AE法による低速転がり軸受の診断技術

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カテゴリ: 第9回
1.緒言
設備の高経年化が進む昨今、ますます設備管理の重要 性が高まっている。製造業 296 事業場に対して行った調 査結果によると、モータやポンプ、ファン、圧縮機など の動機械では新設から 20 年以上を経過している設備が 45.9%であり、30 年以上を経過している設備が 16.6%を 占めていることが報告されている)。そして、動機械における機械要素の内、もっとも異常 発生頻度の高い機械要素は転がり軸受である。転がり軸 受は、荷重を受けて転動体が内輪や外輪と接触しながら 回転するため、潤滑状態や荷重過大などに起因した磨耗 や転がり疲労はく離、亀裂などの異常が発生し、これら の異常が進行すると転がり軸受の破壊に至り、動機械の 停止による多大な損失が発生する。1995 年3月に(社) 潤滑油協会から発表された「潤滑管理効率化促進調査報 告書」による 18 業種 511 事業所における設備管理技術に ついての実態調査結果によると、破損割合の最も高い機 械要素は転がり軸受であり約3割を占めている。また、 転がり軸受に最も多く活用されている状態監視技術は振 動法である。鉄鋼7社(16 事業所)及び重工業7社で行 われた調査結果でも同様であり、故障 295 件の内転がり 軸受が 69 件と最も多く、その中の 72%にあたる 50 件が振動法で行われているという結果が報告されている。 * しかし、回転数数百 rpm 以下の低速回転数領域におい ては、転動体の周速が遅いために、その転動体と軌道面 に発生した傷との衝突により発生する加速度値のレベル が低くなる。それにより、環境や計測器の雑音に埋もれ てしまい、異常の検出が困難となるという問題がある。 1本論文では周波数領域 0.1~1MHz の AE 波形をエンベ ロープ処理した波形を用いて診断する方法を提案する。 AE エンベロープ波形を増幅することで異常検出感度を 高め、一般的に低速回転数領域といわれる 100rpm 程度は もちろん、特に回転数で1mm 程度、dn 値(軸受内径 mm と回転数 rpm の積)で 25mm/min 程度からの超低速回転 数領域での異常診断を可能とした。さらに、事象計数法 におけるノイズ除去回路と異常判定回路を搭載した診断 器を製作し、現場での診断にて成果をあげた診断例につ いて報告する。
2. 低速転がり軸受異常検知の振動法の現状
深溝玉軸受の外輪軌道面にダイヤモンドヤスリにて人 工傷を作成し、回転数1~1500pm において正常軸受との 振動加速度値レベルの比較を行った。供試軸受には内径 60mm の軸受 6312 を用い、作成した傷のサイズは軌道面 中央部で幅 1.02mm、深さ 0.15mm であり、潤滑はグリー スとした。圧電型加速度センサを軸受ハウジングにねじ 込み固定して測定した。Fig.1 は縦軸に周波数 10~30kHz横軸に回転数をとる。 ノイズレベルは0.004G? Outer ring flaw O/AOuter ring flaw Peak |0 Normal O/ANormal Peakの加速度 O/A 値と Peak 値をとり、横軸に回転数をとる。 本計測システムのバックグランドノイズレベルは 0.004G である。Acceleration value(G)? Outer ring flaw O/AOuter ring flaw Peak O Normal O/A A Normal PeakA1900/01/0340...........1899/12/311000010 100 10001 Rotation number(rpm)Fig.1 Acceleration value comparison between outer ring flaw bearing and normal bearing. Fig.1に示すように、100mm 以上の回転数における加 速度 O/A 値は、外輪傷軸受から発生した加速度値レベル と正常軸受からの加速度値レベルとは差異が見られる。 しかし、100rpm よりも低い回転数領域では、外輪傷軸受 と正常軸受との加速度値レベルの差異は見られなくなり、 両者とも計測器ノイズレベルである 0.0004Gとなっている。一方、加速度ピーク値に着目すると、O/A 値に比べて 低速領域まで差異が見られるものの、回転数 30rpm 程度 が限界である。