電磁超音波探触子を用いた配管減肉計測の信頼性評価

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カテゴリ: 第9回
1緒言
発電所は,日本機械学会が定める減肉管理規定に基づ き,定期的に配管の肉厚測定を行っている[1]. 減肉管理 の高度化として,配管減肉の予測に基づく保全が検討さ れており,配管減肉予測シミュレーション技術について研究が行われている[2,3]. 減肉進展予測では定期的に測 一定値による補正をかけていることから,配管厚さの初期値, 補正値(定期点検時の測定値)が正確であることが求め られる。本研究においては、計測値の解析によって求められる Probability of detection(以下では、POD とする)による配管 の残存肉厚計測の信頼性評価法を提案する[4]. この評価 法は、米国国防省における航空機機体のき裂計測やスウ ェーデンの核燃料廃棄物格納容器の欠陥計測において適 用事例がある[5]. 本論文では,POD による計測データの 信頼性評価法と適用の条件について述べる.次に事例と して、配管の構成要素である直管,エルボ,レデューサ を対象物とした,電磁超音波探触子 (Electro-Magnetic Acoustic Transducers: EMAT) の計測データから評価法を 用いて残存肉厚の信頼下限値を求める. その信頼下限 に基づき,計測に対する信頼性を考察する.連絡先:小島史男 神戸大学大学院 工学研究科 情報知能学専攻 〒657-8501 神戸市灘区六甲台町 1-1 E-mail: kojima@koala.kobe-u.ac.jp2 POD を用いた信頼性評価法非破壊検査の信頼性評価のためには、Fig.1 に示すよう に、3つの計測条件を定める必要がある.1つ目の条件は、 試験体の形状や寸法、計測点を定める計測性能評価条件 である.2つ目の条件が,計測機器の機種や設定,キャリ ブレーションの日程などを定めた計測機器の仕様・規格 に関する条件である. 3 つ目の条件として,計測方法や検 査員の技量を定める計測方法の標準化がある.これらの 条件を整えることで非破壊での計測データの再現性が得 られるとし,次に示す信頼性の評価値を求める.検出確率 POD(Q)は残存肉厚dとその計測によって得 られる信号値 Af の関係で表現できる.残存肉厚 d に対 する信号値 AS の関係は確率密度 g()とすると,決定 We Aficti*+ 3 POD(d)/1. 計測性能評計測データの信頼性評価「計測監視機器の仕様・規格・民は体状Probability of Detection(POD)・配管の設定 ・計数点の位置定
PODEO)・送受波店 (メーカー、 陸 ・キャリブレーション (素材、対象欠品サイズ、 体内の発送) ・周波数と定 計8,送受渋谷) ・バルサン ケイン、明朝と分解。 ・定に ・左のモード(ww.)POD(0)!EA QUALSINSEGN1.25・台回定 資格との現......5...1......Well themFig. 1 Reliability evaluation using POD247- POD(d) - Sa ga(as)das ... ... となる. Fig.2 の斜線部分が検出確率 POD()を示す. この 時,残存肉厚d に対する信号値 AS の関係が AS = u(d)............... (2) で与えられるとし、その対数をとって ln(u(d)) = F。 + , ln(d)・......... ............(3) で十分に直線近似できると仮定する.この仮定の下で測 定モデルを対数直線回帰モデルで与える.ln() = F。 + B, ln(d) + S ..........................(4) この時, 測定誤差びは平均 0, 分散os の正規型確率変数 とする. Ro, B,oは最尤推定法によって求まる. この時, モデルの仮定下において、決定閾値 As a に対する POD() は以下の式で与えられる。POD(d) = of In(d) - 4)..o J ...ln(Asan) - B.u%3Dこの時はガウスの累積密度関数である.また, POD(C) の95%下限信頼区間は POD,(d) = p(z - h) ..................(7) で与えられ,__in(d) - 11 .............................................. ...(8)Sy [(koz + k / ]] * ........ .........(9) ““ink ' (h,k, - ki) | となる.nは検査回数, y は推定したい信頼区間下限値 を示す.kok, k,はフィッシャーの information matrix 1(B,B,,)から推定される信頼区間決定のためのパラ メータである[6].また, POD().........