2に示す。JIJ0 5fa-bo[C] :20:00 (ペント 管)A134,84図1 共同溝及び蒸気配管等の設置概要図2 共同溝の内観」蒸気配管及び配管上の弁は、内部の流体温度が約200°C と高温のため、配管及び大口径(200A 以上)の弁には保温 材(ロックウール(50mm)+鉄線+ポリエチレンフィルム +着色カラー鉄板)が施工されている。 _ しかしながら、保温材表面からの放散熱量が高く、ま た小口径(20A~50A)の弁は裸管状態となっていること、 更には、送排風機の能力不足及び配置バランス等の問題 により共同溝内の温度は高温状態となっている。特に著 しい個所は図1 に示すエリア 1、エリア 2 及びエリア 3 付近である。この3箇所における平成 20 年度から平成 22 年度まで の共同溝内等の温度を図3に示す(週1回測定)。エリア1 ......エリア3エリア2 外気温0いう4543温度(°C)5.....に57781416105 1155HT3115 BC946HBOAT10/5 110 19737の104 111STICHGTWW TICOHWT/ESH年月日図3 共同溝内の温度変化(夏期時は各測定点とも温度が上昇し、特にエリア 1 に おいては最高 69°Cを記録している。また、冬期時におい ても40°C前後を記録しており、共同溝内は常に高温状態 となっている。次に、設置されている代表的な設備及び機器類の一般 的な使用温度を表1に示す。渦巻ポンプ及びリレーとも既に共同溝内の温度は使用 温度を超過しており、タイマーについても使用温度上限 に近い温度となっている。一方、共同溝内に敷設されているケーブルは、大別す ると制御用の CVVケーブル(制御用ビニル絶縁ビニルシ ースケーブル)及び動力用のCVケーブル(架橋ポリエチレ ン絶縁ビニルシースケーブル)となっている。CVVケーブルは、新品ケーブルの加速劣化試験によ ると、周囲環境温度が 35°Cの場合の寿命は約62 年である が、仮に 50°Cの場合の寿命は約15年、60°Cの場合の寿命 は約6年になると言われている。CV ケーブルは、架橋ポリエチレン、ビニル及びポリエ チレン等の高分子材料から構成されるため、長い時間高 温にさらされると、引張強さ及び伸びが低下し劣化する。 このような劣化による高分子材料の寿命低下は、温度が 10°C上昇すると、寿命が半分(10°C半減則)になると考えら れている。 * 以上のことから、共同溝内が常に高温状態であること から次のような課題があった。 (1) ケーブル及びポンプ等の設備の劣化 (2) リレー・タイマー等の制御機器類の誤作動 (3) 設備及び機器類の耐用年数の減少 (4) 作業者に対する熱中症等発生のリスク設備及び機器類の健全性を確保し、更には作業者の熱 中症等の労働災害を防止するため、速やかに共同溝内の 高温状態(暑熱環境)を改善する必要があった。3. 共同溝内暑熱環境の調査- 共同溝内の暑熱環境が著しいエリア 1、エリア 2及びエ リア3のうちエリア 1 を対象に、温度上昇の原因を調査 するため、温度測定(周囲温度、配管表面温度)及び蒸気配 管からの放散熱量の算出(熱診断)を実施した。エリア1の 調査範囲は約 145m であり、このエリアの中には2本の蒸 気配管(蒸気配管 A・蒸気配管 B)があり、それぞれ 300A(ロ ックウール保温材 50mm)となっている。調査方法は、接触型表面温度計による周囲温度及び配 管表面温度の測定、サーモグラフィによる熱画像解析に より JIS A 9501「保温保冷工事施工標準」に基づき放散 熱量の算出を行った。概略調査点を図4に、調査結果を 表2に示す。- 83、給気側蒸気の流れ排気側 1Lーーー図4 調査点(エリア 1)表2 調査結果(エリア 1)測定? (平成22年9月2日測定)測定点周囲温度表面温度放散熱量(°C)ave (°C)(W/m)3952.91733950.11900/05/133|1900/03/02|1900/03/13 4:48:00|1900/06/07621900/03/11 21:36:001900/05/171900/03/021900/03/15 14:24:001900/07/14調査の結果、共同溝内の周囲温度については給気側か ら排気側へ進むに連れて上昇し、最も高い3~5の地点 では 62°Cになっており、給気側に比べ 23°Cの温度上昇が 認められた。