高温疲労き裂進展下限界値と負荷履歴依存
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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
1発電用プラントの閉塞分岐配管, 高温水/低温水合流部, 作動熱媒体の液面近傍などでは,起動/停止時に発生す る長周期低サイクル型の熱応力と,熱成層化界面近傍で の温度ゆらぎなど稼動中に発生する局所的な短周期高サ イクル熱応力とが重畳し,場合によっては破損に至らし めることが懸念されている. この類の課題は構造問題と 流体問題の複合境界領域的課題であり,破損の観点から も低サイクル疲労破損と高サイクル疲労破損という複合 的課題となる.従来,この種の破損に関しては Usage factor (UF)と呼ばれる概念を導入して評価されてきた が,この概念の工学的背景は曖昧であり,複雑な負荷履 歴を考慮できる手法になっておらず,これによる扱いが 非保守的予測を与える例も報告されている.いわば,損 傷という実態を見える化した上で寿命を精度よく予測す る柔軟な手法が切望されているといえよう. 10-01このような背景を鑑み,本研究では,まず,大振幅低 サイクル型の熱疲労負荷(以下,単に低サイクル負荷と 記す)の繰返しの中に、小振幅高サイクル型の繰返し負 荷(以下,単に高サイクル負荷と記す)を任意のシーケ ンスで重畳させることのできる試験システムを開発した. つぎに,SUS316 鋼を対象として,いくつかの代表的な低 サイクル疲労破損と高サイクル疲労の重量負荷疲労試験 を実施し,き裂という目に見える形態の損傷をベースと した寿命・余寿命予測手法の確立とその高度化に向けた一連の検討を行った.
2. 試験系の開発と実験方法 2.1 試験系の開発
高温水/低温水合流部など、作動熱媒体の液面近傍など では,起動/停止時に発生する長周期で低サイクル型熱 「疲労負荷と,温度ゆらぎなどに伴う短周期の高サイクル 型熱疲労負荷が重畳される. この重畳状態を負荷の時間 履歴として模擬的に図1に示した.図中の大きな振幅の負 荷が低サイクル型熱疲労負荷を,小さな振幅の負荷が高 サイクル型熱疲労負荷を表している.図1のような重畳状態を再現可能にするため,本研究で は,低サイクル型の熱疲労負荷の中に,低レベルで高サ イクル型の繰返し負荷を重畳させることのできる試験シ ステムを開発した. 一連の試験系の開発には電気油圧サ ーボ疲労試験機を用いた.ここで,低サイクル型熱疲労 負荷は、最高温度を300°C最低温度を50°Cとした線形温 度サイクルにひずみを同位相で同期重畳させた(いわゆ るThermo-Mechanical Fatigue(TMF)) 負荷で,この間は 力学負荷のひずみ比を-1とするひずみ制御型の負荷とし ている.一方,高サイクル型の繰返し負荷は,前者の負 荷の最大ひずみ到達時点を基準として繰返される荷重制 御型の繰返し負荷とし, この間の試験温度は300°C(一定) とした.2.2 実験方法2.2285試験片加熱には高周波誘導加熱装置を用い、試験片評 点部の温度分布は3°C以内になるようにした.試験片の温AERNA.COStrainStrain→ TimeTimewwwwwwwwwwwwww(b)Strain| ANR+| AEN,R,LOStrainTimeTime(C)(p)StrainStrainA NR +0TimeTime NiAER MRFig. 1 Illustration of loading histories consisting of low- and high-cycle fatigue loadings.RIGa) Smooth speo men- initial notchiDepth: 50 um Diameter 100 un0-0DepthFig. 2 Geometry of specimens used.度制御は、試験片の評点部を離れた肩部にスポット溶接 したK熱電対を介して行った.本研究では,SUS 316鋼(1100°C×1時間の溶体化熱処理 材)を供試材とした素材の平均結晶粒径は約40mであ った.この素材から評点部直径8mm, 同長さ25 mmdの平滑丸棒試験 片を切出し、評点部を#800のエメリーペーパ で試験片軸方向に手研磨仕上げした後に実験に供した (図2).YAENRIOTimeこれまでに得られている知見によれば,高レベル負荷 (ひずみ制御)に低レベル負荷(荷重制御)を重畳させ た場合,先行する負荷と後続する負荷による相互作用の 評価の高度化が必要であることが指摘されている.5本 研究では、この現象に対する背景をき裂進展の観点から 探求し、安全確保に対する取扱い手法を提案することを 目標として,一連の検討を行った. この目標のため,評 点部中央に直径100 um, 深さ約50 μmの円孔状の初期切欠 きを加工した試験片(図2参照) を用いた.