高経年化技術評価の高度化 一原子炉圧力容器の健全性評価一

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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
原子炉圧力容器は炉心を取り囲む原子炉冷却材圧力バ ウンダリの最も重要な構成機器であり、通常運転時及び 設計基準事故における健全性確保は最重要であるととも に、設計基準を超えて発生する過酷事故においても、そ の健全性、すなわち耐圧機能を維持できるかどうかは、 その後の事故進展に及ぼす影響は大きい。従来、高経年 化対策の観点では、主として原子炉圧力容器の炉心領域 胴部に対する中性子照射脆化を対象に健全性が評価され てきた。福島第一原子力発電所の事故を受けた原子力安 全に関する国の報告書においては、構造信頼性の観点の みならず、システム概念の進歩を含む新しい知見に対応 する観点から、既存施設の高経年化対策のあり方につい て再評価するとされている。このような背景から、原子 炉圧力容器の健全性評価方法について、国内外の最新知 見に基づく従来方法の再確認を行うとともに、システム 安全の評価に資する確率論的評価も視野に入れた健全性 評価方法の高度化を図る必要がある。 現行の中性子照射脆化に対する原子炉圧力容器の運転管理や健全性評価を行う際の破壊力学的評価法は、学協 会規格として規定されており、その評価法に従って実施 された 30 年目あるいは40年目における高経年化技術評 価では、60年の供用を想定しても原子炉圧力容器の健全 性は確保されると評価されている。この評価は、中性子 照射脆化を考慮した非延性破壊の発生防止や延性き裂の 進展性・安定性に関する決定論的方法に拠っており、脆 化監視、各供用状態の荷重条件と仮想欠陥に基づく健全 性評価(脆化予測、破壊力学評価)からなっている。図1 には、供用状態 C, D に相当する加圧熱衝撃(PTS)事象に対 する評価の流れを示す。現在適用されている評価法には、 20 年以上前に規定された内容も含んでおり、技術的進歩 や現実の運転年数の増加を踏まえて、その技術的背景を 明確にし、十分に適切な内容であることを確認すること は重要である。また、前述のとおり、原子力発電所のシステム概念に 基づく安全性評価の観点から、合理的な評価指標値(炉 心損傷頻度など)を適切に設定し、長期供用に対する安 全水準の維持と保全最適化の両立を図っていくために、 この分野に近年欧米において導入が進みつつある確率論 的評価体系を導入することも重要な課題である。これら を実現するためには、福島第一原子力発電所事故からの 教訓も含めた最新知見に基づく知見の整理を行い、発電所システムとしての安全性に関する概念の進歩を踏まえ て、原子炉圧力容器の健全性評価方法を再構築する必要 がある。具体的には、設計基準事象に対する荷重条件の 見直しや、より現実的な仮想欠陥寸法の確認も含めた確 率論的破壊力学(PFM)解析技術の実用化に向けた技術 基盤の整備を進め、高経年化対策に関わる基準の高度化 を図ることにより、原子力安全に関わる理解促進活動に 資する必要がある。 1本研究は、このように原子炉の安全性の観点から、原 子炉圧力容器全体の経年劣化を考慮した健全性評価方法 について、国内外の最新知見等の調査を行い、確率論的 評価手法の導入も含めて高経年化技術評価の高度化に資 するためのものである。本報告では、この研究の 23 年度 成果と 24 年度計画の概要を述べる。
Material DataPTS Transient DataChemical Compositionof Material (cu, Ni) |Fracture Toughness (RT,or. Measured Kitc. Surveillance test data)Change inCoolant TemperatureChange inSystem PressureEmbrittlement Prediction (Fluence, Flux Temperature)Thermal Analysis {Temperature distributionin RPV wa)Operation Data Neutron Fluenceat EvaluationStress Analysis (Stress due to pressure and temperature changewith time)Attenuation in RPV WallPostulated Crack (Axial semi-elipticalsurface crack)Fracture MechanicasAnalysis (Change in K. with time)Fracture Toughness K Curve at Evaluation (Lower bourd curve)Fracture Toughness Ke at Crack TipTemperatureK value at Crack TipStructural IntegrityAssessment (Comparison of Kyand)Fig. 1 Flowchart of RPV integrity assessment for PTSevents [1]2. 