福島第一原子力発電所1号機事故の熱流動現象の推定-非常用復水器が作動していた場合-

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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
著者らは、福島第一原子力発電所(以下原発という) の事故発生当初から、不完全ながらも、各種の熱流動解 析や事故の早期収束に向けた提言を行ってきた。原子 炉の早期収束のためには、現象の理解が重要である。本 報告の推定が正しかったかどうかは、約10~30 年後に原 子炉を解体する時に明らかとなるであろう。しかし、原 発事故の早期収束のために、あえて不正確さの誹りを承 知で原発事故を解析する。東京電力(TEPCO)は1号機メルトダウンのシナリオ を発表した。そこでは、全交流電源停止後 4 時間で燃 料棒が完全露出するなど、急激に崩壊が進行している。 同じ境界条件を使った同様な解析が原子力安全・保安員 によって実施され、さらに急激な炉心崩壊が推定された い。最近の報告では、1 号機燃料の大部分が圧力容器 (RPV)から格納容器(PCV)に漏れ出ているとの報告 がある日。 原子炉の初期崩壊熱は時間とともに急速に減少するの で、事故直後の初期現象で炉心崩壊の程度が左右される。 本報告では、公開されたデータを総合的に評価して 1号 機の現象を推定するが、TEPCO で報告されている炉心メ ルトダウンよりかなり遅い炉心崩壊を予測している。 本報の目的は、これまでの報告書等で、何が正しく誰が間違っているか論ずるものではない。本報の推定も多 くの未確定や未解明な事象、さらに事故後の測定結果と 矛盾する事項も含んでいる。それらについては今後の議 論を待ちたい。ただし、非常用凝縮器(IC)作動仮説を 導入することにより種々の計測結果を説明できることも 確かである。原発事故の早期収束と再発防止には、原発 事故と現状の的確な理解が必要である。そのためには、 あらゆる可能性を検討することが必要だと考えられる。
2. 崩壊熱の検証
1899/12/31著者らは、原発の崩壊熱のデータを公開してきた【文献 1) の (HTC Rep.1.5, 2011/05/27)、以下(HTC Rep. 1.5, 2011/05/27)と記す}。使用した崩壊熱予測式を以下に示す [J。-0.066 02 (t + 1) |_ (1) ここで、P[W] は崩壊熱、PR [W]は通常運転時の原子炉 熱出力、t [s]は原子炉停止からの経過時間、t [] は燃 料棒使用時間である。ちに関しては、定期検査等で核反応 を止めている時間は含まないため、簡単には見積もるこ とができない。標準的には、炉心の4分の1ずつを交換 して、4サイクルで外に出す。ここで、(1)定期点検時の 崩壊を無視し、(2)炉心の、計算には炉心内の燃料体41 ニットの1の平均期間を用いるという2つの仮定により、1901/02/09参考文献のより燃料棒使用時間を1, = 1.74[sear]と算出 した。また、式(1)を積分することにより任意の時間における 総発熱量を見積もることができる。つまり、総発熱量 20,-1, [J]は次式で表される。 2, in = IP()dt = 0.0825R [ 22 - * + (1 + .% -(1, + 1,97““ 式(1)の推定値は、核燃料棒発熱量の平均値であり、個々 の燃焼実績により、発熱量のばらつきが存在する。30Decay Heat, Eq(1) [MW] o Decay Heat (TEPCO) (MW) ---Total Energy (TJ)Total Energy (TEPCO)|TJI ー・ー・Water Evaporation [tony1000Decay Heat [MW]
02019/03/12.2019/03/132019/03/142019/03/15Fig. 1 Comparison of decay heat and integrated energy in RPV図1は崩壊熱の時系列変化とその積分値ならびに 積分エネルギーと同等の水の蒸発量を示している。図 中には東京電力(TEPCO)の公開データの崩壊熱 との比較を示す。両者は比較的よく一致する。文献 49 では海水注入までの積算発熱量(約930G) と注水や炉 心の水による吸収熱量(約460G) がバランスせずこれ が炉心崩壊のエネルギーとなったとしているが、約 470GJ の膨大なエネルギーは原子炉全体を溶かしてし まうエネルギーである。