高温インパクトフレッティング試験による配管減肉現象の評価
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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
現在、国内では原子力発電所における装置の安全性、 信頼性に対する関心が高まっている。また、世界的にエ ネルギー需要は増加していることからも、原子力発電所 の適切な維持管理と同時に、稼動時に起こる事故などの 対策について検討することは工学的に重要な課題である。 発電プラントの二冷却系配管等では、高速液滴の衝突に よるエロージョン(LDI, Liquid Droplet Impingement erosion)が原因となる減肉現象が生じている。これまで このLDI について、数値シミュレーションによる解析や、 ウォータージェットを用いた実験等が行われてきた[1]。 しかし、ウォータージェット試験等では一定の箇所に 10 ~10Hz'mm2 と非常に高い衝突頻度で液適が衝突してお り、液滴衝突による酸化皮膜の破壊、露出した新生面の 酸化の繰り返しによる減肉といった化学的な減肉プロセ スについて検討することが難しかった。配管内に液膜が 生じている場合や、衝突頻度が低く減肉がマイルドに進 行していく場合、酸化や腐食の影響は無視できないと考えられ、配管減肉予測の高精度化を目指すうえで、それ らの影響について検討する必要がある。よって本研究で は配管材料に対し、高温純水中でインパクトフレッティ ング試験を行い、酸化皮膜の破壊と新生面の再酸化によ る減肉プロセスについて検討を行った (Fig. 1)。インパク トフレッティング試験では、二軸方向の微小振動(振幅 100um以下)を制御し、試験片を相対的に Fig. 1 の右上 の図のように動作させている。試験片には動的な荷重が 加えることが可能であり、さらに試験片同士は摩擦した 後に一度離れるために、露出した新生面は確実に酸化さ れると考えられる。
Upper specimenDropletWater filmWater-OxiderSteelSteel1' Impact frettingLiquid droplet impingement20xide removal3Re-oxidation門Fig. 1 Schematic diagram of the thinning process of theoxide removal and reformation4452. 実験方法 2.1 実験装置本研究で開発した装置の概略図を Fig. 2 に示す。純水 (<1.5μS/cm)が充填されたオートクレーブ容器 (5) 内 において、各摺動軸(X方向、Z方向)を振動させ、Z方 向端に取り付けられた上部試験片(6) と X軸上部に 取り付けられた下部試験片(7) にインパクトフレッテ ィングを発生させる。各軸の駆動にはピエゾアクチュエ ータ(Oとの、最大振幅約 130um、予荷重800N、最大荷 重2kN)を用い、Z方向の振動をX方向の2倍の振動数 となるように調和させている。よって、上部試験片は下 部試験片が1往復する間に2回衝突する。 X 方向の接線 力とZ方向の荷重は、軸に取り付けられたひずみゲージ を貼ったロードセル (2、3) により測定する。さらに、 渦電流式変位計 (9) より X方向の軸端の変動距離を測 定し、ピエゾアクチュエータの変位は内蔵されたひずみ ゲージにより測定する。オートクレーブはSUS316L製の 円筒型で、最高使用温度 130°C、最高使用圧力 2MPa、容 量は約 2L である。インパクト荷重 1.5?7N、各方向振動 数 0~30Hz、振幅 0~70um であり、この装置はインパクト フレッティングだけでなく、インパクトのみ、フレッテ ィングのみの実験も可能である。パートートバリュー um、予荷重800N、最大荷3. 実験結果 をX方向の2倍の振動数 13.1 衝突頻度と水温の影響 よって、上部試験片は下 下部試験片および上部試験片に生じた摩耗痕を、走査 コ衝突する。 X 方向の接線 型電子顕微鏡(SEM)、電子プローブマイクロアナライザ つ付けられたひずみゲージ (EPMA)、触針式3次元粗さ計などを用いて観察、分析、 ここより測定する。さらに、 測定した。原子炉配管における減肉では摩耗深さが重要 方向の軸端の変動距離を測となるため、これを用いて検討する。 つ変位は内蔵されたひずみ実験により得られた最大摩耗深さと衝突頻度について -クレーブは SUS316L製のまとめたプロットを Fig. 3 に示す。これを見ると、衝突頻 、最高使用圧力 2MPa、容 度が高くなるほど最大摩耗深さは減少する傾向が見られ、 -荷重 1.5?7N、各方向振動摩耗特性は衝突頻度に依存しているのがわかる。