また、配管表面温度についても5の地点で 最高 75.6°Cになっている。これは共同溝の特徴(閉鎖的・配管延長・放散熱量・換 気量のバランスによって温度にばらつきはあるものの、 蒸気配管からの放散熱量が、共同溝内の換気エアの流れ で排気側へと運ばれていることが原因と推測した。また、 蒸気配管上の小口径弁周辺のホットスポット(最高約 187°C)及び配管のサポート全体の温度上昇を確認した。4. 蒸気配管放散熱量の改善1 3 項の調査結果からエリア 1 内の暑熱環境を改善する ため、蒸気配管を小口径弁及び配管に分け、放散熱量の 低減を図ることとした。4.1 小口径弁の改善 4. 1.1 改善概要 - 小口径弁には、玉型弁及び仕切弁があり、蒸気配管系 統のドレン排出装置上に設置されている。エリア 1 内に は、25 個(玉形弁 20 個、仕切弁5個)の弁が設置されてお り、これら全てが裸管状態となっている。このため、こ れら小口径弁全数の表面温度を低下させ放散熱量の低減 を図ることとした。低減に際しては、既存設備を大幅に変更することなく、 小口径弁の保守の容易性及び費用対効果等の観点から、 断熱材の選定条件として、耐熱性、防水性、断熱性、作 業性及び経済性に着目し検討・調査した結果、市販品に おいて条件に合致する着脱式断熱材を採用した。断熱材は、外皮材がシリコンコーティングガラスクロ ス、内綿がガラスマット、内皮材がガラスクロスを使用 しているため、防水性に優れており、最高使用温度は 250°Cである。また、形状は袋型となっており、着脱が自 在であり、取付けも容易であるため作業性が良く、共同 溝内の省スペースにも対応できる。着脱式断熱材の外観 を図5に示す。図5 着脱式断熱材の外観4. 1.2 着脱式断熱材の効果 * エリア1 内の 25 個(玉形弁 20個、仕切弁5個)の弁に着 脱式断熱材を取付け、サーモグラフィにより代表弁の表 面温度を測定し、断熱材取付け前後の比較による差を低 減効果とした。取付け前後の表面温度分布を図6に、放 散熱量の結果を表3に示す。-84取付前1183613:09010 20090111.8S10.9-1118211273,000 10.900178gh001507取付後、31日344.9 220901\14429015500図6 取付前後の表面温度分布表3 小口径弁における取付前後の放散熱量平均放散熱量(W/低)種筑仕様低減放散熱量(W/個)偶数低浸放散熱母(kW)取付前取付後玉形弁13411312120||2.420k-20A フランジ仕切弁141|5|360.2玉型弁の取付け前の平均放散熱量は 134W/個であった が、取付け後は 13W/個となり、121W/個の低減となった。 また、仕切弁の取付け前の平均放散熱量は、41W/個であ ったが、取付け後は 5W/個となり、36W/個の低減となっ た。結果、エリア1 内の 25個(玉形弁 20個、仕切弁5個) の弁の放散熱量は、計2.6kW 低減した。4.2 蒸気配管の改善 4.2.1 改善概要 1 蒸気配管には前述のとおり保温材が施工されているが、 ティ部付近の保温材表面では最高約 103°Cとなっている。 放散熱量は表面積に比例するため、300A 程度の大口径の 蒸気配管の場合は、放散熱量も必然と高くなる。このた め、これら蒸気配管保温材の表面温度を低下させ放散熱 量の低減を図ることとした。低減に際しては、既存設備を大幅に変更することなく、 作業工期の短縮、保温(断熱)性能の向上、共同溝内保守作業スペースの確保及び費用対効果等の観点から検討・調 査した結果、これらの条件に合致する製品及び工法が文 献)に掲載されており、超撥水・超低熱伝導率断熱材 「Pyrogel XT」及びe-AIM 工法(増し保温工法)を採用し た。 200°Cにおける熱伝導率は、従来の保温材(ロックウー ル)が約 0.0064W/mK であるのに対し、「Pyrogel XT」は約 0.0024 W/mK となり、1/3 程度の低い熱伝導率を持ってい る。