もし、推定2121 の水を保有す る2つの非常用復水器(IC)の蒸発潜熱は約480GJで、 IC が動いていたとするとエネルギーバランスは成立 する。しかし、後に計測された IC の残留水量の推定結 果とは大きく異なるので、これからの検証を待たな ければならない。3. 格納容器(PCV)の破壊シナリオ3.1 容器破断面積の推定 - 第2節で示したように、崩壊」の時系列変化は比較的 正確に見積もることができる。崩壊熱は蒸気として破損 容器から放出されるので、式(1)より蒸気の質量流量in [kg/s] を見積もることができる。容器内外の圧力差が 分かれば、ベルヌーイの式で破断面積が推定できる(HTCRep.1.5 2011/05/27)。破断開口面積 A[m2] は次式で表され る”。そのin = Car/2p,(po - pi)ここで、 p[Pa] は容器内圧力、p[Pa] は容器外の圧力、p[kg/m2] は流れの最小断面積における密度である。オリフィスの流量係数Cは入り口オリフィスの場合 0.60 と することができる。圧力差が大きくなると容器開口部が音速になる。その 時の流量は次式で表される。。 in = CAp*a*scens) asa) - dia.jai man(4) ここで、a[m/s]は音速、K は蒸気の比熱比で、近似的に 100°Cの飽和蒸気の値 1.34 を使用した。添え字0は容器内 の値、* は音速状態を示す。ただし、音速でもオリフィ スの流量係数は亜音速オリフィスと同じと仮定した。この手法で破断面積が記述できる場合は、破断面のレ イノルズ数が十分大きく、運動量支配の流体挙動を示し ていることになる。つまり、細かい亀裂が多数存在した り、シールの隙間から蒸気が漏たりしているようなダル シー則(流速の1乗に比例して圧力損失が増大する)に 従う漏れではないことを示している。つまり、破断面は ある程度の大きさであることが分かる。3.2 格納容器 (PCV) 破壊状況の推定1901/02/10Fれて-1900/01/03wownRadiation Dosage [uSvih]10.1D/W Pressure (MPa) AD/W Rupture Diameter (cm)/20 Radiation Dosage (uSv/h]10.01 3/133/14 3/140.50.022019/03/11 12:00:002019/03/12Fig. 2 Plant parameters, estimated rupture area of PCVand radiation dosage 図2は、東京電力発表のプラントパラメータ[9]によるド ライウエル(D/W)の圧力、式(3)及び(4)で推定した格納 容器破断面積の等価直径、並びに正門モニタリングポス トにおける放射線強度の時系列変化を示している。図2中 の番号は、表1に記載した1号機で起きた事象と本報で推 定した原子炉で起きた現象を示している。図2では、12 日4時に放射線量が急激に増大し以後し ばらく一定になっている。これは、図2に示すD/W 圧力 が 0.84 MPa から急激に減少した時刻と一致する。図2の 時系列では、12 日 14 時のベント直前まで破断面積の等価 直径は約8cm でほぼ一定である。このことから、亀裂は 細かい隙間の集合でないことがわかる。図2から1号機がベント(SIC Vent)するまで放射線量が 一定であることから、一定量の放射性ガスが放出されて いると推定される。第4節で記述するように、12日4時 の時点ではジルカロイ反応は起きておらず、放射性ガス も希ガス等のみと推定される、従って、図2に示す放射 線量の上昇は、炉心破壊が起きてから放出している 2、3 号機の場合と比べて格段に小さい(HTC Re. 19.2, 2011/10/13)。なお、11 日 21 時 30 分頃に1号機原子炉建屋 (R/B) 内の放射線が上昇したが、外部のセンサーには反応が現 れていない。このことは、その時のガスの漏れが少なく 屋内に限定されていることを示している。Table 1 List of events occurred in unit 1,* shows approximate timeNo.TimeFacts2019/03/111900/01/0114:46 | Earthquake、Succeed in Scrum 14:52 | IC Start、Stop、Manual Start、Stop etc。 