つまり、軸受内径 dmm と回転数 n rpm の 軸受内径の積である dn値で評価すると、加速度 /A 値で 6000mm/min、加速度ピーク値で 1800mm/min 程度が、振 動法による異常検知の限界といえる。回転数 100rpm 以下の低速回転数領域においては転動 体の周速が極端に遅くなり、外輪や内輪の軌道面に存在 する傷と転動体の衝突による衝撃レベルが低くなり、環 境や計測器のノイズレベルに埋もれてしまう。さらには、 低速回転数領域では傷に転動体が衝突して次の転動体が 同じ傷に衝突するまで、つまり異常波形と異常波形の発 生時間のインターバルが長くなる。したがって、通常の 振動モニタリングで用いられている実効値などでは正常 との差異が弁別しにくくなるので、低速軸受状態監視用 に別の信号処理方法が必要となる。3. 超低速回転数領域におけるAE法の適用. 正常な状態から転がり疲労はく離を発生させるまでの 過程を AE でモニタリングする加速寿命試験を行うために、模擬的なスラスト玉軸受を供試軸受とした。 スラスト玉軸受(型式51105) の内輪とスラスト玉軸受 (型式51205)の外輪の背面を用いて点接触させて、接触 圧力を高めることで加速させる方法を採用した。実験装 置は Fig.2 に示すものであり、油圧シリンダにて供試軸受 にスラスト荷重を掛け、モータからタイミングベルトを 介して回転させる。Bearing housing on stationary Bearing at rotation sideTest bearing Hydrauric cylinderTacometer (rotary encoder)- Timing bell%にiPulleyMotor with disco transmissionFig.2 Experimental equipment for accelerated life test.回転数 50rpm にて実施した加速寿命試験において、は く離進展中に得られたAE スペクトルの一例を Fig.3 に示 す。これにより、周波数成分が最大 500kHz程度まで周波 数成分が広く分布していることがわかる。この時、目視 によるはく離長は約 2mm から 4mm に進展していた。SPC-36dBH500KHz1MHzFig.3 AE spectrum obtained at progressing of flaking. このはく離異常から発生する500kHz前後までのAE周 波数をとらえるために、0.1~1MHz の広帯域 AE センサ を用いることとした。また、低速回転状態では転動体の周速が遅くなること により衝撃レベルが低下することに加えて、きずと転動 体の衝突のインターバルが長くなることでO/A 値などの 平均化処理では SN 比が低下する。したがって、単位時 間におけると AE 包絡線検波波形の最大値と事象数によ る状態監視方法を採用した。事象計数法により異常を見 逃すことなく早期に検知し、AE波形と包絡線スペクトル の観察により異常の種類を判別するという組み合わせで 総合的に診断する。 AE法の欠点である高周波数の AE 生信号の処理に要する長時間と大容量のデータ量及びノイズの影響を受けや すいという点をクリアできれば、超低速回転数領域での 異常検知が可能となると考えられる。すなわち、30rpm 以下の超低速転がり軸受の異常診断 のために現場で使用する診断器へ反映させるべく、実用 的な観点から、検出感度の向上、ノイズ除去、異常判定 方法の 3 点について提案を行う。ただし、特に重要な異 常モードである転がり疲労はく離、潤滑不良(油切れ、 異物混入)、嵌め合いガタの検出を対象とする。3.1 検出感度の向上:AE エンベロープ波形の増幅回転数 1rpm からの超低速回転数領域における異常検 出を可能にする目的で、まず、AE 波形を 80dB で増幅し、 エンベロープ処理を行った後、さらに増幅させる。具体 的には、Fig.4 に示すように、まず、検出した AE 信号が AE センサから計測器本体までの間のケーブルからのノ イズの影響、信号の減衰に対処するために、前置増幅器 40dB を備えたプリアンプ内蔵センサを用いる。その後、 バンドパスフィルタにて解析に必要な周波数帯域 0.1~ 1MHzに絞り、さらに、40dB の増幅器にて合計 80dB の 増幅度を得る。