BWR炉内構造物点検評価ガイドライン 炉内配管の点検困難部位の欠陥想定法

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カテゴリ: 第9回
1.緒言
日本原子力技術協会の BWR 炉内構造物点検評価ガイ ドライン(以降「ガイドライン」と称す。)では、経年変 化事象として応力腐食割れ(SCC)の発生,進展を想定 して,各炉内構造物の構造健全性が確保される点検周期 が示されている。運開後の初回点検時期については、運 開直後に SCC が発生し運転期間中継続進展するとの仮定 のもとに,破壊力学評価により構造健全性が確保される 期間を評価し,その結果に一定の裕度を確保して設定さ れている。初回点検実施後の次回点検時期については、 初回点検結果(SCC 欠陥有無,寸法性状)を踏まえて同 様な破壊力学評価により設定する手法が示されている。BWR 炉内構造物のうち、炉心スプレイ配管/スパージ ャ及びジェットポンプは、原子炉圧力容器(RPV)や炉 心シュラウドの壁面近くに設置されており,目視点検 (MVT-1) 対象の周溶接部の壁面近傍部は、遠隔水中TV カメラのアクセス性が悪く点検が困難な状況となってい る(図1参照)。これまで,炉心スプレイ配管/スパージャ 及びジェットポンプのガイドライン川では点検が実施 できない範囲については貫通欠陥を想定して次回点検時 期を設定する手法を適用していたが,説明性が高いもの の過度に保守的であることから,確率統計的検討により 工学的に合理性のある手法を立案し、海外規格との比較 検討の上、それぞれのガイドラインに反映し改訂版を発 行した。本稿では,その概要について報告する。
炉心スプレイ配管 (RPV内壁近傍)炉心スプレイスパージャ (炉心シュラウド内壁近傍)RPV炉心シュラウドジェットポンプ (RPV~炉心シュラウド間隙)図1 炉心スプレイ配管等の炉内設置状況2. 炉内配管の点検周期設定の考え方ガイドラインにおいて, 炉心スプレイ配管・スパージャ 及びジェットポンプ(これらを総称して以降「炉内配管」 と称す。)の点検周期設定に当たって想定している SCC の発生,進展シナリオ及び評価条件を以下に示す。(1) 想定初期欠陥 初期欠陥として溶接部内面に周方向き裂(深さ 50 um, 長さ 500 μmの半楕円) 1個を想定する。363(2) 応力分布 溶接残留応力及び差託による応力を考慮する。当該溶 接部では溶接残留応力が支配的で,溶接残留応力は内 表面側が高いことから, (1) に示すとおり初期欠陥は 内面に想定する。 (3) き裂進展速度式 板厚方向のき裂進展速度は, SCC き裂進展試験データか ら設定されたき裂進展速度式 (応力拡大係数 vs 進展速 度)を適用する。板厚貫通き裂の周方向への進展は、 貫通時の内面側き裂長さを保守的に貫通き裂長さと仮 定し、前記き裂進展速度式の上限値を適用する。このシナリオに基づいて周溶接線の健全部の長さが減 少し,炉内配管の機能維持,構造健全性確保に必要な限 界長さに達する時期に裕度を考慮して初回点検時期を定 めている。炉内配管の点検は、吊り下げ式水中 TV カメラを用い て炉内配管の周溶接部の外面目視点検を実施するが, RPV 内壁や炉心シュラウド壁面とカメラが干渉すること から周溶接線の壁面側の一部(周溶接線全周のうち 10~ 25%程度)は目視点検ができない状況となっている。 . 従来のガイドラインでは,初回点検で目視点検実施範 囲に欠陥が確認されない場合,以下の欠陥想定のもとに 次回点検時期を決定していた。図2に模式図を示す。1 目視点検実施範囲には、内面に発生した SCC き裂が板厚を貫通する直前にまで進展している(外面 からの点検では確認できない最大の欠陥を想定す る)ものとし、初回点検後,前記(3) に示すとおり貫通き裂は周方向に進展する。 2 目視点検が実施できなかった範囲は全て貫通欠陥とみなし荷重負担ができないものとする。貫通夕照進展進展点検範囲貫通寸前の欠陥図2 欠陥が発見されない場合の想定欠陥と進眼(従来)3. 未点検範囲の欠陥想定法の見直し- 前項の1,2に示す欠陥想定は説明性が非常に高いも のの、過度に保守的であることから、既に炉心シュラウ ドのガイドライン2で適用され,その妥当性が国内実機 炉心シュラウド SCC 事例データで検証されている, 未点 検範囲の欠陥想定法)を適用して、合理的な見直しを行 うことを検討した。 