低圧ケーブル絶縁劣化診断法の信頼性検討

公開日:
カテゴリ: 第8回
2.緒言
冷却材喪失事故のような過酷な環境下で、それまで 定常運転状態で放射線下・空気環境下で長時間使用さ れてきた安全系低圧ケーブルが、絶縁を維持して信号 を伝達できるかどうかは、安全上の関心事である。こ のような評価を行うために、経年化炉の安全系低圧ケ ーブルの絶縁劣化の評価方法は、JNES によって研究プ ロジェクトが展開され、報告書としてまとめられてい る[1]。本報では、今後も経年化炉で使用される可能性 の高いケーブルについて、当該評価方法の信頼性を API-RBM 的方法[2]で改良一次近似二次モーメント法 を応用して検討した結果を示す。2. 低圧ケーブルの時間依存劣化特性* 低圧ケーブルの破断時の伸びは供用時間の経過と共 に変化し、次第に低下する。JNES の試験解析によると、 時間依存劣化特性としてのケーブル破断時伸びはマス ターカーブによって図1のように整理でき、次式の形 で表現できる[1]。
S() = 4-4 + A,
ここでf (0(%)は基準温度 Tref = 100°C,線量率 D=0 での時間(h)後の破断時の伸びである。マスターカー ブのパラメータ AI (%)、An (%)、to(h)、p、及びマス ターカーブの予測精度を表す分散omCがB社およびCf() = 44 +4社の難燃 EP ゴム絶縁ケーブルの黒芯、白芯、赤芯のそ れぞれに対して表1のように得られている。600破断時の伸び[%]SOT-3Gyh 90 C-36y/h 100C-3Gyh 80°C~180g/h 90C-18byth 100°C-18Gy/h 80C-100iy/h 90C-100Gy/h 100C-1000iy/h0か1000100000100000010000 期間[時間]破断時の伸び[%]0SOT-3Gyh 90 C-36y/h 100C-33Gyh 80C-18Gy/h 90C-18Gyh 110C-18kiyh 80C-100kiy/h 90C-1000y/h 110C-100Gyh1902/09/261000004637/11/2610000 期間[時間]図1 マスターカーブの例(B 社難燃 EP ゴム絶縁体(黒芯) の時間依存データの重ね合わせ結果[1]表1_B社、C社の難燃 EP ゴム絶縁ケーブルの定数| A | Az , to | p | oma l | B社黒芯 | 515 | 5 | 48734 1.901 | 319 |白志 | 510 | 5 | 45417 | 1.545 | 1111 | 赤芯 50645314 | 1.776 | 966 C社黒芯 47932850 | 2.129 871 白芯 506 | 10 22506 | 2.075 908 | 赤芯 | 457 | 10 | 23141 | 2.219 | 871 ||10評価条件(評価温度 T、評価線量率 D) でのシフト ファクター a は次式で与えられる。1902/06/02a = expia-of-(--) For of 2) - 41 +403] -no-AL-]ここでTer; 基準温度 (K)= 273 + 100 = 373 T;実機環境の評価温度(K)= 273+T(°C)== 273460 = 333 E;活性化エネルギー(kcal/mol) R; 気体定数 0.001987 (kcal/mol・K) D;実機環境の評価線量率 0.3/3600(Gy/s) k, x; シフトパラメータ である。 B 社および C 社の難燃 EP ゴム絶縁ケーブル の黒芯、白芯、赤芯のそれぞれに対して E、k、x のデ ータが表 2 のように得られている。軽水炉環境を想定 した本邦での評価条件に相当するシフトファクターは 表2の6列のように計算される。表2 シフトファクターの計算B社黒芯 | 15.00 116.9 1 0.7400 | 0.08794 | 0.14747白志 | 15.00 63.32 | 0.5152 | 0.08794 | 0.24214赤芯 15.00 | | 72.78 10.5945 | 0.08794 | 0.18999 C社黒芯 1 15.00 261.8 | 0.8847 | 0.08794 | 0.13662白志 | 15.00 | 92.75 | 0.6494 | 0.08794 | 0.17668 | 赤芯 | 15.00 | 191.1 | 0.8439 | 0.08794 | 0.13515 |評価条件での時間 t (h)後の破断時伸びは、シフトファ クターを用いてf(at)と予測できる。