そして、エンベロープ処理回路により AE 波形をエンベロープ波形に変換した後に第 2 増幅器にて 10dB 増幅する。EmylopePratiBantpantherAmsterSecond amplitercreakPreampliner hain-lastivorInstrument bedsFig.4 Measuring system. 回転数 1~30rpm の超低速回転数領域でのはく離検出 能力比較試験を Fig. 2 の試験装置を用いて実施した。AE 波形をエンベロープ処理した波形のスペクトルにおける 式(1)に示す外輪傷周波数fauの発生有無により、はく離異 常検出限界を調査した(12)す外輪島周波数の発生有無により、はく離異 界を調査した(12)Envelope spectra level (mV)|-060dB80dB |-1-B0dB + 10dB5, f:回転周波数(Hz)Dピッチ円直径(mm)0.01 t.........1900/04/09Rotation number (rpm)%3Dnxfx--cosa out2LD・・・(1)ここで, f: 回転周波数(Hz)D : ピッチ円直径(mm) d: 転動体直径(mm) Z: 転動体個数(個)a:接触角(deg) Fig.5に回転数 1/rpm における臨度 80dB による AE エ ・ベロープスペクトルを示す。はく離異常を示す特徴的な周波数の発生が見られていないことがわかる。一方、 幅度 80dB+10dBにおけるAEエンベロープスペクトルを Fig.6 に示す。Fig.5 と異なり、外輪島周波数とその高 調波が発生している。0.4MAG my2HzPWR SPALIN X: .1750Hz 1 .070mVFig.5 AE envelope spectrum at progress of outer ring flaking (rotation number 1rpm, amplification degree80dB).mas山nv.font2font3SomKILLU2hzPWR SPALIN x: .1250Hz Y:16,50mVFig.6 AE envelope spectra at progress of outer ring flaking (rotation number 1 rpm, amplification degree 80 dB+10dB).各回転数における増幅度60dB、80dBに加えて80dB+ 10dB の各条件で得られた AE エンベロープスペクトルに て発生した外輪傷周波数fmのレベルをプロットしたもの をFig.7 に示す。これより、幅度 80dB+10dB では Inpm 以上の各回転数において明確に外輪はく離を検出できて いることがわかる。Envelope spectra level (mV)-0-60dB 360dB T160dB+10dB)1-2-OLL.or.101900/04/09Envelope:10.01...1900/04/09110 Rotation number (rpm)Fig.7 Flaking abnormality detection capability comparison in the extremely low speed rotation number. (Comparison between amplification degree 80 dB and80+10dB).3.2 ノイズ除去事象計数法を用いて異常検出を行うとき、Fig.8 に示す ような電気的なノイズ波形が外部から飛来して本来の異 常波形に重畳されることにより、計数率に誤差が生じる 場合がある。従来法である持続時間によるノイズ弁別法を試みたが、 はく離波形を正確に計数できるようなエンベロープ処理 の時定数を定めると、Fig.8 に示すような波形のエンベロ ープ波形がはく離異常を示す AE 波形のエンベロープ波 形と酷似したものとなってしまい、持続時間では弁別でFig.8 Electric noise wavefom. そこで、Fig.9 に示す新たなノイズ除去法を考案した。 すなわち、通常の事象計数法と並列にリングダウン計数 法を行い、事象計数法にて得られた持続時間内に何個の リングダウン計数値が得られているかで信号かノイズか を弁別する方式である。異常現象として、はく離発生時 を例として説明する。はく離異常やノイズが発生すると、 しきい値2を超えた AE 信号が発生する。