ウォータジェットピーニングによる残留応力の特性

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カテゴリ: 第9回
1. 緒言
* オーステナイト系ステンレス鋼の機械加工や溶接による引張り残留応力は応力腐食割れの原因となり,強度や 「機器の保全に係わる問題として軽視することはできない。 その残留応力の改善法として,ショットピーニング (1) , レーザーピーニング (2) , ウォータージェットピーニング (以下,WJP)(3) などが利用されている.また, オース テナイト系ステンレスは,結晶弾性異方性の大きい材料 特性を持ち,残留応力にも回折面依存性がある(4,5], 弾 性異方性の大きい材料が熱時効を受けたとき, ピーニン グによる圧縮残留応力が,どのような挙動をするのかに ついて不明な点が多く,その残留応力の特性を明らかに する必要がある。本研究ではオーステナイト系ステンレス鋼を対象に, WJPによる残留応力の特性を明らかにするために,残 留応力を測定し,高エネルギー放射光および中性子を用 いて深さ方向の分布を測定した.また,773K の高温大 気中にて熱時効をさせながら,表面の残留応力状態の変 化を明らかにした.さらに,WJP 処理したままの残留 応力と 1000 h 熱時効した残留応力の回折面依存性につ いても解析したので報告する. 2. 実験方法 2.1 試験片 - 試験片の材料は,平均粒径 55 um のオーステナイト 系ステンレス鋼 SUS316L である。試験片の寸法を長さ 110 mm, 幅 20 mm,厚さ 15 mm に機械加工により仕 上げ,さらに, WJP 処理面を#400 のエメリーで研磨 した.WJP の施工条件は,噴流速度 48 /min, 施工時間 40 min/m, 施工角度 90° とし, ノズルを試験片幅 (20 mm) の中心に位置して長手方向に移動した。試験片の 両端 10 mm はそれぞれ固定に使用しており,実際の施 工範囲は長手方向中心に約80 mm となる.なお,WJPこのカーテン館
Peening directionFig. 1. Water jet peened specimen.処理は1パスである. 試験片の外観を図1に示す. WJP によりややピーニング面に粗さが見られる.WJP により形成された圧縮残留応力の熱的安定性を 評価するために,試験片の長手方向に長さ 20 mm で切 断して試験片のブロックとした.次に,それらの試験片 を大気中にて温度 773K で 1, 10, 100 および 1000 h の 時間で保持し,熱時効した試験片を用意した,残留応力の深さ方向分布を測定した試験片は,熱時効 と同様に試験片の長手方向に長さ 20 mm で切断して、 放射光および中性子の透過を考慮して放電加工にて厚さ を WJP 後に 8mm にした. 2.2 ラボX線応力測定ラボX線により WJP 試験片の表面の残留応力を測定 した.測定条件の詳細を表1に示す.特性X線は MnKaを使用し, オーステナイト系ステンレス鋼SUS316L のy-Feの311 回折を利用した. 本条件は,回折角20が 高回折角かつ回折強度も高く,応力測定の精度および効 率がよい,応力測定は並傾法で,sin-bの値は 0 ~ 0.6, ステップ 0.1 の7点から 20-sin' y線図を作成した.平面応力状態を調べるために,応力の測定方向は,0° (oz), 45° (645), 90° (ay)の3方向について測定した (図 1を参照).X線応力測定の領域を制限するために,測定部に塩化 ビニルテープにより 4 x 4mm2 のマスキングを施した. 49 -Table 1. Conditions for X-ray stress measurement.Measuring method Optics Divergent angle of slits Irradiation area Target Tube voltage Tube current Diffraction Diffraction angle 200 Scannig angle 20 Scannig step sin Preset time Stress constant Ksin' y method Parallel beam0.64 deg 4×4mm2Mn-Ka 30kV 10 mA y-Fe (311)152.32 deg 144.0 ~ 160.0 deg0.1 deg/step 0.0 ~ 0.6 (0.1 step)1 sec--300 MPa/degTable 2. Conditions for synchrotron X-rays.Beamline Wavelength Divergent slit Receiving slit MethodBLO2B1 at SPring-872.123 keV 0.2 × 2 mm20.2 x 5 mm2 Constant penetration depth method30 pm 5.84 /cmEffective depth T Linear absorption factorCOS X =Preset time1 secにより x の値を決定する. Stress constant K --300 MPa/degsin w + sin (20 - W) ,sin w sin(20 - w) | Table 2. Conditions for synchrotron X-rays.