ショットピーニングを施したニッケル基合金溶接部 の熱履歴による圧縮残留応力と耐粒界腐食性の変化
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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
原子炉の炉内機器に発生する応力腐食割れを予防する ため、ショットピーニング等により当該部に圧縮残留応 力を付与する場合がある.しかし、実機の高経年化を考 える上で、付与した圧縮残留応力が実機の長期間稼動時 において持続するのかを明確にしておく必要がある.これまでに,圧縮残留応力の持続性について種々の検 討がなされており、以下の1~6の要因に分類すること ができる。
1 熱処理による熱緩和!1114 2 応力(ひずみ)付与1,1948 3 熱緩和と応力(ひずみ)付与との重畳3,19 4 溶接残留応力が存在する状態での熱緩和|3, 14 ) 17、[10]溶接残留応力が存在する状態での応力(ひずみ)付与1112 6 溶接残留応力が存在する状態での熱緩和と応力(ひずみ) 付与との重畳3][12] これらの要因について,実機の運転条件下,または運 転条件の加速条件下において応力改善工法で付与した圧 縮残留応力が持続することが示されている.しかし,実 機の起動・停止に伴う熱サイクルの付与が圧縮残留応力 の持続にどのような影響を及ぼすかを調査した報告は少 ない、そこで本研究では,ショットピーニングを施した連絡先:西川聡、 〒230-0044 神奈川県横浜市鶴見区 弁天町 14-1、一般財団法人発電設備技術検査協会、溶 接・非破壊検査技術センター E-mail: nishikawa-satoru@japeic.or.jpステンレス鋼とニッケル基合金から成る異材溶接継手に ついて,高温純水中で熱サイクルを複数回付与し,その ときの表面残留応力の変化を調査した.一方,ショットピーニングのような表面に高い塑性変 形を付与する工法では,運転温度に保持されたときに粒 界析出が促進され、耐粒界腐食性が低下することが懸念 される.そのため,ニッケル基合金溶接金属のショット ピーニング,および熱時効処理による耐粒界腐食性の変 化を調査した.2. 実験方法2.1 溶接試験体の製作 2.1.1 圧縮残留応力の評価試験体Table 1に圧縮残留応力の持続性評価試験体に用いた材 料の化学成分を示す.母材が NCF600 と SUS316L,溶接 金属が 82 合金から成る板厚 25 mm, 幅 192 mm, 長さ 200 mm の溶接継手をティグ溶接で製作した,溶接条件は、 電流 100~200A, 電圧 11 V, 溶接速度 1~1.5 mm/s, ワイ ヤ送給量0~0.14 gs とした. 溶接継手の全盛と初層部を 研削して板厚を 20 mm にした後,余盛研削面の機械加工 層を電解研磨により除去し,溶接部を中心に幅 65 mm の 領域に Table 2 に示す条件でショットピーニングを施した. そして, オートクレーブを用いて 12 MPaの脱酸素純水中 に昇温・冷却速度 0.015 KIS 以下, 最高温度 593 Kで7.2 ks 保持の熱サイクルを10回付与した. Table 1 Chemical composition of the base metal and thefiller wire used. (mass%)Materials TC Si Mn PTS|Ni Cr Mo TF Nb+TaTi SUS316L 10,014 0.48 | 0.76 | 0.0230,001 | 12.35 | 17.21 | 2.83 | Bal. | - 1 -NCF600 0.04 | 0.170.15 | <0.0010.001 174.79 | 15.34] - 19.08 | - [ ... Alloy82 viro 0.03 | 0.2112.97 0.003 0.002174.44 | 18.63 - 0.522.68 10.3745900Table 2 Shot peening conditions. Cut wire size 0.3 mm x0.3 mm Cut wire material SUS304 (Hv500) Incident angle Shot time160s (65mm×200 mm) Nozle size7 mm 0 Gas pressure5kg/cm? 2.1.2 耐粒界腐食性の評価試験片板厚 80 mm,幅200 mm,長さ 180 mm の S45C 炭素鋼 板上に被覆アーク溶接で 182 合金を厚さ 15 mm 以上(6 層以上) 肉盛した. 溶接条件は、電流 140A, 電圧 24V, 溶接速度 3.3 mm/s とした. 