EMAT の磁性体内における超音波発生メカニズムのシミュレーション

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カテゴリ: 第9回
1.緒言
プラントのより安全で効率的な運転のために配管 肉厚の常時監視技術が注目されている.電磁超音波 探傷子(Electromagnetic Acoustic Transducer : EMAT) は永久磁石とコイルで構成されており、コイルの電 流により誘導される導電対表面の渦電流と,永久磁 石の磁場の相互作用により発生する超音波の反射波 の共鳴により厚さを測定できる (Fig.1). EMAT には 以下の特徴がある. 1. 振動源が被検査対象表面となるため、接触媒質が不要である。 2. センサが磁石とコイルのみから成り立っているため,高温の環境下でも使用できる, 磁石と高周波電流を与えるセンサコイルの形 状や配置が自由にできるため、多様なセンシングに適用できる. 4. 磁性配管の場合磁石による自己保持が可能であるため,定点監視技術として期待できる.減 肉の様子をモニタリングし,減肉の進展の様子を知ることが可能である. このことから, EMAT は配管減肉の状態監視技術 として注目されている。 _ しかし, EMAT は計測の対象となる配管の形状や 減肉の種類により得られる信号が微弱になり,測定 が困難な場合がある. EMAT は超音波を発信し,そ の反射波を受信することで測定対象の厚さを計測す るため,超音波発生のメカニズムおよび,伝播の様 子を明らかにすることで信号の受信精度の向上が期 待できる.
1. 振動源が被検査対象表面となるため,接触媒質が不要である。 センサが磁石とコイルのみから成り立っているため,高温の環境下でも使用できる, 3. 磁石と高周波電流を与えるセンサコイルの形状や配置が自由にできるため、多様なセンシン グに適用できる. 磁性配管の場合磁石による自己保持が可能で あるため,定点監視技術として期待できる.減 肉の様子をモニタリングし,減肉の進展の様子 を知ることが可能である. このことから, EMAT は配管減肉の状態監視技術 として注目されている. _ しかし, EMAT は計測の対象となる配管の形状や 減肉の種類により得られる信号が微弱になり,測定 が困難な場合がある. EMAT は超音波を発信し,そ の反射波を受信することで測定対象の厚さを計測す るため,超音波発生のメカニズムおよび,伝播の様 子を明らかにすることで信号の受信精度の向上が期 待できる.Fig. 1 Coupling mechanism between electromagneticfield and ultrasonic wave本論文は、低炭素鋼を対象として、非線形磁場 の解析を行い、強磁性体に発生するローレンツカ, 磁化力,磁歪による力を求め,EMAT における超 音波の発生過程を明らかにすることを目的とす る. 2. EMAT の超音波発生機構の解析モデル 2.1 炭素鋼内の磁場解析EMAT では,永久磁石によって生じる静磁場と, コイルによって生じる動磁場を考える必要がある.連絡先:小島 史男、〒657-8501 神戸市灘区六甲 台町 1-1、神戸大学大学院、 E-mail: kojima@koala.kobe-u-ac.jp- 166 -Magnetostrictive Force, Nonlinear Magnetic現在,プラントの配管材料として,低合金鋼, ステンレス鋼,低炭素鋼が用いられており,この うち低炭素鋼配管は腐食による減肉進展が最も 速い, EMAT は測定対象が非磁性体の場合には超 音波発生源としてローレンツ力のみはたらくが, 低炭素鋼のような強磁性体の場合,ローレンツカ の他に材料磁化によって磁化力,磁歪による力が 発生する.magnetLorentz force and magnetization force ando oo magnetstriction forceCoil high freqencycurrent(JO) - - magnetic field H10003)eddy curent Jeultrasonic waveCoupling mechanism between electromagneticfield and ultrasonic wave 2.1 炭素鋼内の磁場解析EMAT では,永久磁石によって生じる静磁場と, コイルによって生じる動磁場を考える必要がある.いいerメントと渦電流により生ずる誘導 * 磁場との相互作用により磁化力が発生する. 力計(M) は以下の式より求められる.f(M) = (VH)×M.. * 右辺のダイアドVH。を成分ごとに記述する磁場との相互作用により磁化力が発生する,磁化 力(W) は以下の式より求められる. f(M) = (VH)×M..(2.2.10) 右辺のダイアドVH。を成分ごとに記述すると次 のようになる。 のようになる。дН ?Н?