これをリング ダウン計数法で計数すると、Fig.9 のコンパレータ2に示 すように、数の多いパルス波形の集合と少ない集合が発 生する。この数の多い集合が異常信号であり、少ない集 合がノイズ波形である。これらを弁別する必要があるが、 計数するための時間幅が決められない。そこで、AE波形 をエンベロープ処理し、しきい値)を超えた時間(持続 時間)を用いて、この間に発生しているコンパレータ2 の数で弁別する方式を考案した。このような考え方に基 づき、はく離異常信号とノイズ信号の混在した AE 波形 についてエンベロープ処理した波形(Fig.9 中のエンベロ ープ波形)に対してしきい値1を超えた時間(持続時間 t~)を求める。このしきい値を超えた信号をパルス波 形に変換する (Fig.9 中のコンパレータ1)。さらに、これ とは並列に同じはく離異常信号に対して、しきい値2を 設定してリングダウン計数を行う(Fig.9 中のコンパレー タ2)。 持続時間とリングダウン数を比較して、予め設定 したUnitした個数 n よりも多ければ異常信号、同じか少なければ ーイズ信号と弁別して計数する (Fig.9 中の EVENT)。Unit ineasurement~SignalNoiseThreshold (2) NE waveformTheathod 0 -------AA-AAThreshold---SEnvelope waveformDuration time1Comparater 0 --1001_01_1_000___ComparatoreEVENTALL Comparator 0omparator (2)SOLEVENTEverEVENTFig.9 New noise discrimination method. 実際の計測器においては、しきい値)は正常状態の包 絡線検波波形をオシロスコープなどで観察してそれを基 準に設定する。対象機器の AE レベルはそれぞれ異なる ため可変としている。しきい値2は固定としており、増 幅後の計測器の電気ノイズレベルを基準に正常状態の AE 波形のレベルが超えない値に決定する。 予め決定して おくリングダウン計数値 n も固定としており、試験にて 得られた電気ノイズ波形と加速寿命試験で得られたはく 離異常との比較により決定する。3.3 異常判定方法(計測単位時間と異常判定基準) * 低速回転数の場合、例えば 1rpm と 30rpm では1回転に 要する時間は30倍も大きく異なる。逆に、同じ計測時間 で事象計数法を実施した場合には、同じ軸受でも30倍も 事象数が異なることになる。これでは僅かな回転数の違 いにより異常判定が困難となる。そこで、式 (2)より算出 した計測単位時間 T を用いることで、回転数が異なる軸 受にも同等に事象数による評価ができるようにした。60 T=-xm_....・・・・・(2)ここで,T:計測単位時間(s)n:回転数(rpm)m:判定に要する総回転数(rev) 軸受の嵌め合いガタが発生した場合、異常信号による 事象は1回転に1回発生する。転がり疲労はく離が発生 した場合、発生位置が外輪軌道面の時は式(1)にて周期性 が求められる。内輪軌道面の時は式(3)、転動体の時は式 (4)で求められる。T=-xmーーxfx1+- cosa式(1),式(3),式(4)のいずれも San よりも大きい値とな るので、1回転に1回以上発生することになる。油ぎれや 異物混入時には周期性はないものの、1回転に1回よりも 多くの事象数が発生する。したがって、異常時は計測時 間T内で式(2)中の m 個以上の個数が発生するといえる。よって、計測単位時間 Tにおいて、事象数m 個以上の 場合は異常、1~(m-1)個の場合は注意、0 個の場合に 正常と判定できる。また、mを異常判定基準と呼ぶ。3.4 超低速回転における加速寿命試験的超低速回転数で回転する転がり軸受が正常な状態から 転がり疲労はく離の発生に至るまでの過程を、AE により モニタリングして異常検出能力の評価を実施した。回転 数 1pm における加速寿命試験では、供試軸受ハウジング に AE センサ設置して計測した。 - AE と加速度の検出性能の差異を明確にするために、同 じ信号処理方法である事象計数法を用いて比較試験を行 った。AEと加速度は、周波数帯域以外は全く同一の測定 系としており、AE の測定周波数は 0.1~1MHzである。実験装置は Fig.2 に示すものを用いた。 