動画予測を用いた異常診断手法の開発
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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
東京大学・出町研究室ではこれまで、追尾放射線治療 への適用を目的とし、呼吸時肺腫瘍動体予測手法の開発 を行ってきた。これは4次元X線カメラで撮影した肺腫 瘍近傍の直径2mmの金マーカーの画像の3次位置の時間 変化を解析し、その数秒後の位置をシミュレーションに より予測する技術である。呼吸時肺腫瘍の動きは周期性 が高くなく、その予測には直前までの腫瘍の動きを観測 し主成分を抽出して未来の動きを計算する手法が有効で ある。東京大学・出町研究室では、95%の確率で腫瘍位 置の予測誤差を 1 mm以内に収めることに成功している。
1. 本研究では上記の手法をさらに発展させ、金マーカー の3次元位置といった「点」ではなく、「画像」を予測す る手法、すなわち動画予測技術を開発した。昨今、監視 カメラなど、様々な場で動画を用いた監視・診断が行わ れている。本研究は、その中に時間予測という新たな大 きな柱を立てることになると期待できる。
2. 計算手法
2.1 動画の主成分画像分析 - 動画は一定間隔置きに並んだ多数の静止画から構成さ れている。本手法ではまず、1つの動画を構成する静止
画に共通の主成分画像を主成分分析により抽出した。例 えばある動画データ ICO が i~N枚の静止画から構成され ているとする。各静止画の2次元画素データを1次元ベ クトルに配列し直したものを x とし、これを N 個並べて できる行列をXとする。x = [xxw」....・(1)この行列 X の自己相関行列 XX に固有値解析で得られる 固有ベクトルが、動画を構成する主成分画像ベクトルに 相当する。「 xx' = [V, .ydH.0][V,y, ] (2)2.2 主成分画像ベクトルの係数関数主成分画像ベクトル V ?Vと、動画 I(との関係は、 次の(3)式のように表すことができる。I() = a()V + a (OV, + a (OV, + ... (3)ここでa)は各主成分画像ベクトルの係数関数とする。各 主成分画像ベクトルは互いに直行するため、いくのは次の (4)式により求めることができる。ay() = 1).V,-44432.3 係数関数の時間予測 --係数関数 al)を未来における変化を予測して(4)式に代 入することにより、撮影した動画の近未来の予測動画が 得られる。係数関数 a()の予測には、「点」の時間予測の ためにすでに開発済みであった Singular Spectral Analysis(SSA)法に基づく手法を適用した[2]。al)の5ステップ目における値を a; とし、Vのうち主要 なL個に相当する a()を対象に、(5)式のような行列 A を 作成する。| Q1 Q1,2 ... als] Jan1 a2, 2 ... a,N (5)AY:ALL AL,2 ... arml 次に、 A の各行から()式のように M 個ずつの成分を取り 出した N-M+1 個のベクトルraim,(a,m+1)aim」aiMb1-b2 =1,2ai1ai.2SSA 法では、この an を、ysis(SSA)法に基づく手法を適用した[2]。 りの木ステップ目における値を aとし、Yのうち主要 個に相当する a()を対象に、(5)式のような行列 A をart=(I - R'EE'R)R'EE'Qする。のように求める。ここでR, Q はそれぞれ、| Q1, Jan,1Q,2 22,2... ...a,x] a2,|A=41,N-1LaL,LaL2 ... au,NJ -、 A の各行から()式のように M個ずつの成分を取り た N-M41 個のベクトルGIN-M+21 o ... ... o...... 10............ ... ... ...-10R=\:(a,m)ai,M+1a2NaiM-1ATML42,N-1b1 =1 : , b2 =ai2a13ai1ai2LN-M+3ai,N(QL,N-M+2)ain-1..., br,N-M+1 =V-M+1aiN-M+2であらわされる、それぞれ LM 行 L列、LM行1列の行(“L,N-M+ai,N-1, bi,N-M1 =であらわされる、それぞれ LM行L列、LN 列である。