15:37 | AC and DC Power Black Out*17:54 | TAF Om (TEPCO)1900/01/15*1900/01/0818:18 | IC M03-AO、M02-AO Valves Open 18:25 | IC MO-AO Valve Close 21:30 | IC MO-AO Valve Open21:51 | Radiation Dosage Increase in RB | 3/12 04:00 | PCV Rupture (Estimate)04:25 | IC Stop (Estimate) 05:42 | RPV Rupture (TEPCO) *06:30 | RPV Rupture (Estimate) 07:00 | TAF Om (Estimate)1-101900/04/201900/01/111900/01/121900/01/13*08:15 | PCV Rupture (TEPCO)1900/01/141900/04/2510:17 | S/C Vent Valve Open 14:00 S/C Vent Valve Open 15:36 Hydrogen Explosion in R/B1900/01/16EDW Pressure (MPa) A D/W Rupture Diameter [cm]/20RPV Bottom (CJ/1000 + DW1°C1000...............................(a)--xtretaineCaCOCOQUEofTomore0.0 LLLAR.13/113/153193/232019/03/273/31 4/2Fig. 3 Plant parameters and estimated rupture area of PCV図3は、4月 30 日までのプラントパラメータリと破断 面積の推定を示している。12 日 12 時と 12 日以後の破断 面積を比較すると分かるように、ベント時を除き 1号機 水素爆発の前後で破損面積の変化が認められない。また、 図2に示すように、爆発後の放射線強度の著しい増加も ないことから、爆発による PCV の破壊は起きていないこ とがわかる。ただし、3月19日~21 日にかけて、原因不明の注水量 の極端な減少により原子炉全体が高温になり、放出蒸気 が加熱蒸気となったために破損面積の推定が大きくなっ ている。これは、式(1)の飽和蒸気と過熱蒸気の密度差で 定性的な説明ができる。注水量が増加し温度が低下して 飽和蒸気になると以前の破断面積に戻っている。爆発前後で破壊面積が変化しなかったこと、および、 後に行った水棺作業において格納容器の水漏れが発覚し、 1 号機の漏水が格納容器下部にあることが明らかとなっ1901/02/11たことから、破損部は D/W と SC を繋ぐ円筒部との溶接 箇所またはベロー部が疑われる。4. 圧力容器(RPV)の破壊シナリオ4.1 炉心状態と水位計の信頼性原子炉炉心の水位計の構造を検討すると、通常運転 時には炉心から引き出された蒸気は基準水面器で凝縮し、 常に一定の水位を保っている。この基準水位から炉内の 水面までの差圧水頭が圧力計で計測される。従って、原 子炉上部が飽和蒸気で満たされている限り水位計は正し い値を与える。 しかし、炉心の燃料棒が水面から露出し、 RPV上部が過熱蒸気で満たされると基準水位が減少し、 水位計は正確な値を示さなくなる。著者は(HTC Rep. 14.2, 2011/5/11) で、各号機のPCVとD/W破壊の大きさを推定し、 (HTC Rep. 15.1, 2011/5/14)で水位計が壊れた場合の炉内 の状態を推定している。ただし、燃料棒が水面下にある 場合の水位計は正しい値を示していたと考えられる。そ の推定は、2号機、3号機で解析結果と実測値とが良くあ っていること(HTC Rep. 19.2, 2011/10/13)から説明でき る。TEPCOの推定 BMでは、1号機は11日早期の炉心破 壊を予想し、水位計の計測値は「全く間違っていた」と 言うシナリオになっている。4.2 非常用復水器(IC)は動いていたか - 非常用復水器(IC)の作動・不作動は、炉心破壊シナ リオに大きく影響する。東電の解析的では直流電源の 喪失からICの電動駆動弁(MO Valve)のフェルセーフ機能 が働き、ICは以後全く動かなかったとしている。 しかし、 初期の政府報告のではICによる蒸気発生とICへの給水が 報告されているが、それらも、後の報告書によって否 定されている。