従来の断熱材との熱伝導率の比較を図7に示す。*1 出典:ニチアスの 355より引用・加工-Arraget XT(カタログ値) ーー・ロックウール5参考値) -ーグラスウール保(KSも考告)いカルシウム君519-130356 -3Dバーライト2-25JSが約))200-150-100-5000031520020303504045050530001 平均温度(°C)図7 従来の断熱材との熱伝導率比較図7* 断熱材は、ガラス繊維よりなるフェルト状基材に、空 気を閉じ込めたナノサイズ粒子シリカエアロジェルを含 有させた高性能断熱材である。柔軟性及び高い撥水性が 特徴の断熱材であり、既設外装板+ Pyrogel XT +外装板の 施工で保温効果が得られる。また e-AIM 工法増し保温 工法)は、狭隘な箇所への適用、作業工期の短縮及び廃棄 物低減の観点から有効な工法である。断熱材の外観を図8 に、e-AIM 工法を図2に示す。あこのおいあいさ図8 断熱材(Pyrogel XTの外観-8512 出典:ニチアス技No.355 より引用図9 e-AIM工法4.2.2 断熱材「Pyrogel XT」の効果放散熱量の低減及び施工の容易性等を事前に実施した 試験にて確認できたため、本施工を実施した。施工範囲 は、エリア1の蒸気配管 A及びBライン(300A)各 70m と した。施工仕様は、既設配管の外装材外側に、Pyrogel XT(10mm)を上巻きし、さらに新規外装材(カラー鉄板 0.3t)を施工した。また、曲部及び弁関係の箇所については、 外装材を取り外し、既設保温材の外側に Pyrogel XT(10mm)を上巻きし、SUS 鋼線にて緊縛、既設外装材を 施工した。効果の確認は、施工の前後でサーモグラフィによる表 面温度測定及び放散熱量測定を行い比較し、その差を低 減効果とした。施工前後の表面温度分布を図 10 に、施工 結果を表4に示す。施工前施工後8図 10 施工前後の表面温度分布表4 配管における施工前後の放散熱量【施工前】周囲温度測定所平均放散熱器 環境換算値)測定値(平成22年9月2日制定)放故熱量 周囲温度 実測距離 (環境換算値) (給気尉)(C)(排気制)(W/m)(C)20770144903962Aライン Bライン 合計1757012.2538214026.74周囲温度【施工後】測定値(平成23年3月10日測定) 平均放散量放散熱量 周囲温度 測定箇所実況距離 【環境換算盛り|環境換算値り、(給気) (W/m)(C) Aライン 120840022.1 日ライン 1409,800 合計| 140 18,2001 *3:温度20.0°C及び風速0.0m/seaによる換算値【排気別)(C)42蒸気配管の施工前の放散熱量は 26,740W であったが、 施工後は18,200W となり、8,540Wの低減となった。なお、 今回既設保温材に Pyrogel XT(10mm)を追加施工したこと で、配管外径が若干大きくなったが、他配管及び機器類 とのクリアランスは取れており、メンテナンス等の作業 性に影響はないものと考えられる。5. 放散熱量改善の効果共同溝内の暑熱環境の改善対策として、小口径弁へは 着脱式断熱材の取付け及び蒸気配管へは Pyrogel XT によ る追加保温施工を実施した。小口径弁はエリア I からエ リア 3内で計 285 個あり、そのうちエリア1 の 25 個が対 策済となった。この結果、小口径弁の表面温度は平均し て約80°C低下し、年間放散熱量は約22,800kW 低減した。 これらから残り小口径弁260個の対策を実施することで、 年間放散熱量が約 435,000kW 低減することが期待できる。 小口径弁の改善に係る予想される低減放散熱量を表 5 に 示す。8612 表5 小口径弁の改善に係る低減放散熱量釋義仕様低減放散熱量(kWh/2)数量低減放教熱量(kW/年)エ玉形弁 (208-20A/フランジ。