(7)wavePOD(d2)Fig. 3 Principle of EMATPOD(di)10+2d 10+1d 105A1Signal response, AfB1CIDecision threshold , AfdecA2A4B2,B4C2,C4049.5/60日di d2Thickness, d Fig. 2 Schematic of POD(d) calculationssiB3““15SC3Fig. 4 Straight pipe with wall thinning3 EMAT による残存肉厚の計測EMAT の計測原理を Fig.3 に示す[7], EMAT の探触子 は永久磁石とコイルにより構成されており,対象物が磁 性体の場合, コイルに電流を流すことによって作用する ローレンツ力と磁歪の力,磁化力によって超音波を発生 させる[8,97. この超音波と反射波間で共振が起こり,共 振周波数を用いて式(8)により対象物の残存肉厚を求める ことがで きる.ただし式(8)において,残存肉厚 d, 音速 c, AS は EMAT の出力信号から得られる共振周波数間隔を表す............(10)d=20この計測に係る 2 節で述べた計測性能評価条件として, 計測対象を減肉加工された直管,エルボレデューサと する.これらの試験体の材質,呼び径,呼び厚さは同一 であり、詳細な寸法と形状を Fig.4 から Fig.6に示す.計 測機器の条件として,Fig.7に機器構成を示す. - 送信は、パルサー電源によって 200V, 100us のバース ト波を発生させ, EMAT に印加する. この際,共振周波 数を得るために送信波の周波数を 3MHz から 5MHz の間 で掃引する. 受信は、ダイプレクサーを介して40dB のア ンプと 500kHz-5MHz のバンドパスフィルタを介して行 う受信波に対して送信波を中心としたある程度の周波数 間隔を求めることができる.Magnet N S1Eddy LSN current 898Coil Lorentz forceMagnetostrictive forceUltrasonic waveFig. 3 Principle of EMAT24810」 JA110055B1A4A2,A4tekB2,B4R50ーーー62,CA10,Fig. 5 Elbow specimenA1ci1102A2,A4C2,C4A4XL C4 VA3Fig. 6 Reducer specimenOscilloscopeTHE2000Go0?????ODo0gOoooWOODBurst power supplyDiplexer input outpuAmp input outpuBPinput outp 子)1000 [000円EMATTest sampleFig. 7 Experimental setup4 適用結果 1 3章で定めた機器の仕様・規格で、 対象の試験体を標準 化した方法で, POD を作成するためのデータを試験体ご とに測定する.次に,機械学会が定める測定点を計測し 得られた信号値As を決定閾値AとしたPODを作成し, 信頼性評価を行う.直管やエルボ,レデューサの各測定点に対して10回測 定を行った.これらの集積された計測データをもとに, B.B..0.を最尤推定法によって求めた値をTable 1 に示す。 次に一例として直管における B., B,と式(4)-(8)を用い て、 - 810(残肉 2.0mm)における POD(d)と 95%下限信 頼区間を決定するパラメータの推定を行った結果をTable 1 Estimated parameters using maximum likelihood estimation method 試験体 | 。 | | 06|直管7.360.980.036エルボ7.481.050.05レデューサ7.3510.980.056| |Table 2 Estimated parameters of straight pipe (Aface = 810) 。 | , ,d0195 0.68 -83 | 5827 | 404979 | 1.88POD(d)Probability of detection95% confidence bound2. 220.12.0 1 1.9 Thickness [mm]181.7Fig. 8 POD(d) function and lower 95% confidence bound ofstraight pipe with wall thinning (f. - 810)2.2TaeTable 2 に示す.またこの時の PODd)と 95%下限信頼区 間を Fig.8 に示す.dorolは POD(d)の 90%の検出確率と 95%下限信頼区間の交点で与えられる. dorosはf が設 定された時に, に対応する残存肉厚が 90%の確率で 検出でき, door.値以上の残存肉厚があることを95%保証 する.従って EMAT によって残存肉厚が 2.0mm と計測さ れた場合には, dooror = 1.88mm 以上の残存肉厚が保証さ れる. 直管における各測定点の測定値に対するdoriorの推 定結果を Table 3 に示す.次に Fig.4 に示したエルボの計測点に対する dooooを Table 4, Fig.5に示したレデューザの計測点に対するds をTable 5に示す.