aiN-M+2laiN-M411Q,M)aiM+1ARM-1amb1 =11,b,3D: ,24,1ai,N..., 0,,N-M+1 =a1,N-M+2CiN-M411,N-M+1を並べて行列Bを作成する。.... by,N-M+1 | 52,2 ..: B =| :. : [bL, bra b ,N-MA | 行列Bの自己相関行列 BB の固有値分解で得られるLXM 個の固有ベクトルのうち、固有値の大きい順に r 個のみ を用いて並べた行列をU とする。U = [ur...u.]-18未来の N+1 ステップ目におけるL 個の係数関数 an+1}, (i=1~L)からなるベクトルを ant とする。41,041 )GL-1,N+1AL.N+1SSA 法では、この any を、axi = (I - R'EE'R)R'EE'Qのように求める。ここでR, Q はそれぞれ、以上の計算を時間について繰り返すことで、の複数ス テップ未来における値を予測することできる。これを(3) 式に代入して得られた I())はを予測動画としている。ここでは実際の動画予測の結果は割愛し、学会発表の 場にて詳細の解説を行うこととする。参考文献 [1] M. Kawai, K. Demachi, H. Shiato and M. Ishikawa,“Development of Prediction System for Moving Tumor by MSSA for Chasing Radiotherapy““, Prof. ofJKMP-AOCMP 2011. [2] R. Vartard and M. Ghil, ““Singular spectrum analysis innonlinear dynamics, with applications to paleoclimatic time series,““ Physica D, 35, pp.395-424,(1989)(平成24年6月21日)444“ “動画予測を用いた異常診断手法の開発“ “榊原 洋志,Yoji SAKAKIBARA,出町 和之,Kazuyuki DEMACHI,河合 理城,Masaki KAWAI,リッチャタクリ, Ritu CHHATLULI,上赤 一馬,Kazuma KAMIAKA
東京大学・出町研究室ではこれまで、追尾放射線治療 への適用を目的とし、呼吸時肺腫瘍動体予測手法の開発 を行ってきた。これは4次元X線カメラで撮影した肺腫 瘍近傍の直径2mmの金マーカーの画像の3次位置の時間 変化を解析し、その数秒後の位置をシミュレーションに より予測する技術である。呼吸時肺腫瘍の動きは周期性 が高くなく、その予測には直前までの腫瘍の動きを観測 し主成分を抽出して未来の動きを計算する手法が有効で ある。東京大学・出町研究室では、95%の確率で腫瘍位 置の予測誤差を 1 mm以内に収めることに成功している。
1. 本研究では上記の手法をさらに発展させ、金マーカー の3次元位置といった「点」ではなく、「画像」を予測す る手法、すなわち動画予測技術を開発した。昨今、監視 カメラなど、様々な場で動画を用いた監視・診断が行わ れている。本研究は、その中に時間予測という新たな大 きな柱を立てることになると期待できる。
2. 計算手法
2.1 動画の主成分画像分析 - 動画は一定間隔置きに並んだ多数の静止画から構成さ れている。本手法ではまず、1つの動画を構成する静止
画に共通の主成分画像を主成分分析により抽出した。例 えばある動画データ ICO が i~N枚の静止画から構成され ているとする。各静止画の2次元画素データを1次元ベ クトルに配列し直したものを x とし、これを N 個並べて できる行列をXとする。x = [xxw」....・(1)この行列 X の自己相関行列 XX に固有値解析で得られる 固有ベクトルが、動画を構成する主成分画像ベクトルに 相当する。「 xx' = [V, .ydH.0][V,y, ] (2)2.2 主成分画像ベクトルの係数関数主成分画像ベクトル V ?Vと、動画 I(との関係は、 次の(3)式のように表すことができる。I() = a()V + a (OV, + a (OV, + ... (3)ここでa)は各主成分画像ベクトルの係数関数とする。各 主成分画像ベクトルは互いに直行するため、いくのは次の (4)式により求めることができる。