健全性評価法の高度化に関する調査2.1 想定すべき荷重条件米国を中心に原子炉圧力容器の健全性評価に適用され る荷重条件として、PTS 事象を引き起こす事故シーケン スや熱水力解析に関する調査・分析を行い、国内の高経 年化技術評価において対象としている荷重条件と比較し、 健全性評価に及ぼす影響を確認した。 1. 米国の PTS 再評価プロジェクト[2]では、確率論的リス ク評価(PRA)手法を用いて、熱水力解析の対象とすべき事 故シーケンスを決定し、破壊頻度算出のためのシーケン ス発生頻度を導出している。PRA 評価においては、PTS が発生する可能性を有する事象をすべて考慮している。 一次系の弁開固着(SOV)や二次系の圧力、給水量に注 目して事象を展開しイベントツリーを作成し、事象の展開が類似しているシーケンスをグループ化して熱水力解 析の入力とする。国内の健全性評価に用いられる過渡事象は、主蒸気管 破断、小破断冷却材喪失、大破断冷却材喪失の3種類で ある。これらの過渡事象は、過去の国プロで選定された ものであり、脆性き裂進展の発生の観点に基づいて、過 渡事象時の応力拡大係数の履歴が厳しいものを選定する こととなる。なお、過渡事象の発生頻度は考慮されない。このような選定方法の相違点を考慮すると、米国での PTS 事象選定の考え方を参考に、現行の代表的な PTS 荷 重条件を適用することの技術的根拠、または想定されう る全ての荷重条件を考慮する必要性等について、より詳 細に整理することが必要であると考えられる。そこで、 実機条件における荷重評価のため、計算流体力学(CFD) 解析コードを対象とした実機形状のモデル化、実験条件 に対応した解析条件設定、CFD 解析結果を用いて構造解 析を行うためのデータ変換ツールの整備を行った。2.2 想定すべき欠陥形状・寸法米国のPTS 再評価プロジェクトにおいて適用された欠 随分布モデルについて調査を行った。この欠陥分布モデ ルは、原子炉用に製造されたものの実際には供用されな かった圧力容器を用いて実施された非破壊検査及び破壊 検査によるデータに加えて、溶接現象の物理モデル、専 門家判断等を踏まえて整備されたものである。補修部を 含む溶接部、クラッド、母材のそれぞれの領域に対応し た欠陥密度、欠陥深さ分布、欠陥長さ分布が整備された。 欠陥の位置としては、クラッド内のき裂を除いて内部欠 陥が想定されている。国内の PTS 事象に対する健全性評価では、欠陥検出性 と保守性を考慮し、欠陥深さ 10mm 及び欠陥長さ 60mm の表面半楕円欠陥が想定される。破壊力学解析により、 表面半楕円き裂を想定することで、内部欠陥に比べて保 守的な健全性評価となることを確認した。一方、き裂の 想定において、クラッドは取扱わない規定となっており、 その影響について定量的な検討を行う必要があろう。2.3 耐圧機能喪失評価法国内の健全性評価においては、脆性き裂の発生の観点 から評価が行われ、き裂が伝播を停止せず容器板厚を貫 通し、圧機能を喪失するまでの評価は行われていない。 そこで、耐圧機能喪失に関する評価法に関して、き裂伝 播停止靭性(K)評価に関する研究成果及び脆性き裂進展375,と伝播停止評価方法の調査を行った。 1 まず原子炉容器鋼の K データに関しては、過去に試 験・評価が系統的に行われている国内プロジェクト(火原 協KIR検討会[3]、日本溶接協会 HST 小委員会4-6]、発電 技検 PTS委員会[7]等)の既往研究成果、及び米国で ORNL を中心として取得された K』 データ[8,9]を収集した。そし て、今後のデータ評価に向けて精査が可能なように、KA データ(試験温度、Kh値)とともに、材質、試験片(試験片 種類、採取位置、採取方向)、試験方法、機械的性質(引張 特性、衝撃特性)等の情報についても整理を行なった。 1 原子炉容器鋼のき裂伝播停止評価法に関しては、独の CARISMA[10]、CARINA[11]プロジェクト等で得られた成 果を主体に、取得された KAデータや評価法に関する検討 結果を整理した。また、き裂伝播停止評価法の適用状況 について、PTS 事象に対する諸外国の評価法の比較結果 等をまとめたIAEA レポート[12]を主体として調査を行い、 考慮している場合の具体的な評価法等の概要をまとめた。 また、現行のき裂発生挙動に対する評価方法とき裂伝播 停止靭性を考慮した耐圧機能喪失評価法との相違を明確 化するための解析を実施し、き裂伝播停止靭性の考慮が 健全性評価に与える影響を確認した。2.4 その他の評価法 * 2.1~2.3 に述べた項目に加えて、原子炉圧力容器の健全 性評価に関わるその他の評価法について、調査の結果明 らかになった技術的な課題を以下にまとめる。 (a) 照射脆化予測法JEAC4201-2007[13]と同様に、国際的に脆化機構に立脚 した予測法が検討・開発されている。一方、供用年数の 増加に従って、高照射量領域の監視試験データが蓄積さ れることに伴い、適時に見直しを行うことが重要である。 (b)高温予荷重(WPS) 効果国内では JEAC4206 附属書 C 制定の際の国プロ[7]にお いて、すでに WPS 効果の実証試験が行われた。また、最 近では欧米において、大型 2 軸応力負荷の十字型試験片 を用いた実証試験14]等が行われている。いずれも、PTS 時における応力拡大係数の減少時において破壊は生じな いこと、また低温に冷却後の再負荷過程における破壊は それ以前の履歴の影響を受けて Ke よりも高い値で発生 すること等が証明されている。この WPS 効果は、日本機 械学会維持規格 2008 年版[15]では、すでに導入済である。 すなわち、フェライト鋼容器の欠陥評価におけるEB-3430 破壊評価法、許容状態 C およびDにおいて、WPS 効果を考慮してよいとの規定がある。したがって、JEAC4206に対しても WPS 効果を踏まえ た規定の導入が可能であると考えられる。実際には、WPS 効果を考慮しないことで保守性を確保している面もある と考えられ、マージンの面での検討も必要である。 (c) 破壊靭性試験方法欧米では、原子炉圧力容器鋼の破壊靭性評価に対して、 マスターカーブ法による参照温度の試験による決定法が 広く活用されている。国内においても、JEAC 4216[16]と して試験方法が規定されている。監視試験においてこの マスターカーブ法が適用されることにより、監視試験片 から直接的に破壊靭性の温度依存性を評価可能となるこ とから、今後健全性評価の一部として導入が期待されて いる。なお、現状の監視試験における制的破壊靭性値は、 平面ひずみ破壊靭性値 K.の寸法制限を満足しない可能 性が高いこと、及び試験結果の評価に用いる試験片の数 に関する定義がなされていないことは重要な点である。 この点でも、寸法効果の評価や試験片の本数要件が規定 され、確率論的取り扱いも可能な破壊靭性の温度依存性 を得ることが可能なマスターカーブ法は有効であり、健 全性評価に活用する方策を確立することが重要である。3. 確率論的破壊力学解析技術の調査* 国内プラントの高経年化技術評価を高度化する観点か ら、原子炉圧力容器の健全性評価への確率論的手法の導 入に資する知見を得ることを目的とし、確率論的評価手 法の適用性、及び標準化に関する調査を実施した。3.1 確率論的評価手法の適用性に関する調査国内における高経年化技術評価等に際しての構造機器 の健全性評価方法では、破壊力学に基づく決定論的手法 が用いられている。一方欧米では、原子炉圧力容器の健 全性評価に関する規制基準に対して、確率論的手法の導 入が進められている。確率論的手法としては、確率論的 破壊力学(PFM) 解析技術が適用され、これまでに PEM 解析ツールの開発が行われており、このツールを活用し た規格基準の検討が進められている。国内においても、 JAEAにおいて開発が進められてきたPASCAL コード[17] があり、国内外のベンチマーク解析等に使用されている。 今後原子炉圧力容器の健全性評価に対してPFM解析技術 の適用が進み、機器の破損確率を基にしたリスク評価に 活用されることを念頭に、PFM 解析の規格基準化を図る376ためには、PFM 解析技術の規制への導入に関する技術的 課題を明確にすることが必要である。そこで、これまで 国内外で開発されてきた原子炉圧力容器の健全性評価の ためのPFM 解析コードの調査を行った。中でも、米国に おいてPFM解析が規格基準に適用された際に使用された FAVOR コード[8]に着目し、PASCAL コードとの比較を行 い、解析手法やモデル等の特徴を整理した。また、これ らのコードを用いて実施されてきたベンチマーク解析、 及び米国においてPFM解析が規格基準に適用された事例 について調査を行った。以下に概要を記す。(a) 国内外の PFM 解析コード原子炉圧力容器を対象とした国内外のPFM解析コード について、米国 PTS 再評価プロジェクトに使用された FAVOR、及び国内の代表的コードである PASCAL3 を中 心に、主要な機能等を調査した。 - FAVOR は、原子炉圧力容器の TWCF(炉年あたりのき 裂貫通頻度)を算出可能である。ただし FAVOR は、破壊 靭性値等に関して国内のデータが反映されていない。一 方、PASCAL3 は、TWCF に相当する量を算出可能であり、 国内のデータも反映された評価式を適用できる。 * 調査結果を踏まえると、国内で利用するための最適な PFM 解析コードは PASCAL3 であると判断される。ただ し、PASCAL3 の解析機能には、FAVOR とは異なる点も あり、改良を行うべきか検討を行う必要がある。 (b) PFM 解析に関わるベンチマーク解析これまでに実施されてきた、PTS 事象時の PFM解析に 関わるベンチマーク解析を対象に、参加機関、使用コー ド、解析条件について調査を行った。1990 年代初頭から、種々のベンチマーク解析が実施さ れており、参加機関が様々な国や地域に広がるとともに、 次第に実機に近い解析条件が設定される傾向にある[例え ば 181。解析結果の比較においては定性的な判断が多く、 定量的な判断はほとんどなされていない。また、コード 間の機能の詳細な比較、及び PFM 解析の標準化まで踏み 込んだ活動は見られない。 (c) 米国等における規格基準への PFM 解析の適用米国におけるPFM解析手法の規制への適用について調 査を行った。従来の PTS 規則 (10CFR50.61) [19]の改正 を目的に、PTS 再評価プロジェクトが実施され、改正 PTS 規則(10CFR50.61a) [20]が発行された。このプロジェク トにおいては、PFM 解析コード FAVOR を用いて TWCF を算出し、この指標を基にした PTS スクリーニング基準が作成されている。国内においても、PFM 解析手法の規 格等への適用性については、米国の取り組みを参考に検 討を進めることが必要である。 (d) PFM 解析コードの選定及び入力データ整備国内の健全性評価に対して確率論的手法の適用が進む ことを念頭に置いた場合、破壊力学に関わる最新知見の 反映、国内プラント相当のデータを踏まえた解析モデル、 国内の規格基準に準拠した評価手法の機能を有する PASCAL3 コードが本研究で活用する PFM 解析コードと して最も適切であると判断した。国内外の規格の調査結果に基づき、PFM 解析を実施す るための入力データの整備に着手した。原則として、国 内の規格(JEAC4206-2007) に準拠した条件とし、さらに 最新のデータ及び破壊力学に関する知見を反映した。3.2 確率論的評価手法の標準化に関する調査 1本項目では、3.1 で選定した PASCAL3 コードを用いて、 現行の国内における健全性評価に関わる因子に着目した 影響解析を行った。JEAC4206-2007 において考慮されて いない WPS 効果や、弁の開固着事象等の影響を確認する とともに、決定論的に規定されているき裂寸法、関連温 度のマージン等が有する裕度について評価を行った。ま た、解析コードを対象とした解析の検証及び妥当性確認 (V&V)や、解析過程及び解析要件に主眼を置いた標準 策定等に関する学協会の活動、及び PFM 解析コード FAVOR のV&V レポート[21]について調査を行った。(a) PASCAL3 コードを用いた影響解析PASCAL3 を用いて、現行の国内における健全性評価に 関わる種々の因子に着目した影響解析を行った。JEAC4206-2007 では WPS 効果を考慮していないが、こ の効果が健全性に与える影響を検討した。決定論的手法 に基づく温度裕度(AT)の値については、WPS 効果を考慮 することで40~50°C程度増加した。確率論の観点では、 WPS 効果を考慮することにより条件付き裂進展確率は、 母材部で 1/20~1/200 程度、溶接部で 1/2000~1/30000 程 度まで減少することが示された。 * JEAC4206-2007 で想定していない弁の開固着(SOV) の影響を確認するため、米国プラントの SOV の過渡事象 を用いた解析を行った。その結果、条件付き裂進展確率 は、国内で想定する小破断 LOCA 等の過渡事象の場合と 同程度であった。国内における事象の発生頻度によって は、SOV の想定の必要性について検討する必要がある。377JEAC4206-2007 で決定論的に規定されているき裂寸法、 関連温度のマージン等が有する裕度について、条件付き 裂進展確率の観点から定量的に評価した。JEAC4206-2007 に基づいた初期き裂寸法深さは 10 mm であるが、き裂深 さが 2 mm の場合、10 mm の場合と比較して、条件付き 裂進展確率は 1/10以下に低下した。また、JEAC4206-2007 で規定される関連温度のマージンを設定した場合、算出 される条件付き裂進展確率は、中性子照射量や化学成分 のばらつきを考慮した場合よりも 2~6倍程度高くなり、 マージンを設定することで中性子照射量や化学成分のば らつきを考慮した評価が有する保守性を、定量的に評価 できることが分かった。なお、米国のように耐圧機能喪 失頻度を用いて原子炉圧力容器の健全性評価を行う場合 には、想定する荷重条件及びその頻度、き裂寸法分布等 の条件によって、これらの因子の影響は本解析結果とは 変わりうるので、注意が必要である。 (b)標準化に向けた取り組み解析コードを対象とした解析の検証及び妥当性確認 (V&V)や、解析過程及び解析要件に主眼を置いた標準 策定等に関する学協会の活動について調査を行った。