9Cr-1Mo 鋼溶接部の微視組織の内部拘束を考慮した異方性クリープ解析
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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
CO2 排出量を削減するためには発電効率の向上 が有効であり、そのためには発電タービン内の蒸気 を高温高圧化する必要がある。 * 9Cr-1Mo 鋼は、V や Nb 量を最適化して、強度、 耐食性、耐熱性を高めるとともに、熱膨張率を低く」 抑え、熱伝導率を高めて、熱応力の低減を図ったこ とにより、内外部の温度差に起因する熱応力による。 クリープ疲労損傷が深刻となる大型構造物に用い られてきた[1,2]。以上のことから、この 9Cr-1Mo 鋼は、もんじゅや その後の実証炉の一体型蒸気発生器伝熱管の材料 としての使用が検討されており[3]、低熱膨張率・高 熱伝導率による配管総長短縮等の経済的利点が期 待されている[4]。しかし、高クロム鋼では、一般に、Cr 量を高め、 組織を焼戻しマルテンサイトとして転位密度を高 めることにより高いクリープ強度と耐食性を実現 している[5]が、溶接継手の熱影響部(HAZ)の細粒域 に Type IV と呼ばれる内部損傷が生じ、溶接部のク リープ強度が母材よりも低下する現象が報告され ている[6]。この現象に対して、HAZ 細粒域の粒界強化や粒 この現象に対して、HAZ 細粒域の粒界強化や粒径を母材程度にまで大きくすることにより Type IV 損傷そのものを生じにくくする研究[7]や、様々なシ ミュレーションや実験により Type IV 損傷の発生・ 成長過程を明らかにし、クリープ損傷挙動や溶接継 手の破断を推定しようと試みた研究[8, 9]がある。し かし、溶接部の微視組織を考慮してクリープ解析を 行った研究は多くない。そこで本研究では、前報の溶接部周辺組織を直交 異方性で近似したすべり系を有する多結晶体モデ| ルを用いた 550°Cでのクリープ解析[10]に加え、 600°C、650°Cにおける 60 年以上の長期使用を想定 した有限要素法クリープ解析を行い、実験結果の再 現性を検討するとともに、結晶粒の性状や形状を変 化させて、クリープ強度に及ぼす結晶粒間の拘束の 影響を調べることとした。 2.溶接部近傍微視組織の 2D-FEM モデル ・ 溶接部周辺は図 1(a)に示すように、様々な形状や 粒径を持つ多数の結晶で構成されており、大きく分 類すると領域)の凝固溶融金属の針状組織、領域2 の HAZ、そして領域3の熱の影響を受けていない」 母材の3種類となっている[11]。さらに、領域1~ 領域2の中央付近に示した細粒域までの間には、ク リープ損傷として図 1(b)に示すような Type I~Type IV の分類がなされている[12]。
Type I は凝固溶融金属内に生じる損傷、Type II は凝固溶融金属から HAZ に進展した損傷、Type III | は HAZ 粗粒域に生じる損傷で、粒界におけるキャ ビテーションや粒界き裂を伴い、基本的に外表面か
-1- 152 - 条件を考える。ただし、所等の添字は、結晶粒ごと に全体デカルト座標に対してランダムに指定され た角度に回転して設定された局所デカルト座標系 軸を示す(図4参照)。 __F(on -ops) + G(orgs - 0 ) + H (on - Ozz)* +2Lch + 2MO3 + 2No3 = 26 ここで、F、G、H、L、M および Nは異方性パラメ 条件を考える。ただし、等の添字は、結晶粒ごと に全体デカルト座標に対してランダムに指定され た角度に回転して設定された局所デカルト座標系 軸を示す(図4参照)。 __F(on -ogs) + G(ora - 0,)' + H (orn - 0px)'1 +2Loi + 2M03 + 2Noiz = 25 ここで、F、G、H、L、Mおよび Nは異方性パラメ ータであり、1 111 11 2F = -+ -- つ,de _1.AO““
