オリフィス背後の物質輸送現象に及ぼす曲り旋回流の影響(ステレオ PIV を用いた速度場計測)
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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
発電プラントの各種配管における配管減肉の発生メカ ニズムの解明と高精度予測技術の確立は、プラントの危 機管理や安全運転において重要な課題である。配管減肉 の発生原因の一つに流動加速腐食がある。これは配管材 料の鉄イオンが作動流体中に溶解する拡散現象が流動に よって加速される現象であり、一般に物質輸送現象とし て捉えられている。流動加速腐食による配管減肉が原因とされる代表的な 事例として2004年に起きた美浜原子力発電所の配管破損 事故がある。事故後の調査によると、破損した配管では オリフィス下流に非軸対称な配管減肉が発生し、局所的 に配管減肉が進行したため、配管破断に至ったと考えら れている[1]。最近の研究によると、このような非軸対称 な減肉現象のメカニズムは、旋回流とオリフィス偏心の 組み合わせ効果によって発生した非軸対称流に関係する と考えられている。すなわち、JIS 規格内での僅かなオリ フィスの偏心(配管外径の比0.8%) においても、旋回流を 伴う場合には、オリフィス流の不安定現象の発生に伴っ て非軸対称流となることが知られている[24]。しかしな がら、実機配管では、オリフィス上流側にエルボなどの 曲り部が設置されており、上流側で発生した旋回流は曲 りの影響を受けるため、オリフィス背後の流れ場はより 複雑な流れの様相を呈することが予期される。本研究では、上流側で発生した旋回流が曲りを通過し た後オリフィス部に至る場合について模型実験によって 検討することで、オリフィス背後に見られる非軸対称配 管減肉の発生原因について考察する。
2. 実験装置および方法 2.1 実験装置
実験装置は、ポンプ、整流部、測定部から構成される 回流水槽であり、作動流体は水である。Fig.1 は整流部及 び測定部の模式図である。整流部の背後に旋回流を発生 するためのスワーラ、その下流側に曲率半径が管内径の 1.5倍であるロングエルボが設置されている。その下流側 に 10D(D: 管内径)の直管部を介して、オリフィスなら びに測定部が接続されている。管内径は D = 56 mm、オ リフィス絞り比は 0.6 (内径 33.6 mm)である。Nd:YAG Laser OrificeWater jacket| 10DL201Long Elbow SwirlerPulse generatorFlow1008×1018 pixels Monochrome cameraFig. 1 Layout of test section179なお、エルボとオリフィス間の距離は、管内径を基準 として美浜原子発電所の実機配管と同様に設定した。こ こに、実験レイノルズ数は Re = 1.9 × 10である。測定部 は、アクリル製円管の周囲に水ジャケットを取り付ける ことで、屈折率の影響を極力小さくした。また、スワー ラは、主流方向に対して一定角度傾けたステンレス製の 直線羽を周方向に6枚固定した構造である。種々の羽根 角度のスワーラを製作し、測定部における旋回強度を計 測した。なお、旋回強度は、以下の式を用いてスワール 数により評価した。fwv,r?dr = 0SWRfwrdrただし、R:管半径、r: 管中心からの距離、W: 管軸方向 速度、Vn:周方向速度である。測定の結果、スワーラの 羽根角度 45°の場合に、旋回流強度は S = 0.36 であった。 この値は、実機配管の再現実験で得られた旋回流強度 0.3 [3]とほぼ一致する。このため、以下の実験では、羽根角 度45°のスワーラを曲り上流に配置して実験を行った。 1.本実験では、曲りを伴う旋回流とオリフィス偏心の組 み合わせ効果を見るため、S=1w/Us: -0.30.6751.850.5、(a) g ofここまでMAPがないまでインターキーコーRicationmularium105-0.56imal-0.5115z/00.5イリションナビ(b) ofのだ。2z/D05日(c) Lof1.52.5z/DFig.2 Comparison of streamwise mean velocitiy fields with a straight pipe: (a) without bias; (b) positive bias; (c) negative bias.