磁気センサによる強磁性体鋼の非破壊材質評価

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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
本研究は、電磁気的手法を用いて非破壊的な鉄鋼材の 材質評価システムを開発し,実用化することが目的であ る。我々はこれまでに、炭素鋼の焼入れ領域では磁気特 性が変化し、その変化は焼入れ深さや度合いに依存する ことを明らかにした。交流を用いた磁気特性の測定にお いて,用いる周波数成分によって得られる情報が異なる ことを示してきた(1)~(3)。そして,試料内部の磁気特性 の変化を外部から非破壊的に測定するために,周波数掃 引励磁スペクトログラム法(Frequency Sweeping Excitation and Spectrogram method, LFFSES YE)&W L , FSES YE により,焼入れ領域や焼入れ温度の違いを定性的に評価 可能であることを報告した(4)。本手法を実製品の製造ラ イン上に用いた場合に生じるリフトオフや,複雑な形状 である実製品に適用した場合に生じる不均一なリフトオ フの影響を明らかにし,リフトオフが生じた場合でも焼 入れ評価が可能であることを示した(5)。次のステップと して、実製品に施された焼入れの度合いを評価する必要 がある。ここで, 実製品の焼入れ評価で重要となるのは、 焼入れによって得られた強度や機械的特性である。そこ で、焼入れ度合いを示す指標値として,金属材料におい て重要な機械的特性を示す降伏応力に着目した。本論文 では、降伏応力を定量的に評価するため,まず,降伏応 力が既知である試料を用いて,測定結果から得られる磁 気特性値と降伏応力との間に相関関係が得られるかにつ いて検証を行った。
Rogowski-chattock coilExcitation-coilWaveform of excitation voltageAAAAAIB-coilleEvaluation system B-H loop SpectrogramWaveform of pickup voltage81]HZHIA/m)Sensor positionFig. 1. Principle of FSES method.Amorphous core Rogowski-chattock coilExcitation coilB coilThickness: 10 Unit : mm110Fig. 2. Structure of magnetic sensor.
2. 降伏応力の評価」
2.1 周波数掃引励磁スペクトログラム法Fig. 1 に FSES 法の原理を示す。FSES 法は、複数の周 波数成分を掃引励磁し,磁気センサより得られた測定結 果から磁気特性値を求め、最終的にスペクトログラム法 を用いて焼入れを評価するといった手法である(4, 5). Fig. 1に示すスペクトログラム法は、横軸を測定位置,縦軸を 周波数とすることで,複数の周波数成分から得られた磁 気特性を二次元的に表わすことができ,焼入れ領域にお ける磁気特性変化を定性的に評価することができる。 Fig.1432 に磁気センサの構造を示す。磁束密度測定用 B コイル と磁界強度測定用としてロゴスキー・チャトックコイル CH コイル)が設置され、外部から非破壊的に磁束密度波形 と磁界強度波形の測定が可能である。測定条件として励 磁周波数や試料の磁気特性が異なる場合でも, B コイル より得られる磁束密度の最大値を一定となるようにフィ ードバック制御を行った。そのため、試料の材料特性が 異なる場合でも同じ磁束に対する磁気特性の比較が可能 である。また,磁束密度を同条件とした場合,保磁力と 磁気損失を用いることでリフトオフの影響をほとんど受 けず焼入れの評価が可能であることを報告した(5)。本測 定では保磁力 H. [Alm]と磁気損失 W. [W1kg]を用いて焼入れ評価を行った。磁気損失は、 1. Win - J.fr dB . . にて計算した。ここで,pは材料密度,Tは周期である。......(1)......(1)こで, pは材料密度、Tは周期である。2.2 降伏応力の定性的評価 -FSES 法を用いて母材試料の焼入れ評価を行う。Fig. 3 に示すように,直線状に 100 mm, 1mm 間隔でセンサを 走査して測定した。最大磁束密度を 0.1Tとし,励磁周波 数は 10 Hzから 30 Hzまで, 2 Hz ごとに 11 個の周波数成 分を用いた。 - Fig. 4 に保磁力のスペクトログラムを焼入れ条件ごと に示す。降伏応力が増加するにつれて保磁力の値も増加 し,その違いを得られている。また、保磁力では周波数 成分による値の変化がほとんど無く、スペクトログラム がほぼ一色である。Fig.5に磁気損失のスペクトログラム を焼入れ条件ごとに示す。保磁力と同様、降伏応力の違 いを得ることが可能である。磁気損失は保磁力とは異な り,周波数による値の変化が現れ,スペクトログラムの 色度合いに変化が表れている。