直管の結果である Table 3 と比較する と Table 4, Table 5 では,直管の結果である Table 3 と比 較すると,真値 d との差が 1mm 以上と大きい、試験体形 状以外の条件を一致させて計測したことから,この結果 はEMATによる残存肉厚計測の信頼性が試験体形状の影249Table 3 dgorgs of straight pipe with wall thinning1 | 2 | 3| 115.3 | 5.545.3dg01955.03 15.225.035.5 5.22 2.0d2.1dongs1.9512.1 11.95 13.6 ..3.36 |1.9 1.76 3.61.883.63.2d019s3.363.3612.99Table 4 doos of elbow1 | 2 | | 115.515.2935.465.5 4.03190/954.033.851900/01/03d6.386.156.346.4do/954.964.784.934.98-----,w90/95 -- -----|1|2|3|45.55.2915.5dgo/954.033.854.035.46 4.00 6.34 4.936.386.46.15 4.78d907954.964.98Table 5 d99,95 of reducerd5.266.31d907954.191900/01/04 1:55:12d5.176.32 5.09d901954.08d6.066.345.11doors | 4.67| 影を受けることを示している.5 まとめ 1. 本論文では,非破壊検査おける計測方法・条件に対す る信頼性の評価を目的として,計測データから求めた POD のder による評価方法について述べ, EMAT の計測 データの適用事例を示した.今後は、十分な信頼性を確 保するための条件について検討し,他の計測方法で得ら れた計測データへの適用も試みる.「謝辞本研究は経済産業省原子力安全・保安院の「平成23年 度高経年化技術評価高度化事業」において実施した研究 である.関係各位に感謝申し上げる.参考文献 [1] 日本機械学会,発電用原子力設備規格 加圧水型原子力発電所 配管減肉管理に関する技術規格,JSMES NG-1(2006) [2] 内田 俊介, 内藤 正則, 岡田 英俊, 越塚 誠一, 大平拓, “静的電気化学解析と動的酸化皮膜成長解析を結 合したモデルによる PWR 給水系配管の減肉評価““, 日本機械学会, 動力・エネルギー技術の最前線講演論文集, pp.347-350(2010) [3] 町田 秀夫、荒川 学, 平沼 巨樹, 設楽 親, “BWR プラント配管減肉管理に対する LRFD の適用““,日本 機械学会, M&M 材料力学カンファレンス 2008,OS0308-1(2008) [4] ““Nondestructive Evaluation System ReliabilityAssessment““, Department of Defense Handbook,pp.49-53, 81-144 (2009) [5] Christina Muller, Mstislav Elaguine, Carsten Bellon, UweEwert, Uwe Zscherpel, Martina Scharmach and Bernhard Redmer : ““POD (Probability of Detection) Evaluation of NDT Techniques for Cu-Canisters for Risk Assessment of Nuclear Waste Encapsulation““, ECNDT 2006, Fr.2.5.1(2006) [6] P. Berens : “NDE Reliability Data Analysis”, ASMHandbook Volume 17, pp689-701(1989) [7] R.B. Thompson : Physical principles of measurementswith EMAT transducers, in:Physical Acoustics, Vol.19,Academic Press, New York, pp157-200 (1990) [8] K. Kawashima, Very high frequency EMAT for resonantmeasurement, in: Proc IEEE Ultrasonic Symposium, No.2, pp1111-1119(1994) [9] M. Hirao, H. Ogi, T. Ohtani, and T. Morishita:Electromagnetic Acoustic Resonance to Assess Creep Damage in 2.25Cr-1Mo Steel, Nondestructive Characterization of Materials in Aging Systems (Materials Research Society, Vol. 503),edited by R.L.Crane et al., pp.31-36(1998)250“ “電磁超音波探触子を用いた配管減肉計測の信頼性評価“ “小坂 大吾,Daigo OSAKA,小島 史男,Fumio KOJIMA,中本 裕之,Hiroyuki NAKAMOTO,田端 大樹,Hiroki TABATA,加藤 翔,Sho KATO
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