ただし、Aとn はそれぞれノートン則の係数と指数 である。本研究では、=1.0、その他の 1 -0.5 として、各 結晶のすべり系の変形挙動を表現することとした。 4.解析結果とその考察式(2)の は降伏比であり、降伏応力を or とする と、次式で表される。4.1 解析の概要本解析に用いた図3に示す各組織の弾性係数とノ ートン則の係数および指数の値を表1に示す。図3(a)に示した改良9Cr-1Mo鋼の溶接部周囲の微 細組織を模擬した微細組織近似モデルでは、結晶粒 ごとにランダムな方向に直交異方性を与え、一定の 引張応力を負荷して、異方性クリープ解析を行った。 まず、既報の実験結果[12]および著者らの実験結果 と解析結果を比較し、実験結果と解析結果の一致度 を確認しながら、試行錯誤的に微細 HAZ 部 (図 3(a) の2)およびそれ以外の組織(図 3(a)の1)のノー トンの係数と指数を決定クリープトゴム 一時11-3ミーゼスの相当応力.. で表したノートン則から と、次式で表される。-3__ ミーゼスの相当応力ger で表したノートン則から 求められるひずみ速度を基準にして、式(3)の降伏比 を用いて、各ひずみ成分の速度を次式(4)によって求 める[14]。Mod.9Cr steel 10. 10-200MPaat 823K in airCreep strain,500 1000 1500 2000Elapsed time, t, h Fig. 5 Scattering of creep deformation curves obtained for the polycrystalline and the isotropicmodels for o%3D200MPa at 823 K.mmmmmmTrrrrrrr TTTTTTTTTTチート52T823K873KApplied stress, o, MPaODO923K Polycrystal model 823KPolycrystal model 873K O Polycrystal model 923K→ Expermental 823K |x Expermental 873K |/ Expermental 923K megatormanamuuuuuuu10' 10““1010311100106~ん107Time to rupture, Ir, h Fig. 6 Comparison of results obtained by the presentFE analyses with those by experiments. ただし、Aとn はそれぞれノートン則の係数と指数 である。 1. 本研究では、=1.0、その他の 1 -0.5 として、各 結晶のすべり系の変形挙動を表現することとした。 4.1 解析の概要 1. 本解析に用いた図3に示す各組織の弾性係数とノ ートン則の係数および指数の値を表1に示す。図3(a)に示した改良9Cr-1Mo鋼の溶接部周囲の微 細組織を模擬した微細組織近似モデルでは、結晶粒 ごとにランダムな方向に直交異方性を与え、一定の 引張応力を負荷して、異方性クリープ解析を行った。 まず、既報の実験結果(121および著者らの実験結果 と解析結果を比較し、実験結果と解析結果の一致度 を確認しながら、試行錯誤的に微細 HAZ 部 (図 3(a) の2)およびそれ以外の組織(図 3(a)の1)のノー トン則の係数と指数を決定し、クリープひずみ一時 間線図、クリープ破断線図等を求めた。次に、結晶 粒の寸法差および結晶粒間同志による変形拘束の クリープ寿命への影響を調べるため、図 3(b)に示す 等大同形結晶粒モデルと、図 3(a)および(b)の1の組 織の機械的特性を用いた等方性モデルによる解析 を行い、結晶粒間の変形拘束の異なるモデルを用い て得られた結果の比較を行った。4.2 クリープ変形挙動図5に、微細組織近似モデル(図 3(a)) の剛体部と 接する右端面の伸びをモデルの初期長さで除して 求めた巨視的なクリープひずみの時間変化の解析 結果(823K、200MPa)を示す。図5に示したクリー プ変形挙動では、第1期、第2期の期間が短く、断 面積の現象によるひずみ速度の増加が第3期の変形 が主となっていることが分かる。また、たとえ見掛 けの条件が同一であっても、すべり系の方位の空間 分布が異なれば、変形挙動にばらつきが生じること が分かる。図5より、図に示したいずれの場合にも 巨視的クリープひずみが6%以上で曲線は急激な立 ち上りを示している。4.3 クリープ破壊線図 - 本解析では、図5に例示したように、いずれの応 力レベルにおいても、クリープによる近似多結晶体 モデルの巨視的ひずみが6%に達した時点でクリー プひずみ -時間曲線が急激な立ち上りを示した。