発電機回転子コイルの絶縁劣化調査について

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カテゴリ: 第9回
1. はじめに
* 電力発電プラントには大小さまざまな発電機がそれぞ れ重要な発電源として稼動しており,発電設備の不可欠 な構成要素として,各々の任務を担っている。近年,多くの原子力発電プラントにおいて経年設備の 増加が進み、発電機としても、経年劣化を考慮した寿命 評価による信頼性確保を目的とした予防保全技術の適用 が非常に重要な課題となっている。 -- 同期機に発生する不具合については,最も多い報告事 例が「経年劣化」となっており,「過熱・焼損・溶損」「絶 縁破壊」の順となっている。このことからも、使用年数 が長い同期機がこれから増えていく中で、益々保守技術 および寿命評価技術が重要となっていくことが裏付けら れる[1]。発電機絶縁においては、固定子コイル絶縁と回転子コ イル絶縁に大別することができ,前者については,電気 的な非破壊評価方法が確立しているのに対し、後者につ いては,特定の評価方法が定まっておらず,絶縁更新時 期の判断は過去の絶縁更新実績や運転年数管理によると ころが大きいのが現状である。本稿は、中国電力島根原子力発電所1号機発電機回転 子精密点検において実施した回転子コイル絶縁のサンプ リングによる絶縁劣化調査結果をまとめたものである。
2. 絶縁劣化調査概要
2.1 絶縁劣化要因と調査部位 発電機回転子コイルの構成をFig.1 に示す。Field coilF?formosWedgeField coiljumuWILLULUTHESlot armor(Arrow view) Fig.1 Component of Generator rotor発電機回転子コイルの主要絶縁物であるスロットアー マについては、スロットアーマの圧縮強度の特性に変化 を与える要因のうち, 発電機の運転時間が最も支配的な 要因であることが報告されている[2] [3]。 今回は発電機回 転子コイルのスロットアーマの一部を採取(サンプリン グ)し,運転時間と比較して同絶縁の余寿命を評価する という手法を採用した。872.2 サンプリングの調査範囲 - サンプリング数 n 個のデータを発電機回転子コイル絶 縁全体(母数)の値との誤差を出来るだけ小さくする必要 がある。 t分布を用いてサンプリングした標本と発電機回 転子コイル絶縁全体である母数との誤差について検討し たものを次式に示す。ts m=x+- m=X4toto.m==X-XVn-1 x :サンプリング n個の平均値on:サンプリングn個の標準偏差 m : 母数の平均値S :母数の標準偏差 ここで, t 分布を用いて=10%と仮定してサンプリン グ n個変えた場合の母数の平均値の95%信頼区間におけ る信頼限界を求めたものを Table 1 に示す[4]。また,発電 機回転子コイル No.とスロットアーマに加わる圧縮力と の関係をまとめたものを Table 2 に示す。Table 1 Error at 95% confidence limitError (%) 95% confidence limit30.413.9108.9165.7Table 2 Relationships between generator rotor coil No.and Exerted stress to slot armorReinforcementExerted stress toslot armorNo.1coilLowfor Slot exit Existence Existence-No.2coilLow HighestNo.3 coilNo.4 coilNo.5 coilNo.6 coilSmallest発電機回転子コイル1 コイル当たり, 4個のサンプリン グが可能であり, 2 コイルあれば9%以内の信頼限界で評 価することができるため、スロットアーマに加わる圧縮 力が最も大きいNo.3 コイルと、比較用データとして,圧 縮力が最も小さいNo.6 コイルよりサンプリングを実施した。2.3 サンプリングの詳細位置 スロットアーマのサンプリング位置を Fig.2 に示す。34 slot(pole side) u 39 slot(pote side) 34 slot(opposite side of pole)39 slot(opposite side of pole)15 slot(opposite side of pole)15 slot(pole side)10 slot(opposite side of pole) 10 slot(pole side)Turbine sideCollector ring sideSampling locationSlot exit.1Slot exitFig.2 Sampling location at slot armor (No.3coil)2.4 スロットアーマの圧縮試験方法試験温度:室温にて,20mm×20mm×8 枚重ねのスロ ットアーマのサンプリング片の圧縮試験を実施した。3. 絶縁劣化調査結果評価 3.1 スロットアーマの圧縮試験結果解析以下のデータ処理方法で,スロットアーマ圧縮強度の ワイブル解析[S]を実施した。 <データ処理方法> (1) ワイブル解析により,累積故障率F (0.5%) ! における圧縮強度を求め,これまでの運転で最も圧縮強度が弱 まっている部位の圧縮強度を61%と推定する(Fig. 3参照) (2)室温と 100°Cの初期圧縮強度(実験値) との比を用いて,(1)の圧縮強度を100°Cでの圧縮強度に補正する。-88(3) (2)で求めた圧縮強度と 100°Cにおける初期圧縮強度 を圧縮強度と発電機運転時間の関係を示す図にプロ ットし,両プロットを結んで直線を引いたものを Fig.4に示す。- 12 万時間(約 14年3という結果となった。(3) (2)で求めた圧縮強度と 100°Cにおける初期圧縮強度 を圧縮強度と発電機運転時間の関係を示す図にプロ ットし,両プロットを結んで直線を引いたものを Fig.4に示す。※2:1年を 8,760 時間として計算4. まとめ※1 :劣化箇所は 192 箇所(=48 スロット×2(極中心側 or※1 :劣化箇所は 192 箇所(-48 スロット×2(極中心側 or|反極中心側) ×2(タービン側 or コレクタリング側))Cumulative faelur rate F (t)%).3 2 1 of Y3 4 5 6 7g。Cumulative faelur rate InIn(1/(1-f(t)))Minimum compressive strength 61%1001000Compressive strength rate(%)Fig.3 Weibull distribution of slot armor compressive strengthDegradation curve compressive strengthA:Initia compressive strength B:Estimated compressive strength byWeibull analysis(61%) C:Compressive strength(temperature correction) D:Compressive strength (lemperature correction)(44%)Degradation curve compressive /strength(temperature correction)Compressive strength(%)Strength of renewal plan period (28.8×10*h)DIY.Present operating 20f time(16.8 × 105) ^カップ ......Strength of renewal plan . ............. ..Necessary strength151035400.4515 20 25 30 Operating time(x 10h)Fig.4 Relationship between slot armor compressivestrengthand generator operating time3.2 スロットアーマの圧縮試験結果評価 Fig.4 の圧縮強度と発電機運転時間の関係図に,初期圧 縮強度をA点とし,ワイブル解析にて求めた最小圧縮強 度をB点として2点をプロットし,圧縮強度の劣化曲線 を引いたものを一点鎖線に示す。なお, B 点の運転時間 は, 1986年の発電機回転子コイル絶縁更新から 2010年ま での期間(24年)の発電機稼働率を80%として168,192時間 とした。一点鎖線を 100°Cに補正した曲線を太線に示す。 補正係数は、室温と 100°Cとの初期圧縮強度の比であり, 実験値である。太線と更新計画の点線との交点は、運転時間が約 28.8 万時間に達する時期となり,更新計画時期まで,残り約4. まとめ今回の調査の結果、スロットアーマの更新計画時期は、 発電機の運転時間が約 28.8 万時間に達する時期であるこ とが推定できた。これまでの運転を起点とすると,更新 計画時期まで, 残り約 12 万時間(約 14 年)という結果になった。今後は、 中国電力島根原子力発電所2号機発電機回転子 精密点検において採取されたスロットアーマのサンプリ ング片についても,今回と同様の評価を実施する予定で ある。参考文献 [1] 電気学会、“電気学会技術報告 第 1062 号”同期機の寿命評価と保守技術、2006、pp.10-12. [2] 電気学会、“電気学会技術報告 第502 号”電力設備の絶縁余寿命推定法、1994、pp.43-44. [3] 後藤和夫、神谷宏之、吉田直美、臼井崇、“タービン発電機の予防保全技術”、日立評論、75、No.12、807(1993). [4] 小山健、松本平八、“信頼性技術入門”、日本規格協会、2001、pp.152. [S] 真壁肇、“信頼性工学入門”、日本規格協会、2002、pp.101-108.~89“ “発電機回転子コイルの絶縁劣化調査について“ “荒芝 智幸,Tomoyuki ARASHIBA,桑原 道明,Michiaki KUWAHARA,藤井 俊之,Shunji FUJII,石原 篤,Atsushi ISHIHARA,川井 政志,Masashi KAWAI
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