ねじりモードガイド波によるエルボ部の減肉の最適計測手法

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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
配管の減肉検査等において、ガイド波を用いて広範囲 を探傷する方法や遠方から探傷する方法が期待されてお り、直管に対してガイドを用いたパルス反射法による探 傷方法が規格化されている[1]。しかし、曲がり管や分岐 管の様な複雑な形状を有する部位に対しては、まだ課題 が多い状況と言える。エルボ部においては、周波数に依 存して振幅分布に偏りを生じることが、実験ならびにシ ミュレーション等で明らかにされつつある[24]が、計測 の方法や計測結果の評価方法は研究中である。こうした 部位を探傷する場合には、欠陥の発生が想定される位置 に応じて、適正な計測条件を選定することや計測条件に おける欠陥検出性を把握した上で探傷結果を評価するこ とが重要と考えられる。本研究では、ガイド波探傷における計測条件の最適化 に数値シミュレーションを活用する方法について検討し ている。具体的には、大規模有限要素法(FEMを用いた数 値シミュレーションにより最大振幅値分布を予測し、振 幅値を基に欠陥検出性を評価する方法を試みている。こ こでは、周波数を変えたシミュレーション解析で予測し た振幅値と、実験で評価した検出性との相関性を調査した。
2.数値シミュレーションを用いたガイド波の 振幅分布予測
FEM を用いたガイド波の伝搬シミュレーション解析で
は、ガイド波が伝搬する部位を計算機のメモリ空間内に モデル化する必要があるため大規模な解析となる。本報 では、市販の大規模超音波解析ソフトウェア(伊藤忠テ クノソリューションズ社製 ComWAVE)とワークステー ション (12 コア CPU, メモリ 96GByte)を使用して解析 した。ガイド波の送信は、配管の外面に接触させた送信 部から円周方向に初期変位を与える方法とし、受信は任 意の位置の FEM メッシュの変位成分を時系列で取得す る方法とした[4]。図1は 50A sch40 (外径 60.5 mm×肉厚 3.9 mm)アルミニウム管及び 90°ロングエルボをモデル 化した例である。実際の測定と同様に直管の外周上に等 間隔で8箇所の送信部を設定し、全て同位相で初期変位 の波形を周方向に加振してねじりモードのガイド波 (T(0,1)モード)を送信した。図2は解析結果の例であり、 図 2(a)はこれまでと同様に振幅値分布を時系列で表示し た波面の伝搬状況の図である。ここに示した例では、ガ イド波がエルボ部を通過する際に腹側の振幅値分布が増 加していることを定性的には確認できるが、最大振幅値 を示す場所を特定しにくかった。そこで図 2(b)に示す様 に、解析した全ての時系列データの振幅値から各位置に おける最大振幅値を抽出し、最大振幅値分布を表示する こととした。この図の振幅値が大きな位置では、欠陥検 出感度が高いのではないかと推測できる。実験結果と比 較してこの仮説の検証を行った結果を次項に示す。本報 ではシミュレーション解析及び実験ともに 50A sch40 ア ルミニウム管及び 90°ロングエルボにおける条件で検討 した。27485 mmカラー送信部 外面に等間隔で8か所設置れってる容こ図1 エルボ部の解析モデル\1010(a) 時系列の振幅値分布(波面の伝搬状況の表示)(b)全時系列データから各場所の最大振幅値の取得図2 最大振幅値分布の表示方法3. ガイド波の振幅分布と検出感度の比較3.1 エルボ通過後の模擬減肉の検出 * 最初に、エルボ通過後の直管部においてシミュレーシ ョン解析で予測した振幅値と実験で測定した検出感度の 結果を比較した。図 3 はロングエルボ通過後の直管部に おける周波数別の最大振幅値分布を示した結果である。 エルボの背側と腹側の直管部において最大振幅値の偏り が確認でき、偏りが生じる位置は周波数によって変動す ることが確認できる。例えば、エルボと直管の接合部か ら約 120 mm~130mm 離れた位置付近の振幅値分布に着 目すると、エルボの背側では周波数 50 kHz, 40 kHz, 30 kHz の順に振幅値が増大する結果であった。一方、腹側では 30 kHz, 50 kHz, 40 kHz の順に振幅値が増大する結果であった。 * エルボ通過後の直管部において最大振幅値が欠陥検出 感度と相関を持つかどうかを検証するため、模擬減肉を 付与した実験により検出感度を評価した。