肉盛溶接試験体に 893 K, 7.2 ks の熱処理を施し、母材希釈が少ない溶接金属の最終層近 傍から板厚 10 mm の試験板を採取した. Table 3に試験板 の化学成分を示す.表面の機械加工層を除去するため, 最終層の面を 100 μm 以上電解研磨し,幅 15 mm,長さ 25 mm の試験片を作製した. 15 mm×25mm の電解研磨 面に 0.6 mmg×0.6 mm の炭素鋼カットワイヤを投射速 度60 m/s, カバレッジ200%でショットピーニングした. その後,793 K, 0~3.6 Ms の熱時効処理を施した. Table 3 Chemical composition of the weld metalused. (mass%) CT Si T Mn | PT STN T cr | Fe TND TO THINT o 0.001 | 0.8 7.07 | 0.005 0.000 | 68.3 | 14.4 | 7.46 | 1.53 | 0.43 0.014 | 0.0392.2 残留応力測定方法 12.1.1 項の異材溶接試験体の表面残留応力をX線回折法により測定した. Table 4 に測定条件を示す.また,Fig. 1 に表面残留応力の測定位置を示す.溶融境界部近傍と溶 融境界部近傍から 7.5~10 mm 離れた位置を測定した. Table 2 Conditions for stress measurement with X-rays.Material | SUS316L Alloy 82 | NCF600 Radiations/filter | Cr-Ka Crkav Cr-KBDiffraction Fe- Y,220| Ni, 220 | Ni, 311_ Diffraction angle128.4° | 130.2 ° 153.6 ° 20。 Tube voltage/current40 kV/30 mA Irradiated area0.5 or 2.0mmonPeened areaAltoy 82 SUS316LNCF600200- 25 | 2516: Irradiated area is 0.5 m O: Irradiated area is 2.0 mo651192Fig. 1 Schematic of stress measurement points by X-raydiffraction.2.3 耐粒界腐食試験 12.1.2 項の試験片の耐粒界腐食性を沸騰硫酸・硫酸銅腐 食試験(シュトラウス試験)により評価した. JIS G0575 に準拠し、試験片断面のミクロ組織を観察して割れ深さ を測定し,深い割れ上位 10 個の平均深さ d'を求めた.3. 実験結果および考察3.1 熱サイクル付与による圧縮残留応力の持続性Fig.2 に溶接線方向の残留応力を示す. ピーニング後の 残留応力は-480~-591 MPa で,熱サイクルを1回付与す ると-292~-435 MPaに緩和するが,その後は熱サイクル を10回まで付与しても大きな変化は見られず,圧縮残留 応力が持続した. Fig.3 に溶接線直交方向の残留応力を示 す. 1回の熱サイクルで圧縮残留応力は緩和するが,そ の後 10回まで大きな変化は見られず, Fig. 2 と同様に圧 縮残留応力が持続した. これは、1回目の熱サイクル時に おいて、高温保持に伴う材料の降伏応力低下で応力再配 分が生じて圧縮残留応力が緩和するが,再配分後は同様 の熱サイクルに対して圧縮残留応力は安定することが示 唆された.■ NCF600 (Center) ONCF600 (Alloy 82 side)Alloy 82 (NCF600 side) ●Alloy 82(Center) O Alloy 82 (SUS316L side) A SUS316L (Alloy 82 side) A SUS316L (Center)10-200-300Longitudinal residual stress (MPa)-400-500-6001110-700 As peenedNumber of thermal cycle Fig. 2 Effect of number of thermal cycle at 593 K onlongitudinal residual stress in dissimilar weld.ONCF600 (Alloy 82 side)Alloy 82 (NCF600 side) O Alloy 82 (SUS316L side) A SUS316L (Alloy 82 side)Transverse residual stress (MPa)-600-700 As peened10 Number of thermal cycle Fig. 3 Effect of number of thermal cycle at 593 K ontransverse residual stress in dissimilar weld.463.2 熱時効処理による耐粒界腐食性の変化Fig. 