Н 1 ?x ox(2.2.11) ду ду ?Н. ?Н, ?Н.L oz OZ ?Z このダイアドとバイアス磁気モーメントの内積を とると以下のように表される.OH OH OH]ax ax ax Im...] (VH.)M =(2.2.12) oy oy oyasVH - OHOHOH(2.2.16) Wom/Honk Tomo100H ここで, (06/06mm) uno=0は弾性スチフネスに置 き換えることができる.式(2.2.16) は,磁場(磁歪) による歪みは一般的な応力による歪みと同様に扱う ことができるこ念を表しているので1本100 ノ ことができることを表している.合成磁場は、波の励起を考える上で非常に重要で ある.誘導磁場とバイアス磁場が重なるとき,合成 磁場に傾きが生じる. 磁歪は合成磁場に対して並行 および垂直方向のどちらにも生じることから, on を 計算するために主座標系を考える. 新しい座標系 (x““, y', z')を考える. このとき,合成磁場は x 方向 であり, z'=z である.また,3 つの主応力 (0,0,0““ .)だけが存在する.等容変化のために, 印加磁場方向の磁歪の大きさは,印加磁場に垂直な 場合の 2 倍大きくなり,その符号は逆となる. OE'_10H““ = 0&““ /OH' = -(De' /OH',)を考慮しフ ックの法則を用いると式(2.2.16) は以下のように表 せる[2]. 'x_=6KG(2.2.17)OHOHOH LM..Lazazz」 2 次元モデルを考えているため, H = 0, OH 1 72 = 0 より磁化力は次のようになる.30 Hear wa Home== -3KG(2.2.13)(2.2.18)my@x MaxOH! |Hex M martMM(2.2.14)a=-3KG OH““,(2.2.19)mmrTMに入るay(2.2.13)_GHcm TOHO, . = a wmv““ @yf(2.2.14) 磁化力の計算で用いられる磁化曲線は式(2.1.10)の Potter-Schulian の式を用いて求められる. 12.2.3 磁歪による力 * 磁性体の場合,磁化により磁化方向に変形が生じ る.これを磁歪と呼ぶ.炭素鋼における磁歪ERは 磁場 H に対して次式で表され,Fig.2 のようになる. Eur%3D8H 0.195 ×1.79-101 +1 -0.75(2.2.15) * 磁性体の場合,磁化により磁化方向に変形が生じまた,G, E', 'はそれぞれ剛性率,主歪み、主 る.これを磁歪と呼ぶ, 炭素鋼における磁Eは応力を表す. x, と x, の間の方向余弦Q. を考えると, 磁場 H に対して次式で表され, Fig.2 のようになる. 0 = 0..0.0.. が得られる.2 次元モデルにおいて, Ens%3D8H 0.395 ×1.79-10/441 - 0.75(2.2.15) Q.は合成磁場とバイアス磁場の角度 0 を用いて計算され,以下の式を得る. EAMS(10)normal bias field on = our sin 0 + on cos 0(2.2.20) anyw = d'un cos 0 + on sin 0(2.2.21) O, = (0 -0',,)sin coso(2.2.22) tangential bias field arr = our cos 0 + owsin 0(2.2.23) on = of a sin 0 + or w cos 0(2.2.24) static field(KOe)(2.2.25)O xy = (02-0',)sin 0 coso Fig.2 Magnetostriction curve of low carbon steel 磁歪効果による力は, normal bias field と tangentialbias field に対してそれぞれ,(1)nomal mode と * 磁歪は動的磁場とともに変化し,超音波の発生源(2)tangential mode に分けられ以下のように与えら となる. 磁歪定数 は,磁場 Hに対する磁歪応力れる. or の動的応答を表す.esは磁歪cmを用いて次の(1)nomal mode static field(KOe) Fig.2 Magnetostriction curve of low carbon steelvras nenu wV U chu, (phon Hov o 磁歪は動的磁場とともに変化し,超音波の発生源(2)tangential mode に分けられ以下のように与えら となる. 磁歪定数 er, は,磁場 Hに対する磁歪応力れる. oy の動的応答を表す.e. は磁歪 6. を用いて次の(1)nomal mode ように表せる.f(x) = exan axOh exte..Leat + exxy-Has + eyes asOly ressy dydy(2.2.26)-16840 (27)-(2-) ( 31 )2210I'kja-30m)1501 ここで, (06/10en) uno=0は弾性スチフネスに置 き換えることができる.