図4は実験配 置を示した図であり、エルボ越えの直管部の背側ならび に腹側にゅ9.5 mm の超鋼カッターで円柱状の模擬減肉を 付与して検出性を評価した。背側に模擬減肉を付与した 時の実験結果と腹側に付与した実験結果を図5に示す。 検出感度は、各々周波数 30 kHz, 40 kHz 及び 50kHzでの 断面欠損率(%)に対する反射率(%)の増加率[2]で評 価した。実験で評価した検出性は、背側の欠陥に対して 周波数 30 kHz, 40 kHz, 50 kHz の順に感度が高い結果であ り、腹側の欠陥に対しては周波数 30 kHz, 50 kHz, 40 kHz の順に感度が高い結果であった。解析で予測した振幅値 は実験結果と同様の傾向であることが確認された。振幅値低い、。ます 新しい30kHz|125 mm振幅値低い 40kHzの 40kHz振幅値高い、atterienternivelose50kHz振幅?高壓振幅?低(a) エルボ背側の振幅値分布振幅値低い 30kHz100(1) |125 mm振幅値高い 40kHz(MOいた時* 振幅値高い。 50kHz( MCD振幅?高壓振幅?低(b) エルボ腹側の振幅値分布 図3 エルボ通過後の直管部における周波数毎最大振幅値分布の解析結果282480170TransmitterReceiverWeldAmplifierFilterAmplifier FunctionFilter Oscilloscope1902/05/26Function GeneratorOscilloscopeArtificialdefect図4 実験配置図と模擬減肉の付与状況Refkctiam coeffxiext()* 0.69 (60%)30kHzReflection coefficient (%)RRggae2.4 (%o/%) 30kHzakoto。Cross sectional lass)Cross sectional loss (14)(x)T 1.9(%/%)40kHz! 7.1 (%o/)} }Reflection coefficient(%)itのは aso8440kHz。。Cross sectional loss (4)Cross sectional ba (8)4.2 (%/%)Refketine codient(')Reflection coefficient('.)** 4.1 (%o/)50kHz50kHzTTTTT。Cros sectisnal boss @6)Cross sactional loss (a)(a)背側の検出感度 )腹側の検出感度図5 周波数別の検出感度3.2 エルボ部における模擬LDI の検出 * エルボ部における液滴衝撃エロージョン(LD)は、エル ボ背側に発生することが多い。したがって、背側の振幅 値が大きい条件で探傷すれば効果的に LDI を検出できる と考えられる。図6はロングエルボにおいて、送信波の 周波数 30 kHz と 50 kHzにおける最大振幅値分布を示した 結果である。周波数 50 kHz ではエルボ部の背側の振幅値 が大きいのに対し、30 kHzでは腹側の振幅値が大きい結 果である。送信波の振幅値を 1 とした時に、エルボ背側 45° 中央位置における振幅値は 30、40、50 kHz で各々0.8、 1.2、1.4であった。振幅値が高い領域では、欠陥反射も大 きくなることが推定されることから、周波数50kHzでLDI の検出感度が高くなることが期待される。定量的な推定に向けてシミュレーション解析を用いて、 模擬 LDI モデルを設置して検出感度を評価した。図7は模擬LDI モデルの設置位置であり。12 mm の球体でエル」 ボ背側の外面から肉厚を減じるモデルとした。図8は減 肉の深さを1mm 刻みで漸増させた時の周波数 50 kHzに おける反射波のシミュレーション波形である。図中の点 線で囲った伝搬時間 (約390us から約 440 us) で模擬 LDI モデルによる波形の変化が確認される。その前後の波束 (伝搬時間 350 us 付近及び 470 us)は、エルボ両端の溶 接部を模擬したモデルからの反射波である。図9はシミ ュレーション解析を用いて模擬 LDI モデルの深さの漸増 により得られた検出感度であり、周波数別の断面欠損率 (%)に対する反射率(%)の増加率である。周波数 30 kHz で は 1.6 %0%、40 kHz では4.4 %d%、50 kHz では 8.7 %%% で 50 kHz の検出感度が高い解析結果であった。これは、 図6に示した振幅値に対応した結果と言える。