高クロム鋼溶接材の傾斜欠陥に関する電磁逆解析手法の提案

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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
近年、エネルギー機器やその他の産業機器では安全 性・信頼性確保のため、高精度な劣化損傷の評価手法の 開発が求められている。原子力機器の構造部材として検 討されている高クロム鋼を溶接継手として用いる場合、 溶接継手近傍では溶接金属や溶接による熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ) 周辺部で傾斜き裂や損傷が発生し やすい。これらの欠陥では材料の相違や傾斜した欠陥形 状が漏洩磁束密度分布に対し複雑に影響を及ぼす。そこ で本研究では高クロム鋼溶接材の熱影響部に沿って存在 する Type-III欠陥に対し、漏洩磁束密度計測と逆解析手法 により欠陥形状を求めた。
2. 傾斜欠陥の磁束密度分布
本研究で用いた試験片は高クロム(Mad.9Cr-1Mo)鋼溶 接板から切り出して作成した。溶接金属と HAZ の境界 上に溶接線と平行に長さ2.5mm、傾斜角20度の欠陥をワ イヤーカット加工で設けた(図1)。試験片の着磁条件 の違いによる漏洩磁束密度分布の比較を行うためネオジ ム磁石(表面磁束密度 4.88kG)とフェライト磁石(同連絡先:中住昭吾、〒305-8564 茨城県つくば市並木 1-2-1 つくば東、独立行政法人産業技術総合研究所、 E-mail: nakasumi.shogo@aist.go.jp1.33KG)の2種類の磁石を用いて着磁させた。計測で得られた試験片長手方向の漏洩磁束密度分布を 図2に示す。図2(a)では欠陥に対して非対称な分布と なっていることが確認できる。それに加えて図 2 (b)で は溶接金属や熱影響部に起因する変化が確認できる。3. 逆解析による欠陥形状評価図2の漏洩磁束密度分布から、磁気双極子を用いた方 法[1]と特異値分解による逆解析[2]を行った。その際、特 異値分解で微小な特異値の影響により振動解になり易い ため、ある閾値以下の大きさの特異値を切り捨てること で適切な逆解析結果を得る処理を行った。逆解析結果を 図3に示す。これは傾斜欠陥の面上に配置した磁気双極 子の逆解析結果である。点線は欠陥境界の位置を示す。図3(a)では適切な欠陥形状が求められている。すなわ ち強磁場印加下の漏洩磁束密度分布からは傾斜欠陥形状 を精度良く求めることができたと言える。それに対して 図3(b)は欠陥形状を正しく表現できていない。これは溶 接部の影響が相対的に大きいことが原因と推測される。そこで溶接部の影響を定量的に評価するため、高クロ ム鋼板の溶接部から切り出した試験片の磁気特性を測定 し試験片材料の B-H 曲線を求めた。その結果を図4に示 す。磁界の強さが小さい範囲では母材の透磁率と比較し147て溶接金属のそれは低いことが分かる。そのため磁束密 度の分布に影響を与え、適切な逆解析結果が得られなか ったと思われる。一方飽和磁化の値は材料の間にはほと んど差がないため、飽和磁化に達した後では材料の差に 起因する磁気特性の差が僅かなものに留まっており逆解 析に影響を与えなかったと思われる。図 (b)の分布から溶接部の影響を取り除き傾斜欠陥の 影響のみを抽出するため、図 1 と同様の形状で欠陥のな い試験片の磁束密度分布を測定し(図 5)、これを図 2(b) から減算させた。その結果得られた磁束密度分布を図6 に示す。図6では溶接部の影響がほぼ除去されているこ とが確認できる。これを用いて逆解析を行った結果を図7 に示す。図7は欠陥面の形状が適切に現れていることを 確認できる。4. まとめ高クロム鋼溶接材の溶接部周辺の傾斜欠陥に対し漏洩 磁束密度分布を計測し、特異値分解に基づく逆解析を行 った。強磁場印加下で得た漏洩磁束密度分布からは溶接 部の影響を受けることなく欠陥形状を求めることができ た。弱磁場印加下では相対的に溶接部の影響が大きくな るものの、その磁気特性を減算処理することで溶接部の 影響を取り除いた漏洩磁束密度分布を抽出し、適切な欠 陥形状を求めることができた。「謝辞1. 本研究は、特別会計に関する法律(エネルギー対策特 別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として、福 井大学が実施した平成 23 年度「「もんじゅ」における高 速増殖炉の実用化のための中核的研究開発」において、 独立行政法人産業技術総合研究所が再委託を受けて実施 した成果を含みます。参考文献 [1] S. Nakasumi and T. Suzuki, “Evaluation of Defect ShapeBased on Inverse Analysis Considering the Resolution of Magnetic Sensor”. E-Journal of Advanced Maintenance,Vol.3, No.1, 2011, pp.1-10. [2] 日本機械学会編、“逆問題のコンピュータアナリシ ス”、日本機械学会、1991、p.41.(平成24年6月 15 日).0.335Weld metal}\20°HAZ?? (Base metalDefect80130.335Weld metal15HAZA≫Base metalDefect80Fig. 1 SpecimenWelded metalWelded metalMagnetic flux density GMagnetic flux density G・201020120-10 0 1020Position mm--100 1 0.Position mm (a)Applied magnetic field 4.88KG (b)Applied magnetic field 1.33KGFig.2 Magnetic flux leakage distribution2019年11SS33081す !では、Defect length mmDefect length mm当日の8時 12月nanatom 00mmeranSTEINA2があるこのインテ2011年 おすすめの10002019/01/301512345X mm234 X mm(a)Applied magnetic field 4.88KG (b)Applied magnetic field 1.33KGFig.3 Results of inverse analysesBase metalHAZ ...... Weld metalMagnetic flux density TMagnetic flux density GWelded metalYES0.4-0.4 -0. 2 0 _ 0.2 0 Magnetic field x108 Alm Fig.4 B-H curves1100 1020Position mm Fig.5 Magnetic flux leakage distribution of welded specimenWelded metal本部 3251000-10mmMagnetic flux density GDefect length mm““INTE REskataTIME TAINMIGHT ““ USTREENSTEEN ・出を語る(1203月1日TPPAIRの個性がなり 、11月 2018] !!許さな部品を売るX mm・20 -100_ 1020Position mm Fig.6 Magnetic flux leakage distribution obtained by subtracting the effectof welded regionFig. 7 Result of inverse analysis using subtracted magnetic fluxdistribution148“ “高クロム鋼溶接材の傾斜欠陥に関する電磁逆解析手法の提案“ “中住 昭吾,Shogo NAKASUMI,鈴木 隆之,Takayuki SUZUKI,高島 尚之,Naoyuki TAKASHIMA,槌田 雄二,Yuji TSUCHIDA
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