実機環境下で,時 間tをパラメータ(運転開始後5年毎に 80年まで)と して時間依存の破断時伸びf(at) = () を計算した 結果を図2及び 図3に示す。ーB社黒芯 ・・・・B社白芯 ーー・B社赤芯5(t) [%]-----.......-------1 0 _ 10 20 30 40 50 60 70 80time [year] 図2 実機環境下での時間依存劣化特性(B社難燃 EP ゴム)図2・C社黒芯C社白芯、 ー ー ・C社赤芯6001901/05/14-C社黒芯 ・・・・C社白芯 1-ー・C社赤芯」400[x]300。2001900/04/091899/12/310:00:00102201900/01/291900/02/1860708040 time [year]図3 実機環境下での時間依存劣化特性(C社難燃 EP ゴム)3. 限界破断時伸びと非破壊試験- 安全確保の観点から,「設計想定事故環境に晒された 場合、ケーブルの絶縁性能が維持され、安全系統が機 能し、安全対策装置が設計どおり作動すること」が必 要である。破断時伸びの劣化と絶縁性の劣化には強い 相関がある。直後の設計想定事故の環境下で絶縁性が 破壊される限界破断時伸びを Oc とする。JNES による 評価では電線各社の各種ケーブルに対して限界破断伸 び管理値案が提案されている。例えば B 社難燃 EP ゴ ム絶縁ケーブルで230%、C社難燃 EP ゴム絶縁ケーブ ルで210%などである。現状では 20数年間で限界破断 伸びに達することが予想され、絶縁劣化特性の改善が 期待される。ここでは絶縁劣化特性が現状よりも改善 された場合を想定し、dc を正規分布と仮定し、平均 値がxc=100 (%)、標準偏差が oc=3 10 (%)と与えられ た場合について検討評価する。 - 使用中のケーブルを定期的に検査することが考えら れている[1]。検査方法として数種類の非破壊検査法が 検討された。ここでは比較的精度が良いインデンター モジュラス法を想定する。白芯 赤芯インデンターモジュラス [N/mm]1900/01/09800500400 300 200破断時の伸び[]-- 1000図4 インデンターモジュラスと破断時の伸び(B 社難燃 EPゴム絶縁体)[1]図4-894. 制御系統の耐絶縁劣化の信頼性- 定期検査がない場合、時間t (h)での限界状態関数と して次式を考えることにする。 g() = 500-S Us = f(at), as = 0xc, Hse = 100%, as = 10% ここで60は時間依存の破断時伸びであり、平均値は マスターカーブとシフトファクターにより計算される。 すなわち、現在得られている絶縁劣化特性マスターカ ーブに従って劣化するものとする。 g(t)>0 の場合、直 後の設計想定事故環境下で絶縁抵抗が維持され、g() <0で絶縁抵抗が破壊されるとする。 6()および6c とも正規分布に従う場合、限界状態関数 g(t)も正規分 布となり、平均値と分散は次式で計算できる。Heg = Us -dsc = f(at)-ose on = os + ose 1時間 t 直後の設計想定事故環境下で絶縁抵抗が破壊 される確率 PC )は次式で与えられる。 P, () = D[-B0] Bon _ Has - Lise - S(al) - Los - (al)-100J + on Jake + 10°ここには標準正規分布の累積分布確率、B()は信頼 性指標を表す。 B 社黒芯ケーブル、白芯ケーブル、赤 芯ケーブルについて運転開始後 10 年経過する毎に 80 年までの時間依存の破壊確率 Pr(t)および信頼性指標 B(I)を計算した結果を図5(a)~図 5(c)に示す。図には、 破壊確率 0.05 となる線を二点鎖線で示した。1Pr = 0.050.1B社黒芯1.E-02 1.E-03定期検査なし 定期検査1 定期検査2L 1.E-04A1.E-051.E-06 1.E-07 1.E-08 10 20 30 40 50 60 70 801, (year) 図5(a) 直後の設計想定事故環境下で絶縁が破壊する確率(B 社黒芯)10.1|P=0.050.010.001B社白芯(4)d0.000010.000001定期検査なし定期検査1 on on .... 