切欠きはドリ ル加工により導入した.3. 結果 3.1 き裂の進展と負荷履歴依存性低サイクル疲労負荷と高サイクル疲労負荷が重畳した ときのき裂進展特性を,純粋な低サイクルTMF負荷下のそ れ(NH : NL=1 : 0) と比較して図示した(図3参照). なお, ここでは、図1(e)のパターンの重畳負荷履歴を持たせた 負荷履歴の下でNHとNLの比率を変数として調査し,低サ28616001400half crack length a [um]1200 1000 800 600 400 200510_100020003000400050006000Number of blocks N [block]and high- cycle fatigue loadings (see Fig. 1(e)) on fatigue crackFig. 3 Effect of loading history consisting of low- and hi propagation.イクル疲労負荷レベルは1.0%(ひずみ比-1)に,それに 重畳させる高サイクル疲労負荷振幅は100 MPa(概ね SUS316鋼の疲労限度に相当する)としている.図3より , 高サイクル疲労負荷の重量により,それが重畳しない ときと比べて,き裂が速く成長していることがわかる. 注目すべき事実は,き裂長さが半長にして100~200 μm以 下の時には高サイクル疲労負荷の重量によりき裂進展の 加速が有意ではないのに対し,それ以上では顕著になる こと,いわば、ある臨界長さ(as)を境にして,相互作 用を考えるべき段階と無視しても良い段階が存在するこ とである. 換言すれば,重量負荷下の疲労寿命評価に対 して,高サイクル負荷のレベルが仮に疲労限度以下であ ったとしても、ある長さ以上のき裂が存在する場合には, それがき裂の進展を促進し,ひいてはUsage factorを基準 とした取扱い手法が非安全側の評価に結びつくことがあ ることを示している. これは,Usage factorをベース トするMiner則流の考え方では,低サイクル負荷による損 傷と高サイクル負荷による損傷の相互作用は考慮されて おらず,負荷の順序効果についても配慮されていないか らである(これは線形的加算の評価方法による). 相互 作用が現れる遷移長さaについては次項で再度検討する。遷移長さaの存在を間接的に示す痕跡も破面上に見ら れた.すなわち,き裂が十分長くなった際に形成された 領域には高サイクル負荷と低サイクル負荷の双方の影響 により形成されたと思われるビーチマークが観察された のに対し(図4(a)),き裂が短い際に形成された領域には それと類似の痕跡は見られなかった(図4(b)),(a) 0.2 mm depth一人であるE601(b) 0.6 mm depth Fig. 4 Rupture surface under combined loading history consisting of low- and high- cycle fatigue loadings (see Fig. 1(e)),3.2 き裂進展の下限界と応力比3.1節で指摘した現象に対する破損寿命の予測精度を あげるためには、単独では疲労限度以下であって破壊に は寄与しないはずの高サイクル疲労負荷が,低サイクル 熱疲労負荷の影響を受けて破壊に寄与した工学的背景を287106 (300CSUS 316*R=1ソルフ初別日での出張駅は、JM 試験片ごとに異なる応力比の下で行った 波形を模擬的に記述すれば図1(a), (c), (d) | き裂進展試験はAK-increasing法とAK-decr 用して実施した.その際のAKの下げ幅は 1割を超えないようにし,かつ,AKの値 100 wm以上のき裂が進展した後に始め 定した. AKは試験片形状を考慮し,OR=02AR%3D.2.32019/10/09Crack growth rate, da/dN (m/cycle)2019/10/10AK = F(a/W)ao/ma F(a/W) - 「sec(ra/W)-1101““により評価した.ここで, a, W, 4 0, F. ぞれ,き裂半長、試験片半幅,繰返し応2019/10/12暗補正低である水平ではき2019/10/06_ SUS310107OR-302AR1.5CAR=3.2.3Crack growth rate, da/dN (m/cycle)10F・・・・・・・・・・・・・・・では...........。