以上の結果より,本手法 によって、降伏応力の違いを定性的に評価することが可 能である。2.3 降伏応力の定量的評価保磁力と磁気損失を用いて降伏応力の定量的評価を行 うため,それぞれの評価値における周波数特性及び絶対 値の変化率を検証し,降伏応力と相関が得られる代表値 の検討を行った。絶対値の変化率は、H(HA) - H (NH)x100 ...(2)Rate of change(Hz)=4H(NH)-144-5050Measurement rangeThickness :0.6 Unit: mm200Fig. 3. Hardened carbon steel plate.(Alm)Alm]Hair」 |1900/01/081983(a) Non-hardened(b) HA-75(A/m](Alm)といFreelt)で-50-00ミラー 200-10 10 1900(c) HA-80(d) HA-83Alm(Alm)TH130-20-231-320-0to20405(e) HA-95(f) HA-110[Alm](Alm)Fini Turba|シートFly recruitおつ(21) 200-120-10010231-101-300020-20-100(g) HA-125(h) HA-140 Fig. 4. Spectrogram of coercive force He (Basesamples).CHAN-W(NH)x 100 .... (3)Rate of change(W.) - Wm(HA) - W.(NH)W(NH)にてそれぞれ計算した。ここで, HAHA)と Wom(HA)は焼入 れ試料測定時に得られた保磁力と磁気損失の値であり,[W/kg)(W/kg)Favon.orgなの-501-20-31-21-10030357(a) Non-hardened(b) HA-75「W/kg][W/kg][HeadedにあったのでHurtt310-03-33000-10002302(C) HA-80(d) HA-83[W/kg)[W/kg]・・・Fotolunctピア・まったお題-50-20・20・20~30012033-40SSsition:min)(e) HA-95(f) HA-110[W/kg](W/kg]Hisuritori兄さんという。格ター40-50-20-100020300なんで「stonova)(g) HA-125(h) HA-140 Fig. 5. Spectrogram of magnetic power loss Wm(Base samples).H(NH)と WINH)は焼入れ無し試料測定時に得られた値 である。 * Fig.6 と Fig.7に, Fig.3 に示す試料の中心(r=0 mm)に おける保磁力及び磁気損失の周波数特性を示す。Fig. 4 の スペクトログラムと同様に,保磁力は降伏応力による違 いは得られているが,周波数による値の変化がほとんど 無い。それに対して磁気損失では、降伏応力の違いと周 波数による値の変化が現れている。また,Fig. 7 より f = 10Hz時とf%3D330Hz 時を比較すると,降伏応力による値の 差が増加していることがわかる。したがって,磁気損失 の周波数勾配は降伏応力によって異なると考えられる。 以上の結果より,磁気損失では周波数勾配を用いること2000100K........Coercive force kc [A/m]ローHA75HA80 ・... HA83 -HA95・HHA110 ーローHA125HA140 10 15 2012530Frequency [Hz] Fig. 6. Coercive force depending on frequency(x=0mm, 10~30Hz).戦中山Magnetic power loss Wm [W/kg]かなー1NH HA75 : HA80HA83 -e-HA95HA110 -HA125一日一HA140 1520Frequency [-z] Fig. 7. Magnetic power loss depending onfrequency (x=0mm, f=10~30Hz).(30Hardened (95A-140A)Hardened (80A-83A)Average rate of change HoHardened (75A)Non-hardened20r%3D0.9883 40-560 80 100 120 140 160Yield strength [kgf/mm2] Fig. 8. Quantitative evaluation of degree of yieldstrength by average rate of change Hc.0.080.07Hardened (95A-140A)Gradient of WmHardened (80A-83A)Hardened (75A)Non-hardenedr%3D0.9888 1 2040 60 80 100 120 140 160Yield strength [kgf/mm2] Fig. 9. Quantitative evaluation of degree of yieldstrength by gradient of Win.145で降伏応力を定量的に評価することが可能と考えられる。