そ こで、本解析では試験片の巨視的クリープひずみが 6%となった時点で試験片が破断した(変形が無限 大)と見なして、図6に示すクリープ破断曲線を求 めた。なお、図6中の×印は文献[12]に記載された 実験データのプロット点を示す。図6から、本解析で得られた近似多結晶体モデル のクリープ破断線図は×印の実験結果とよい一致 - 154 - を示していることが分かる。また、図7は解析と実 験で得られた寿命のばらつきを対数正規確率紙に プロットした一例である。実験値は同一応力におけ るサンプル数が少なかったため 194~204MPa の応 力範囲の破断時間データからばらつきを求め、200 MPa に対する解析値のばらつきと比較している。図 7より、実験および解析ともに、クリープ寿命はほ ぼ対数正規分布に従っているとみなすことができ る。また、各寿命分布の 50%点はそれぞれ約 750h と約710h となり、ほぼ一致しているが、実験で得 られた寿命のほうがばらつきは大きい。図8は、823、873 および 923 K の3温度で得られ た解析結果をラーソンミラー・パラメータLMP-T(C+log104) で整理した結果である。通常のラーソンミラー・パ ラメータの定数としては 20 が用いられる場合が多 いが、本研究の場合 38.5 という大きな値が最適値と して得られた。これは、高強度高クロム・フェライ ト耐熱鋼のラーソンミラー・パラメータ定数には 30 以上の比較的大きな値が用いられることが多い[16] という報告に符合する結果である。 また、図8には図6に示した実験結果も比較のた99.99 99.9Mol.9Cr steel =200MPa at 823K inoCumulative probability, F, %0-01-oogleO Polycrystal model|- Expermental(194~204MPa)0.010.1115005000 Time to runture. tr. h|- Expermental(194~204MPa) 0.01 5005000 Time to rupture, tr, h Fig. 7 Variations of creep lives predicted by the present analyses and experiments plotted on the log-normal probability paper (o=200 MPa at 823 K). 300円O Polycrystal model 823KPolycrystal model 873K O Polycrystal model 923K+ Expermental 823K | x Expermental 873KExpermental 923K\ x + D400Applied stress, O, MPa3200034000 - 36000-38000 40000Larson-Miller Parameter, T(38.5+logiot) Fig. 8 Analytical and experimental creep life diagrams rearranged by the Larson-Miller parameter.め再プロットしてある。図8から、解析結果、実験 結果ともに 10h(約 114 年)の長期にわたってラー ソンミラー・パラメータによってほぼ1本の曲線で 表わされることが分かる。 4.4 他モデルによる解析結果の比較 4.4 他モデルによる解析結果の比較図9に微視組織近似モデル、等大同形モデルおよ び等方性モデルによる3種類のモデルによる解析結 果を比較して示す。図9より、等大同形結晶粒モデ ルは微視組織近似モデルより安全側の寿命予測と なっていることが分かる。これは結晶粒の大きい等 大同形結晶粒モデルは、結晶粒の小さい溶接部微視 組織近似モデルと比べると、結晶粒同志の変形拘束 による応力集中点の領域が拡大されたため寿命が 短くなったものと推察される。また、結晶粒をすべ て等方性としたモデルでは破断寿命が微視組織近 似モデルより約2桁長く得られているが、これは結 晶粒間の変形拘束がなくなり、応力集中軽減された ため、寿命が伸びたものと推察される。 5. 結言9Cr-1Mo 鋼の結晶粒形とその異方性を考慮した クリープ解析を実行した結果、以下の結論を得た。 (1) 本解析で得られた近似多結晶体モデルのクリープ寿命は既存および著者らの実験結果とよ い一致を示した。また、クリープ寿命は、解析 結果、実験結果ともに対数正規分布に従うとみ なされたが、解析結果のばらつきは実験と比べて小さく得られた。 (2) ラーソンミラー・パラメータで異なる温度の結果を整理した結果、解析結果、実験結果ともに 10' h(約114 年)の長期にわたってほぼ1本の曲線で表わされることが分かった。 (3) 等大同形モデルで予測されたクリープ寿命は、微視組織近似モデルに比べて1桁程度短寿命側、 すなわち、安全側の予測を与える傾向がある。 250TWoApplied stress, o, MPa3150FO Polycrystal modelEquishaped modelIsotorpic model 1001 140 10-10 10+ 10 100 107105Time to rupture, tr, h Fig. 9 Comparison of results obtained by the presentFE analyses at three levels of ambient temperatures. - 155これに対して、等方性モデルで予測されたクリ ープ寿命は2桁程度長寿命側、すなわち、危険 側の予測を与える傾向があることが分かった。 謝辞 - 本研究は、特別会計に関する法律(エネルギー対 策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業と して、福井大学が実施した平成 23 年度「「もんじゅ」 における高速増殖炉の実用化のための中核的研究 開発」において、東京理科大学が再委託を受けて実 施した成果を含みます。 参考文献 [1] 山下賢、後藤明信、火力発電ボイラ用高クロムフェライト鋼溶接材料、神戸製鋼技報、Vol. 53、No. 2 (2003). [2] 阿部富士雄、7(1)発電用鉄鋼材料の高温化、第3部第5章、2006年度物質材料研究アウトルック. [3] (財)高度情報科学技術研究機構(RIST)、高速増殖 1 炉の構造材料、03-01-02-15 (2007). [4] 核燃料サイクル開発機構研究開発課題評価委員会、高速増殖炉の機器構造材料研究開発、JNCTN1440 2002-009 (2003). [5] 緒方隆志ほか2名、改良 9Cr-1Mo 鋼溶接継手の 単軸クリープ破断特性と損傷評価法の提案、材料、Vol. 58、No. 2 (2009). [6] [8] [6] 田淵正明ほか5名、W 強化高フェライト鋼溶接継手の組織とクリープ強度、材料、Vol.50、No. 2 (2001). [7] 田淵正明ほか5名、ボロン添加による高 Cr 耐熱鋼溶接継手のクリープ特性の改善、材料、Vol.54、No. 2 (2005). [8] 本郷宏通ほか3名、Mod. 9Cr-1Mo 鋼溶接継手のクリープ損傷挙動、材料、Vol. 58、No.2 (2009). [9] 川島扶美子ほか2名、21/4Cr-1Mo 鋼溶接部 TypeIIIおよび TypeIVクリープ損傷のミクロ・マクロシミュレーション、材料、Vol. 56、No. 2 (2007). [10] 中曽根祐司、鈴木拓雄、日本保全学会第7回学術講演会要旨集(2010). [111 高温強度の基礎・考え方・応用、材料学会 (2008). [12] M. Tabuchi et al., Evaluation of Microstructures andCreep Damages in the HAZ of P91 Steel Weldment,J. of Pressure Vessel Tech., Vol. 131 (2009). [13] N. Komai and F. Masuyama, Microstructural Degradation of the HAZ in 11Cr-0.4M0-2W-V-Nb-Cu steel(P122) during Creep, ISIJ Int., Vol. 42, No. 12 (2002). [14] R. Hill, the Mathematical Theory of Plasticity,Oxford Univ. Press (1950). [15] ANSYS 14.0 のヘルプ文章, [16] 木村一弘ほか2名、応力ー破断曲線の領域分割法による高 Cr フェライト耐熱鋼のクリープ寿 命予測の高度化、材料、Vol. 52、No. 1 (2003).[11] 53、ロム[12]第3[13]増殖[14]委員 JNC[15][16]- 156 -“ “9Cr-1Mo 鋼溶接部の微視組織の内部拘束を考慮した異方性クリープ解析 “ “中曽根 祐司,Yuji NAKASONE,岡 篤史,Atsushi OKAMI