くいStress intensity factor range,AK (MPam1/2)Fig. 5 Effect of stress ratio on fatigue crack growth.探究することが必要になる。その際、高サイクル負荷期 間中の応力比(これは低サイクル熱疲労負荷の履歴に依 存して構築される)の値に配慮しながら,高サイクルの 負荷期間中のき裂の進展の特性に注目した手法が最も現 実的で確実な手法と思われる.この手法に従えば、従来 「損傷」という曖昧な値で定義されてきた量をき裂の進 展という目に見える形で表すことにつながる. - このような背景に鑑み、本節では,低サイクル熱疲労 負荷を予め与えたSUS316試験片を準備し(図2(b)),そ の後に繰返す高サイクル熱疲労負荷の応力比を実験変数 としてき裂の進展特性を調査した.前者の予負荷は, SUS316丸棒試験片に対して,常温-300°Cの間で同位相型 の熱疲労負荷(Ae= 1.0%,ひずみ比-1)を100 サイクルAK in(MPa ma、E.K. Priddle et al.(1978) * Tanukaeal (1984) とは Suzuki et ut, (1988)---------Threshold strens intensity factor.kth Knuth [MPa m}OSUS316 室温AK 11O SUS316L 室温AKEKmax-KminSUS316,300°C{ResultyAKEKmax1899/04/22-1.5Stress ratioFig. 6 Effect of Stress ratio on fatigue threshold.加えた。これにより,繰返し硬化を安定させた.高サイ クルの負荷期間中のき裂進展試験は、300°C, 大気中で, 試験片ごとに異なる応力比の下で行った.この間の負荷 波形を模擬的に記述すれば図1(a), (c), (d) に相当しよう. き裂進展試験はAK-increasing法とAK-decreasing法”を併 用して実施した.その際のAKの下げ幅は直前のレベルの 1割を超えないようにし,かつ,AKの値を下げた直後は 100 μm以上のき裂が進展した後に始めて進展速度を測 定した. AKは試験片形状を考慮し,により評価した.ここで, a, W, A a, F(a/w)は,それ ぞれ,き裂半長、試験片半幅,繰返し応力幅,および, 境界補正係数である.本研究では,き裂進展速度が1011 m/cycleとなるAKを疲労き裂進展の下限界応力拡大係数 範囲AKとした.得られたき裂伝ぱ特性を図5に示す. この図をもとにき 裂進展に対する下限界応力拡大係数範囲 A Khを評価し, 高サイクル負荷期間中の応力比(R比:最大応力と最小応 力の比率)の関数として図6に示した.図中のスラッシュ を施した結果が本研究の結果である.ここでは、R比が負 条件下(最小応力が負,すなわち、圧縮負荷となる)の 実験も行っていることから,これに該当する条件下の4 Kは負荷の圧縮成分を無視して表示している(RKOのと きAKn=Khmerと見なすことに相当する)図5より,下限界応力拡大係数範囲 AKは応力比の影 響を強くうけるこれらの結果を、従来の他の研究者の 結果19-9 (SUS 316処女材で,本研究のような負荷履歴は 持たない)を含めて図6に総括した.これらの結果より, AKAは応力比の関数としてAKth ≒AK10 AKA AKR.2 (1-kR) AKth ≒AKn2(0.5 AKe uh1899/12/26であることに注目すると,AKERはAKの最小値を与 える量となっていることから, A Korenをあらかじめ取得 しておき,これをき裂進展の下限界値として使用する手 法はき裂伝ぱの評価に際して安全側の評価を与える手法 となる.そこで,式(2)で評価されたAKB 値をA Kerr, thと近似 し,高サイクル負荷中の応力拡大係数範囲 AKが A Kaff, th を超えたときに高サイクル疲労負荷の期間中にき裂が進 展すると考える.この規準は、遷移き裂長さをAh of th_ay=FCa/W)AV12-5-5- 289、とすることと等価である. 式 (5) によって見積もられる aは必然的に式(3) よりも小さくなるから,これは低サ イクル負荷と高サイクル負荷の重畳効果が現れ始めるき 裂長さを小さめに見積る(評価上は安全側の推定結果を 与える) 規準となる.