構造解析、流体解析においては、V&V の活動が近年活 発である。V&V は、数理モデルを離散化して数式を実装 する部分の検証である code verification、数式によって値 を算出する部分の検証である calculation verification、実験 結果との定量的比較を行う validation に大別される。米国の PTS 再評価プロジェクトにおいて使用された PFM 解析コード FAVOR のV&V レポートについて調査 を行った。FAVOR のV&V は、多数の機関の協力により 実施されたものである。個別機能の検証は、別途市販プ ログラムとの比較により、両者の差が所定の基準値以内 に収まれば、妥当であるという判断がされている。確率論的評価に関する標準化に関しては、日本原子力 学会標準委員会が確率論的安全評価の分野における標準 策定の活動を行っている。PFM 解析の標準化に必要とな る事項は、一般的な構造解析・流体解析、及び確率論的 安全評価とは必ずしも一致しない。国内の PFM 解析手法 の標準化に向けて、前述の FAVOR V&V を参考に、専門 家集団による指針の策定に向けた活動が必要である。4.今後の課題及び計画今後の課題として、国内の健全性評価に用いられてい る想定欠陥寸法が有する保守性の定量的な評価、クラッドの影響評価、非破壊検査による欠陥検出性を踏まえた 欠陥寸法の検討等が挙げられる。また、実容器のデータ に基づく米国の欠陥分布モデルについて、国内プラント への適用性や、国内相当の欠陥分布モデル開発について も検討が必要であると考えられる。図2は、PTS 時の健 全性評価の流れに、主な研究課題を追記したものである。 1また PFM 解析技術に関しては、想定する荷重条件、き 裂寸法分布等の入力データに関して、詳細な整備及び設 定根拠の確保を図ることで、これら以外の因子を含めた 影響について、定量的な評価の精度向上を図ることが必 要である。その結果、確率論的手法を用いた評価結果が、 現行規格の妥当性確認やその改訂に関わる技術的根拠に 資することができると考えられる。健全性評価法の高度化に関する今後の計画としては、 これまでに述べた調査研究を吟味して拡張し、荷重条件、 破壊力学評価等に関する最新知見の反映検討や解析実施 等を通して、現行の規制基準に対する技術的根拠の再確 認を進めるとともに、必要に応じてデータ取得のための 試験計画を立案することとしている。また、規格基準への確率論的手法の適用を進めるため、 PFM解析コードを用いた健全性評価手法の標準化に向け て、関連する広範囲の専門家から意見等を反映するとと もに、標準的入力データの整備を行う計画である。さら に、耐圧機能喪失等に対する健全性評価の詳細手順の検 討、及び沸騰水型原子炉等への適用性拡張に関する検討 を行い、PFM 解析に関する標準指針案の策定に着手する こととしている。PTS Transient DataPretoonfirmateamsMaterial Data Master Curve Chemical composition ofFracture Toughness Material Cu, Nu(RT.J.Measured K... Survedance test data)Change inCoolant TemperatureChange in SystemPressureMechanismThermal Analysis (Temperature distributionin FPV wall)Detailed AnalysesEmbritttement Prediction (Fluence, Flux, TemperatureStress Analysis Estress due to pressure and -temperature change withOperation Data Neutron Fluenceat EvaluationNDE.ModelingPostulated Crack (Axial semi-ellipticalsurface crack)Attenuation in RPV WalltimerFracture MechanicasAnalysis (Change in with time)Master CurveFracture Toughness KicCurve at Evaluation . (Lower bound cornet )]Fracture Toughness Kat Crack Tip TemperatureK value at Crack TipCurrent Approach: DeterministicProbabilisticStructural IntegrityAssessment (Comparison of K. and X!)Fig. 2 Research items on the RPV integrity assessment forPTS events謝辞 本研究は、経済産業省原子力安全・保安院からの受託378 -事業「高経年化技術評価高度化事業(2011-)」にて進めて きた成果である。