これは、 り、この装置はインパクト衝突頻度が小さいほど酸化皮膜の生成時間が長くなり、 インパクトのみ、フレッテTable 1 Experimental conditions for the detailedexamination of the chemical affects0.530,80, 13050今は、様々な環境において ニナボール(直径 6.4mm, いた。下部試験片には配管 (直径11.5mm, 厚さ 2.7mm, バフ研磨により鏡面仕上げWater pressure, MPa Impact load, N Water temperature, °C Amplitude ( in X direction), um Impact frequency ( in Z direction), Hz Dissolved oxygen, ppm Number of cycles Number of experiments1,2,4, 10,(14),200.0150000DrainageFeed waterFig. 2Schematic diagram of the impact fretting test rig.2.2 試験片 1. 本研究で使用する上部試験片は、様々な環境において 安定で耐摩耗性に優れるアルミナボール(直径 6.4mm, HV:1800,A1,05:99.5%)を用いた。下部試験片には配管 材料であるSUS304 のディスク (直径11.5mm, 厚さ 2.7mm, HV:300)を用い、その表面はバフ研磨により鏡面仕上げ とした,Piezo actuator (in Z-dir.) 2Load cell (in Z-dir.) 3 Load cell (in X-dir.) 4 Piezo actuator (in X-dir.) 5 Autoclave 6 Upper specimenLower specimen 2 Hydraulic cylinder 9 Displacement gauge2.3 実験条件 . 本研究では酸化皮膜の剥離と成長の繰り返しによる配 管減肉の進行をモデルとしている。表面の酸化などの化 学的な要因について検討するため、水温、溶存酸素、衝 突頻度等について、Table 1のような条件で実験を行い、 原子炉配管環境における SUS304 鋼の減肉特性を検討す る。446;Fig. 3101」..980°C130°C...........Maximum wear depth , um
TTTTTT100101 Impact frequency (in Z direction ), Hz Fig. 3 Relationship between impact frequency andmaximum wear depth of the steel disks after 50,000 cycles (DO: 0.01ppm)形成される酸化皮膜は厚くなる。そこにフレッティング の機械的作用であるすくい(scrape)作用が働き、1 サイ クルあたりに剥離される酸化皮膜の厚さは増大する。こ れが繰り返されることから、衝突頻度の差が摩耗深さに 影響したと考えられる。10~20Hz では 130°C 水中での摩 耗深さが最大をとっており、化学反応速度の増大からこ のような結果につながったと考えられる。しか志 4Hz 以 下においては水温 30、80°C では摩耗深さは振動数の減少 とともに増加したが、水温 130°C では、摩耗深さは増加 しない傾向が見られた。これは 130°C の高温水中におい て酸化速度が増加したことや、振動数が低下することに より十分な酸化時間が得られ、酸化皮膜の性状が変化し、 表面から除去されにくい状態になったと推測される。次 に,摩耗痕のトレース及び SEM像の例を Fig. 4 に示す。 30°C における摩耗痕では摩耗痕表面が滑らかであり、堆 積した酸化物等も観察されなかった。 しかし80°Cの場合、 摩耗痕上には剥がれかけたような皮膜が観察され、これ らは EPMA により Cr の酸化物であることがわかった。 そして 130°C では摩耗癒上に黒色に写る皮膜が密着して いるのがわかる。これも EPMA により、Crの酸化物であ ることがわかった。よって水温が 130°C では、酸化皮膜 が摩耗痕上に密着し剥離されにくく、摩耗を低減したと 推測される。純水中で生じる酸化反応として、以下のよ うなものが考えられる。まず新生面が露出した際、新生 面表面では以下のような金属イオンが生成される。Fe → Fe2+ + 2e・・・(1)Cr -> Cr3+ + 3e・・・(2)10urnY : 500m |X:500m5um(a) Temperature: 30°C10pimY : 500ml×:500ppmSum(b) Temperature: 80°C10kmジが\3500pmX:500m5umFig.4(c) Temperature: 130°C Wear scar profiles and SEM images of wom steel surfaces (Impact frequency: 2Hz)ド反応が生じ、それと同時に放出された電子によりカソード反応が生じ、 水酸イオンが生成される。