すなわち、低サイクル負荷により き裂が発生・進展し,そのき裂長さが式(5) によって評価 される値よりも大きくなった後には,(高サイクル負荷 の範囲が仮に疲労限度以下であったとしても)高サイク ル疲労負荷期間中にき裂が進展し,負荷の重畳効果が有 意となり,それが寿命低下をもたらす主要因になるとす る考えは合理的であると言えよう. -- 以上の規準に従うと,低サイクル負荷と高サイクル熱 「疲労負荷が重畳する際の健全性評価に際し、例えば、図 1(e)のパターンのような周期的重畳負荷履歴を持たせた 負荷履歴の下でのき裂進展速度dald(block) は(周期的負 荷の場合にはブロックあたりのき裂進展量で表すことと する),1500us-Suav + Sun(when A0 nigh““ fAh 5h) (6a)ordblock)anan(when do mus Summ) (60)として評価するのが妥当と思われる.ここで,式(6a)式 中の第1項は低サイクル負荷期間中のき裂進展量を、第 2項は高サイクル負荷期間中のそれを表している.そし」 て,余寿命(ブロック数で表す)は,式 (1)-(6)をベーース としたき裂進展速度の数値積分により可能となろう.N(block)= 1/4da)da(when a >a,)(7a)d(block)N(block) = 16 dada +11 da __)da Ock)““d(block)(a +] ““diblock)}da(when a,
1発電用プラントの閉塞分岐配管, 高温水/低温水合流部, 作動熱媒体の液面近傍などでは,起動/停止時に発生す る長周期低サイクル型の熱応力と,熱成層化界面近傍で の温度ゆらぎなど稼動中に発生する局所的な短周期高サ イクル熱応力とが重畳し,場合によっては破損に至らし めることが懸念されている. この類の課題は構造問題と 流体問題の複合境界領域的課題であり,破損の観点から も低サイクル疲労破損と高サイクル疲労破損という複合 的課題となる.従来,この種の破損に関しては Usage factor (UF)と呼ばれる概念を導入して評価されてきた が,この概念の工学的背景は曖昧であり,複雑な負荷履 歴を考慮できる手法になっておらず,これによる扱いが 非保守的予測を与える例も報告されている.いわば,損 傷という実態を見える化した上で寿命を精度よく予測す る柔軟な手法が切望されているといえよう. 10-01このような背景を鑑み,本研究では,まず,大振幅低 サイクル型の熱疲労負荷(以下,単に低サイクル負荷と 記す)の繰返しの中に、小振幅高サイクル型の繰返し負 荷(以下,単に高サイクル負荷と記す)を任意のシーケ ンスで重畳させることのできる試験システムを開発した. つぎに,SUS316 鋼を対象として,いくつかの代表的な低 サイクル疲労破損と高サイクル疲労の重量負荷疲労試験 を実施し,き裂という目に見える形態の損傷をベースと した寿命・余寿命予測手法の確立とその高度化に向けた一連の検討を行った.
2. 試験系の開発と実験方法 2.1 試験系の開発
高温水/低温水合流部など、作動熱媒体の液面近傍など では,起動/停止時に発生する長周期で低サイクル型熱 「疲労負荷と,温度ゆらぎなどに伴う短周期の高サイクル 型熱疲労負荷が重畳される. この重畳状態を負荷の時間 履歴として模擬的に図1に示した.図中の大きな振幅の負 荷が低サイクル型熱疲労負荷を,小さな振幅の負荷が高 サイクル型熱疲労負荷を表している.図1のような重畳状態を再現可能にするため,本研究で は,低サイクル型の熱疲労負荷の中に,低レベルで高サ イクル型の繰返し負荷を重畳させることのできる試験シ ステムを開発した. 一連の試験系の開発には電気油圧サ ーボ疲労試験機を用いた.ここで,低サイクル型熱疲労 負荷は、最高温度を300°C最低温度を50°Cとした線形温 度サイクルにひずみを同位相で同期重畳させた(いわゆ るThermo-Mechanical Fatigue(TMF)) 負荷で,この間は 力学負荷のひずみ比を-1とするひずみ制御型の負荷とし ている.一方,高サイクル型の繰返し負荷は,前者の負 荷の最大ひずみ到達時点を基準として繰返される荷重制 御型の繰返し負荷とし, この間の試験温度は300°C(一定) とした.2.2 実験方法2.2285試験片加熱には高周波誘導加熱装置を用い、試験片評 点部の温度分布は3°C以内になるようにした.試験片の温AERNA.COStrainStrain→ TimeTimewwwwwwwwwwwwww(b)Strain| ANR+| AEN,R,LOStrainTimeTime(C)(p)StrainStrainA NR +0TimeTime NiAER MRFig. 