オリフィス中心軸が上下に管直径の±0.8%ずれている 偏心オリフィスを用いた実験も行った。オリフィス偏心 は、高温配管規格(JIS G3456)で定められている、配管 外径の許容誤差 0.8%により生じる管軸のずれを模擬した ものである。 2.2 PIV計測1. 本実験で用いた PIV システムは、Nd:YAG パルスレー ザ(波長 2 = 523 nm, 50 m/pulse)、モノクロ CCDカメラ (1008 × 1018 pixels, 8 bits)、パルスジェネレータで構成さ れる。流れの可視化には、直径 40 um のナイロン粒子(比 重 1.02)を適量作動流体である水に加えた。ただし、照 明として用いたレーザシート光の厚さは約1mmである。 粒子の移動量計算のアルゴリズムには、直接相互相関法 にサブピクセル解析を組み合わせて用いた。 . 本実験では、管軸に平行な垂直断面に対して2次元 PIV 計測を、管軸に垂直な断面(a-y 断面)に対してステレオ PIV計測を適用した。ステレオ PIV 計測では、Fig.1 に示 すように、2台のカメラを管軸に対してそれぞれ 45°傾斜 させて計測を行った。ただし、カメラレンズはシャイン プルーフ条件を満足するように配置した。また、レーザ シート光は、管上方から照射した。W/00 -0.30 .6751 .652 .6253.6Angerenary0.0118いるよう になる(a) ofTHE2.5z/01582(b)g。「 TA FM7 12-0.55115ZID・リングなんだか!!-0.50.512.5z/DFig.3 Comparison of streamwise mean velocitiy fields with a curved pipe: (a) without bias; (b) positive bias; (c) negative bias.180一方、本ステレオ PIV 計測においては、校正板を測定部 Fig.3 は、曲りを伴う旋回流(Sw=0.36) がオリフィス 下流側から挿入することで、2台のカメラの校正を行った。 に流入した場合の管軸に平行な垂直断面の速度場を2次 ここに、校正板は、5mm 間隔で正方格子を描いたもので 元PIV を用いて計測した結果である。実験結果は、Fig.2 ある。この格子板は精度 10 um のトラバース装置を用いと同様に3種のオリフィス条件(偏心なし(a)、上偏心(O)、 て1 mm ごとに5断面移動し、撮影した格子点画像を3_下偏心(C))について示している。オリフィス偏心無し(a) 次スプライン近似することで、位置座標の校正を行った。 の場合において、上側に偏った流れが生じていることが確認される。このような速度場の上側への偏りは、オリ 3. 実験結果および考察フィス偏心の上下に関わらず認められるが、上偏心(6)で Fig.2 は、曲りなし旋回流(Sv = 0.36)の条件下におけ はより強い上偏心が現われること、下偏心(C)では速度場 るオリフィス背後の時間平均速度場の計測結果である。 の上偏心の程度が弱められる。したがって、曲りを伴う 本実験結果ではオリフィスの位置を xD-0.0 としている。 旋回流の場合には、旋回流の効果によって測定部には上 それぞれ、偏心なし(a)、上偏心(b)、下偏心(C)の3条件の 側向きの偏流が発生すること、ならびに、オリフィス偏 結果を示している。ただし、レイノルズ数は、Re = 1.9 × 10' 心を伴う場合には、これにオリフィス偏心効果が重畳し である。実験結果によると、オリフィス偏心なしでは、 た速度場が形成されることがわかる。また、直管の旋回 ほぼ上下対称な速度場が形成されているが、オリフィス 流ではオリフィス背後においても管中心に渦軸が存在す の上偏心では上側寄りの流れパターンが形成されるのに るが、曲がりを伴う旋回流では渦軸は大きく変動し、管 対し、オリフィオスの下偏心では下側寄りの流れ場が見 壁面に沿ってうねることがわかる。以上のことから、曲 られる。このようなオリフィス偏心による流れパターン がりを伴う旋回流では、オリフィス背後で非軸対称な流 の変化は、元来不安定なオリフィス背後の流れ場が僅か れ構造が発生するため、非軸対称な物質輸送現象である なオリフィス偏心によって制御されることを示唆する。 配管減肉が発生することが予期される。 w/UoVul + u-Uo0.5-3087516526253.60.5r0.50.25--0.2511(a) go2017-0.25いっかい!!!!and0.250.25(b) go!12111117 MIRACINET/-0.25 0.50-550D/AURE TIME2019/11/11/////!!