3.1 炉心シュラウドの欠陥想定法 - 当該欠陥想定法は、周溶接全長を短い弧が集まった母 集団と仮定し,点検実施範囲で確認された欠陥比率から, 確率統計的推定により未点検範囲を含めた全周の欠陥比 率の信頼上限を評価した結果から定められたものである。図3に炉心シュラウドのガイドラインでの規定を示す。 点検割合が 50%を超えていれば、点検範囲で確認された 欠陥比率をそのまま全周の欠陥比率として適用するもの としている。12) 点検割合が0から50%: ・点検割合が0のとき、周溶接全体の想定欠陥割合(p)は100%とする。 ・点検都合が50%のとき、周溶接全体の想定欠絡都合(p)は、1)で定める通り Yとする。 ・両者を直線で結び、点検割合(X)での 周溶接全体の想定欠陥割合(p)とする。周溶接全体の慈定欠陥割合(p)[1)点検割合が50%以上!点検実施範囲での点検欠陥比率Yを、 周溶接全体の悲定欠絡割合(p)とする。100円50% 点検割合(X)1[2) 点検割合が多から50%: ・点検割合が0のとき、周溶接全体の 「想定欠陥割合(p)は100%とする。 ・点検割合が50%のとき、周溶接全体の 想定欠陥割合(p)は、1)で定める通り Yとする。 ・両者を直線で結び、点検割合(X)での 周溶接全体の想定欠陥割合(p)とする。点検欠陥比率(Y)[1)点検割合が50%以上!点検実施範囲での点検欠陥比率を、 周溶接全体の想定欠陥割合(p)とする。0100350% 点検割合(X)図3 未点検範囲の欠陥想定(炉心シュラウドガイドライン)3.2 炉内配管への適用検討 - 炉心シュラウドと同じ手法を炉内配管に適用した場合 について試算し,確率統計的推定による全周の欠陥比率 の信頼上限を点検範囲での欠陥比率とを比較検討した結 果,以下が明らかになった。炉内配管の試算の一例を図4 に示す。点検範囲における欠陥比率が高い,あるいは点検 割合(X)が小さい場合には、全周の想定欠陥割 合 (p)の 95%信頼上限は点検範囲での欠陥比率 に比べ有意に高くなる。 しかし、点検割合(X) が 0.5 に至ると,点検範364 -囲での欠陥比率が 0.01 程度に小さい場合には、点 検範囲での欠陥比率と同等とみなせる。点検範囲の欠陥比率0.01- 未点検範囲は全て欠陥推定点検範囲 -10-75~0.9程度) ----欠陥想定割合(p95%信頼上限10.20.60.80.4点検割合(X)点検範囲の欠陥比率図4 炉内配管の試算結果の例(点検範囲欠陥比率 0.01 の場合)以上の検討結果から,炉内配管(炉心スプレイ配管/ スパージャ及びジェットポンプ)の周溶接線の点検で, アクセス可能な全域の点検を実施し,点検実施範囲で欠 陥が発見されなかった場合には、未点検範囲には欠陥を 想定しないこととした。(図5参照)なお,米国における炉内配管の点検規定を調査した結 果、上記欠陥想定と同等な規定となっていることを併せ て確認した。貫通欠陥貫通一点検範囲点検範囲?通前欠陷[従来モデル][見直しモデル]図5 点検範囲で欠陥が確認されない場合の欠陥想定比較4.結言炉心スプレイ配管/スパージャ及びジェットポンプの 点検評価ガイドラインにおいて,初回点検実施後の次回 定検時期を設定するための欠陥想定法を、確率統計的推 定に基づく検討により合理的に見直した。謝辞本報告は、日本原子力技術協会の「炉内構造物等点検 評価ガイドライン検討会」で検討,審議した内容を紹介 したものです。ガイドラインの策定にあたり,ご協力い ただきましたガイドライン検討会委員,BWR 電力各社, メーカー各社、日本原子力技術協会、関係各位に深く感 謝いたします。参考文献 [1] 炉内構造物点検評価ガイドライン炉心スプレイスパージャ配管第2版及び「ジェットポンプ]第2版, 一般社団法人日本原子力技術協会 [2] 炉内構造物点検評価ガイドライン炉心シュラウド第4版,一般社団法人日本原子力技術協会 [3] 堂崎他「円筒形炉内構造物の欠陥評価における未点検範囲に対する欠陥想定手法の検討」,日本機械学会 M&M2007 材料力学カンファレンス365“ “BWR炉内構造物点検評価ガイドライン 炉内配管の点検困難部位の欠陥想定法“ “伊東 敬,Takashi ITO,堂崎 浩二,Kouji DOZAKI,黒田 光,Hikaru KURODA,磯 敦夫,Atsuo ISO,関 弘明,Hiroaki SEKI
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