1 Illustration of loading histories consisting of low- and high-cycle fatigue loadings.RIGa) Smooth speo men- initial notchiDepth: 50 um Diameter 100 un0-0DepthFig. 2 Geometry of specimens used.度制御は、試験片の評点部を離れた肩部にスポット溶接 したK熱電対を介して行った.本研究では,SUS 316鋼(1100°C×1時間の溶体化熱処理 材)を供試材とした素材の平均結晶粒径は約40mであ った.この素材から評点部直径8mm, 同長さ25 mmdの平滑丸棒試験 片を切出し、評点部を#800のエメリーペーパ で試験片軸方向に手研磨仕上げした後に実験に供した (図2).YAENRIOTimeこれまでに得られている知見によれば,高レベル負荷 (ひずみ制御)に低レベル負荷(荷重制御)を重畳させ た場合,先行する負荷と後続する負荷による相互作用の 評価の高度化が必要であることが指摘されている.5本 研究では、この現象に対する背景をき裂進展の観点から 探求し、安全確保に対する取扱い手法を提案することを 目標として,一連の検討を行った. この目標のため,評 点部中央に直径100 um, 深さ約50 μmの円孔状の初期切欠 きを加工した試験片(図2参照) を用いた.切欠きはドリ ル加工により導入した.3. 結果 3.1 き裂の進展と負荷履歴依存性低サイクル疲労負荷と高サイクル疲労負荷が重畳した ときのき裂進展特性を,純粋な低サイクルTMF負荷下のそ れ(NH : NL=1 : 0) と比較して図示した(図3参照). なお, ここでは、図1(e)のパターンの重畳負荷履歴を持たせた 負荷履歴の下でNHとNLの比率を変数として調査し,低サ28616001400half crack length a [um]1200 1000 800 600 400 200510_100020003000400050006000Number of blocks N [block]and high- cycle fatigue loadings (see Fig. 1(e)) on fatigue crackFig. 3 Effect of loading history consisting of low- and hi propagation.イクル疲労負荷レベルは1.0%(ひずみ比-1)に,それに 重畳させる高サイクル疲労負荷振幅は100 MPa(概ね SUS316鋼の疲労限度に相当する)としている.図3より , 高サイクル疲労負荷の重量により,それが重畳しない ときと比べて,き裂が速く成長していることがわかる. 注目すべき事実は,き裂長さが半長にして100~200 μm以 下の時には高サイクル疲労負荷の重量によりき裂進展の 加速が有意ではないのに対し,それ以上では顕著になる こと,いわば、ある臨界長さ(as)を境にして,相互作 用を考えるべき段階と無視しても良い段階が存在するこ とである. 換言すれば,重量負荷下の疲労寿命評価に対 して,高サイクル負荷のレベルが仮に疲労限度以下であ ったとしても、ある長さ以上のき裂が存在する場合には, それがき裂の進展を促進し,ひいてはUsage factorを基準 とした取扱い手法が非安全側の評価に結びつくことがあ ることを示している. これは,Usage factorをベース トするMiner則流の考え方では,低サイクル負荷による損 傷と高サイクル負荷による損傷の相互作用は考慮されて おらず,負荷の順序効果についても配慮されていないか らである(これは線形的加算の評価方法による). 相互 作用が現れる遷移長さaについては次項で再度検討する。遷移長さaの存在を間接的に示す痕跡も破面上に見ら れた.すなわち,き裂が十分長くなった際に形成された 領域には高サイクル負荷と低サイクル負荷の双方の影響 により形成されたと思われるビーチマークが観察された のに対し(図4(a)),き裂が短い際に形成された領域には それと類似の痕跡は見られなかった(図4(b)),(a) 0.2 mm depth一人であるE601(b) 0.6 mm depth Fig. 4 Rupture surface under combined loading history consisting of low- and high- cycle fatigue loadings (see Fig. 1(e)),3.2 き裂進展の下限界と応力比3.1節で指摘した現象に対する破損寿命の予測精度を あげるためには、単独では疲労限度以下であって破壊に は寄与しないはずの高サイクル疲労負荷が,低サイクル 熱疲労負荷の影響を受けて破壊に寄与した工学的背景を287106 (300CSUS 316*R=1ソルフ初別日での出張駅は、JM 試験片ごとに異なる応力比の下で行った 波形を模擬的に記述すれば図1(a), (c), (d) | き裂進展試験はAK-increasing法とAK-decr 用して実施した.