(c) go!1 -0.25-0.25410.25103503~0.350.26~610.25 35085--025-100 -0.25 25 0.35 0.25 -0.25 d. Fig.4 Comparison of mean velocitiy fields: Left: streamwise velocity; middle: velocity vectors; right: velocity magnitude in-plane components: (a) without bias; (b) positive bias; (c) negative bias.181(a)-10-81420_2 D416Fig.5 Schematic diagram of the curved swirling flow through an orifice:(a) Top view ;(b) Side viewFig.4は、曲がりを伴う旋回流(Sw3D0.32)がオリフィ スに流入したときの管断面速度場の計測結果の一例とし て、オリフィス背後 x/D = 1の位置におけるステレオ PIV による速度場計測結果を示した。ただし、オリフィス偏 心無し(a)、上偏心(b)、下偏心(C)の3条件における速度場 計測の結果である。左から主流方向速度分布、断面内速 度ベクトル分布、断面内速度の大きさを示している。主 流方向速度分布から、速度が最大となる位置は、管中心 から左上方へ移動していることが確認できる。これに対 し、オリフィス上偏心(6)では最大速度はやや上方に、ま たオリフィス下偏心(C)ではやや下方に位置する。 したがって、オリフィス偏心の効果によって、管軸方向 速度の最大値はオリフィス偏心側に移動することがわか る。一方、断面内速度分布の測定結果によると、オリフ ィス偏心無し、上下偏心ありのいずれの結果においても、 管中心付近から左上方へ向かい、その後左側壁面に沿っ て下方に流れる二次流れが確認できる。また、これらの 速度ベクトルならびに速度大きさの図から、オリフィス 偏心の影響が認められる。しかしながら、曲がりを伴う 旋回流の影響はオリフィス偏心の効果より大きい。Fig.5(a),(b)は、気泡を用いた流れの可視化実験結果に基 づいて、曲がりを伴う旋回流によって得られたオリフィ ス付近の流れの観察結果を、上面図(a)、側面図(b)によっ て表した結果である。ただし、気泡は曲がり管の上流側 に設置した細管から適量供給した。予備的考察によると、 旋回流中に供給された気泡は、密度差によって旋回流中 では求心力を受け、旋回中心付近に集まることになる。 したがって、可視化実験結果によると、上流側曲がりに よって発生した旋回流中心は振れ回り現象を示し、オリ フィスに至ることがわかる。ここに、側面図によると管 軸に対してほど上下対称な流派線を示すが、上面図では 曲がりの影響を強く受け曲がり側に偏った流脈線となる。 一方、このような旋回流中心の振れ回り現象は、オリフ ィス背後でも見られるが、この領域では、強い増速流と観なるため流脈線はオリフィス直後 2D付近までは直線性 を示す。しかしながら、この領域では、Figs.3,4 に示した ように再循環領域を含む複雑な流況を呈するため、流派 線に大きな変動が観測された。なお、オリフィス背後の 側面図に見られた流派線の上昇は、PIV計測結果に見ら れた速度場とも定性的に一致する。 4. 結言 1. 本研究では、曲がりを伴う旋回流がオリフィスに流入 した場合の流れ場の変化を 2 次元ならびにステレオ PIV を用いて実験的に検討した。実験結果によると、曲がり を伴う旋回流はオリフィス背後において偏流を形成する こと、この偏流はオリフィス偏心効果より強い 2 次流れ 効果を示すため、オリフィス背後の非軸対称減肉により 強く寄与する可能性があることが分かった。参考文献 [1] 経済産業省, http://www.meti.go.jp/commitee/materials/g 1- 41213aj.html, 資料 7-1-1, (2004) [2] M. Ohkubo et al., J. Vis., Vol. 14,2011, pp. 15-17. [3] 大久保雅一, 他3名, 日本機械学会論文集B編, Vol. 77,2011, pp.386-394. [4] 高野剛, 他3名, 保全学, Vol. 10, 2011, pp.30-35.182“ “オリフィス背後の物質輸送現象に及ぼす曲り旋回流の影響(ステレオ PIV を用いた速度場計測)“ “金谷 信明,Nobuaki KANATANI,山縣 貴幸,Takayuki YAMAGATA,藤澤 延行,Nobuyuki FUJISAWA