4 にショットピーニング有無の熱時効処理による d'の変化を示す.ショットピーニング無しの場合,d'は 257 um であり,割れのほとんどは粒界割れであった. 熱時効処理時間の経過に伴い割れは深くなる傾向が見ら れた.これは、粒界 Cr 欠乏層の形成に起因すると考えら れるLI , 893 K, 72 ks の熱処理後に行った 793 K での熱 時効処理により Cr欠乏層の形成が促進されるものと考え られる.そして、ショットピーニングの付与で割れ深さ は大幅に低下し,その後の熱時効処理においても割れ深 さにほとんど変化は見られなかった.このため、ショッ トピーニングの付与は耐粒界腐食性を向上させ、その後 の熱時効処理においても雨粒界腐食性は持続すると考え られる、ショットピーニング材においても割れが観察さ れたことから,この割れがショットピーニング時に生じ たものか、またはシュトラウス試験によるものかを明ら かにするため、ショットピーニングのままにおけるシュA Without peening With peeningCrack depth d' (?m)megaloe10_ 1 10 100 1000 10000Time (hr) Fig. 4 Effect of shot peening and thermal aging treatmentat 793 K on crack depth by strauss test in nickel base alloy weld metals.なみ・第Fig. 5 SEM micrograph of crack observed in nickel basealloy weld metal as shot peening.トラウス試験前の試験片について断面観察を行った. Fig. 5 に FE-SEM の観察結果を示す.微小な割れ状の欠陥が 観察され,この欠陥はショットピーニングによる加工硬 化、および衝撃等により発生したと考えられる.したが って, Fig. 4 に示すショットピーニングを施した試験片で 観察された割れは、シュトラウス試験で生じたものでは 無い可能性がある。ショットピーニングの付与で粒界腐食性が向上する 理由の一つに、ショットピーニングの衝撃により表面近 傍で塑性流動が生じ、Cr 欠乏層が形成された粒界が消失 したことが考えられる.今後,TEM観察等による微細組 織観察を行い、耐粒界腐食性が向上した理由を明らかに して行く予定である.4. まとめ * 本研究はショットピーニングを施したニッケル基合金 溶接部について,1ピーク温度 593 K の熱サイクル付与 による圧縮残留応力の持続性, 2793 Kでの熱時効処理に よる雨粒界腐食性の変化について調査した.得られた結 果を以下にまとめる. 1) 熱サイクルを1回付与すると圧縮残留応力は緩和するが,その後は熱サイクルを10回まで付与しても大 きな変化は見られず,圧縮残留応力が持続した. ショットピーニングの付与は而粒界腐食性を向上さ せ,その後の熱時効処理においても耐粒界腐食性の 低下はほとんど見られなかった.2)参考文献 (1) 小畑稔、久保達也、依田正樹、佐伯綾一、石川達也、“レーザピーニングにより形成した圧縮残留応力の 緩和特性評価”、M&M2009 材料力学カンファレンス CD-ROM 論文集、pp.343-344. [2] 齋藤昇、波東久光、吉久保富士夫、守中廉、“WJPによる残留応力改善効果の持続性評価““、日本材料学会第59期学術講演会講演論文集、2010、pp.307-308. [3] 前口貴治、堤一也、豊田真彦、太田高裕、岡部武利、佐藤知伸、“ピーニングによる応力腐食割れ防止効果 に関する研究”、日本保全学会第7回学術講演会要旨集、2010、pp.568-571. [4] 西川聡、中田志津雄、堀井行彦、古村一朗、山口篤憲、“圧縮残留応力付与部の熱時効による応力緩和挙 動”、日本保全学会第4回学術講演会要旨集、2007、 pp.276-279.[5] 角谷利恵、田澤俊幸、楢崎千尋、斎藤利之、“レーザピーニング施工面の圧縮残留応力に及ぼす外部応力 負荷の影響”、M&M2009 材料力学カンファレンスCD-ROM 論文集、pp.340-342. [6] 政木清孝、若林豊、越智保雄、松村隆、佐野雄一、久保達也、“レーザピーニング処理した SUS316L 鋼 の高サイクル疲労挙動”、M&M2004 材料力学カンファレンス講演論文集, [7] K. Okimura, T. Ohta, T. Konno, M. Narita and M. Toyoda““Reliability of Water Jet Peening as Residual Stress Improvement Method for Alloy 600 PWSCC Mitigation”, Proceeding of the 16h International Conference on Nuclear Engineering, ICONE16, May11-15, 2008, Orlando,Florida, USA. [8] 佐川渉、吉久保富士夫、守中康、菅野明弘、波東久光、齋藤昇、“ウォータジェットピーニング(WJP) 技術の BWR 炉内構造物への適用”、保全学、Vol.7, No4、2009、pp.69-76. 