関西電力の原子力発電所における安全性、信頼性向上の取り組み
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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
当社は、東京電力福島第一原子力発電所における事 故のような極めて深刻な事故を二度と起こしてはなら ないとの固い決意のもと、安全確保のために多重性、 多様性を拡充し、電源と冷却機能の確保、浸水防止な どの安全対策を速やかにかつ徹底的に実施している。ここでは、当社の原子力発電所でとった安全性、信 頼性向上の取り組みの概要を報告する。
2. 安全対策の概要 ・当社の原子力発電所は加圧水型軽水炉(PWR)であ り、福島第一原子力発電所で採用されている沸騰水型 軽水炉(BWR)とは炉型が異なることから、原子炉の 冷却方法等でPWR として適切な対策を採っている。
2.1 緊急安全対策地震、津波による全電源喪失という事象進展を防止 するため、事故を受けた緊急安全対策として、1所内 電源設備対策、2冷却・注水設備対策、3格納容器破 損対策、O管理・計装設備対策について実施した。2.2 自主的な取り組み緊急安全対策に引き続き、多重性、多様性を充実し、 安全対策の実効性を向上させる取り組みを行ってきた。ストレステストは、安全性・信頼性向上の取り組ん でいるところで、地震・津波が来襲しても炉心及び使 用済燃料ピットの冷却が継続できる限界等を明らかに連絡先: 鎌田徹, 〒919-1141 福井県三方郡美浜町郷市 13号横田8番,関西電力株式会社 原子力事業本部, E-mail: kamada.toru@a3.kepco.co.jpしたものであり、大飯発電所3,4号機においては、 国により、福島第一原子力発電所のような燃料損傷に は至らないことが確認されている。2.3 更なる安全性、信頼性向上のための対策自主的な取り組みを継続して実施してきているが、 ストレステストの審査において原子力安全・保安院か ら一層の取り組みを求められた事項や、福島第一事故 の技術的知見に関する30の安全対策について、大飯3, 4号機において実施してきたことや今後の対応を取り まとめ、原子力安全・保安院に報告するとともに、実 施計画を立て対策を進めているところである。3. 実施状況 3.1 外部電源対策地震等による長時間の外部電源喪失の防止のため、 外部電源対策を実施している。緊急安全対策で外部電源系の信頼性評価を行った後、 鉄塔基礎の安定性や開閉所設備而耐震性評価を実施し、 今後、必要な追加評価や対策を実施することとしている。また、大飯3,4号機においては、77kV の大飯支線 を接続し外部電源を多様化する工事を計画している。3.2 所内電気設備対策共通要因による所内電源の機能喪失の防止、非常用 電源の強化のため、所内電気設備対策を実施している。緊急安全対策で電源車を配備した後、電動補助給水 ポンプを使用できる容量を確保するための電源車の追 加配備や、冷温停止まで移行できる容量を確保できる393大容量の空冷式非常用発電装置を配備している。更に 全交流電源喪失時に、発電所の保安を確保し原子炉を 安全に停止するために必要な容量のある恒設非常用発 電機の設置や非常用直流電源の強化を計画している。また、所内電気設備を始めとする重要機器の浸水対 策を実施している。 * 緊急安全対策でシール施工を施した扉の水密扉への 取替えや予備変圧器防油堤のかさ上げの浸水防止対策 の強化を順次進めている。3.3 冷却・注水設備対策冷却・注水機能喪失の防止のため、冷却・注水設備 対策を実施している。炉心冷却や燃料ピット冷却のために緊急安全対策で 配備した消防ポンプによる冷却・注水対策を強化する ため、冷温停止への移行ができる容量まで消防ポンプ を追加配備し、非常用ディーゼル発電機の冷却海水を 給水するための可般式エンジン駆動ポンプの配備、海 水ポンプを代替するための大容量ポンプの配備、浸水 後の取替えのための海水ポンプモータの予備品の配備 補助給水ポンプの代替のための中圧ポンプの配備を順 次行い、冷却・注水機能の多重化・多様化を進めている。3.4 格納容器破損・水素爆発対策原子炉格納容器の早期破損や放射性物質の非管理放 出の防止のため、格納容器破損・水素爆発対策を実施 している。