3.4.1 供試軸受スラスト玉軸受(型式51105) の内輪とスラスト玉軸受 (型式51205)の外輪の背面を用いた模擬的なスラスト玉 軸受を供試軸受とし、点接触させることで接触圧力を高 め、さらに転動体の数を通常の 15 個から5個に減らすこ とで玉1個にかかる荷重を増やすことで加速性を高めて いる(5) 荷重は油圧シリンダにて 19.6kN に設定しており、 点接触となる外輪側の Herz 最大接触圧力の計算値は 9.86GPa と非常に過酷な条件とした。ただし、外輪面は塑 性変形するので実際には計算値よりも低い値となる。ま た、潤滑はグリースとした。 3.4.2 試験条件Heiz最大接触圧力9.86GPaという過酷な条件で試験し ても回転数 1pm という超低速では疲労はく離が発生す るまで非常に長い時間が必要となる。したがって、寿命 推定時間を計算してそのほとんどを 4781pm にて疲労させ、残りの寿命を超低速回転数で試験するという方法を 実施した。具体的には AE エンベロープピーク値のトレ ンドを見ながら478rpm で回転させて変化が生じた時点 で停止し、試験回転数である 1rpm に設定して行った。こ の時、内輪と玉、保持器を新品に交換し、外輪面にはく 離の発生がないことを目視にて確認して試験を再開した。 増幅度は70dB+10dB とし、事象計数法のしきい値は0.5V に設定して実施した。計測単位時間は 10min とし判定に 要する総回転数mは10回転であるので、異常判定基準を 10個とした。 3.4.3 試験結果 - 試験開始後、990min にて異常判定個数を超えたので試 験を停止した。Fig.10 に回転数 11pm で試験開始後 820min から試験停止時の 990minまでの AE事象率(個/10min) の推移を示す。820min 時点では外輪軌道面に異常は見ら」 れていないことを確認している。count/10min14F820118408608.8090092094096E+17Time(s)Fig.10 Trend of event count rate (1 pm) 930min と 960minで1個、970min で2個、980min で6 個発生し、990min で一気に 120 個発生している。それま でに 840minで2個計数しているが一過性のものであり、 その後0個となっている。また、Fig.11 に AE エンベロープ波形の計測単位時間内 に発生した最大値の推移を示す。mvwoof...200010004.......01.-.- .820840860880 900920940960980Time(s)Fig.11 Trend of peak value of AE envelope wavefom(1 pm) 840minで1500mV発生した後、930minで950mV、960min で1700mV 発生した後は、毎回 500mV を超えて上昇傾向 を示し、990min では 3200mV の高いレベルの AE が発生 している。試験停止時には、Fig.12 に示すような外輪軌道5面にはく離の初期段階である長さ約 300 μm の微小なク ラックの発生が見られた。Fig.12 Outer ring flaking confirmed at the time of 990 minstop.3.5 超低速回転における潤滑不良試験的加速寿命試験と同じ試験方法で、回転数 20rpm におい て油ぎれ状態で回転させ、途中から潤滑油を注油して正 常な状態に戻す試験を行い、AE の挙動を確認した。 * Fig.13 にその過程での AE 事象率(個/30s)の推移を 示す。注油後急速に事象数が減少し0個となっている。count/30sLubrication ...1900/04/09....いまさみさみさみさきさきいささかまさかんないか・・・さかさかさかさかささきききききききききき51015.2Time(s)2587/04/22Fig.13 Trend of event count rate (20 rpm) Fig.14 に AE エンベロープピーク値の推移を示す。油ぎ れ状態では3000mV を超えていたが、注油後急激な低下 を示して良好な状態になっていることが伺える。また、Fig.15に注油前後におけるAE波形の比較を示す。 油ぎれにより転動体と内輪、外輪が金属接触を起こして 発生している突発型の AE 波形が、注油後に正常な波形 に変化している。つまり、低速回転数領域においても AE にて油ぎれを 検知でき、表面起点によるはく離が発生する前に注油す ることで正常な状態に戻すことができる。