発電プラントの各種配管における配管減肉の発生メカ ニズムの解明と高精度予測技術の確立は、プラントの危 機管理や安全運転において重要な課題である。配管減肉 の発生原因の一つに流動加速腐食がある。これは配管材 料の鉄イオンが作動流体中に溶解する拡散現象が流動に よって加速される現象であり、一般に物質輸送現象とし て捉えられている。流動加速腐食による配管減肉が原因とされる代表的な 事例として2004年に起きた美浜原子力発電所の配管破損 事故がある。事故後の調査によると、破損した配管では オリフィス下流に非軸対称な配管減肉が発生し、局所的 に配管減肉が進行したため、配管破断に至ったと考えら れている[1]。最近の研究によると、このような非軸対称 な減肉現象のメカニズムは、旋回流とオリフィス偏心の 組み合わせ効果によって発生した非軸対称流に関係する と考えられている。すなわち、JIS 規格内での僅かなオリ フィスの偏心(配管外径の比0.8%) においても、旋回流を 伴う場合には、オリフィス流の不安定現象の発生に伴っ て非軸対称流となることが知られている[24]。しかしな がら、実機配管では、オリフィス上流側にエルボなどの 曲り部が設置されており、上流側で発生した旋回流は曲 りの影響を受けるため、オリフィス背後の流れ場はより 複雑な流れの様相を呈することが予期される。本研究では、上流側で発生した旋回流が曲りを通過し た後オリフィス部に至る場合について模型実験によって 検討することで、オリフィス背後に見られる非軸対称配 管減肉の発生原因について考察する。
2. 実験装置および方法 2.1 実験装置
実験装置は、ポンプ、整流部、測定部から構成される 回流水槽であり、作動流体は水である。Fig.1 は整流部及 び測定部の模式図である。整流部の背後に旋回流を発生 するためのスワーラ、その下流側に曲率半径が管内径の 1.5倍であるロングエルボが設置されている。その下流側 に 10D(D: 管内径)の直管部を介して、オリフィスなら びに測定部が接続されている。管内径は D = 56 mm、オ リフィス絞り比は 0.6 (内径 33.6 mm)である。Nd:YAG Laser OrificeWater jacket| 10DL201Long Elbow SwirlerPulse generatorFlow1008×1018 pixels Monochrome cameraFig. 1 Layout of test section179なお、エルボとオリフィス間の距離は、管内径を基準 として美浜原子発電所の実機配管と同様に設定した。こ こに、実験レイノルズ数は Re = 1.9 × 10である。測定部 は、アクリル製円管の周囲に水ジャケットを取り付ける ことで、屈折率の影響を極力小さくした。また、スワー ラは、主流方向に対して一定角度傾けたステンレス製の 直線羽を周方向に6枚固定した構造である。種々の羽根 角度のスワーラを製作し、測定部における旋回強度を計 測した。なお、旋回強度は、以下の式を用いてスワール 数により評価した。fwv,r?dr = 0SWRfwrdrただし、R:管半径、r: 管中心からの距離、W: 管軸方向 速度、Vn:周方向速度である。測定の結果、スワーラの 羽根角度 45°の場合に、旋回流強度は S = 0.36 であった。 この値は、実機配管の再現実験で得られた旋回流強度 0.3 [3]とほぼ一致する。このため、以下の実験では、羽根角 度45°のスワーラを曲り上流に配置して実験を行った。 1.本実験では、曲りを伴う旋回流とオリフィス偏心の組 み合わせ効果を見るため、S=1w/Us: -0.30.6751.850.5、(a) g ofここまでMAPがないまでインターキーコーRicationmularium105-0.56imal-0.5115z/00.5イリションナビ(b) ofのだ。2z/D05日(c) Lof1.52.5z/DFig.2 Comparison of streamwise mean velocitiy fields with a straight pipe: (a) without bias; (b) positive bias; (c) negative bias.オリフィス中心軸が上下に管直径の±0.8%ずれている 偏心オリフィスを用いた実験も行った。オリフィス偏心 は、高温配管規格(JIS G3456)で定められている、配管 外径の許容誤差 0.8%により生じる管軸のずれを模擬した ものである。 