CO2 排出量を削減するためには発電効率の向上 が有効であり、そのためには発電タービン内の蒸気 を高温高圧化する必要がある。 * 9Cr-1Mo 鋼は、V や Nb 量を最適化して、強度、 耐食性、耐熱性を高めるとともに、熱膨張率を低く」 抑え、熱伝導率を高めて、熱応力の低減を図ったこ とにより、内外部の温度差に起因する熱応力による。 クリープ疲労損傷が深刻となる大型構造物に用い られてきた[1,2]。以上のことから、この 9Cr-1Mo 鋼は、もんじゅや その後の実証炉の一体型蒸気発生器伝熱管の材料 としての使用が検討されており[3]、低熱膨張率・高 熱伝導率による配管総長短縮等の経済的利点が期 待されている[4]。しかし、高クロム鋼では、一般に、Cr 量を高め、 組織を焼戻しマルテンサイトとして転位密度を高 めることにより高いクリープ強度と耐食性を実現 している[5]が、溶接継手の熱影響部(HAZ)の細粒域 に Type IV と呼ばれる内部損傷が生じ、溶接部のク リープ強度が母材よりも低下する現象が報告され ている[6]。この現象に対して、HAZ 細粒域の粒界強化や粒 この現象に対して、HAZ 細粒域の粒界強化や粒径を母材程度にまで大きくすることにより Type IV 損傷そのものを生じにくくする研究[7]や、様々なシ ミュレーションや実験により Type IV 損傷の発生・ 成長過程を明らかにし、クリープ損傷挙動や溶接継 手の破断を推定しようと試みた研究[8, 9]がある。し かし、溶接部の微視組織を考慮してクリープ解析を 行った研究は多くない。そこで本研究では、前報の溶接部周辺組織を直交 異方性で近似したすべり系を有する多結晶体モデ| ルを用いた 550°Cでのクリープ解析[10]に加え、 600°C、650°Cにおける 60 年以上の長期使用を想定 した有限要素法クリープ解析を行い、実験結果の再 現性を検討するとともに、結晶粒の性状や形状を変 化させて、クリープ強度に及ぼす結晶粒間の拘束の 影響を調べることとした。 2.溶接部近傍微視組織の 2D-FEM モデル ・ 溶接部周辺は図 1(a)に示すように、様々な形状や 粒径を持つ多数の結晶で構成されており、大きく分 類すると領域)の凝固溶融金属の針状組織、領域2 の HAZ、そして領域3の熱の影響を受けていない」 母材の3種類となっている[11]。さらに、領域1~ 領域2の中央付近に示した細粒域までの間には、ク リープ損傷として図 1(b)に示すような Type I~Type IV の分類がなされている[12]。
Type I は凝固溶融金属内に生じる損傷、Type II は凝固溶融金属から HAZ に進展した損傷、Type III | は HAZ 粗粒域に生じる損傷で、粒界におけるキャ ビテーションや粒界き裂を伴い、基本的に外表面か
-1- 152 - 条件を考える。ただし、所等の添字は、結晶粒ごと に全体デカルト座標に対してランダムに指定され た角度に回転して設定された局所デカルト座標系 軸を示す(図4参照)。 __F(on -ops) + G(orgs - 0 ) + H (on - Ozz)* +2Lch + 2MO3 + 2No3 = 26 ここで、F、G、H、L、M および Nは異方性パラメ 条件を考える。ただし、等の添字は、結晶粒ごと に全体デカルト座標に対してランダムに指定され た角度に回転して設定された局所デカルト座標系 軸を示す(図4参照)。 __F(on -ogs) + G(ora - 0,)' + H (orn - 0px)'1 +2Loi + 2M03 + 2Noiz = 25 ここで、F、G、H、L、Mおよび Nは異方性パラメ ータであり、1 111 11 2F = -+ -- つ,de _1.AO““