その際のAKの下げ幅は 1割を超えないようにし,かつ,AKの値 100 wm以上のき裂が進展した後に始め 定した. AKは試験片形状を考慮し,OR=02AR%3D.2.32019/10/09Crack growth rate, da/dN (m/cycle)2019/10/10AK = F(a/W)ao/ma F(a/W) - 「sec(ra/W)-1101““により評価した.ここで, a, W, 4 0, F. ぞれ,き裂半長、試験片半幅,繰返し応2019/10/12暗補正低である水平ではき2019/10/06_ SUS310107OR-302AR1.5CAR=3.2.3Crack growth rate, da/dN (m/cycle)10F・・・・・・・・・・・・・・・では...........。くいStress intensity factor range,AK (MPam1/2)Fig. 5 Effect of stress ratio on fatigue crack growth.探究することが必要になる。その際、高サイクル負荷期 間中の応力比(これは低サイクル熱疲労負荷の履歴に依 存して構築される)の値に配慮しながら,高サイクルの 負荷期間中のき裂の進展の特性に注目した手法が最も現 実的で確実な手法と思われる.この手法に従えば、従来 「損傷」という曖昧な値で定義されてきた量をき裂の進 展という目に見える形で表すことにつながる. - このような背景に鑑み、本節では,低サイクル熱疲労 負荷を予め与えたSUS316試験片を準備し(図2(b)),そ の後に繰返す高サイクル熱疲労負荷の応力比を実験変数 としてき裂の進展特性を調査した.前者の予負荷は, SUS316丸棒試験片に対して,常温-300°Cの間で同位相型 の熱疲労負荷(Ae= 1.0%,ひずみ比-1)を100 サイクルAK in(MPa ma、E.K. Priddle et al.(1978) * Tanukaeal (1984) とは Suzuki et ut, (1988)---------Threshold strens intensity factor.kth Knuth [MPa m}OSUS316 室温AK 11O SUS316L 室温AKEKmax-KminSUS316,300°C{ResultyAKEKmax1899/04/22-1.5Stress ratioFig. 6 Effect of Stress ratio on fatigue threshold.加えた。これにより,繰返し硬化を安定させた.高サイ クルの負荷期間中のき裂進展試験は、300°C, 大気中で, 試験片ごとに異なる応力比の下で行った.この間の負荷 波形を模擬的に記述すれば図1(a), (c), (d) に相当しよう. き裂進展試験はAK-increasing法とAK-decreasing法”を併 用して実施した.その際のAKの下げ幅は直前のレベルの 1割を超えないようにし,かつ,AKの値を下げた直後は 100 μm以上のき裂が進展した後に始めて進展速度を測 定した. AKは試験片形状を考慮し,により評価した.ここで, a, W, A a, F(a/w)は,それ ぞれ,き裂半長、試験片半幅,繰返し応力幅,および, 境界補正係数である.本研究では,き裂進展速度が1011 m/cycleとなるAKを疲労き裂進展の下限界応力拡大係数 範囲AKとした.得られたき裂伝ぱ特性を図5に示す. この図をもとにき 裂進展に対する下限界応力拡大係数範囲 A Khを評価し, 高サイクル負荷期間中の応力比(R比:最大応力と最小応 力の比率)の関数として図6に示した.図中のスラッシュ を施した結果が本研究の結果である.ここでは、R比が負 条件下(最小応力が負,すなわち、圧縮負荷となる)の 実験も行っていることから,これに該当する条件下の4 Kは負荷の圧縮成分を無視して表示している(RKOのと きAKn=Khmerと見なすことに相当する)図5より,下限界応力拡大係数範囲 AKは応力比の影 響を強くうけるこれらの結果を、従来の他の研究者の 結果19-9 (SUS 316処女材で,本研究のような負荷履歴は 持たない)を含めて図6に総括した.これらの結果より, AKAは応力比の関数としてAKth ≒AK10 AKA AKR.2 (1-kR) AKth ≒AKn2(0.5