, 0.12\21,024エリア仕切弁 120k-20N/フランジ0.041752玉形弁 120k-20A/フランジ15.0.244084096仕切弁 |20k-20A/フランジ0.221019272エリア2|玉形弁| 10k-20A/フランジ0.2410121024仕切弁 (105~20A/フランジ!0.229636玉形弁|20k-20A/フランジ0.0960 .47.304仕切弁120K-20A/フランジ0.04155256玉形弁|20-20A/フランジフランジ0.24155|10512エリア3仕切弁(20k-20A/フランジ0.221927玉形弁[20k-20A/フランジ| 9119131810.24 仕切弁 20K-20A/フランジ|0.222344326また、蒸気配管はエリア 1(70m×2本)、エリア 2(165m ×3本)及びエリア 3(433m×3本)内で計約 2km あり、そ のうちエリア1の140m が対策済となった。この結果、配 管表面温度は平均して約4.5°C低下し、年間放散熱量は約 73,000kW 低減した。これらから残りのエリア2及びエリ ア3の蒸気配管の対策を実施することで、年間放散熱量 が約 670,000kW 低減することが期待できる。蒸気配管の 改善に係る予想される低減放散熱量を図 11 に示す。350000030000002500000..120899872,000,0004......エリア31,604,473““15000001000000エリア250000061140412089.987エリア31904/05/22 11:21:07エリア2611404・232,403.!エリア115943221対策訪対策後図11 蒸気配管の改善に係る低減放散熱盤以上、平成22年3月8日にエリア1内の蒸気配管放散 熱量の改善が終了した。終了後から平成 23 年7月末まで 共同溝内の温度を測定(週1回)した結果、外気温は過去2 年より高いものの共同溝内の温度は平均約 10°C低下した。エリア1の温度変化を図 12 に示す。「改善athkn55あいりメロ年4月5月6月7月8月9月10月 11月12月 1月2月 3月?H21エリア1 ??H22・外気温HOOH21 ・外気温H23・エリア1・・・・H22エリア1~H23・外気温図 12 共同溝(エリア 1)の温度変化6.結言共同溝は、所内各施設へユーティリティの安全・安定 供給をするうえで、大変重要なものである。暑熱に伴う 機器類の誤作動等により、万一ユーティリティが停止し た場合、各施設の操業に多大な影響を与えることになる。本改善により、機器類の誤作動防止、設備及び機器類 寿命の延命化が図れることは、信頼性及び安全性が向上 するばかりか、コスト削減にもつながる。また、放散熱 量を低減することは、蒸気供給に係る伝送効率が向上し 熱損失低減による省エネルギーの面も併せ持っている。 更には、共同溝内で作業に従事する者の労働安全衛生面 においても、快適な作業環境を作り出すことは大変重要 なことである。 1. 本改善策により一定の効果を得ることができたため、 今後はエリアを拡大し、共同溝全体に渡って暑熱環境の 改善を図る予定である。参考文献 [1] 喜多誠、“制御ケーブル寿命推定への加速劣化試験適用の評価”、北陸電力株式会社技術開発研究所研究開発年報、43 号、2009、pp.80-81. [2] ニチアス技術時報、No.355、2010、pp.9-14.(平成 23 年8月25日)-87“ “共同溝暑熱環境最適化への取り組み(1) 蒸気配管放散熱量の改善“ “石山 道,Toru ISHIYAMA,川崎 一男,Ichio KAWASAKI,松本 岳也,Takenari MATSUMOTO,寺田 秀行,Hideyuki TERADA,菊池 明夫,Akio KIKUCHI,溝口 剛,Tsuyoshi MIZOGUCHI,池田 博之,Hiroyuki IKEDA
核燃料サイクル工学研究所構内の共同溝には、所内各 施設へ供給する電気、水(上水・工業用水)及び蒸気等、ユ ーティリティに係る配線及び配管等が設置されている。共同溝内は、蒸気配管が設置されていることから配管 等からの放熱により暑熱環境にある。調査の結果、小口 径バルブ周辺の保温材の末設置部分及び蒸気配管保温材 の表面からの放熱が多いため、高温環境となることが判 明した。このため、小口径弁でも適用できるフレキシブ ルな保温材の採用と蒸気配管への保温材の追加施工をす ることで、配管等からの放熱を低減させることができた。本報告では、共同溝内の温度分布の調査、熱源の特定 及び取り組んだ改善策について述べる。