ただし、Aとn はそれぞれノートン則の係数と指数 である。本研究では、=1.0、その他の 1 -0.5 として、各 結晶のすべり系の変形挙動を表現することとした。 4.解析結果とその考察式(2)の は降伏比であり、降伏応力を or とする と、次式で表される。4.1 解析の概要本解析に用いた図3に示す各組織の弾性係数とノ ートン則の係数および指数の値を表1に示す。図3(a)に示した改良9Cr-1Mo鋼の溶接部周囲の微 細組織を模擬した微細組織近似モデルでは、結晶粒 ごとにランダムな方向に直交異方性を与え、一定の 引張応力を負荷して、異方性クリープ解析を行った。 まず、既報の実験結果[12]および著者らの実験結果 と解析結果を比較し、実験結果と解析結果の一致度 を確認しながら、試行錯誤的に微細 HAZ 部 (図 3(a) の2)およびそれ以外の組織(図 3(a)の1)のノー トンの係数と指数を決定クリープトゴム 一時11-3ミーゼスの相当応力.. で表したノートン則から と、次式で表される。-3__ ミーゼスの相当応力ger で表したノートン則から 求められるひずみ速度を基準にして、式(3)の降伏比 を用いて、各ひずみ成分の速度を次式(4)によって求 める[14]。Mod.9Cr steel 10. 10-200MPaat 823K in airCreep strain,500 1000 1500 2000Elapsed time, t, h Fig. 5 Scattering of creep deformation curves obtained for the polycrystalline and the isotropicmodels for o%3D200MPa at 823 K.mmmmmmTrrrrrrr TTTTTTTTTTチート52T823K873KApplied stress, o, MPaODO923K Polycrystal model 823KPolycrystal model 873K O Polycrystal model 923K→ Expermental 823K |x Expermental 873K |/ Expermental 923K megatormanamuuuuuuu10' 10““1010311100106~ん107Time to rupture, Ir, h Fig. 6 Comparison of results obtained by the presentFE analyses with those by experiments. ただし、Aとn はそれぞれノートン則の係数と指数 である。 1. 本研究では、=1.0、その他の 1 -0.5 として、各 結晶のすべり系の変形挙動を表現することとした。 4.1 解析の概要 1. 本解析に用いた図3に示す各組織の弾性係数とノ ートン則の係数および指数の値を表1に示す。図3(a)に示した改良9Cr-1Mo鋼の溶接部周囲の微 細組織を模擬した微細組織近似モデルでは、結晶粒 ごとにランダムな方向に直交異方性を与え、一定の 引張応力を負荷して、異方性クリープ解析を行った。 まず、既報の実験結果(121および著者らの実験結果 と解析結果を比較し、実験結果と解析結果の一致度 を確認しながら、試行錯誤的に微細 HAZ 部 (図 3(a) の2)およびそれ以外の組織(図 3(a)の1)のノー トン則の係数と指数を決定し、クリープひずみ一時 間線図、クリープ破断線図等を求めた。次に、結晶 粒の寸法差および結晶粒間同志による変形拘束の クリープ寿命への影響を調べるため、図 3(b)に示す 等大同形結晶粒モデルと、図 3(a)および(b)の1の組 織の機械的特性を用いた等方性モデルによる解析 を行い、結晶粒間の変形拘束の異なるモデルを用い て得られた結果の比較を行った。4.2 クリープ変形挙動図5に、微細組織近似モデル(図 3(a)) の剛体部と 接する右端面の伸びをモデルの初期長さで除して 求めた巨視的なクリープひずみの時間変化の解析 結果(823K、200MPa)を示す。図5に示したクリー プ変形挙動では、第1期、第2期の期間が短く、断 面積の現象によるひずみ速度の増加が第3期の変形 が主となっていることが分かる。また、たとえ見掛 けの条件が同一であっても、すべり系の方位の空間 分布が異なれば、変形挙動にばらつきが生じること が分かる。図5より、図に示したいずれの場合にも 巨視的クリープひずみが6%以上で曲線は急激な立 ち上りを示している。