(1/2)D2 + H2O + 2e~ → 20HF・・・・(3)この水酸イオンと金属イオンが反応することで水酸化物 が生成され、摩耗痕上や周囲に以下の酸化物が沈殿する。Fe(OH)3 → FOOH+H,0・・・・(4)Cr(OH) → Cr2O3 nH2O・・・(5)このとき、電気化学列より Crが優先的に酸化されるため、 最表面に密着し、摩耗痕表面の Cr 濃度の上昇につながっ たと考えられる。酸化水和物のnは水温によって変化し、 一般に高温になれば縮合が生じ、n の値は小さくなる。n の値が小さくなれば、酸化皮膜の密度は増加し、密着性 が高まると考えられる。3.2 化学的影響を考慮した減肉速度式の検討 * 前節の実験結果から、減肉速度について検討する。最 大摩耗深さを減肉深さ m とし、減肉深さ m が機械的減肉 深さ m と化学的減肉深さ m によるものとすれば、m=m,n + m・・・・(6)m = mm +447 -と表すことができる。機械的減肉深さ mmは、衝突頻度を f、時間を大、衝突一回あたりの減肉深さをaとすれば、mm = aft・・・(T)で表され、減肉深さは衝突回数に依存する。次に化学的 減肉深さ me は、化学反応速度定数をk とすれば、m. = 1f1-01d““ %3Dkxr%3D Aj・・・(9))d““ = kxt = Axexn-' m = on + Ass(リー・・・(10)me = fat・・・(8)と表すことができる。ここで、金属の酸化則[2]は化学反 応速度定数をk、酸化膜厚さを d、頻度因子をA、活性化 エネルギーをE、気体定数をR、絶対温度をTとすると、d““ = kxr = Axexpl=2}x3'd““ %3Dkxr%3D Axexp])と表される。kは化学反応の温度依存性を示すアレニウス の式で表される[2]。式(8)の指数aは式(9)の指数 n の逆数 に対応し、aの値は金属の酸化則に左右される。例として 保護性を有する酸化皮膜が生じる場合、酸化は放物線則 に従い一般に0-0.50となるが、皮膜の密度や外部からの 損傷の有無に左右される[3]。これらにより、配管減肉深 さ m は以下の式で表される。m=of + Aesol -・・・(10)ここで、実験結果と金属の酸化則の関係について検討 するため、Fig. 3 の実験結果から近似曲線をプロットし、 のを求める。本実験では機械的減肉と化学的減肉が同時に 生じているため、ここでは機械的減肉深さがとり得る範 囲から検討する。まず、サイクル数が一定であるため、 本研究における機械的減肉深さ mmは一定となる。そして 式(6)のように減肉が生じているとすれば、本実験におい ては“0
現在、国内では原子力発電所における装置の安全性、 信頼性に対する関心が高まっている。また、世界的にエ ネルギー需要は増加していることからも、原子力発電所 の適切な維持管理と同時に、稼動時に起こる事故などの 対策について検討することは工学的に重要な課題である。 発電プラントの二冷却系配管等では、高速液滴の衝突に よるエロージョン(LDI, Liquid Droplet Impingement erosion)が原因となる減肉現象が生じている。これまで このLDI について、数値シミュレーションによる解析や、 ウォータージェットを用いた実験等が行われてきた[1]。 しかし、ウォータージェット試験等では一定の箇所に 10 ~10Hz'mm2 と非常に高い衝突頻度で液適が衝突してお り、液滴衝突による酸化皮膜の破壊、露出した新生面の 酸化の繰り返しによる減肉といった化学的な減肉プロセ スについて検討することが難しかった。配管内に液膜が 生じている場合や、衝突頻度が低く減肉がマイルドに進 行していく場合、酸化や腐食の影響は無視できないと考えられ、配管減肉予測の高精度化を目指すうえで、それ らの影響について検討する必要がある。よって本研究で は配管材料に対し、高温純水中でインパクトフレッティ ング試験を行い、酸化皮膜の破壊と新生面の再酸化によ る減肉プロセスについて検討を行った (Fig. 1)。インパク トフレッティング試験では、二軸方向の微小振動(振幅 100um以下)を制御し、試験片を相対的に Fig. 1 の右上 の図のように動作させている。試験片には動的な荷重が 加えることが可能であり、さらに試験片同士は摩擦した 後に一度離れるために、露出した新生面は確実に酸化さ れると考えられる。