2. 暑熱環境改善の必要性
対象とした共同溝は、総延長約 2.7km である。このう ち蒸気配管は、同一箇所で最大 3 系統敷設されており、 蒸気配管の総延長は約 3.8km となる。共同溝及び蒸気配管等の設置概要を図1に、共同溝の内観を図2に示す。JIJ0 5fa-bo[C] :20:00 (ペント 管)A134,84図1 共同溝及び蒸気配管等の設置概要図2 共同溝の内観」蒸気配管及び配管上の弁は、内部の流体温度が約200°C と高温のため、配管及び大口径(200A 以上)の弁には保温 材(ロックウール(50mm)+鉄線+ポリエチレンフィルム +着色カラー鉄板)が施工されている。 _ しかしながら、保温材表面からの放散熱量が高く、ま た小口径(20A~50A)の弁は裸管状態となっていること、 更には、送排風機の能力不足及び配置バランス等の問題 により共同溝内の温度は高温状態となっている。特に著 しい個所は図1 に示すエリア 1、エリア 2 及びエリア 3 付近である。この3箇所における平成 20 年度から平成 22 年度まで の共同溝内等の温度を図3に示す(週1回測定)。エリア1 ......エリア3エリア2 外気温0いう4543温度(°C)5.....に57781416105 1155HT3115 BC946HBOAT10/5 110 19737の104 111STICHGTWW TICOHWT/ESH年月日図3 共同溝内の温度変化(夏期時は各測定点とも温度が上昇し、特にエリア 1 に おいては最高 69°Cを記録している。また、冬期時におい ても40°C前後を記録しており、共同溝内は常に高温状態 となっている。次に、設置されている代表的な設備及び機器類の一般 的な使用温度を表1に示す。渦巻ポンプ及びリレーとも既に共同溝内の温度は使用 温度を超過しており、タイマーについても使用温度上限 に近い温度となっている。一方、共同溝内に敷設されているケーブルは、大別す ると制御用の CVVケーブル(制御用ビニル絶縁ビニルシ ースケーブル)及び動力用のCVケーブル(架橋ポリエチレ ン絶縁ビニルシースケーブル)となっている。CVVケーブルは、新品ケーブルの加速劣化試験によ ると、周囲環境温度が 35°Cの場合の寿命は約62 年である が、仮に 50°Cの場合の寿命は約15年、60°Cの場合の寿命 は約6年になると言われている。CV ケーブルは、架橋ポリエチレン、ビニル及びポリエ チレン等の高分子材料から構成されるため、長い時間高 温にさらされると、引張強さ及び伸びが低下し劣化する。 このような劣化による高分子材料の寿命低下は、温度が 10°C上昇すると、寿命が半分(10°C半減則)になると考えら れている。 * 以上のことから、共同溝内が常に高温状態であること から次のような課題があった。 (1) ケーブル及びポンプ等の設備の劣化 (2) リレー・タイマー等の制御機器類の誤作動 (3) 設備及び機器類の耐用年数の減少 (4) 作業者に対する熱中症等発生のリスク設備及び機器類の健全性を確保し、更には作業者の熱 中症等の労働災害を防止するため、速やかに共同溝内の 高温状態(暑熱環境)を改善する必要があった。3. 共同溝内暑熱環境の調査- 共同溝内の暑熱環境が著しいエリア 1、エリア 2及びエ リア3のうちエリア 1 を対象に、温度上昇の原因を調査 するため、温度測定(周囲温度、配管表面温度)及び蒸気配 管からの放散熱量の算出(熱診断)を実施した。エリア1の 調査範囲は約 145m であり、このエリアの中には2本の蒸 気配管(蒸気配管 A・蒸気配管 B)があり、それぞれ 300A(ロ ックウール保温材 50mm)となっている。調査方法は、接触型表面温度計による周囲温度及び配 管表面温度の測定、サーモグラフィによる熱画像解析に より JIS A 9501「保温保冷工事施工標準」に基づき放散 熱量の算出を行った。概略調査点を図4に、調査結果を 表2に示す。