熱疲労割れの直流電位差法による測定及び分析

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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
原子力プラントにて発生しうる割れの一つとして熱疲 労割れが挙げられる。熱疲労割れは高低温水合流部等の 温度ゆらぎの存在する部位における熱疲労により生ずる 割れであり、機械的疲労に起因する割れと比べ、き裂先 端が鋭く、また開口幅が狭い等の特徴を有するため[1]検 出及びサイジングが必ずしも容易では無いとされている。熱疲労割れに関しては、2000 年代前半に人為的に高精 度でその性状を制御しつつ各種金属材料に導入する技術 が確立され[2]、主として超音波探傷信号及びきず断面性 状の観点から、当該技術により製作された熱疲労割れに 対する各種検討が行われてきた[3][4]。しかしながらその 一方、超音波以外の非破壊検査の観点からの検討に関し ては、報告が乏しい。近年、超音波技術に立脚した非破 壊検査信号と超音波以外、特に電磁気的現象を用いた非 破壊検査技術により得られる信号の融合による信頼性向 上が積極的に議論されており[5]、よって電磁非破壊検査 の観点からの熱疲労割れに関する詳細検討を行うことは、 今後の原子力プラントの保全活動の議論に資するところ が大であると考えられる。以上の観点より、本研究においては、電磁非破壊検査 の一種である直流電位差法の観点からの、熱疲労割れの 連絡先:遊佐訓孝、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒 巻字青葉6-6-01-1、東北大学大学院工学研究科量子工 ネルギー工学専攻 E-mail: noritaka.yusa@qse.tohoku.ac.jp
Iikka VIRKKUNEN
Mika KEMPPAINEN評価及び分析を行った。2. 材料と方法2.1 熱疲労割れ試験体 1. 本研究において用いた試験体を Table 1 に示す。いずれ も厚さ25mm の SUS304L 平板に対して、人工的に熱疲労 割れを導入したものである。材料の引張強さは591 N/mm2、 硬さ(HRB)は79である。熱疲労割れは、電磁誘導コイル(周 波数 300kHz)による局所加熱と、加熱面に水を噴射するこ とによる冷却により、試験体に繰り返し熱ひずみを与え ることで導入されている。導入に際して予き裂は用いて おらず、同一材料を用いた予備試験結果に基づいて、最 大温度及び熱ひずみ付与回数は決定した。尚、Table 1 に はきずの表面開口長さと最大深さも併せて示しているが、 これらは破壊試験により明らかとなったものである。Table 1 Thermal fatigues considered in this study TP ID Flaw D * | Length* | Max. Depth*W286230BAB116114.44.1W316357BAB12159.73.5359BAB121620.16.5016BAB122722.16.5W318003BBB121911.74.1028BBB123916.53.11*unit: mm2.2 直流電位差法試験 -- 直流電位差法試験は、銅電極を試験体表及び裏面に取 り付け、直流安定化電源(株式会社ニッケテクノシステ ム社製 PSF-800L)を用いて約 80A の電流をきずに対し て垂直に流した際の、きずをまたいだ端子間の電位差を、 DC電圧測定用データロガー(Agilent Technologies社製 34972A)を用いて測定することで行った。端子には先端 00.19mm のコンタクトプローブ(株式会社ミスミ製 NP45S3SF-C)を用い、端子間隔は 5mm とした。 2.3 有限要素法解析 - 有限要素法解析には、汎用有限要素法解析ソフトウェ ア Consol Multiphysics 4.2a 及びその追加モジュールであ るAC/DC モジュールを用いた。解析体系図を Fig. 1 に示 す。計算に必要となる資源を考慮して平板の大きさは 80mm×80mm とした。電流は平板側面より一様に与え、 電流導入面と反対側の面において電位=D0V の境界条件を 課した。きずは平板中央に配置し、その幅は 0.2mm の一 定値、内部導電率は一様、輪郭形状は破壊試験結果に基 づき、制御点 0.8mm 間隔のベジェ曲線にて表現した。 平 板の導電率は 1.35MS/m、用いた要素は4面体要素であ る。bottomV=080 mmplatecrack125mncurrent80 mmcrackplate25mmcurrentystax80 mmFig. 1 Numerical configuration3. 結果と考察測定及び数値解析の結果得られたきずをまたぐ端子間 電位差を Table 2にまとめる。両者で電流値などが異なる ため、表にはきずから十分離れた箇所における測定値で 規格化した値を示している、また表中のoは母材導電率 に対する比で表したきず内部の導電率である。表より、 いずれのきずに対しても、きず内部の導電率を 0 とした ときに、数値解析結果は測定結果を最もよく再現してい ることが確認できる。Table 2 Results of the experiments and simulationsFlaw IDExp.Simulation00-0%00-0.1%00-0.2%230BAB1161 11.61.581.461.381.391.321.272.051.75357BAB1215 | 1.4 359BAB1216 | 2.0 | 016BAB1227 | 2.4 003BBB1219 | 1.6 028BBB1239 | 1.22.071.761.59 19 1.351.521.421.23 |1.21.184.結言SUS304L 平板に人工的に導入した熱疲労割れの直流電 位差法測定及び有限要素法解析による測定結果の分析を 実施した。有限要素法解析の結果は、きず内部を空気領 域とした時に測定結果を最もよく再現するものであり、 電磁非破壊検査において絶縁壁として振る舞うことを示 唆する結果が得られた。尚、本研究にて用いた熱疲労割れ試験体は保全学会ラ ウンドロビン試験[6]にて用いられたものであり、詳細仕 様及び完全な破壊試験結果は保全学会当該試験特設ペー ジにて公開を行なっている。参考文献 [1] J. Wale, ““Crack characterisation for in-service inspectionplanning ? an update”, SKI Report 2006:24, 2006. [2] M. Kemppainen, et al., ““Advanced flaw productionmethod for in-service inspection qualification mock-ups”,Nucl. Eng. Des., Vol. 224, 2003, pp. 105-117. [3] M. Kemppainen, et al., “Comparison of realistic artificialcracks and in-service cracks”, The e-Journal of Nondesti:Testing & Ultrasonics, Vol. 8, 2003, pp. 1-6. [4] M. Kemppainen, I. Virkkunen, “Importance of crackopening in UT inspection qualification”, Proc. 64 Int. Conf. on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear andPressurized Components, pp. 93-104. [5] D. Horn and W.R. Mayo, “NDE reliability gains fromcombining eddy-current and ultrasonic testing”, NDT&EInt., Vol. 33, 2000, pp. 351-362. [6] N. Yusa et al., “A project aiming at the enhancement ofNDT&E of stress corrosion cracking““. Int. J. Appl. Electromagn. Mech., Vol. 33, 2010, pp. 1587-1590.38“ “熱疲労割れの直流電位差法による測定及び分析“ “遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,王 晶,Jing WANG,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME,Iikka VIRKKUNEN,Mika KEMPPAINEN
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