特集「高度評価・分析技術」(1)特集にあたって

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カテゴリ: 特集記事

一般財団法人電力中央研究所 材料科学研究所長

三浦 直樹 Naoki MIURA

(1)高度評価・分析技術の特集にあたって

2020年 10月、菅首相は所信表明演説で「我が国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」、いわゆるカーボンニュートラル宣言を発した。
これを受けて、同年 12月に経済産業省が「 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定した。国が「経済と環境の好循環」を作っていこうとする政策を示したことにより、産業界は事業構造の大きな転換を迫られている。電気事業はこれまで一定割合の CO2の排出源であったが、これをいかに低減させてゼロエミッションを実現していくかは今や電力部門の最優先課題に位置付けられている。再生可能エネルギーの有効利用を図る技術の確立、水素を軸としたエネルギーチェーンの構築、火力プラントでの CO2の回収、原子力の安全性向上など、そのいずれもがカーボンニュートラルを実現するためのキーテクノロジーである。しかもそこに至るには、従来の研究開発・技術開発の延長線上にはないイノベーションの創出が必須とされている。未だ実在しない技術に我が国の命運を託す(託さなければならない)ことの意味は重い。
電力中央研究所( Central Research Institute of Electric Power Industry)は電気事業の共同の研究機関として、科学技術研究を通じて電気事業と社会に貢献することを標榜してきた。電力中央研究所は 10の研究所、センター(Research Laboratories and Centers)から構成されている。その一組織であるところの材料科学研究所は、電力の安定供給を支える機器設備の安全で合理的な運用を可能とするため、構造材料および機能材料の特性評価、損傷評価法ならびに設備診断技術の開発、新機能発現材料の開発・評価などに取り組むとともに、これらの研究の基礎となる分析技術の高度化にも挑んでいる。研究の対象を火力、原子力発電分野に留めることなく、送配電や需要家の分野にもウイングを拡げている。また、材料科学研究所の特長として、材料技術は実用化されてはじめて価値あるものとなるとの考えの下、研究のコアとなる「材料科学(Science)」と、その成果を実用化に結びつける「材料工学( Engineering)」の両者を融合させて研究開発を進めていることが挙げられる。このような取り組みを通じて、電気事業とエネルギー産業における材料問題のソリューション・プロバイダーを目指して現在に至っている。
このたび、こういった活動を支える当所の高度評価・分析技術として、材料劣化と微細組織変化、超小型試験片による原子炉圧力容器鋼の強度評価、微小サンプルによるボイラ配管溶接部の余寿命評価、実機配管の内圧クリープ試験による寿命評価・非破壊検査、塗装構造物における塗装劣化評価、および Lamb波の非破壊検査への適用、の 6件を紹介する機会を頂いた。読者諸氏の業務といささかでも協力の可能性があるようならお報せいただければ幸甚である。材料技術は実用化されてはじめて価値あるものであるから。
(2021年 5月 24日)

著者紹介
著者:三浦 直樹所属:電力中央研究所   材料科学研究所専門分野:破壊力学、構造健全性評価

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