吉村敏彦、大城戸忍、榎本邦夫、守中廉、平野克彦、 黒澤孝一、林英策、“ウォータジェットピーニングに よる原子炉内機器溶接部の残留応力低減”、日本材料 学会第 38 回 X 線材料強度に関する検討会、2001 年 11月30日、pp.38-44.[10] 橋本匡史、大沢悠介、伊藤真介、才田一幸、望月正人、西本和俊、“ウォータジェットピーニングによる 残留応力低減効果の全施工プロセスを考慮した長期 安定性評価““、第 204 回溶接冶金研究委員会資料、1905/07/03[11] 田澤俊幸、角谷利恵、楢崎千尋、斎藤利之、“レーザピーニング施工をした溶接部の圧縮残留応力に及ぼ す外部応力負荷の影響”、M&M2010 材料力学カンファレンス CD-ROM 論文集、pp.1263-1265. [12] 齋藤昇、榎本邦夫、黒澤孝一、守中康、林英策、石川哲也、吉村敏彦、“原子力プラントの炉内機器に対 するウォータジェットピーニング技術の開発”、噴流工学、Vol.20,No.1、2003、pp.4-12. [13] N. Saito, S. Tanaka and H. Sakamoto: Effect ofCorrosion Potential and Microstructure on the Stress Corrosion Cracking Susceptibility of Nickel-Base Alloys in High-Temperature Water, Corrosion, 59-12(2003), 1064-1074. [14] 西川聡、“ニッケル基600合金溶接部の高温高圧純水中における応力腐食割れ特性と超音波探傷による割 れ検出性の向上”、大阪大学工学博士論文、2010、pp.19-55.483“ “ショットピーニングを施したニッケル基合金溶接部 の熱履歴による圧縮残留応力と耐粒界腐食性の変化“ “西川 聡,Satoru NISHIKAWA,大井 浩一,Koichi OOI
原子炉の炉内機器に発生する応力腐食割れを予防する ため、ショットピーニング等により当該部に圧縮残留応 力を付与する場合がある.しかし、実機の高経年化を考 える上で、付与した圧縮残留応力が実機の長期間稼動時 において持続するのかを明確にしておく必要がある.これまでに,圧縮残留応力の持続性について種々の検 討がなされており、以下の1~6の要因に分類すること ができる。
1 熱処理による熱緩和!1114 2 応力(ひずみ)付与1,1948 3 熱緩和と応力(ひずみ)付与との重畳3,19 4 溶接残留応力が存在する状態での熱緩和|3, 14 ) 17、[10]溶接残留応力が存在する状態での応力(ひずみ)付与1112 6 溶接残留応力が存在する状態での熱緩和と応力(ひずみ) 付与との重畳3][12] これらの要因について,実機の運転条件下,または運 転条件の加速条件下において応力改善工法で付与した圧 縮残留応力が持続することが示されている.しかし,実 機の起動・停止に伴う熱サイクルの付与が圧縮残留応力 の持続にどのような影響を及ぼすかを調査した報告は少 ない、そこで本研究では,ショットピーニングを施した連絡先:西川聡、 〒230-0044 神奈川県横浜市鶴見区 弁天町 14-1、一般財団法人発電設備技術検査協会、溶 接・非破壊検査技術センター E-mail: nishikawa-satoru@japeic.or.jpステンレス鋼とニッケル基合金から成る異材溶接継手に ついて,高温純水中で熱サイクルを複数回付与し,その ときの表面残留応力の変化を調査した.一方,ショットピーニングのような表面に高い塑性変 形を付与する工法では,運転温度に保持されたときに粒 界析出が促進され、耐粒界腐食性が低下することが懸念 される.そのため,ニッケル基合金溶接金属のショット ピーニング,および熱時効処理による耐粒界腐食性の変 化を調査した.2. 実験方法2.1 溶接試験体の製作 2.1.1 圧縮残留応力の評価試験体Table 1に圧縮残留応力の持続性評価試験体に用いた材 料の化学成分を示す.