- 83、給気側蒸気の流れ排気側 1Lーーー図4 調査点(エリア 1)表2 調査結果(エリア 1)測定? (平成22年9月2日測定)測定点周囲温度表面温度放散熱量(°C)ave (°C)(W/m)3952.91733950.11900/05/133|1900/03/02|1900/03/13 4:48:00|1900/06/07621900/03/11 21:36:001900/05/171900/03/021900/03/15 14:24:001900/07/14調査の結果、共同溝内の周囲温度については給気側か ら排気側へ進むに連れて上昇し、最も高い3~5の地点 では 62°Cになっており、給気側に比べ 23°Cの温度上昇が 認められた。また、配管表面温度についても5の地点で 最高 75.6°Cになっている。これは共同溝の特徴(閉鎖的・配管延長・放散熱量・換 気量のバランスによって温度にばらつきはあるものの、 蒸気配管からの放散熱量が、共同溝内の換気エアの流れ で排気側へと運ばれていることが原因と推測した。また、 蒸気配管上の小口径弁周辺のホットスポット(最高約 187°C)及び配管のサポート全体の温度上昇を確認した。4. 蒸気配管放散熱量の改善1 3 項の調査結果からエリア 1 内の暑熱環境を改善する ため、蒸気配管を小口径弁及び配管に分け、放散熱量の 低減を図ることとした。4.1 小口径弁の改善 4. 1.1 改善概要 - 小口径弁には、玉型弁及び仕切弁があり、蒸気配管系 統のドレン排出装置上に設置されている。エリア 1 内に は、25 個(玉形弁 20 個、仕切弁5個)の弁が設置されてお り、これら全てが裸管状態となっている。このため、こ れら小口径弁全数の表面温度を低下させ放散熱量の低減 を図ることとした。低減に際しては、既存設備を大幅に変更することなく、 小口径弁の保守の容易性及び費用対効果等の観点から、 断熱材の選定条件として、耐熱性、防水性、断熱性、作 業性及び経済性に着目し検討・調査した結果、市販品に おいて条件に合致する着脱式断熱材を採用した。断熱材は、外皮材がシリコンコーティングガラスクロ ス、内綿がガラスマット、内皮材がガラスクロスを使用 しているため、防水性に優れており、最高使用温度は 250°Cである。また、形状は袋型となっており、着脱が自 在であり、取付けも容易であるため作業性が良く、共同 溝内の省スペースにも対応できる。着脱式断熱材の外観 を図5に示す。図5 着脱式断熱材の外観4. 1.2 着脱式断熱材の効果 * エリア1 内の 25 個(玉形弁 20個、仕切弁5個)の弁に着 脱式断熱材を取付け、サーモグラフィにより代表弁の表 面温度を測定し、断熱材取付け前後の比較による差を低 減効果とした。取付け前後の表面温度分布を図6に、放 散熱量の結果を表3に示す。-84取付前1183613:09010 20090111.8S10.9-1118211273,000 10.900178gh001507取付後、31日344.9 220901\14429015500図6 取付前後の表面温度分布表3 小口径弁における取付前後の放散熱量平均放散熱量(W/低)種筑仕様低減放散熱量(W/個)偶数低浸放散熱母(kW)取付前取付後玉形弁13411312120||2.420k-20A フランジ仕切弁141|5|360.2玉型弁の取付け前の平均放散熱量は 134W/個であった が、取付け後は 13W/個となり、121W/個の低減となった。 また、仕切弁の取付け前の平均放散熱量は、41W/個であ ったが、取付け後は 5W/個となり、36W/個の低減となっ た。結果、エリア1 内の 25個(玉形弁 20個、仕切弁5個) の弁の放散熱量は、計2.6kW 低減した。4.2 蒸気配管の改善 4.2.1 改善概要 1 蒸気配管には前述のとおり保温材が施工されているが、 ティ部付近の保温材表面では最高約 103°Cとなっている。 放散熱量は表面積に比例するため、300A 程度の大口径の 蒸気配管の場合は、放散熱量も必然と高くなる。このた め、これら蒸気配管保温材の表面温度を低下させ放散熱 量の低減を図ることとした。