PWR は格納容器の容積が大きく、電源によらない格 納容器スプレイにより格納容器内で発生した蒸気を凝 縮し内圧を抑制するアクシデントマネジメントを整備 済みであったが、さらに空冷式非常用発電装置と大容 量ポンプによって原子炉補機冷却機能を回復させ、恒 設機器による冷却を継続する手段を確保した。PWR に おいては大きな格納容器と、アクシデントマネジメン トにより格納容器が破損に至るような圧力上昇は防止 できるものの、格納容器の内圧が異常に上昇するよう な状態になった万一の場合を想定し、フィルター付ベ ント設備の設置を計画している。また、PWR は格納容器の容積が大きく、水素爆発の 可能性は極めて小さいことを確認しているが、水素が アニュラスへ漏れることを想定しアニュラス排気設備 の運転手順を整備した。更に、格納容器内への制的触媒式水素再結合装置の設置を計画している。3.5 管理・計装設備対策状態把握・プラント管理機能の抜本的強化のため、 管理・計装設備対策を実施している。ソフト面の対応の強化として、緊急安全対策にて発 電所常駐要員の強化を実施したが、複数プラントの同 時作業や外部支援が期待できないことを想定し更に増 強している。またプラントメーカ他の支援体制の整備 や夜間等の厳しい状況を想定した訓練も実施している。指揮所機能として耐震性が確保される中央制御室横 に指揮所機能を確保し、所内の通話装置や衛星携帯電 話を配備し通信機能も強化している。指揮所機能や通 信機能については、免震事務棟の設置等更に強化して いくこととしている。また、使用済燃料ピットのカメラの設置を行い、現 場監視機能の充実も図っている。4. 今後の予定30 の安全対策として取り組んでいる対策を継続して 実施するとともに、今後打ち出される新規制に迅速か つ確実に対応することはもとより、安全性向上のため に必要な措置を自主的に策定し実施していくこととし ている。5. おわりに安全性、信頼性向上の取り組みは継続して実施して おり、ここで紹介した取り組みについては、当社ホー ムページ(http://www.kepco.co.jp/)にて随時公表してい る。394“ “関西電力の原子力発電所における安全性、信頼性向上の取り組み“ “鎌田 徹,Toru KAMADA
当社は、東京電力福島第一原子力発電所における事 故のような極めて深刻な事故を二度と起こしてはなら ないとの固い決意のもと、安全確保のために多重性、 多様性を拡充し、電源と冷却機能の確保、浸水防止な どの安全対策を速やかにかつ徹底的に実施している。ここでは、当社の原子力発電所でとった安全性、信 頼性向上の取り組みの概要を報告する。
2. 安全対策の概要 ・当社の原子力発電所は加圧水型軽水炉(PWR)であ り、福島第一原子力発電所で採用されている沸騰水型 軽水炉(BWR)とは炉型が異なることから、原子炉の 冷却方法等でPWR として適切な対策を採っている。
2.1 緊急安全対策地震、津波による全電源喪失という事象進展を防止 するため、事故を受けた緊急安全対策として、1所内 電源設備対策、2冷却・注水設備対策、3格納容器破 損対策、O管理・計装設備対策について実施した。2.2 自主的な取り組み緊急安全対策に引き続き、多重性、多様性を充実し、 安全対策の実効性を向上させる取り組みを行ってきた。ストレステストは、安全性・信頼性向上の取り組ん でいるところで、地震・津波が来襲しても炉心及び使 用済燃料ピットの冷却が継続できる限界等を明らかに連絡先: 鎌田徹, 〒919-1141 福井県三方郡美浜町郷市 13号横田8番,関西電力株式会社 原子力事業本部, E-mail: kamada.toru@a3.kepco.co.jpしたものであり、大飯発電所3,4号機においては、 国により、福島第一原子力発電所のような燃料損傷に は至らないことが確認されている。2.3 更なる安全性、信頼性向上のための対策自主的な取り組みを継続して実施してきているが、 ストレステストの審査において原子力安全・保安院か ら一層の取り組みを求められた事項や、福島第一事故 の技術的知見に関する30の安全対策について、大飯3, 4号機において実施してきたことや今後の対応を取り まとめ、原子力安全・保安院に報告するとともに、実 施計画を立て対策を進めているところである。