ay() = 1).V,-44432.3 係数関数の時間予測 --係数関数 al)を未来における変化を予測して(4)式に代 入することにより、撮影した動画の近未来の予測動画が 得られる。係数関数 a()の予測には、「点」の時間予測の ためにすでに開発済みであった Singular Spectral Analysis(SSA)法に基づく手法を適用した[2]。al)の5ステップ目における値を a; とし、Vのうち主要 なL個に相当する a()を対象に、(5)式のような行列 A を 作成する。| Q1 Q1,2 ... als] Jan1 a2, 2 ... a,N (5)AY:ALL AL,2 ... arml 次に、 A の各行から()式のように M 個ずつの成分を取り 出した N-M+1 個のベクトルraim,(a,m+1)aim」aiMb1-b2 =1,2ai1ai.2SSA 法では、この an を、ysis(SSA)法に基づく手法を適用した[2]。 りの木ステップ目における値を aとし、Yのうち主要 個に相当する a()を対象に、(5)式のような行列 A をart=(I - R'EE'R)R'EE'Qする。のように求める。ここでR, Q はそれぞれ、| Q1, Jan,1Q,2 22,2... ...a,x] a2,|A=41,N-1LaL,LaL2 ... au,NJ -、 A の各行から()式のように M個ずつの成分を取り た N-M41 個のベクトルGIN-M+21 o ... ... o...... 10............ ... ... ...-10R=\:(a,m)ai,M+1a2NaiM-1ATML42,N-1b1 =1 : , b2 =ai2a13ai1ai2LN-M+3ai,N(QL,N-M+2)ain-1..., br,N-M+1 =V-M+1aiN-M+2であらわされる、それぞれ LM 行 L列、LM行1列の行(“L,N-M+ai,N-1, bi,N-M1 =であらわされる、それぞれ LM行L列、LN 列である。aiN-M+2laiN-M411Q,M)aiM+1ARM-1amb1 =11,b,3D: ,24,1ai,N..., 0,,N-M+1 =a1,N-M+2CiN-M411,N-M+1を並べて行列Bを作成する。.... by,N-M+1 | 52,2 ..: B =| :. : [bL, bra b ,N-MA | 行列Bの自己相関行列 BB の固有値分解で得られるLXM 個の固有ベクトルのうち、固有値の大きい順に r 個のみ を用いて並べた行列をU とする。U = [ur...u.]-18未来の N+1 ステップ目におけるL 個の係数関数 an+1}, (i=1~L)からなるベクトルを ant とする。41,041 )GL-1,N+1AL.N+1SSA 法では、この any を、axi = (I - R'EE'R)R'EE'Qのように求める。ここでR, Q はそれぞれ、以上の計算を時間について繰り返すことで、の複数ス テップ未来における値を予測することできる。これを(3) 式に代入して得られた I())はを予測動画としている。ここでは実際の動画予測の結果は割愛し、学会発表の 場にて詳細の解説を行うこととする。参考文献 [1] M. Kawai, K. Demachi, H. Shiato and M. Ishikawa,“Development of Prediction System for Moving Tumor by MSSA for Chasing Radiotherapy““, Prof. ofJKMP-AOCMP 2011. [2] R. Vartard and M. Ghil, ““Singular spectrum analysis innonlinear dynamics, with applications to paleoclimatic time series,““ Physica D, 35, pp.395-424,(1989)(平成24年6月21日)444“ “動画予測を用いた異常診断手法の開発“ “榊原 洋志,Yoji SAKAKIBARA,出町 和之,Kazuyuki DEMACHI,河合 理城,Masaki KAWAI,リッチャタクリ, Ritu CHHATLULI,上赤 一馬,Kazuma KAMIAKA