1909/11/083200 26002000I Lubrication12030510 115201253035 Time(s)Fig.14 Trend of peak value of AE envelope waveformToknow. HK500Tok』。AE wave forbefore the lubricationM1100maAE wave formTOKIMPAN 500ra before the lubricationM100m 13.5--141210AE wave form after the lubricationM100mFig.15 AE wavefom4. 実機による実施例 4.1 横型サイクロ減速機における実施例(GI) * 重要機器である横型のサイクロ減速機について、振動 と AE で診断した実施例を紹介する。対象機器のサイクロ減速機の略図および測定点を Fig.16 に示す。モータの回転数は 1000rpm であり、減速 機の出力回転数は 34rpm である。0本34rpm。 こ75kWCyclo drives speed reducer1000rpmFig.16 Sketch of cyclodrives speed reducer(Horizontal type). Pos3の H 方向における振動速度波形とスペクトルを Fig.17 に示す。外ピンと曲線板の噛み合い周波数 PO(33.1Hz-出力回転周波数×歯数×曲線板枚数=34/60× 29×2) およびその2倍(66.2Hz)が発生しており、2P0 のレベルの方が高い。この 2P0 廻りをズーミングしたス ペクトル(60.25~72.75Hz) を Fig.18 に示す。Pos: 03 DIR:TAONO: s-0/A: 2.50 103100/S>nu/s1901/02/03POS: 03 DIR: BTAGNO: S-0/A: 2.34m/s)2P1:66.500.74 2:69.000.66 [3:45.00 0.50 14:52.50 0.36 5:61.50 0.321900/07/18Fig.17 Vibration velocity wavefom and spectrum(Pos.3)わかる。Pos5と Pos7には問題ないと言える。30001:06.46880.70 266.75 0.583:67.625 0.54 14:55.90630.32 5:68.18750.30AE envelope peak value (mV)AE event count1900/03/12 18:00:000.25~72.75Hz)PostPosPosi)PosaPostTAGNO:POS:03 DIRE H0.57Hz 1052P。(Hz) (mm/s) 1:06.16880.70 2:58.75 0.58 3:67.625 0.54 4:65.90630.32 5:68.18750.30kasadorathat Makute AutoMyways60.251900/03/12 18:00:00Fig.18Zooming spectrum (60.25~72.75Hz) 2P0廻りに出力回転周波数 0.57Hz 間隔で側帯波の発生 が見られ、曲線板の摩耗の影響が考えられる。Fig.19 に Pos3における振動加速度波形とスペクトルを 示す。加速度レベルは極めて低いが、波形では振幅は小 さいものの突発型波形の発生が見られる。 TAGNO:Pos: 03 DIR: HS-070:0.3251mm-19.95'at:20.78 AY: 0.44 TAGNO:Pos: 03 S-0/A: 0.32 日 0. 21DIR: HmsHz) (G) 1: 2475 0.04 2:14250 0.04 3:14400 0.04 14:145500.04 15:147000.0430K HzFig.19 Vibration acceleration waveform and spectrum (Pos.3). Fig.20 に加速度エンベロープのスペクトルを示す。1k~ 10kHzと10k~30kHzの各周波数領域に分けて表示してい るが、両方とも全く特別なスペクトルの発生が見られず、 Fig.19 で見られた突発型波形の周期性はないと言える。