低減に際しては、既存設備を大幅に変更することなく、 作業工期の短縮、保温(断熱)性能の向上、共同溝内保守作業スペースの確保及び費用対効果等の観点から検討・調 査した結果、これらの条件に合致する製品及び工法が文 献)に掲載されており、超撥水・超低熱伝導率断熱材 「Pyrogel XT」及びe-AIM 工法(増し保温工法)を採用し た。 200°Cにおける熱伝導率は、従来の保温材(ロックウー ル)が約 0.0064W/mK であるのに対し、「Pyrogel XT」は約 0.0024 W/mK となり、1/3 程度の低い熱伝導率を持ってい る。従来の断熱材との熱伝導率の比較を図7に示す。*1 出典:ニチアスの 355より引用・加工-Arraget XT(カタログ値) ーー・ロックウール5参考値) -ーグラスウール保(KSも考告)いカルシウム君519-130356 -3Dバーライト2-25JSが約))200-150-100-5000031520020303504045050530001 平均温度(°C)図7 従来の断熱材との熱伝導率比較図7* 断熱材は、ガラス繊維よりなるフェルト状基材に、空 気を閉じ込めたナノサイズ粒子シリカエアロジェルを含 有させた高性能断熱材である。柔軟性及び高い撥水性が 特徴の断熱材であり、既設外装板+ Pyrogel XT +外装板の 施工で保温効果が得られる。また e-AIM 工法増し保温 工法)は、狭隘な箇所への適用、作業工期の短縮及び廃棄 物低減の観点から有効な工法である。断熱材の外観を図8 に、e-AIM 工法を図2に示す。あこのおいあいさ図8 断熱材(Pyrogel XTの外観-8512 出典:ニチアス技No.355 より引用図9 e-AIM工法4.2.2 断熱材「Pyrogel XT」の効果放散熱量の低減及び施工の容易性等を事前に実施した 試験にて確認できたため、本施工を実施した。施工範囲 は、エリア1の蒸気配管 A及びBライン(300A)各 70m と した。施工仕様は、既設配管の外装材外側に、Pyrogel XT(10mm)を上巻きし、さらに新規外装材(カラー鉄板 0.3t)を施工した。また、曲部及び弁関係の箇所については、 外装材を取り外し、既設保温材の外側に Pyrogel XT(10mm)を上巻きし、SUS 鋼線にて緊縛、既設外装材を 施工した。効果の確認は、施工の前後でサーモグラフィによる表 面温度測定及び放散熱量測定を行い比較し、その差を低 減効果とした。施工前後の表面温度分布を図 10 に、施工 結果を表4に示す。施工前施工後8図 10 施工前後の表面温度分布表4 配管における施工前後の放散熱量【施工前】周囲温度測定所平均放散熱器 環境換算値)測定値(平成22年9月2日制定)放故熱量 周囲温度 実測距離 (環境換算値) (給気尉)(C)(排気制)(W/m)(C)20770144903962Aライン Bライン 合計1757012.2538214026.74周囲温度【施工後】測定値(平成23年3月10日測定) 平均放散量放散熱量 周囲温度 測定箇所実況距離 【環境換算盛り|環境換算値り、(給気) (W/m)(C) Aライン 120840022.1 日ライン 1409,800 合計| 140 18,2001 *3:温度20.0°C及び風速0.0m/seaによる換算値【排気別)(C)42蒸気配管の施工前の放散熱量は 26,740W であったが、 施工後は18,200W となり、8,540Wの低減となった。なお、 今回既設保温材に Pyrogel XT(10mm)を追加施工したこと で、配管外径が若干大きくなったが、他配管及び機器類 とのクリアランスは取れており、メンテナンス等の作業 性に影響はないものと考えられる。5. 放散熱量改善の効果共同溝内の暑熱環境の改善対策として、小口径弁へは 着脱式断熱材の取付け及び蒸気配管へは Pyrogel XT によ る追加保温施工を実施した。小口径弁はエリア I からエ リア 3内で計 285 個あり、そのうちエリア1 の 25 個が対 策済となった。この結果、小口径弁の表面温度は平均し て約80°C低下し、年間放散熱量は約22,800kW 低減した。 これらから残り小口径弁260個の対策を実施することで、 年間放散熱量が約 435,000kW 低減することが期待できる。 