Upper specimenDropletWater filmWater-OxiderSteelSteel1' Impact frettingLiquid droplet impingement20xide removal3Re-oxidation門Fig. 1 Schematic diagram of the thinning process of theoxide removal and reformation4452. 実験方法 2.1 実験装置本研究で開発した装置の概略図を Fig. 2 に示す。純水 (<1.5μS/cm)が充填されたオートクレーブ容器 (5) 内 において、各摺動軸(X方向、Z方向)を振動させ、Z方 向端に取り付けられた上部試験片(6) と X軸上部に 取り付けられた下部試験片(7) にインパクトフレッテ ィングを発生させる。各軸の駆動にはピエゾアクチュエ ータ(Oとの、最大振幅約 130um、予荷重800N、最大荷 重2kN)を用い、Z方向の振動をX方向の2倍の振動数 となるように調和させている。よって、上部試験片は下 部試験片が1往復する間に2回衝突する。 X 方向の接線 力とZ方向の荷重は、軸に取り付けられたひずみゲージ を貼ったロードセル (2、3) により測定する。さらに、 渦電流式変位計 (9) より X方向の軸端の変動距離を測 定し、ピエゾアクチュエータの変位は内蔵されたひずみ ゲージにより測定する。オートクレーブはSUS316L製の 円筒型で、最高使用温度 130°C、最高使用圧力 2MPa、容 量は約 2L である。インパクト荷重 1.5?7N、各方向振動 数 0~30Hz、振幅 0~70um であり、この装置はインパクト フレッティングだけでなく、インパクトのみ、フレッテ ィングのみの実験も可能である。パートートバリュー um、予荷重800N、最大荷3. 実験結果 をX方向の2倍の振動数 13.1 衝突頻度と水温の影響 よって、上部試験片は下 下部試験片および上部試験片に生じた摩耗痕を、走査 コ衝突する。 X 方向の接線 型電子顕微鏡(SEM)、電子プローブマイクロアナライザ つ付けられたひずみゲージ (EPMA)、触針式3次元粗さ計などを用いて観察、分析、 ここより測定する。さらに、 測定した。原子炉配管における減肉では摩耗深さが重要 方向の軸端の変動距離を測となるため、これを用いて検討する。 つ変位は内蔵されたひずみ実験により得られた最大摩耗深さと衝突頻度について -クレーブは SUS316L製のまとめたプロットを Fig. 3 に示す。これを見ると、衝突頻 、最高使用圧力 2MPa、容 度が高くなるほど最大摩耗深さは減少する傾向が見られ、 -荷重 1.5?7N、各方向振動摩耗特性は衝突頻度に依存しているのがわかる。これは、 り、この装置はインパクト衝突頻度が小さいほど酸化皮膜の生成時間が長くなり、 インパクトのみ、フレッテTable 1 Experimental conditions for the detailedexamination of the chemical affects0.530,80, 13050今は、様々な環境において ニナボール(直径 6.4mm, いた。下部試験片には配管 (直径11.5mm, 厚さ 2.7mm, バフ研磨により鏡面仕上げWater pressure, MPa Impact load, N Water temperature, °C Amplitude ( in X direction), um Impact frequency ( in Z direction), Hz Dissolved oxygen, ppm Number of cycles Number of experiments1,2,4, 10,(14),200.0150000DrainageFeed waterFig. 2Schematic diagram of the impact fretting test rig.2.2 試験片 1. 本研究で使用する上部試験片は、様々な環境において 安定で耐摩耗性に優れるアルミナボール(直径 6.4mm, HV:1800,A1,05:99.5%)を用いた。下部試験片には配管 材料であるSUS304 のディスク (直径11.5mm, 厚さ 2.7mm, HV:300)を用い、その表面はバフ研磨により鏡面仕上げ とした,Piezo actuator (in Z-dir.) 2Load cell (in Z-dir.) 3 Load cell (in X-dir.) 4 Piezo actuator (in X-dir.) 5 Autoclave 6 Upper specimenLower specimen 2 Hydraulic cylinder 9 Displacement gauge2.3 実験条件 . 本研究では酸化皮膜の剥離と成長の繰り返しによる配 管減肉の進行をモデルとしている。表面の酸化などの化 学的な要因について検討するため、水温、溶存酸素、衝 突頻度等について、Table 1のような条件で実験を行い、 原子炉配管環境における SUS304 鋼の減肉特性を検討す る。446;Fig. 3101」..980°C130°C...........Maximum wear depth , um