TAGNO: s-D/A: 2.0 KmV)Pos: 03DIR: H【TV)Hz】 1: 32.5 12: 5.0 3: 27.5 4: 82.5 5:117.51899/12/3100.50.9 0.5Banner TAGNO:Pos: 03_DIR: H_ S-0/A: 4.0 (mV)(12) (V) 1: 32.5 1 .0 2: 12.5 10.5 3: 27.5 4: 2.5 5; 67.5おっ.0.31K. Fig.20 Acceleration envelope spectrum (pos.3) - Pos3~7の低速回転数領域における AE のエンベロー プピーク値と事象数を Fig.21 に示す。増幅度 50dB+10dB、 しきい値 500mV で実施している。Post3~5の AE レベ ルが高く、異常部位はサイクロ減速機本体であることがAE waveformAE envelope waveformPos)PosのPos3PosGPosのFig.21 AE envelope peak value and AE event count Fig.22 に Pos3で発生していた AE 波形と AE エンベロ ープ波形を示す。突発型の AE 波形が発生しており、異 常の発生を示している。AE waveformAE envelope waveform1V/div . Imsec/divFig.22 AE wavefom and AE envelope waveform (Pos.3) Fig.23 に 20Hzまでの Pos3における AE エンベローブ スペクトルを示す。出力回転周波数人(0.57Hz) と 2L が 発生しておりガタの発生が見られる。また、偏心体軸受 の内輪きず周波数Fと2Fが発生しており、偏心体軸受の 内輪にきずが発生していることが伺える。.115 H1.92mLhemma hora dewadi denarnylon de la101900/01/22Fig.23 AE envelope spectrum (Pos. 3)/max:20Hz また、Fig. 24 に 100Hzまでの AE エンベロープスペク トルを示す。上述の内輪きず周波数の他、Fig.17 にて振動 速度スペクトルでも発生していた外ピンと曲線板の噛み 合い周波数 PO (33.1Hz)が発生しており、曲線板の摩耗 が発生していると考えられる。_1225.Hz_89_mdfu 2fait1900/01/02 2:24:00ま..IKIFig.24 AE envelope spectrum (Pos. 3) Smax: 100Hz 開放点検での結果では診断結果通り、偏心体軸受の内 輪のきずと曲線板の摩耗が確認された。Pos. 01485rpm { (24.75Hz)Pos.2」 Pos. 3 Pos. @ Pos. S91rpmJ Pos. O-- (1.52Hz)Pos. O4.2 縦型サイクロ減速機における実施例7攪拌機用のサイクロ減速機から異音が発生するため振 動と AE により、診断を行った。対象機器の略図と測定 点を Fig.25 に示す。モータの回転数は 1485rpm であり、 減速機の出力回転数は 91rpm である。(22kW)1485rpm (24.75Hz)サイクロ減速機 (減速比1/16.3)「Pos. OF91rpm (1.52Hz)Pos. O---Fig.25 Sketch of cyclo drives speed reducer (Verticaltype) Pos1における振動加速度波形とスペクトルをFig.26に 示す。20kHz 近傍のスペクトルが発生しており、O/A 値 も 2.8Gと高めである。Fig.27 にエンベロープスペクトルを示す。特に、10k~ 30kHz のエンベロープスペクトルは入力軸回転周波数ん(24.75Hz)およびその高次成分の発生が顕著である。つ まり、レベルが高い 20kHz 近傍の加速度は入力軸の回転 周波数の周期で発生しており、ガタの発生が考えられる。s-00AI028 (6) AOS: A DIRE H-19.95POS:4 DIR: HTHEN: SAVA: 2.82015 13:2012 4:19 6:20175BookFig.26 Vibration acceleration wavefom and spectrum (Pos.4)TAGNO: S-08: 22PRS:4 DIR: HBPF 1K~10kHz???