2.2 PIV計測1. 本実験で用いた PIV システムは、Nd:YAG パルスレー ザ(波長 2 = 523 nm, 50 m/pulse)、モノクロ CCDカメラ (1008 × 1018 pixels, 8 bits)、パルスジェネレータで構成さ れる。流れの可視化には、直径 40 um のナイロン粒子(比 重 1.02)を適量作動流体である水に加えた。ただし、照 明として用いたレーザシート光の厚さは約1mmである。 粒子の移動量計算のアルゴリズムには、直接相互相関法 にサブピクセル解析を組み合わせて用いた。 . 本実験では、管軸に平行な垂直断面に対して2次元 PIV 計測を、管軸に垂直な断面(a-y 断面)に対してステレオ PIV計測を適用した。ステレオ PIV 計測では、Fig.1 に示 すように、2台のカメラを管軸に対してそれぞれ 45°傾斜 させて計測を行った。ただし、カメラレンズはシャイン プルーフ条件を満足するように配置した。また、レーザ シート光は、管上方から照射した。W/00 -0.30 .6751 .652 .6253.6Angerenary0.0118いるよう になる(a) ofTHE2.5z/01582(b)g。「 TA FM7 12-0.55115ZID・リングなんだか!!-0.50.512.5z/DFig.3 Comparison of streamwise mean velocitiy fields with a curved pipe: (a) without bias; (b) positive bias; (c) negative bias.180一方、本ステレオ PIV 計測においては、校正板を測定部 Fig.3 は、曲りを伴う旋回流(Sw=0.36) がオリフィス 下流側から挿入することで、2台のカメラの校正を行った。 に流入した場合の管軸に平行な垂直断面の速度場を2次 ここに、校正板は、5mm 間隔で正方格子を描いたもので 元PIV を用いて計測した結果である。実験結果は、Fig.2 ある。この格子板は精度 10 um のトラバース装置を用いと同様に3種のオリフィス条件(偏心なし(a)、上偏心(O)、 て1 mm ごとに5断面移動し、撮影した格子点画像を3_下偏心(C))について示している。オリフィス偏心無し(a) 次スプライン近似することで、位置座標の校正を行った。 の場合において、上側に偏った流れが生じていることが確認される。このような速度場の上側への偏りは、オリ 3. 実験結果および考察フィス偏心の上下に関わらず認められるが、上偏心(6)で Fig.2 は、曲りなし旋回流(Sv = 0.36)の条件下におけ はより強い上偏心が現われること、下偏心(C)では速度場 るオリフィス背後の時間平均速度場の計測結果である。 の上偏心の程度が弱められる。したがって、曲りを伴う 本実験結果ではオリフィスの位置を xD-0.0 としている。 旋回流の場合には、旋回流の効果によって測定部には上 それぞれ、偏心なし(a)、上偏心(b)、下偏心(C)の3条件の 側向きの偏流が発生すること、ならびに、オリフィス偏 結果を示している。ただし、レイノルズ数は、Re = 1.9 × 10' 心を伴う場合には、これにオリフィス偏心効果が重畳し である。実験結果によると、オリフィス偏心なしでは、 た速度場が形成されることがわかる。また、直管の旋回 ほぼ上下対称な速度場が形成されているが、オリフィス 流ではオリフィス背後においても管中心に渦軸が存在す の上偏心では上側寄りの流れパターンが形成されるのに るが、曲がりを伴う旋回流では渦軸は大きく変動し、管 対し、オリフィオスの下偏心では下側寄りの流れ場が見 壁面に沿ってうねることがわかる。以上のことから、曲 られる。このようなオリフィス偏心による流れパターン がりを伴う旋回流では、オリフィス背後で非軸対称な流 の変化は、元来不安定なオリフィス背後の流れ場が僅か れ構造が発生するため、非軸対称な物質輸送現象である なオリフィス偏心によって制御されることを示唆する。 配管減肉が発生することが予期される。 w/UoVul + u-Uo0.5-3087516526253.60.5r0.50.25--0.2511(a) go2017-0.25いっかい!!!!and0.250.25(b) go!12111117 MIRACINET/-0.25 0.50-550D/AURE TIME2019/11/11/////!!