母材が NCF600 と SUS316L,溶接 金属が 82 合金から成る板厚 25 mm, 幅 192 mm, 長さ 200 mm の溶接継手をティグ溶接で製作した,溶接条件は、 電流 100~200A, 電圧 11 V, 溶接速度 1~1.5 mm/s, ワイ ヤ送給量0~0.14 gs とした. 溶接継手の全盛と初層部を 研削して板厚を 20 mm にした後,余盛研削面の機械加工 層を電解研磨により除去し,溶接部を中心に幅 65 mm の 領域に Table 2 に示す条件でショットピーニングを施した. そして, オートクレーブを用いて 12 MPaの脱酸素純水中 に昇温・冷却速度 0.015 KIS 以下, 最高温度 593 Kで7.2 ks 保持の熱サイクルを10回付与した. Table 1 Chemical composition of the base metal and thefiller wire used. (mass%)Materials TC Si Mn PTS|Ni Cr Mo TF Nb+TaTi SUS316L 10,014 0.48 | 0.76 | 0.0230,001 | 12.35 | 17.21 | 2.83 | Bal. | - 1 -NCF600 0.04 | 0.170.15 | <0.0010.001 174.79 | 15.34] - 19.08 | - [ ... Alloy82 viro 0.03 | 0.2112.97 0.003 0.002174.44 | 18.63 - 0.522.68 10.3745900Table 2 Shot peening conditions. Cut wire size 0.3 mm x0.3 mm Cut wire material SUS304 (Hv500) Incident angle Shot time160s (65mm×200 mm) Nozle size7 mm 0 Gas pressure5kg/cm? 2.1.2 耐粒界腐食性の評価試験片板厚 80 mm,幅200 mm,長さ 180 mm の S45C 炭素鋼 板上に被覆アーク溶接で 182 合金を厚さ 15 mm 以上(6 層以上) 肉盛した. 溶接条件は、電流 140A, 電圧 24V, 溶接速度 3.3 mm/s とした. 肉盛溶接試験体に 893 K, 7.2 ks の熱処理を施し、母材希釈が少ない溶接金属の最終層近 傍から板厚 10 mm の試験板を採取した. Table 3に試験板 の化学成分を示す.表面の機械加工層を除去するため, 最終層の面を 100 μm 以上電解研磨し,幅 15 mm,長さ 25 mm の試験片を作製した. 15 mm×25mm の電解研磨 面に 0.6 mmg×0.6 mm の炭素鋼カットワイヤを投射速 度60 m/s, カバレッジ200%でショットピーニングした. その後,793 K, 0~3.6 Ms の熱時効処理を施した. Table 3 Chemical composition of the weld metalused. (mass%) CT Si T Mn | PT STN T cr | Fe TND TO THINT o 0.001 | 0.8 7.07 | 0.005 0.000 | 68.3 | 14.4 | 7.46 | 1.53 | 0.43 0.014 | 0.0392.2 残留応力測定方法 12.1.1 項の異材溶接試験体の表面残留応力をX線回折法により測定した. Table 4 に測定条件を示す.また,Fig. 1 に表面残留応力の測定位置を示す.溶融境界部近傍と溶 融境界部近傍から 7.5~10 mm 離れた位置を測定した. Table 2 Conditions for stress measurement with X-rays.Material | SUS316L Alloy 82 | NCF600 Radiations/filter | Cr-Ka Crkav Cr-KBDiffraction Fe- Y,220| Ni, 220 | Ni, 311_ Diffraction angle128.4° | 130.2 ° 153.6 ° 20。 Tube voltage/current40 kV/30 mA Irradiated area0.5 or 2.0mmonPeened areaAltoy 82 SUS316LNCF600200- 25 | 2516: Irradiated area is 0.5 m O: Irradiated area is 2.0 mo651192Fig. 1 Schematic of stress measurement points by X-raydiffraction.2.3 耐粒界腐食試験 12.1.2 項の試験片の耐粒界腐食性を沸騰硫酸・硫酸銅腐 食試験(シュトラウス試験)により評価した. JIS G0575 に準拠し、試験片断面のミクロ組織を観察して割れ深さ を測定し,深い割れ上位 10 個の平均深さ d'を求めた.3. 