定期検査20.00000010.000000011020401900/03/108030 11 同50 60 (year) (B 社白芯)図5(b)1Pr = 0.050.10.010.001B社赤芯(1)d0.00010.000010.000001定期検査なし 定期検査1 定期検査20.00000010.0000000110307080201 図5(c)40 150 60 (year) (B社赤芯)同* C 社黒芯ケーブル、白芯ケーブル及び赤芯ケーブル について計算した結果を図6(a)~図 6(C)に示す。10.1101-0.051.E-02 1.E-03CIE-04C社黒芯2 1.E-05定期検査なし 1.E-06定期検査1 1.E-07non on as 定期検査2 | 1.E-08 10 20 30 40 50 60 70 80t, (year) 図6(a) 直後の設計想定事故環境下で絶縁が破壊する確率(C 社黒芯)90,1899/12/31P=0.050.10.010.001(4)dC社白芯0.00010.000010.000001定期検査なし定期検査1 ... - - .... 定期検査20.0000001301900/03/10801.E-08 10 201 図6(b)40 50 60 1 , (year)(C 社白芯)同1P=0.050.10:14:240:01:26(4)d0.0001C社赤芯0:00:010.000001定期検査なし定期検査1 - - - e定期検査20.00000010.00000001102030708040 1150 60 , (year)(C 社赤芯)図6(c)同5. 定期検査の効果- 運転開始後 10 年経過する毎に全ケーブルの一部を 対象にインデンターモジュラス法による抜き取り定期 検査を行った場合を想定する。ここでは以下の二つの ケースを想定する。 - 定期検査1:定期検査による結果、破断時伸びの平 均値がマスターカーブによる計算値の 1.1 倍、標準偏 差が 0.9 倍という信頼できるデータが得られた場合と する(図7)。すなわち現在得られている時間依存劣化 特性よりも劣化の進行が遅く、分散も小さいことが定 期検査により分かった場合である。この場合に破壊確 率P(t)を図5~図6にオーバープロットした。これか ら、定期検査1のケースでは定期検査なしの場合と比 較して、ケーブルの信頼度が大きく改善されることが 分かる。 定期検査2:定期検査による結果、破断時伸びの平均値がマスターカーブによる計算値の 0.9 倍、標準偏 差が 1.1 倍という信頼できるデータが得られた場合と する(図7参照)。すなわち現在得られている時間依存 劣化特性よりも劣化が早く進行し、分散も大きくなる ことが定期検査により分かった場合である。破壊確率 Pr(t)を計算した結果を図5~図6にオーバープロット した。これからケーブル信頼度の悪化状況が分かる。 あるいはこのような信頼できる定期検査が確立されれ ば、定期検査ごとに絶縁劣化を精度良く予知し直すこ とが可能となり、システムの信頼性確保に大きく寄与 することが分かる。0.04P(D)このたるみにするしかないというまくいっっっwwwwもっといてってるwww.view-P(i,j) ・定期検査1 (1,140.9m) 一定期検査2(0.94, 1.10)P(de)100200300400定期検査によりケーブルの劣化特性が改定された場合図76. まとめ - 安全系低圧ケーブルの経年劣化によって、直後の設 計想定事故環境下で絶縁が破壊する事象に対する JNES の絶縁劣化評価方法を用いて評価する場合の信 頼性について検討した。絶縁破壊時の伸びを経年化の 主要パラメータとした JNES の方法に、インデンター モジュラス法による非破壊検査を加味して、保全の信 頼性計算を試行した。 * 低圧ケーブルの絶縁劣化の進行は、ケーブルの製造 メーカーなどに依存するが、非破壊検査の信頼性にも 大きく依存する。参考文献 [1]JNES-SS-0903、原子力プラントのケーブル経年変化評価技術調査研究に関する最終報告書、2009年7 11月、独)原子力安全基盤機構 [2]API RECOMMENDED PRACTICE 581, 2nd ed. 2008, Risk-Based Inspection Technology91“ “低圧ケーブル絶縁劣化診断法の信頼性検討“ “渡士 克己,Katsumi WATASHI
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)