4.3 クリープ破壊線図 - 本解析では、図5に例示したように、いずれの応 力レベルにおいても、クリープによる近似多結晶体 モデルの巨視的ひずみが6%に達した時点でクリー プひずみ -時間曲線が急激な立ち上りを示した。そ こで、本解析では試験片の巨視的クリープひずみが 6%となった時点で試験片が破断した(変形が無限 大)と見なして、図6に示すクリープ破断曲線を求 めた。なお、図6中の×印は文献[12]に記載された 実験データのプロット点を示す。図6から、本解析で得られた近似多結晶体モデル のクリープ破断線図は×印の実験結果とよい一致 - 154 - を示していることが分かる。また、図7は解析と実 験で得られた寿命のばらつきを対数正規確率紙に プロットした一例である。実験値は同一応力におけ るサンプル数が少なかったため 194~204MPa の応 力範囲の破断時間データからばらつきを求め、200 MPa に対する解析値のばらつきと比較している。図 7より、実験および解析ともに、クリープ寿命はほ ぼ対数正規分布に従っているとみなすことができ る。また、各寿命分布の 50%点はそれぞれ約 750h と約710h となり、ほぼ一致しているが、実験で得 られた寿命のほうがばらつきは大きい。図8は、823、873 および 923 K の3温度で得られ た解析結果をラーソンミラー・パラメータLMP-T(C+log104) で整理した結果である。通常のラーソンミラー・パ ラメータの定数としては 20 が用いられる場合が多 いが、本研究の場合 38.5 という大きな値が最適値と して得られた。これは、高強度高クロム・フェライ ト耐熱鋼のラーソンミラー・パラメータ定数には 30 以上の比較的大きな値が用いられることが多い[16] という報告に符合する結果である。 また、図8には図6に示した実験結果も比較のた99.99 99.9Mol.9Cr steel =200MPa at 823K inoCumulative probability, F, %0-01-oogleO Polycrystal model|- Expermental(194~204MPa)0.010.1115005000 Time to runture. tr. h|- Expermental(194~204MPa) 0.01 5005000 Time to rupture, tr, h Fig. 7 Variations of creep lives predicted by the present analyses and experiments plotted on the log-normal probability paper (o=200 MPa at 823 K). 300円O Polycrystal model 823KPolycrystal model 873K O Polycrystal model 923K+ Expermental 823K | x Expermental 873KExpermental 923K\ x + D400Applied stress, O, MPa3200034000 - 36000-38000 40000Larson-Miller Parameter, T(38.5+logiot) Fig. 8 Analytical and experimental creep life diagrams rearranged by the Larson-Miller parameter.め再プロットしてある。図8から、解析結果、実験 結果ともに 10h(約 114 年)の長期にわたってラー ソンミラー・パラメータによってほぼ1本の曲線で 表わされることが分かる。 4.4 他モデルによる解析結果の比較 4.4 他モデルによる解析結果の比較図9に微視組織近似モデル、等大同形モデルおよ び等方性モデルによる3種類のモデルによる解析結 果を比較して示す。図9より、等大同形結晶粒モデ ルは微視組織近似モデルより安全側の寿命予測と なっていることが分かる。これは結晶粒の大きい等 大同形結晶粒モデルは、結晶粒の小さい溶接部微視 組織近似モデルと比べると、結晶粒同志の変形拘束 による応力集中点の領域が拡大されたため寿命が 短くなったものと推察される。また、結晶粒をすべ て等方性としたモデルでは破断寿命が微視組織近 似モデルより約2桁長く得られているが、これは結 晶粒間の変形拘束がなくなり、応力集中軽減された ため、寿命が伸びたものと推察される。 