実験結果および考察3.1 熱サイクル付与による圧縮残留応力の持続性Fig.2 に溶接線方向の残留応力を示す. ピーニング後の 残留応力は-480~-591 MPa で,熱サイクルを1回付与す ると-292~-435 MPaに緩和するが,その後は熱サイクル を10回まで付与しても大きな変化は見られず,圧縮残留 応力が持続した. Fig.3 に溶接線直交方向の残留応力を示 す. 1回の熱サイクルで圧縮残留応力は緩和するが,そ の後 10回まで大きな変化は見られず, Fig. 2 と同様に圧 縮残留応力が持続した. これは、1回目の熱サイクル時に おいて、高温保持に伴う材料の降伏応力低下で応力再配 分が生じて圧縮残留応力が緩和するが,再配分後は同様 の熱サイクルに対して圧縮残留応力は安定することが示 唆された.■ NCF600 (Center) ONCF600 (Alloy 82 side)Alloy 82 (NCF600 side) ●Alloy 82(Center) O Alloy 82 (SUS316L side) A SUS316L (Alloy 82 side) A SUS316L (Center)10-200-300Longitudinal residual stress (MPa)-400-500-6001110-700 As peenedNumber of thermal cycle Fig. 2 Effect of number of thermal cycle at 593 K onlongitudinal residual stress in dissimilar weld.ONCF600 (Alloy 82 side)Alloy 82 (NCF600 side) O Alloy 82 (SUS316L side) A SUS316L (Alloy 82 side)Transverse residual stress (MPa)-600-700 As peened10 Number of thermal cycle Fig. 3 Effect of number of thermal cycle at 593 K ontransverse residual stress in dissimilar weld.463.2 熱時効処理による耐粒界腐食性の変化Fig. 4 にショットピーニング有無の熱時効処理による d'の変化を示す.ショットピーニング無しの場合,d'は 257 um であり,割れのほとんどは粒界割れであった. 熱時効処理時間の経過に伴い割れは深くなる傾向が見ら れた.これは、粒界 Cr 欠乏層の形成に起因すると考えら れるLI , 893 K, 72 ks の熱処理後に行った 793 K での熱 時効処理により Cr欠乏層の形成が促進されるものと考え られる.そして、ショットピーニングの付与で割れ深さ は大幅に低下し,その後の熱時効処理においても割れ深 さにほとんど変化は見られなかった.このため、ショッ トピーニングの付与は耐粒界腐食性を向上させ、その後 の熱時効処理においても雨粒界腐食性は持続すると考え られる、ショットピーニング材においても割れが観察さ れたことから,この割れがショットピーニング時に生じ たものか、またはシュトラウス試験によるものかを明ら かにするため、ショットピーニングのままにおけるシュA Without peening With peeningCrack depth d' (?m)megaloe10_ 1 10 100 1000 10000Time (hr) Fig. 4 Effect of shot peening and thermal aging treatmentat 793 K on crack depth by strauss test in nickel base alloy weld metals.なみ・第Fig. 5 SEM micrograph of crack observed in nickel basealloy weld metal as shot peening.トラウス試験前の試験片について断面観察を行った. Fig. 5 に FE-SEM の観察結果を示す.微小な割れ状の欠陥が 観察され,この欠陥はショットピーニングによる加工硬 化、および衝撃等により発生したと考えられる.したが って, Fig. 4 に示すショットピーニングを施した試験片で 観察された割れは、シュトラウス試験で生じたものでは 無い可能性がある。ショットピーニングの付与で粒界腐食性が向上する 理由の一つに、ショットピーニングの衝撃により表面近 傍で塑性流動が生じ、Cr 欠乏層が形成された粒界が消失 したことが考えられる.