3. 実施状況 3.1 外部電源対策地震等による長時間の外部電源喪失の防止のため、 外部電源対策を実施している。緊急安全対策で外部電源系の信頼性評価を行った後、 鉄塔基礎の安定性や開閉所設備而耐震性評価を実施し、 今後、必要な追加評価や対策を実施することとしている。また、大飯3,4号機においては、77kV の大飯支線 を接続し外部電源を多様化する工事を計画している。3.2 所内電気設備対策共通要因による所内電源の機能喪失の防止、非常用 電源の強化のため、所内電気設備対策を実施している。緊急安全対策で電源車を配備した後、電動補助給水 ポンプを使用できる容量を確保するための電源車の追 加配備や、冷温停止まで移行できる容量を確保できる393大容量の空冷式非常用発電装置を配備している。更に 全交流電源喪失時に、発電所の保安を確保し原子炉を 安全に停止するために必要な容量のある恒設非常用発 電機の設置や非常用直流電源の強化を計画している。また、所内電気設備を始めとする重要機器の浸水対 策を実施している。 * 緊急安全対策でシール施工を施した扉の水密扉への 取替えや予備変圧器防油堤のかさ上げの浸水防止対策 の強化を順次進めている。3.3 冷却・注水設備対策冷却・注水機能喪失の防止のため、冷却・注水設備 対策を実施している。炉心冷却や燃料ピット冷却のために緊急安全対策で 配備した消防ポンプによる冷却・注水対策を強化する ため、冷温停止への移行ができる容量まで消防ポンプ を追加配備し、非常用ディーゼル発電機の冷却海水を 給水するための可般式エンジン駆動ポンプの配備、海 水ポンプを代替するための大容量ポンプの配備、浸水 後の取替えのための海水ポンプモータの予備品の配備 補助給水ポンプの代替のための中圧ポンプの配備を順 次行い、冷却・注水機能の多重化・多様化を進めている。3.4 格納容器破損・水素爆発対策原子炉格納容器の早期破損や放射性物質の非管理放 出の防止のため、格納容器破損・水素爆発対策を実施 している。PWR は格納容器の容積が大きく、電源によらない格 納容器スプレイにより格納容器内で発生した蒸気を凝 縮し内圧を抑制するアクシデントマネジメントを整備 済みであったが、さらに空冷式非常用発電装置と大容 量ポンプによって原子炉補機冷却機能を回復させ、恒 設機器による冷却を継続する手段を確保した。PWR に おいては大きな格納容器と、アクシデントマネジメン トにより格納容器が破損に至るような圧力上昇は防止 できるものの、格納容器の内圧が異常に上昇するよう な状態になった万一の場合を想定し、フィルター付ベ ント設備の設置を計画している。また、PWR は格納容器の容積が大きく、水素爆発の 可能性は極めて小さいことを確認しているが、水素が アニュラスへ漏れることを想定しアニュラス排気設備 の運転手順を整備した。更に、格納容器内への制的触媒式水素再結合装置の設置を計画している。3.5 管理・計装設備対策状態把握・プラント管理機能の抜本的強化のため、 管理・計装設備対策を実施している。ソフト面の対応の強化として、緊急安全対策にて発 電所常駐要員の強化を実施したが、複数プラントの同 時作業や外部支援が期待できないことを想定し更に増 強している。またプラントメーカ他の支援体制の整備 や夜間等の厳しい状況を想定した訓練も実施している。指揮所機能として耐震性が確保される中央制御室横 に指揮所機能を確保し、所内の通話装置や衛星携帯電 話を配備し通信機能も強化している。指揮所機能や通 信機能については、免震事務棟の設置等更に強化して いくこととしている。また、使用済燃料ピットのカメラの設置を行い、現 場監視機能の充実も図っている。4. 今後の予定30 の安全対策として取り組んでいる対策を継続して 実施するとともに、今後打ち出される新規制に迅速か つ確実に対応することはもとより、安全性向上のため に必要な措置を自主的に策定し実施していくこととし ている。5. おわりに安全性、信頼性向上の取り組みは継続して実施して おり、ここで紹介した取り組みについては、当社ホー ムページ(http://www.kepco.co.jp/)にて随時公表してい る。394“ “関西電力の原子力発電所における安全性、信頼性向上の取り組み“ “鎌田 徹,Toru KAMADA