中性子の利用2 大強度陽子加速器(J-PARC)を利用した材料評価

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カテゴリ: 特集記事

中性子回折法は中性子の優れた透過能を生かすことで、数十 mmメーターオーダーの材料深部の応力・ひずみを非破壊で測定できる唯一の測定技術として知られており、種々の機械構造物の残留応力測定を通して、高性能、高信頼性、長寿命化を目指した製品開発や構造設計に大きく貢献している [1]。一方、材料強度や破壊メカニズムを議論するうえでは、単に残留応力を測定するだけでなく、弾性ひずみ(応力)や集合組織、転位密度等のミクロ組織因子を定量的に評価することが重要である。
多くの実用材料は複数のミクロ組織(複合組織)で構成されているため、不均一な塑性変形を起こす特徴があり、これに起因して内部応力が発生する。例えば、曲げ加工した板材は、板厚方向にマクロな応力分布が発生する。これを第一種(残留)応力(マクロ応力)と呼び、残留応力測定の主たる対象となる。一方、二つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた複合材料や複合組織を有する合金は、相界面や結晶粒界近傍にミクロな応力分布が発生する。これを第二種(残留)応力(ミクロ応力)と呼び、マクロ応力と区別する必要がある [2, 3]。このミクロ応力に起因する弾性ひずみ等の情報を得るうえで、中性子回折法は有効な手段であり、その優れた透過能から、ミクロ組織因子のバルク平均と力学特性との関係を求めて、材料開発や既存材料の信頼性を検討するのに適している。このように、中性子回折法は、従来の残留応力に基づく機械部品等の健全性評価だけでなく、材料の力学特性や機能性向上を目指した材料工学研究などへの応用が期待されている。
本稿では、中性子回折法によるひずみ測定原理などの基礎を説明するとともに、代表的な鉄鋼材料について中性子回折法によるその場測定により行われた材料評価研究の一端を紹介し、本手法の将来を展望する。

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