今後,TEM観察等による微細組 織観察を行い、耐粒界腐食性が向上した理由を明らかに して行く予定である.4. まとめ * 本研究はショットピーニングを施したニッケル基合金 溶接部について,1ピーク温度 593 K の熱サイクル付与 による圧縮残留応力の持続性, 2793 Kでの熱時効処理に よる雨粒界腐食性の変化について調査した.得られた結 果を以下にまとめる. 1) 熱サイクルを1回付与すると圧縮残留応力は緩和するが,その後は熱サイクルを10回まで付与しても大 きな変化は見られず,圧縮残留応力が持続した. ショットピーニングの付与は而粒界腐食性を向上さ せ,その後の熱時効処理においても耐粒界腐食性の 低下はほとんど見られなかった.2)参考文献 (1) 小畑稔、久保達也、依田正樹、佐伯綾一、石川達也、“レーザピーニングにより形成した圧縮残留応力の 緩和特性評価”、M&M2009 材料力学カンファレンス CD-ROM 論文集、pp.343-344. [2] 齋藤昇、波東久光、吉久保富士夫、守中廉、“WJPによる残留応力改善効果の持続性評価““、日本材料学会第59期学術講演会講演論文集、2010、pp.307-308. [3] 前口貴治、堤一也、豊田真彦、太田高裕、岡部武利、佐藤知伸、“ピーニングによる応力腐食割れ防止効果 に関する研究”、日本保全学会第7回学術講演会要旨集、2010、pp.568-571. [4] 西川聡、中田志津雄、堀井行彦、古村一朗、山口篤憲、“圧縮残留応力付与部の熱時効による応力緩和挙 動”、日本保全学会第4回学術講演会要旨集、2007、 pp.276-279.[5] 角谷利恵、田澤俊幸、楢崎千尋、斎藤利之、“レーザピーニング施工面の圧縮残留応力に及ぼす外部応力 負荷の影響”、M&M2009 材料力学カンファレンスCD-ROM 論文集、pp.340-342. [6] 政木清孝、若林豊、越智保雄、松村隆、佐野雄一、久保達也、“レーザピーニング処理した SUS316L 鋼 の高サイクル疲労挙動”、M&M2004 材料力学カンファレンス講演論文集, [7] K. Okimura, T. Ohta, T. Konno, M. Narita and M. Toyoda““Reliability of Water Jet Peening as Residual Stress Improvement Method for Alloy 600 PWSCC Mitigation”, Proceeding of the 16h International Conference on Nuclear Engineering, ICONE16, May11-15, 2008, Orlando,Florida, USA. [8] 佐川渉、吉久保富士夫、守中康、菅野明弘、波東久光、齋藤昇、“ウォータジェットピーニング(WJP) 技術の BWR 炉内構造物への適用”、保全学、Vol.7, No4、2009、pp.69-76. 吉村敏彦、大城戸忍、榎本邦夫、守中廉、平野克彦、 黒澤孝一、林英策、“ウォータジェットピーニングに よる原子炉内機器溶接部の残留応力低減”、日本材料 学会第 38 回 X 線材料強度に関する検討会、2001 年 11月30日、pp.38-44.[10] 橋本匡史、大沢悠介、伊藤真介、才田一幸、望月正人、西本和俊、“ウォータジェットピーニングによる 残留応力低減効果の全施工プロセスを考慮した長期 安定性評価““、第 204 回溶接冶金研究委員会資料、1905/07/03[11] 田澤俊幸、角谷利恵、楢崎千尋、斎藤利之、“レーザピーニング施工をした溶接部の圧縮残留応力に及ぼ す外部応力負荷の影響”、M&M2010 材料力学カンファレンス CD-ROM 論文集、pp.1263-1265. [12] 齋藤昇、榎本邦夫、黒澤孝一、守中康、林英策、石川哲也、吉村敏彦、“原子力プラントの炉内機器に対 するウォータジェットピーニング技術の開発”、噴流工学、Vol.20,No.1、2003、pp.4-12. [13] N. Saito, S. Tanaka and H. Sakamoto: Effect ofCorrosion Potential and Microstructure on the Stress Corrosion Cracking Susceptibility of Nickel-Base Alloys in High-Temperature Water, Corrosion, 59-12(2003), 1064-1074. [14] 西川聡、“ニッケル基600合金溶接部の高温高圧純水中における応力腐食割れ特性と超音波探傷による割 れ検出性の向上”、大阪大学工学博士論文、2010、pp.19-55.483“ “ショットピーニングを施したニッケル基合金溶接部 の熱履歴による圧縮残留応力と耐粒界腐食性の変化“ “西川 聡,Satoru NISHIKAWA,大井 浩一,Koichi OOI