(c) go!1 -0.25-0.25410.25103503~0.350.26~610.25 35085--025-100 -0.25 25 0.35 0.25 -0.25 d. Fig.4 Comparison of mean velocitiy fields: Left: streamwise velocity; middle: velocity vectors; right: velocity magnitude in-plane components: (a) without bias; (b) positive bias; (c) negative bias.181(a)-10-81420_2 D416Fig.5 Schematic diagram of the curved swirling flow through an orifice:(a) Top view ;(b) Side viewFig.4は、曲がりを伴う旋回流(Sw3D0.32)がオリフィ スに流入したときの管断面速度場の計測結果の一例とし て、オリフィス背後 x/D = 1の位置におけるステレオ PIV による速度場計測結果を示した。ただし、オリフィス偏 心無し(a)、上偏心(b)、下偏心(C)の3条件における速度場 計測の結果である。左から主流方向速度分布、断面内速 度ベクトル分布、断面内速度の大きさを示している。主 流方向速度分布から、速度が最大となる位置は、管中心 から左上方へ移動していることが確認できる。これに対 し、オリフィス上偏心(6)では最大速度はやや上方に、ま たオリフィス下偏心(C)ではやや下方に位置する。 したがって、オリフィス偏心の効果によって、管軸方向 速度の最大値はオリフィス偏心側に移動することがわか る。一方、断面内速度分布の測定結果によると、オリフ ィス偏心無し、上下偏心ありのいずれの結果においても、 管中心付近から左上方へ向かい、その後左側壁面に沿っ て下方に流れる二次流れが確認できる。また、これらの 速度ベクトルならびに速度大きさの図から、オリフィス 偏心の影響が認められる。しかしながら、曲がりを伴う 旋回流の影響はオリフィス偏心の効果より大きい。Fig.5(a),(b)は、気泡を用いた流れの可視化実験結果に基 づいて、曲がりを伴う旋回流によって得られたオリフィ ス付近の流れの観察結果を、上面図(a)、側面図(b)によっ て表した結果である。ただし、気泡は曲がり管の上流側 に設置した細管から適量供給した。予備的考察によると、 旋回流中に供給された気泡は、密度差によって旋回流中 では求心力を受け、旋回中心付近に集まることになる。 したがって、可視化実験結果によると、上流側曲がりに よって発生した旋回流中心は振れ回り現象を示し、オリ フィスに至ることがわかる。ここに、側面図によると管 軸に対してほど上下対称な流派線を示すが、上面図では 曲がりの影響を強く受け曲がり側に偏った流脈線となる。 一方、このような旋回流中心の振れ回り現象は、オリフ ィス背後でも見られるが、この領域では、強い増速流と観なるため流脈線はオリフィス直後 2D付近までは直線性 を示す。しかしながら、この領域では、Figs.3,4 に示した ように再循環領域を含む複雑な流況を呈するため、流派 線に大きな変動が観測された。なお、オリフィス背後の 側面図に見られた流派線の上昇は、PIV計測結果に見ら れた速度場とも定性的に一致する。 4. 結言 1. 本研究では、曲がりを伴う旋回流がオリフィスに流入 した場合の流れ場の変化を 2 次元ならびにステレオ PIV を用いて実験的に検討した。実験結果によると、曲がり を伴う旋回流はオリフィス背後において偏流を形成する こと、この偏流はオリフィス偏心効果より強い 2 次流れ 効果を示すため、オリフィス背後の非軸対称減肉により 強く寄与する可能性があることが分かった。参考文献 [1] 経済産業省, http://www.meti.go.jp/commitee/materials/g 1- 41213aj.html, 資料 7-1-1, (2004) [2] M. Ohkubo et al., J. Vis., Vol. 14,2011, pp. 15-17. [3] 大久保雅一, 他3名, 日本機械学会論文集B編, Vol. 77,2011, pp.386-394. [4] 高野剛, 他3名, 保全学, Vol. 10, 2011, pp.30-35.182“ “オリフィス背後の物質輸送現象に及ぼす曲り旋回流の影響(ステレオ PIV を用いた速度場計測)“ “金谷 信明,Nobuaki KANATANI,山縣 貴幸,Takayuki YAMAGATA,藤澤 延行,Nobuyuki FUJISAWA