シミュレーーション解析結果の妥当性を確認するため、 012 mm のボールエンドミルで模擬LDI の深さを漸増さ せた実験により検出感度を評価した。図 10 には、模擬 LDI の付与状況と実験の配置図を示す。実験では小12mm のボールエンドミルで模擬LDI を付与し、0.2mm 刻みで 貫通するまで深さを漸増させた。そして各深さにおける 反射波の振幅を計測し、断面欠損率(%)に対する反射 率(%)を整理した。その結果をシミュレーショ解析結 果と合わせて表1に示す。周波数 30 kHz, 40 kHz 及び 50 kHzにおける検出感度は各々1.280%、3.6%%及び 10.000 1%であり、シミュレーション結果は実験結果と同様の傾 向であるとともに、ほぼ同じ感度であることが確認された。1900/10/17振幅値低い (02)振幅値高い(a) 30 kHz振幅値高い (14)振幅値歳(b) 50 kHz 16 周波数毎最大振幅値分布の解析結果るうMarm・.・図7 模擬LDI モデルの設置位置F4 num depth3 mim depthF2 mim depthRelatire AnplitudeF1 mum depthF 0 mm depth???????2001900/10/264001901/08/221 500 Propagation time (x10* sec.) 模擬LDI モデルの減肉深さ漸増に伴う反射波のシミュレーション波形(周波数 50 kHz)図811.6 (%)Reflection coefficient (%o)(a) 30 kHz)11234Cross certinnal Inee 1/1Reflection coefficient (%)(b) 40 kHz 112tinnollnes (0/Aから約3001a | 8.7 (%)/Reflection coefficient (%)(c) 50 kHz1 2 3 4 Cross sectional loss (%)図9 模擬LDI モデルの検出感度線(シミュレーション解析)302485485白mRTWeld1000Nodelect a・ボール エンドミル図 10 DI 模擬欠陥の付与状況表1 模擬LDI に対する検出感度比較 (反射率(%) /断面欠損率(%))解析結果 実験結果 -- 30 kHz | 1.6 | 1.2 40kHz 4.43.6 50 kHz 8.71900/01/094. まとめ本報では、エルボ部及びエルボ通過後の直管部におけ るガイド波の振幅値の分布をシミュレーション解析し、 検出感度の予測や計測条件の最適化に活用する方法を検 討した。ガイド波の振幅値が高い領域に模擬減肉が存在 する場合には実験により実測した検出感度も大きく、ガ イド波の振幅値が低い領域に模擬減肉が存在する場合に は、検出感度が低いことを実験で確認した。ガイド波の 周波数が変わると振幅値が高いあるいは低い領域が変動 するが、この場合においても、シミュレーション解析で得られたガイド波の振幅値と模擬減肉の検出感度は比較 的良い相関を示すことを確認した。これらの結果より、 ミュレーション解析結果を基に、計測条件の最適化の検 討や検出感度を予測する可能性が見出せた。謝辞本研究は、経済産業省原子力安全保安院による平成 23 年度高経年化技術評価高度化事業によってなされた。参考文献 [1] 日本非破壊検査協会規格 NDIS2427、“ガイド波を用いたパルス反射法による配管の探傷試験方法通則”、2010.5.12 制定 [2] 溝渕裕貴、増田修一、吉田憲一、西野秀郎、“T(0,1)モードガイド波によるエルボ管に導入した欠陥の検 出感度評価”、日本非破壊検査協会平成 22 年度秋季大会講演概要集、2010、pp-11-12. [3] 林高弘、“ガイド波伝搬の数値シミュレーション”、非破壊検査 Vol.52, No.12、2003、pp.662-666. [4] T. Furukawa and I. Komura, 'Simulation and visualizationof guided wave propagation by large-scale 3D FEM““, E-Journal of Advanced Maintenance, Vol.3, No.3, 2011, pp.92-101.“ “ねじりモードガイド波によるエルボ部の減肉の最適計測手法“ “古川 敬,Takashi FURUKAWA,西野 秀郎,Hideo NISHINO
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