式(2.2.16) は、磁場(磁歪) による歪みは一般的な応力による歪みと同様に扱う ことができることを表している. * 合成磁場は、波の励起を考える上で非常に重要で ある.誘導磁場とバイアス磁場が重なるとき,合成 磁場に傾きが生じる.磁歪は合成磁場に対して並行 および垂直方向のどちらにも生じることから, on を 計算するために主座標系を考える.新しい座標系 (x', y', z')を考える.このとき,合成磁場は x 方向 であり, z'=z である.また,3 つの主応力 (a,0,00' . )だけが存在する.等容変化のために 印加磁場方向の磁歪の大きさは、印加磁場に垂直な 場合の 2 倍大きくなり,その符号は逆となる.-10H““ = 06'10H““ = -(De' /aH““) を考慮しフ ックの法則を用いると式(2.2.16) は以下のように表 せる[2].(2.2.17)Str = 6KG OH'、ここで,は合成磁場の関数で磁歪曲線の傾きから求 めることができる.また,G, c', d'はそれぞれ剛性率,主歪み,主 応力を表す. x と x, の間の方向余弦9, を考えると ory = odmm2.01.2, が得られる.2 次元モデルにおいて, = 3KG sin 0(2sin29-cos 0)--6G?xx cos Osino== 3KG sin 0(2cos2 0-sin00 -- -20~ Hw6G8 x cos?ve x cos Osin e本節では,有限要素シミュレーションを用いて永 久磁石,コイルの磁場解析を行い,その結果を用い て EMAT の振動源であるローレンツ力,磁化力,磁 歪による力を解析し比較する.3.1 実験環境実験における, コイル,および磁石の配置を Fig.3 に示す.また,シミュレーション実験で設定したコ イルの仕様を Table.1 に示す.また,磁石の幅は 10[mm],高さを 10[mm]とする,実際の EMAT にお いて,磁石や炭素鋼とコイルは非接触である.その ため、磁石とコイルの間,炭素鋼とコイルの間に空 気の層を有限要素で表現する必要があり,それぞれ を 0.01[mm] とした. 入力電流として振幅:15A],周 波数 3[Mhz] の正弦波交流を1周期分 32分割して与 える. - また, 低炭素鋼の導電率を 0.648×10' [S/m] とする. 渦電流密度は,導体表面で最も高く,表面からの距 離に応じて指数的に低くなることが表皮効果として 知られている。 - また,渦電流はコイル電流により発生する動的な 磁場によって発生するため,x 軸方向にはコイルか らの距離に応じて減衰する. ローレンツ力, 磁化力, 磁歪による力はいずれも渦電流と永久磁石による磁 場の相互的な作用により発生するため,炭素鋼の厚 さは表皮深さに対して,幅はコイルの径に対して十 分にとっていれば、正確な値を与えなくても超音波 の解析には問題ない.そのため,本実験では調査領 城として,コイルの中心からコイル半径の2倍まで の広さを左右に,炭素鋼表面 0.2[mm] の深さを与え る,調査領域内での要素は細かくとり,残りの炭素 鋼および空気領域の要素はそこから段階的に大きく とっていくこととする. 値,永久磁石によって発生する磁束密度を Fig. 示す.また,時間経過 0.0521 { pus ](5/32 ステ、 における渦電流の様子を Fig.5 に示す.なお, 試験体表面からの距離を表している.JAI10505 10 15000220:005 2001yimm) -0:015x[mm]値,永久磁石によって発生する磁束密度を Fig.4 に 示す.また,時間経過 0.0521 [ rus] (5/32 ステップ) における渦電流の様子を Fig.5 に示す.なお,yは 試験体表面からの距離を表している.-0.005....... 111111111tnet......||||ter. . .......[walkwasamens Mitterprporter-0.005??Sweetchen-0.015.... ・・・・・・・・・トークントーwwwwwww.dminitempower ser...............y[mm]-15105_0 X[mm]5_10_15-0.015171000useFig.7 Magnetization forceトーカートwarmoreadMinitenagaware -15 -10 -5 0 5 1015x(mm)これらの結果よりローレンツ力と磁化力は互いに 打ち消しの方向にはたらいていることを確認した. ローレンツ力と磁化力の合力を Fig.8示す.Fig.4 Magnetic flux density of permanent magnet-0.005 |..0.31[mw]0.1ストレーMOKHMM-0.015 |.....