TTTTTT100101 Impact frequency (in Z direction ), Hz Fig. 3 Relationship between impact frequency andmaximum wear depth of the steel disks after 50,000 cycles (DO: 0.01ppm)形成される酸化皮膜は厚くなる。そこにフレッティング の機械的作用であるすくい(scrape)作用が働き、1 サイ クルあたりに剥離される酸化皮膜の厚さは増大する。こ れが繰り返されることから、衝突頻度の差が摩耗深さに 影響したと考えられる。10~20Hz では 130°C 水中での摩 耗深さが最大をとっており、化学反応速度の増大からこ のような結果につながったと考えられる。しか志 4Hz 以 下においては水温 30、80°C では摩耗深さは振動数の減少 とともに増加したが、水温 130°C では、摩耗深さは増加 しない傾向が見られた。これは 130°C の高温水中におい て酸化速度が増加したことや、振動数が低下することに より十分な酸化時間が得られ、酸化皮膜の性状が変化し、 表面から除去されにくい状態になったと推測される。次 に,摩耗痕のトレース及び SEM像の例を Fig. 4 に示す。 30°C における摩耗痕では摩耗痕表面が滑らかであり、堆 積した酸化物等も観察されなかった。 しかし80°Cの場合、 摩耗痕上には剥がれかけたような皮膜が観察され、これ らは EPMA により Cr の酸化物であることがわかった。 そして 130°C では摩耗癒上に黒色に写る皮膜が密着して いるのがわかる。これも EPMA により、Crの酸化物であ ることがわかった。よって水温が 130°C では、酸化皮膜 が摩耗痕上に密着し剥離されにくく、摩耗を低減したと 推測される。純水中で生じる酸化反応として、以下のよ うなものが考えられる。まず新生面が露出した際、新生 面表面では以下のような金属イオンが生成される。Fe → Fe2+ + 2e・・・(1)Cr -> Cr3+ + 3e・・・(2)10urnY : 500m |X:500m5um(a) Temperature: 30°C10pimY : 500ml×:500ppmSum(b) Temperature: 80°C10kmジが\3500pmX:500m5umFig.4(c) Temperature: 130°C Wear scar profiles and SEM images of wom steel surfaces (Impact frequency: 2Hz)ド反応が生じ、それと同時に放出された電子によりカソード反応が生じ、 水酸イオンが生成される。(1/2)D2 + H2O + 2e~ → 20HF・・・・(3)この水酸イオンと金属イオンが反応することで水酸化物 が生成され、摩耗痕上や周囲に以下の酸化物が沈殿する。Fe(OH)3 → FOOH+H,0・・・・(4)Cr(OH) → Cr2O3 nH2O・・・(5)このとき、電気化学列より Crが優先的に酸化されるため、 最表面に密着し、摩耗痕表面の Cr 濃度の上昇につながっ たと考えられる。酸化水和物のnは水温によって変化し、 一般に高温になれば縮合が生じ、n の値は小さくなる。n の値が小さくなれば、酸化皮膜の密度は増加し、密着性 が高まると考えられる。3.2 化学的影響を考慮した減肉速度式の検討 * 前節の実験結果から、減肉速度について検討する。最 大摩耗深さを減肉深さ m とし、減肉深さ m が機械的減肉 深さ m と化学的減肉深さ m によるものとすれば、m=m,n + m・・・・(6)m = mm +447 -と表すことができる。機械的減肉深さ mmは、衝突頻度を f、時間を大、衝突一回あたりの減肉深さをaとすれば、mm = aft・・・(T)で表され、減肉深さは衝突回数に依存する。次に化学的 減肉深さ me は、化学反応速度定数をk とすれば、m. = 1f1-01d““ %3Dkxr%3D Aj・・・(9))d““ = kxt = Axexn-' m = on + Ass(リー・・・(10)me = fat・・・(8)と表すことができる。ここで、金属の酸化則[2]は化学反 応速度定数をk、酸化膜厚さを d、頻度因子をA、活性化 エネルギーをE、気体定数をR、絶対温度をTとすると、d““ = kxr = Axexpl=2}x3'd““ %3Dkxr%3D Axexp])と表される。kは化学反応の温度依存性を示すアレニウス の式で表される[2]。式(8)の指数aは式(9)の指数 n の逆数 に対応し、aの値は金属の酸化則に左右される。例として 保護性を有する酸化皮膜が生じる場合、酸化は放物線則 に従い一般に0-0.50となるが、皮膜の密度や外部からの 損傷の有無に左右される[3]。これらにより、配管減肉深 さ m は以下の式で表される。m=of + Aesol -・・・(10)ここで、実験結果と金属の酸化則の関係について検討 するため、Fig. 3 の実験結果から近似曲線をプロットし、 のを求める。本実験では機械的減肉と化学的減肉が同時に 生じているため、ここでは機械的減肉深さがとり得る範 囲から検討する。まず、サイクル数が一定であるため、 本研究における機械的減肉深さ mmは一定となる。そして 式(6)のように減肉が生じているとすれば、本実験におい ては“0