小口径弁の改善に係る予想される低減放散熱量を表 5 に 示す。8612 表5 小口径弁の改善に係る低減放散熱量釋義仕様低減放散熱量(kWh/2)数量低減放教熱量(kW/年)エ玉形弁 (208-20A/フランジ。, 0.12\21,024エリア仕切弁 120k-20N/フランジ0.041752玉形弁 120k-20A/フランジ15.0.244084096仕切弁 |20k-20A/フランジ0.221019272エリア2|玉形弁| 10k-20A/フランジ0.2410121024仕切弁 (105~20A/フランジ!0.229636玉形弁|20k-20A/フランジ0.0960 .47.304仕切弁120K-20A/フランジ0.04155256玉形弁|20-20A/フランジフランジ0.24155|10512エリア3仕切弁(20k-20A/フランジ0.221927玉形弁[20k-20A/フランジ| 9119131810.24 仕切弁 20K-20A/フランジ|0.222344326また、蒸気配管はエリア 1(70m×2本)、エリア 2(165m ×3本)及びエリア 3(433m×3本)内で計約 2km あり、そ のうちエリア1の140m が対策済となった。この結果、配 管表面温度は平均して約4.5°C低下し、年間放散熱量は約 73,000kW 低減した。これらから残りのエリア2及びエリ ア3の蒸気配管の対策を実施することで、年間放散熱量 が約 670,000kW 低減することが期待できる。蒸気配管の 改善に係る予想される低減放散熱量を図 11 に示す。350000030000002500000..120899872,000,0004......エリア31,604,473““15000001000000エリア250000061140412089.987エリア31904/05/22 11:21:07エリア2611404・232,403.!エリア115943221対策訪対策後図11 蒸気配管の改善に係る低減放散熱盤以上、平成22年3月8日にエリア1内の蒸気配管放散 熱量の改善が終了した。終了後から平成 23 年7月末まで 共同溝内の温度を測定(週1回)した結果、外気温は過去2 年より高いものの共同溝内の温度は平均約 10°C低下した。エリア1の温度変化を図 12 に示す。「改善athkn55あいりメロ年4月5月6月7月8月9月10月 11月12月 1月2月 3月?H21エリア1 ??H22・外気温HOOH21 ・外気温H23・エリア1・・・・H22エリア1~H23・外気温図 12 共同溝(エリア 1)の温度変化6.結言共同溝は、所内各施設へユーティリティの安全・安定 供給をするうえで、大変重要なものである。暑熱に伴う 機器類の誤作動等により、万一ユーティリティが停止し た場合、各施設の操業に多大な影響を与えることになる。本改善により、機器類の誤作動防止、設備及び機器類 寿命の延命化が図れることは、信頼性及び安全性が向上 するばかりか、コスト削減にもつながる。また、放散熱 量を低減することは、蒸気供給に係る伝送効率が向上し 熱損失低減による省エネルギーの面も併せ持っている。 更には、共同溝内で作業に従事する者の労働安全衛生面 においても、快適な作業環境を作り出すことは大変重要 なことである。 1. 本改善策により一定の効果を得ることができたため、 今後はエリアを拡大し、共同溝全体に渡って暑熱環境の 改善を図る予定である。参考文献 [1] 喜多誠、“制御ケーブル寿命推定への加速劣化試験適用の評価”、北陸電力株式会社技術開発研究所研究開発年報、43 号、2009、pp.80-81. [2] ニチアス技術時報、No.355、2010、pp.9-14.(平成 23 年8月25日)-87“ “共同溝暑熱環境最適化への取り組み(1) 蒸気配管放散熱量の改善“ “石山 道,Toru ISHIYAMA,川崎 一男,Ichio KAWASAKI,松本 岳也,Takenari MATSUMOTO,寺田 秀行,Hideyuki TERADA,菊池 明夫,Akio KIKUCHI,溝口 剛,Tsuyoshi MIZOGUCHI,池田 博之,Hiroyuki IKEDA