タービン制御油からのリン回収方法の検討
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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
BWRの定期点検で、EHC 制御タービンバルブ部で 使用されたリン酸エステルの廃油(EHC 油)が発生す る。発電所構内で発生する廃油は、構内に設置されてい る放射性廃棄物用焼却炉で焼却しているが、EHC 油は、 リンが低融点化合物となり排ガスセラミックスフィル ターが詰まるため処理できないという問題があった。リン濃度が 0. 5wt%程度の場合、オクチル酸カルシウ ムなどと一緒に焼却処理すると有効なことが報告され ている。しかし、リン酸エステル油には 7wt%以上のリンを含 有しており、全てをリン化合物に形成させることは困 難であった。そこで、予め室温でリン成分を化学的に安定な無機 化合物に変換する方法を見いだしたので報告する。なお、この無機化合物を焼却しても、リン成分はほ ぼ焼却灰中に保持されることも確認している。
2. 実験方法
リン酸エステル油(P 成分 7. 6wt%含有)、水酸化カル シウム(Ca(OH))を用いて、Ca/P の元素比が 1.5~4.4 になるよう調整した。また、水酸化ナトリウム水溶液 (NaOHaq) を、リン酸 エステル油の加水分解、および Ca(OH),の乖離のため適 量用いた。図1に試料の処理方法を示す。リン酸エステル油と 水酸化ナトリウム水溶液を撹拌混合した後、Ca(OH) を 添加・撹拌した。 ・放置・加熱後試料の結晶構造や、リン回収率を求め るため焼却灰中のリン量等の分析を、X線回折、誘導 結合プラズマ発光にて行った。リン酸エステル油 |NaOHaq撹拌.Ca(OH)2撹拌放置・固化物加熱(焼却)・焼却灰図1 試料の処理方法.結果と考察いずれの組成でも室温で一定時間放置するだけで、 リン酸八カルシウム(Ca、H (PO) 5H,O)などの結晶が 析出した固化物が得られた。 固化物を 800°Cの炉に投入すると、アパタイト結晶 (Ca(P0), OH)など、熱的に安定なリン酸カルシウ ム結晶の焼却灰が得られた。焼却灰中には、リン酸 エステル中のリン成分量がほぼ 100%保持されていた。焼却灰容積は、リン酸エステル油の 25%程度に減 容されていた。処理すべきリン酸エステル油中の有機成分は大気 に出され、リン成分は焼却灰として処理できる見込 みが得られた。(平成 24年7月 27 日)〒437-1695 静岡県御前崎市佐倉5561 中部電力(株)原子力安全技術研究所 池堂和仁 E-mail:Ikedou.Kazuhito@chuden.co.jp1900/11/14“ “タービン制御油からのリン回収方法の検討“ “池堂 和仁,Kazuhito IKEDOU,春日 智子,Tomoko KASUGA
BWRの定期点検で、EHC 制御タービンバルブ部で 使用されたリン酸エステルの廃油(EHC 油)が発生す る。発電所構内で発生する廃油は、構内に設置されてい る放射性廃棄物用焼却炉で焼却しているが、EHC 油は、 リンが低融点化合物となり排ガスセラミックスフィル ターが詰まるため処理できないという問題があった。リン濃度が 0. 5wt%程度の場合、オクチル酸カルシウ ムなどと一緒に焼却処理すると有効なことが報告され ている。しかし、リン酸エステル油には 7wt%以上のリンを含 有しており、全てをリン化合物に形成させることは困 難であった。そこで、予め室温でリン成分を化学的に安定な無機 化合物に変換する方法を見いだしたので報告する。なお、この無機化合物を焼却しても、リン成分はほ ぼ焼却灰中に保持されることも確認している。
2. 実験方法
リン酸エステル油(P 成分 7. 6wt%含有)、水酸化カル シウム(Ca(OH))を用いて、Ca/P の元素比が 1.5~4.4 になるよう調整した。また、水酸化ナトリウム水溶液 (NaOHaq) を、リン酸 エステル油の加水分解、および Ca(OH),の乖離のため適 量用いた。図1に試料の処理方法を示す。リン酸エステル油と 水酸化ナトリウム水溶液を撹拌混合した後、Ca(OH) を 添加・撹拌した。 ・放置・加熱後試料の結晶構造や、リン回収率を求め るため焼却灰中のリン量等の分析を、X線回折、誘導 結合プラズマ発光にて行った。リン酸エステル油 |NaOHaq撹拌.Ca(OH)2撹拌放置・固化物加熱(焼却)・焼却灰図1 試料の処理方法.結果と考察いずれの組成でも室温で一定時間放置するだけで、 リン酸八カルシウム(Ca、H (PO) 5H,O)などの結晶が 析出した固化物が得られた。 固化物を 800°Cの炉に投入すると、アパタイト結晶 (Ca(P0), OH)など、熱的に安定なリン酸カルシウ ム結晶の焼却灰が得られた。焼却灰中には、リン酸 エステル中のリン成分量がほぼ 100%保持されていた。焼却灰容積は、リン酸エステル油の 25%程度に減 容されていた。処理すべきリン酸エステル油中の有機成分は大気 に出され、リン成分は焼却灰として処理できる見込 みが得られた。(平成 24年7月 27 日)〒437-1695 静岡県御前崎市佐倉5561 中部電力(株)原子力安全技術研究所 池堂和仁 E-mail:Ikedou.Kazuhito@chuden.co.jp1900/11/14“ “タービン制御油からのリン回収方法の検討“ “池堂 和仁,Kazuhito IKEDOU,春日 智子,Tomoko KASUGA