-0.1 -0.2ストランスを10:005....1052-0010y[mm]-0.02 11・155_1015510:015X[mm]10・105_0x(mm)15002Fig.8 Total force of Lorentz force and magnetizationforce Fig.5 Eddy currentまた,Fig.9, Fig.10 に同時間における磁歪の力の これらの結果より算出した、ローレンツ力、磁化normal mode, tangential mode および,合力を Fig.11 力の渦電流と同様,時間経過 0.0521 [us] (5/32ス バ す. テップ)におけるベクトル図を Fig. 6, Fig.7 に示す.-0.005・・・・・・・.・・・・・・wereon.morerのいい・・・・・・・・-0.005 . ・・・・・・・・・・」..[Mu]K-0.01.[uwJK-0.01........0:21:36.-0.015・・・・・・・......-0.02..................................... ...........- 5 0 5 10x[mm)145-4015.-0.02-15-10-505。やx[mm]Fig.9 Magnetostrictive force(normal mode)Fig.6 Lorentz force-170・・・・・11.. 100%.......-0.005F・・・・・・・111111111111...!-0.005あれれ...s111141.ht..............www[www-0.010.01540.015 .-0.02-1510-5_10150_5 4mm]-0.02 L.... ・15-105051015X[mm]Fig. 10 Magnetostrictive force (tamgemtial mode)Fig.12 Magnetostrictive force4.考察Fig. 10 Magnetostrictive force (tamgemtial mode)4. 考察・・・・1...10m...-0.005F・・・・・・・・・・・・・本研究の結果より,超音波の励起信号はローレン ツカ,磁化力と比較して磁歪の力が支配的であるこ とを確認した.開発したシミュレータにより2個の永久磁石を備 えた, 垂直型 EMAT や斜角型 EMAT における励起信 号の解析にも適用できる.y[mm]....-0.015............」.........-0.02.net.or..T1-15-10-5_0 x(nm)510Fig.11 Magnetostrictive force また,すべての力の合力を Fig. 12 に示す.参考文献 [1] R.B. Thompson, “Physical Principles ofMeasurements with EMAT Transducers”,Physical acoustics, Vol.15, 1990 pp.157-200. [2] Hirotsugu Ogi, “Field dependence of couplingefficiency between electromagnetic field and ultrasonic bulk waves““, J.Appl.Phys, Vol.82, No.8,1997, pp3940-3949 [3] 加川幸雄、山淵龍夫、村井忠邦、土屋隆生、“FEM プログラム選 2 - 磁界・電磁波-”、森北出 版株式会社、1997・ 本研究の結果より,超音波の励起信号はローレン ツカ,磁化力と比較して磁歪の力が支配的であるこ とを確認した.開発したシミュレータにより2個の永久磁石を備 えた, 垂直型 EMAT や斜角型 EMAT における励起信」 号の解析にも適用できる. 参考文献 [1] R.B.Thompson, “Physical Principles ofMeasurements with EMAT Transducers”,Physical acoustics, Vol.15, 1990 pp.157-200, [2] Hirotsugu Ogi, “Field dependence of couplingefficiency between electromagnetic field and ultrasonic bulk waves““, J.Appl.Phys, Vol.82, No.8,1997, pp3940-3949 [3] 加川幸雄、山淵龍夫、村井忠邦、土屋隆生、“FEM プログラム選 2 - 磁界・電磁波”、森北出 版株式会社、1997- 171 -“ “EMAT の磁性体内における超音波発生メカニズムのシミュレーション“ “伊藤 崇文,Takafumi ITO,小島 史男,Fumio KOJIMA
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