また、後の外部からのIC観察結果から、IC には十分な水が残っているとされているい。一方、ICの原子炉側の弁は交流モータ駆動であり、直 流電源が途絶する直後または以前に交流電源が喪失する とフェルセーフ機構は働かない可能性がある[10]。 原子力 安全基盤機構(JNES)では、ICが部分的に作動した場合 のRPV内の挙動解析を行っている!?)。rrrrrrr- Present Estimation (m) A Measurement (A)[m]Measurement (B) {m} -- TEPCO Estimation (m)☆ RPV Pressure [MPa]0.04Water Level [m]Pressure [MPa]SILKIESFuel Rod FailureTAいきい2019/03/11 12:00:002019/03/122019/03/12 12:00:002019/03/13Fig.4 Plant parameters and comparison of estimatedwater levels of RPV 図4は、(HTC Rep. 17.2, 2011/5/30)で推定した原子炉 水位の推定と実測値の比較を示す。図中には東電のシミ ニュレーション!も付記するが、後者はICの作動を無視し、早期に炉心破壊が起きたシナリオである。 * 本シミュレーションでは、11日18時25分にICを停止し た時、18時55分に逃がし安全弁(SRV)が作動し水位が 低下を始めたときに水位が燃料棒上端(TAF)からの距 離が+4m(TAF+4m) であるすると、21時30分のIC再起 動時の水位が説明できる。12日2時45分のRPV圧力データ 0.81MPaより、IC作動時のRPV内の温度は171°Cと推定さ れる。この温度も、ICが作動している場合、妥当である と考えられる。21時30分にICが作動して暫くしてから、AAとB系の水 位計で差異が生じている。ICの構造によると19、2つのIC で凝縮された水はB系の再循環ポンプ出口に接続されて いるため、RPV内の水温に差異が生じてB系の再循環ポン プと反対側で沸騰による発泡率が高くB系再循環ポンプ 側の水位が見かけ増加する可能性が考えられる。公開資 料では、A系、B系の水位計がどこについているか明らか ではないが、もしA系の水位計がB系再循環ポンプ側につ いていれば上記の推定が立証される。図4は、その後ICが冷却水枯渇のため停止し、RPVの圧 力が上昇し12日6時頃に再循環ポンプベアリングの破断 したシナリオ(HTC Rep. 17.2, 2011/5/30)を示している。 ただし、このシミュレーションではジルカロイ反応によ る発熱と注水による水位上昇は考慮していない。図中に は、TAFに達した後に水と接触している燃料のみで沸騰 する場合と、燃料が溶け落ちて全ての発熱で沸騰する場 合(Fuel Rod Failure)を示している。41項に示したように、 TAFまでは水位計は正しい値を示していると考えられる409,が、6時30分直後の水位低下傾向が推定値と良く一致して いる。TEPCOの報告3.9では、このとき水位計は全く壊 れていることになっているが、ICが動いているという仮 定による推定が水位計の測定値と良く一致していること から、ICの作動は否定できないと考えられる。12日6時30分の時点での崩壊熱の累積は、式(2)より水の 蒸発量に換算して255tである。初期にTAF+4mの水位があ ったとして、TAF+0.5mまでの水量63tと2つのICの水量 212tを合わせると何とかエネルギーバランスは取れるこ とになる。しかし、TEPCOの報告ではICはA系のみが作 動したこととなっており、ICの貯水タンク一基ではエネ ルギーバランスが取れない。後日の観測でICの水はタン クにほとんど残っていることになっているので、このこ とと図4 は矛盾する。ICのタンクの更なる検証が期待さ れる。初期の政府報告では、ICへの注水が記述されて いるが、後日の中間報告で注水は否定されている。も し、初期報告のようにICに注水がなされていると図4が矛 盾なく説明できる。今後の検証が待たれる。図2と図4を比較すると、12日8時以後は燃料棒が露出す るので、ジルカロイ反応が起きて水素が発生する可能性 がある。10時17分の空気作動弁(AO Valve) ベントで比 較的大量の放射性物質が放出されている。その後、14時 頃のベントを経て15時36分に水素爆発を起こしている。水素爆発自体による放射能の放出は小さいことが図2 から分かる。