Fig. 8 と Fig.9に, 23 個の母材試料からそれぞれ求めた 代表値と降伏応力との相関関係を示す。保磁力の変化率 における相関係数r は 0.9883, 磁気損失の周波数勾配にお ける相関係数r は 0.9888 を示し,両者ともに強い相関が 得られた。また, Non-hardened, HA75, HA80~83, HA95 ~140 のグループに大きく分けることができ, 焼入れ条件 による降伏応力の推定も可能であると考えられる。以上 の結果より, Fig. 8 と Fig.9の結果を実製品に適用すれば、 実製品における降伏応力の定量的評価が可能である。3. まとめ本論文では、電磁気的手法である周波数掃引励磁スペ クトログラム法による非破壊材質評価を実用的に用いる ため,焼入れ度合いによって異なる降伏応力の定量的評 価方法の検討を行った。以下に得られた知見をまとめる。 (1)保磁力と磁気損失を用いたスペクトログラムによって、焼入れ条件によって異なる降伏応力を定性的に評価可能であることを示した。 (2)保磁力では絶対値を利用した変化率(焼入れ無し時の保磁力に対する割合), 磁気損失では周波数に 対する値の勾配を利用することで,降伏応力と強 い相関を得ることができ,定量的評価が可能であることを示した。 今後の課題として,保磁力の変化率と磁気損失の周波 数勾配を用いた降伏応力値の定量的評価の精度について 検証する必要がある。また,異なる形状及び,異なる焼 入れ条件の製品に本手法を適用し,焼入れ評価が可能で あるか検証する必要がある。謝辞本研究は、特別会計に関する法律(エネルギー対策特 別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として,福 井大学が実施した平成 23 年度「「もんじゅ」における高 速増殖炉の実用化のための中核的研究開発」において, 大分大学が再委託を受けて実施した成果を含みます。参考文献 [1] Johnson Marcus, Lo Chester, Hentscher Scott and KinserEmily: “Analysis of conductivity and permeability profiles in Hardened steel” ElectromagneticNondestructive Evaluation (IX), pp. 135-142 (2005) [2] Y. Kai, Y. Tsuchida, M. Enokizono : “NondestructiveEvaluation of Case Hardening by Measuring Magnetic Properties““, Electromagnetic Nondestructive Evaluation(IX), pp. 143-150 (2005) [3] Yuichiro Kai, Yuji Tsuchida and Masato Enokizono :““Magnetic properties of Hardened Carbon Steel by Cutout Ring Type Specimen”, Journal of the Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics,Vol.14, No.1 pp. 145-150 (2006) [4] Yuichiro Kai, Yuji Tsuchida and Masato Enokizono :““Non-destructive evaluation for hardened carbon steel by using frequency sweeping excitation and spectrogram method““ , International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics, Vol.32, No.3-4, pp.1287-1294 (2010) [5] Taisuke Matsuda, Yuji Tsuchida, Masato Enokizono :“ Frequency Sweeping Excitation and Spectrogram Method to Evaluate Hardened Carbon Steel““, Journal of Material Science Forum(under renewing)(平成 24年7月2日)146“ “磁気センサによる強磁性体鋼の非破壊材質評価“ “槌田 雄二,Yuji TSUCHIDA,榎園 正人,Masato ENOKIZONO
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