みのの0.625TAND: S-04A:10FCS: A DIR: HW)““MISABPF 10k~30kHzJAAAAAAAAAAAAAAAwarmationsersaradlinds. 2.5Fig.27 Acceleration envelope spectrum (Pos.4) サイクロ減速機の出力側の Pos5における AE エンベロ ープスペクトルを Fig.28 に示す。ここでも、入力軸側の 回転周波数点(24.75Hz)およびその高次成分の発生が見 られる。つまり、この異音の原因はサイクロ減速機の入 力軸のガタによるものであると考えられる。TAND: S-/A: 104POS: 5DIR: H_12 SH1900/01/02.ASa 13:59.991.07204861111111E-02OlomstrellasFig.28 AE envelope spectrum (Pos.5) 開放検査にて得られた分解写真を Fig.29 に示す。Fig.29 Result of overhaul inspectionモータ軸とそのはめあい部である偏心体軸受のはめあ い部にフレッティングコロージョンの発生が見られ、は めあいガタが発生しており、診断結果通りの結果であっ5. 結論一般に、AE 法は数百 kHz~数 MHz という高周波数の AE 生信号を処理することで、解析時間が長く、大容量の データとなる。また、ノイズの影響を受けやすく、異常 信号を抽出する手法が確立されていないという欠点によ り、振動法に比べて現場での診断が乏しい。そこで、本 論文では超低速転がり軸受の診断法として、周波数領域 0.1~1MHz の AE 波形をエンベロープ処理した波形を用 いて診断する方法を提案した。回転数で1mm 程度、dn 値で 25mm/min 程度からの超低 速回転数領域においても有効な診断手法である。振動 O/A値で6000mm/min 程度、加速度 Peak値で 1800mm/min 程度、AE 法で 750mm/min 程度という従来の実用的な性 能と比較すると、本提案手法は非常に優れているといえ る。既にこの手法による診断器を開発し、現場での異常 診断に活用している。 ・ しかし、現場での活用に際し、0.1~1MHz の計測周波 数帯域に外部雑音が混入する場合では、異常検知が困難 となる。例えば、岩石などを粉砕する粉砕機の軸受や高 周波数の雑音が発生する反応器といった外部雑音が存在 する場合において、別途雑音除去法が必要になる。対象機器である攪拌機や押出機、減速機などによって それぞれ正常状態での AE 信号レベルが異なるため、現 場での最適な計測条件を理論的に一律に定めることは困 難である。しかし、加速寿命試験やフィールドテストを 重ねることで、ある程度の目安となる計測条件を定めっつある。実施例にも示したように異常検知感度の高い AE 法と安定して計測できる振動法との特徴を生かし診断精 度を高められる。筆者らは、1台で振動と AE とを計測で きる診断器を開発した。今後、この診断器を用いたフィールドテストを重ね、 信頼性の高い診断技術の確立を目指す。参考文献2011年度メンテナンス実態調査報告書”、日本プラ ントメンテナンス協会、2012 [2]“機械の診断・評価技術に関する調査報告書一転がり軸受の異常予知と材料評価一”、D&E 研究会、1996、pp.1.[3] 前川健二、“設備診断技術ハンドブック”、日本鉄鋼協会編、丸善、1986、pp.24. [4] 迫孝司、吉江修、“AE エンベロープ波形を用いた超低速転がり軸受診断法”、電気学会論文誌 D、Vol.132、No.4、2012、pp.501-509. [5] 迫孝司、東辰夫、金子修一、“ハイブリッド軸受診断 トーシステム(MD-370)の技術と適用について”、プラントエンジニア、Vol.44、No.3、2012、pp.23-31. [6] 迫孝司、“サイクロ減速機における軸受損傷事例”、v_BASE(振動工学データベース) フォーラム、日本機械学会、2012、pp.13-18. [7] 迫孝司、“振動、AE、潤滑油分析を用いたサイクロ減速機の診断事例”、第1回最新設備診断技術の実用 性に関する研究会、2009、日本設備管理学会(平成24年6月16日)“ “AE法による低速転がり軸受の診断技術“ “迫 孝司,Takashi SAKO,岩崎 俊二,Shunji IWASAKI,金子 修一,Syuichi KANEKO
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