5. 結言9Cr-1Mo 鋼の結晶粒形とその異方性を考慮した クリープ解析を実行した結果、以下の結論を得た。 (1) 本解析で得られた近似多結晶体モデルのクリープ寿命は既存および著者らの実験結果とよ い一致を示した。また、クリープ寿命は、解析 結果、実験結果ともに対数正規分布に従うとみ なされたが、解析結果のばらつきは実験と比べて小さく得られた。 (2) ラーソンミラー・パラメータで異なる温度の結果を整理した結果、解析結果、実験結果ともに 10' h(約114 年)の長期にわたってほぼ1本の曲線で表わされることが分かった。 (3) 等大同形モデルで予測されたクリープ寿命は、微視組織近似モデルに比べて1桁程度短寿命側、 すなわち、安全側の予測を与える傾向がある。 250TWoApplied stress, o, MPa3150FO Polycrystal modelEquishaped modelIsotorpic model 1001 140 10-10 10+ 10 100 107105Time to rupture, tr, h Fig. 9 Comparison of results obtained by the presentFE analyses at three levels of ambient temperatures. - 155これに対して、等方性モデルで予測されたクリ ープ寿命は2桁程度長寿命側、すなわち、危険 側の予測を与える傾向があることが分かった。 謝辞 - 本研究は、特別会計に関する法律(エネルギー対 策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業と して、福井大学が実施した平成 23 年度「「もんじゅ」 における高速増殖炉の実用化のための中核的研究 開発」において、東京理科大学が再委託を受けて実 施した成果を含みます。 参考文献 [1] 山下賢、後藤明信、火力発電ボイラ用高クロムフェライト鋼溶接材料、神戸製鋼技報、Vol. 53、No. 2 (2003). [2] 阿部富士雄、7(1)発電用鉄鋼材料の高温化、第3部第5章、2006年度物質材料研究アウトルック. [3] (財)高度情報科学技術研究機構(RIST)、高速増殖 1 炉の構造材料、03-01-02-15 (2007). [4] 核燃料サイクル開発機構研究開発課題評価委員会、高速増殖炉の機器構造材料研究開発、JNCTN1440 2002-009 (2003). [5] 緒方隆志ほか2名、改良 9Cr-1Mo 鋼溶接継手の 単軸クリープ破断特性と損傷評価法の提案、材料、Vol. 58、No. 2 (2009). [6] [8] [6] 田淵正明ほか5名、W 強化高フェライト鋼溶接継手の組織とクリープ強度、材料、Vol.50、No. 2 (2001). [7] 田淵正明ほか5名、ボロン添加による高 Cr 耐熱鋼溶接継手のクリープ特性の改善、材料、Vol.54、No. 2 (2005). [8] 本郷宏通ほか3名、Mod. 9Cr-1Mo 鋼溶接継手のクリープ損傷挙動、材料、Vol. 58、No.2 (2009). [9] 川島扶美子ほか2名、21/4Cr-1Mo 鋼溶接部 TypeIIIおよび TypeIVクリープ損傷のミクロ・マクロシミュレーション、材料、Vol. 56、No. 2 (2007). [10] 中曽根祐司、鈴木拓雄、日本保全学会第7回学術講演会要旨集(2010). [111 高温強度の基礎・考え方・応用、材料学会 (2008). [12] M. Tabuchi et al., Evaluation of Microstructures andCreep Damages in the HAZ of P91 Steel Weldment,J. of Pressure Vessel Tech., Vol. 131 (2009). [13] N. Komai and F. Masuyama, Microstructural Degradation of the HAZ in 11Cr-0.4M0-2W-V-Nb-Cu steel(P122) during Creep, ISIJ Int., Vol. 42, No. 12 (2002). [14] R. 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