14時25分の水蒸気の煙突からの放出は確認 されているが、14時のベントによる放射線量は小さいの で、ベントガスの逆流による原子炉建屋内放出が疑われ る。14時のベントは炉心破壊後であり多量の水素を含ん でいる。放射線強度も原子炉建屋に水素が充満したとき の放射線量が高く、爆発の瞬間は少し増大するが、直ぐ 放射線量が下がったことから、爆発による放射能の放出 は限定的であったことが推定される。4.3 圧力容器 (RPV) 破壊シナリオ図5は、(HTC Rep. 19.1, 2011/6/20)で推定した圧力容 器破断面積と原子炉パラメータ回並びに注水量を示して いる。 1. 本解析では、12日6時頃に再循環ポンプのベアリング が破損し、RPV内のジェットポンプノズルから先ず水が 放出され、次いでシュラウドの隙間を通って蒸気が逆流 するという仮説を立てた。このようなシナリオだと、水 が存在する状態で減圧するので、6時30までに消防車で 2tの水を注入が出来たこと”、さらに、図4の水位低下が説明できる。ただし、他の報告書では水注入開始時間が 若干早いので、ポンプ破損はもう少し速いかも知れない。 本報では、図4の水位変化が時間的に正しいとして推測 している。また、このときRPV内の蒸気の噴出により、 DIWの圧力が上昇してPCV破損部の面積が増大した可 能性も考えられる。1899/12/31 1:12:00ORPV Pressure (MPa] O RPV Rupture Diameter (cm 1/10 ---Water Injection ( ton/day)/1000) Temperature (C 1/1000 ? RPV Bottom, ? RPV Bellows SeatRPV Feed-Water Nozzle, + D/WRPV Feed-Water NozzleRPV Bellows SealRPV BottomDW2019/03/112019/03/252019/04/082019/04/222019/04/30Fig.5 Plant parameters and estimated breakage area ofRPV ICが停止してから逃がし安全弁(SRV)から蒸気が放 出されて水位が低下するシナリオでは、水がなくなり RPVが破損するまで減圧しないので、6時頃に注水がで きたことが説明できない。このシナリオの詳細は(HTC Rep. 20.1, 2011/7/20)で述べている。注水を考慮すると12日12時頃には水位は燃料棒最下 一部(TAF-3.7 m)に達したと推定される。この頃には燃料棒はジルカロイ反応を起こし、水素が発生し1号機爆 発の原因となったと考えられる。4.1項で述べたように、 この頃の水位計のデータは信用できない。本解析では、このときRPV底部には水が存在するので、 この時点でRPV本体は損傷せず、燃料もRPV内に留まっ ていると考えられる。ただし、14日1時10分に海水注入 が停止し、同日20時30分まで約19時間注水が停止したこ とにより、RPVが完全空だきとなり、RPV底部が破損し た可能性がある。しかし、この頃には炉心の崩壊熱は TEPCOの予想しているRPV破損時刻の12日5時頃に比べ て2/3以下となっているので破損と燃料の流出の大きさ は大きくないと考えられる。図5の推定では、再循環ポンプとRPVの破断面積の等 価直径は約5cmである。詳細なデータの検証では、12日 6時頃に、直径5cmの穴がRPVに開き、13日18時~14日 20時頃に空だきとなったときに直径約4cmの穴が新た に出来ると圧力データが一応説明できる。ただし、この 推定は多くの不確定要素も含んでいる。410- 3月19-24日は注水が極端に減ったために放出蒸気が過 熱蒸気となりPCVと同様な理由で見かけ上の破断面積 が大きくなっている。以後破断面積に大きな変化はない。 もし、TEPCOの報告門のようにRPVに大きな穴が開いて いるのなら、RPVの蒸気発生量とRPV内外の圧力バラン スが成り立たず、図5のデータは説明できない。図5の3月24日以後の温度データを見ると、RPV内にあ る給水ノズルの温度がRPV底部やD/Wの温度より高く なっている。もし、大部分の燃料がD/Wに落ちているの なら、注水しているRPVの温度はD/Wより低くなるはず である。この温度データも大部分の燃料がRPV内に留ま っていることを示している。著者は、燃料流出とRPV破 損は3号機の方が大きいと推測している(HTC Rep. 19.2, 2011/10/13)。 