関係各位の協力に謝意を表する。参考文献 [1] 電気技術規程原子力編, 原子炉発電所用機器に対する破壊靭性の確認試験方法, JEAC-4206-2007, 日本電気協会、2007. [2] Erickson Kirk, M.T., et al., “Technical Basis for Revisionof the Pressurized Thermal Shock (PTS) Screening Limits in the PTS Rule(10 CFR 50.61): Summary Report,““NUREG-1806, U.S. NRC, 2006.. [3] 火力原子力発電技術協会,” 構造基準委員会 KIR検討会活動報告書(最終年度)[第一種容器の破壊靭性規定策定]““平成8年3月. [4] 日本溶接協会 原子力研究委員会 THST 小委員会,“原子力圧力容器用超厚材の安全性に関する試験研究““,昭和 53 年 10月. [5] 日本溶接協会 原子力研究委員会 8HST 小委員会,“原子力圧力容器用超厚鋼材の安全性に関する試験研究““,昭和54年11月, [0] 日本溶接協会 原子力研究委員会 9HST 小委員会,“原子力圧力容器用超厚鋼材の安全性に関する試験 * 研究(II)成果報告書““,昭和 56年1月. [7] 発電設備技術検査協会,溶接部等熱影響部信頼性実証試験に関する調査報告却原子力圧力容器加圧熱衝撃試験][総まとめ版],平成4年3月. [8] P. T. Williams et.al., “Fracture Analysis of Vessels-OakRidge FAVOR v04.1, Computer Code : Theory and Implementation of Algorithms, Methods, andCorrelations” NUREG/CR-6854 (2007). [9] R. K. Nanstad, et. al., ““Irradiation Effects on FractureToughness of Two High-Copper Submerged-Arc Welds,HSSI Series 5,““ NUREG/CR-5913. [10] H. 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[17] 眞崎浩一, 西川弘之, 小坂部和也, 鬼沢邦雄 “原子炉圧力容器用確率論的破壊力学解析コード PASCAL3 の使用手引き及び解析手法,”JAEA-Data/Code 2010-033 (2011). [18] Y. Kanto, et al., ““Summary of International PFM Round。jan Countries on reacmcactor pressurevessel integrity during pressurized thermal shock,““ International Journal of Pressure Vessels and Piping, 90-91(2012) pp46-55. [19] U.S. NRC Regulations: Title 10, Code of FederalRegulations, Part 50, Section 50.61, “Fracture Toughness Requirements for Protection against Pressurized ThermalShock Events,” 1984. [20] U.S. NRC Regulations: Title 10, Code of FederalRegulations, Part 50, Section 50.61a, “Alternate Fracture Toughness Requirements for Protection againstPressurized Thermal Shock Events,” 2010. [21] S. N. M. Malik, “FAVOR Code Versions 2.4 and 3.1Verification and Validation Summary Report,““ NUREG-1795 (2007).379)“ “高経年化技術評価の高度化 一原子炉圧力容器の健全性評価一“ “鬼沢 邦雄,Kunio ONIZAWA,真﨑 浩一,Koichi MASAKI,小坂部 和也,Kazuya OSAKABE,西川 弘之,Hiroyuki NISHIKAWA,勝山 仁哉,Jinya KATSUYAMA,西山 裕孝,Yutaka NISHIYAMA
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