ただし, は線吸収係数である.xおよび w軸と小角 BeamlineBLO2B1 at SPring-8 との関係は, Wavelength72.123 keV 0.2 x 2 mm2cos y = COS X cos (1 - w)(2) Divergent slit Receiving slit0.2 x 5mm2となる。具体的には, sinyの値の範囲と点数に対応す Method Constant penetraる適当なw と x の組み合わせを用意する. tion depth method放射光は、粗大粒を持つ材料では回折プロファイルの Effective depth T30pm乱れにより測定精度が低下する.それに対して中性子は, Linear absorption factor 5.84 /cm高エネルギーX線よりも深い侵入深さを持ち,ビームの発散があるために粗大粒の影響も少ない利点がある. 残 これにより同一照射領域の応力を測定できる.留応力の深さ方向の分布については,ひずみスキャニン 2.3 放射光および中性子応力測定グ法を用いて非破壊的に測定することができる 18. 中 - 残留応力の回折面依存性を明らかにするには,多数の性子ひずみスキャニングは,日本原子力研究開発機構研 回折面を用いて残留応力を測定する必要がある. ラボX 究炉 JRR-3 の残留応力測定装置 RESA-II を利用した. 線では多数の回折面を測定することは困難なので, 高工 表3に中性子測定条件をまとめた. 大凡の目安として, ネルギーX線を利用できる大型放射光施設 SPring-8で。 回折ピークを Gauss 関数で近似したときの回折ピーク 応力測定を実施した.なお, 放射光による応力測定で利高さが 150 カウントになるように測定時間を決定した. 用したビームラインは BLO2B1 である.ひずみスキャニングによる測定深さは、ピーニング面面 - 無ひずみの格子面間隔dによらない測定法として sin y から裏側まで透過法で残留応力を測定した.測定位置は, 法がある.しかし, WJP を施した面は,表面から深さ0.5, 1, 1.5, 2, 3, 4, 5, 6 および 7 mm の計9点で測定 方向に急激な応力勾配を持つ, 高エネルギーX線は侵入した. 深さが大きく,小角により侵入深さが変化するために, この中性子によるひずみスキャニング法とは別に,放 応力勾配の影響を受け sin w線図が非線形となる (6) . 射光によるひずみスキャニング法による残留応力の深さ 加えて,多数の回折面を用いる場合,それぞれの回折角方向分布も同一材で測定した、利用したビームラインは, 20 により侵入深さが異なり,応力値をそのまま比較す SPring-8 の日本原子力研究開発機構専用ビームライン ることができない.BL22XU である。 その解決策として,本研究では侵入深さ一定法で応力以上の応力測定に使用した回折面 (hkd) の回折弾性 測定を採用した 7. ゴニオメータの軸を制御すること 定数については,SUS316 の単結晶のスティフネス ci, で,応力測定方向の x 軸が変化してもX線侵入深さを0から Kroner モデル (10) を用いて計算した.なお, Kroner““ 一定に保つように回折測定方向の u軸を設定する. X モデルによる回折弾性定数を web から入手できるよう 線侵入深さ T を 30 am に設定した後,wに対して次式になっている!!- 50 . 'http://x-ray.ed.niigata-u.ac.jp/xdatabase/conditions for stress meaTable 3. Neutron diffraction conditions for stress m surement of WJP specimen.Nuclear reactor Apparatus Neutron wavelength Linear detector Slit sizes Diffraction Diffraction angle 200 Lattice constant ao Diffraction elastic constantsJRR-3 (Tokai, Japan)RESA-II1.835235 A 256 ch, 0.053614°/ch1 x 10 mmy-Fe, 311 115.761493.593387 E311 = 182.47 GPaV311 = 0.3067
“ “ウォータジェットピーニングによる残留応力の特性“ “鈴木 賢治,Suzuki KENJI,城 帖美,Ayumi SHIRO
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