1. 本報のシナリオにも幾つかの矛盾がある。ICが動いていると仮定しているので、12日2時30分頃にDAWが高圧 になることが説明しにくい。11日18時25分から21時30分 にICが停止したときに高温になっているなら、12日1時5 分のD/W圧力データが説明できない。3号機の推定(HTC Rep. 19.2, 2011/10/13)のように、地震直後に原子炉配管に 小さな亀裂が生じたことも考えられるが、この件は今後 の課題である。5. 結言非常用復水器(IC)がある程度作動したという仮定の 下に、福島原発1号機の熱流動現象を推定した。本シナリオでは、DAWが3月12日4時頃に破損しその破 断面積の等価直径は約8cmである。RPVは12日6時頃に 破損し、現在の破断面等価直径は約5cmである。燃料の 大部分はRPV内に留まっていると考えられる。これらの シナリオはTEPCOの報告とはかなり異なっている。本解析は、公開データを基にして電卓とエクセルで計 算可能な簡単なものなので、数値的な精度は高くない。 また、著者の知らないデータや事象も多くあると考えら れるので、本報のシナリオがどこまで正しいかは不明で ある。明らかに、本推定と発表データとが矛盾する事象 もある。しかし、本報のシナリオがこれまで発表されて きたデータをかなり説明できると考えている。この事故 シナリオがどの程度正しいかは、今後の検証を待ちたい。 本報の目的は、福島原発原子炉の状態を推定して原発の処理と事故の再発防止に資することである。一日も早 い福島原発の完全収束を祈念する。参考文献 「11 福島第一原子力発電所事故の熱解析と収束プランの提案、東北大学流体科学研究所、圓山、小宮、岡島 研究室、 http://www.ifs.tohoku.ac.jp/-maru/atom/index.l?tml,(2011-2012) [2] 東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価につい にて、東京電力株式会社、2011年5月23日 [3] 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関す る評価について、原子力安全・保安院、2011年6月6日 [4] 福島第一原子力発電所 1~3 号機の炉心状態について、平成 23 年 11 月 30 日、東京電力、2011年11月30日 [5] McMaster Nuclear Reactor, McMaster University“Decay Heat Estimates for MNR““, Technical Report1998-03 http://www.nuceng.ca/papers/decayhelb.pdf [東京電力、“定期検査実績”、http://www.tepco.co.jp/nu/fl-np/data lib/pdfdata/bk1011-i.pdf [7] White, F. M., Fluid Mechanics, McGraw Hill, (1999).p.397. [8] Liepmann, H. W. and Roshko, A., Elements ofGasdynamics, John Willey & Sons, (1956), pp53-54. [9] プラント関連パラメータ、ブラントの水位・圧力データおよびプラントの温度データ、東京電力、 http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index-j.html,2011年8月14日 [10] 中間報告 平成23年12月26日、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会、2011年12月26日 [11] 原子力安全に関する IAEA 閣僚会議に対する日本政府の報告書-東京電力福島原子力発電所の事故について-、原子力災害対策本部、2011年6月、 [12] 福島第一原子力発電所1号機非常用復水器(IC)作動時の原子炉事故解析、平成 23 年 12月9日、原子 力安全基盤機構(JNES)、原子力システム安全部、 (2012)411“ “福島第一原子力発電所1号機事故の熱流動現象の推定-非常用復水器が作動していた場合-“ “円山 直,Shigenao MARUYAMA
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