中央制御室床下ケーブルピット内における消火システムの検討

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カテゴリ: 第15回
中央制御室床下ケーブルピット内における消火システムの検討 Consideration of fire extinguishing system inside cable pit under main control room 中部電力(株) 川井 貴弘 エア・ウォータ防災(株) 西垣 洋一 中部電力(株) 水野 道太 エア・ウォータ防災(株) 溝口 浩一郎 中部電力(株) 加藤 寿宏 エア・ウォータ防災(株) 片平 保司 中部電力(株) 辰巳 義和 Abstract Cable pit under the floor of the main control room of the nuclear power plant is structured as a small section so as to physically separate cables with different safety classifications. This time, a part of cable pit under the floor, which is a narrow and complicated structure, was mocked up and a test was conducted assuming the occurrence of fire at various places in the cable pit. Experiments confirmed the fluidity of smoke and fire extinguishing performance (diffusion and retention state of extinguishing gas) due to release of fire extinguishing gas. Based on the above, we report on the result of examining the optimal fire extinguishing system. Keywords: Gas fire extinguishing equipment,Smoke detectors,Halon1301,PCPS, 1 序論 原子力発電所の中央制御室床下ケーブルヒットに採用 されているパッケージ型制御盤システム(以下、「PCPS」という)は、安全系区分が異なるケーブルを物理的に分離するため、フリーアクセスフロア内が複雑に小区画化 された構成となっている。PCPS 内には安全上重要な機能を有するケーブルが布設されていることから、新規制基準において、PCPS 内で火災が発生した場合であっても、早期に火災を感知し、消火することが要求されている。 そのため、PCPS 内に感知器および消火装置を設置することとしている。今回、感知性能および消火性能を確認するためにPCPS 構造をモックアップし、PCPS 内の様々な場所での火災発生を想定した試験を行うことで、消火ガス放出による消火性能(消火ガスの拡散・滞留状態)お よび煙感知器の感知範囲を確認し、PCPS 内の消火システムを検討したため報告する。 連絡先 〒461-8680 愛知県名古屋市東区東新町1 番地中部電力株式会社 原子力部 辰巳義和 E-mail: Tatsumi.Yoshikazu@chuden.co.jp 2 PCPSの構造 PCPS の構造をFig.1 に示す。PCPS はコンクリート梁とコンクリート梁の上に直交して並べたH 鋼により井桁構造を構成し、その上に床板を配置した構造である。コンクリート梁で区割りされた通路内(下部ケーブル通路) およびH 鋼で区割りされた通路内(上部ケーブル通路) にケーブルが布設される。さらに、安全系区分が異なるケーブルの分離のため、PCPS の構造材(コンクリート梁およびH 鋼)および垂直分離板、水平分離板により区分が分離される構成となっている。 Fig. 1 Structure of PCPS 3 消火性能試験 消火試験条件 中央制御室には運転員が常駐しているため、PCPS に設置する消火設備は有人区画への設置が消防法(消防法施行規則第二十条)で認められているハロン1301(消火剤) を使用する。しかし、ハロン1301 は地球環境保全、特にオゾン層保護のため、大気へのみだりな放出が防止され ている。そのため、消火性能試験では分子量がほぼ同じ で、消火剤の拡散状況が同等と考えられるHFC-227ea(消火剤)を選定した。 Concrete beam side 5 m (10 pit) 放出消火剤量は、消防法で定められているHFC-227ea の消火剤係数で試験範囲容積から算出した消火剤量とす るが、ハロン1301 を放出した際の消火剤拡散状態を模擬するため放出時間は30 秒放出とした。 消火を確認するための火皿は?80mm・裔さ100mm の円筒火皿、助燃剤をヘプタンとして消火剤放出により炎 が消えるか確認した 。試験条 をTable 1 に示す。 ISO 14520-1(気体消火システム物性的特性とシステム設計)の「消火/エンジニアドおよびプレエンジニアド 消火ユニットの区域到達範囲火災試験手順」C.5「ノズル 分布検証試験」で規定されている消火剤の分布を確認する消火試験で使用する火皿。 Table 1 Test conditions 消火性能試験結果 消火性能試験ではH 鋼側ヒット27 マス、コンクリート梁側ヒット10 マスの大きさでPCPS 構造をモックアップし、以下の内容で消火試験を実施した。なお、保守的に 試験を実施するため、水平分離板はなしとした(水平分離板が設置されている方が空間に指向性があり、消火剤が一方向に流れるため)。 ①消火ノズルを消火範囲中央H 鋼側に設置 ②消火ノズルを消火範囲中央端部H 鋼側に設置 ③消火ノズルを消火範囲端部U 鋼側に設置 Fig. 2 Extinguishing test model 1 ①~③のいずれの場所にノズルを設置しても全ての火皿を消火可能である事を確認した。したがって、消防法 に基 く消火剤量を放出することで、PCPS 内H 鋼側ヒット27 マス、コンクリート梁側ヒット10 マスの範囲内 をノズル1 つで消火が可能である事を確認した。 ①~③の試験においては、垂直分離板を使用していないため消火ガスが拡散し易いと考えられる。そのため、 垂直分離板によりPCPS 内を区切り、最も多くの分岐がある場合について消火試験を実施した。 Concrete beam side 5 m (10 pit) Fig. 3 Extinguishing test model 2 上記消火試験の結果、消火対象範囲内の火皿が全て消火可能である事を確認した。したがって、PCPS 内を分離板で区切られた条 でも、消防法に基 く消火剤量を放出することで、ノズル1 つで消火が可能である事を確認した。 ケーブル布設状況による消火性能への影響 実際のPCPS 内にはケーブルが多数布設されているため、ケーブルの有無が消火性能に影響を与えるか試験を実施した。実機のケーブル布設状況を考慮し、PCPS 内のH 鋼側、コンクリート梁側それぞれに占積率40%(ケーブル上部の空きスペース0~25mm)となるようにケーブルを設置し消火性能を確認した。 ケーブルが制御盤内に入線される箇所は、可能な限り閉止措置されるため、開口部は1 ヒットにつき5%として試験を実施した。開口部の様子をFig.5 に示す。 25mm 500mm Fig.5 State of opening Concrete beam side 5 m (10 pit) H steel side 13.5 m(27 pit) Concrete beam side 5 m (10 pit) H steel side 13.5 m(27 pit) Fig. 4 Extinguishing test model 3 消火試験の結果、ケーブルが布設されている場合でも、布設されてない場合でもすべての火皿が消火することを確認した。したがって、PCPS 内にケーブルが布設されていても、消防法に基 く消火剤量を放出することで消火 可能である事を確認した。 開口部がある場合の消火性能への影響 PCPS 上部には制御盤が設置されており、ケーブルが制御盤内に入線される箇所には開口部が存在する。開口部がある場合であっても、ハロン1301 を用いた消火設備では消防法により開口部補正が規定されているため、開口部を考慮した消火剤量の放出を行う。 しかし、検証試験で使用する消火剤HFC227ea は知見の により開口部補正係数は消防法にて規定されていない。このためTable 2 に示すように既知の消火剤ハロン1301 を基準とし、消火剤HFC227ea の開口補正係数を算定した4.2kg/m2 を 用して試験を実施した。 Table 2 Opening correction coefficient of fire extinguishing agent Fig. 6 Extinguishing test model 4 消火試験の結果、PCPS に開口部がある場合でも、すべての火皿が消火することを確認した。したがって、PCPS 内に開口部があっても、消防法に基 く開口部補正した消火剤量を放出することで消火可能である事を確認した。 4 煙感知器感知性能試験 感知試験条件 PCPS 内で火災 となるものはケーブルである。ケーブルの 電流火災は から り、その 発火へと していくため、発火へ至る前の早期感知のため煙感知器を設置する。検証試験では 電流火災と同様に、ケーブル内部の 度が上がり火災に至る事象を模擬するため、ケーブルをヒーターで加熱し発生する煙の検知性を煙感知器で確認した。 使用するケーブルの は、実機で使用されているケーブルと同等である難燃性ケーブル(600V F-CV 3X 14SQ)とし、長さは1 ヒット内に収 るように約250mm X30 本/テスト1 回として煙を発生させた。 煙感知器は狭臨なPCPS 内に設置することを考慮し、小型の裔感度感知器(感度 5%/m)とし、吸引式タイプの煙感知器と非吸引式タイプの煙感知器をH 鋼に取り付 けて検証試験を実施した。煙感知性能試験の概要をFig.7 に示す。 Nonsuctiontype smoke detector 煙は試験開 すぐにH 鋼側に広がり、次にコンクリート梁側へと拡散して全体に広がっていくことを確認した。煙 から遠ざかるほど、煙の動きが緩慢になるため Flow ofsmoke Smoke Suction type smoke detector H steel Concrete beam 煙感知器が動作しないことを確認した。したがって、煙 から離れ煙の流動性(運動性)が弱くなると、煙感知器の検知素子 で煙が入っていかないため、非吸引式の煙感知器では、 ら煙を吸い 吸引式の煙感知器と較して感知範囲が狭いくなることがわかった。 HeaterCable Fig.7 Outline of smoke detection performance test 感知性能試験結果 感知性能試験では消火試験と同様にH 鋼側ヒット27 マス、コンクリート梁側ヒット10 マスの試験範囲でPCPS 構造をモックアップし、分離板がない状態で煙を発生させた際の検知性を、煙感知器を使用し検知するか否かを確認した。 Concrete beam side 5 m (10 pit) Fig.8 Smoke detectors test model 1 た、上記試験においては分離板を使用していないため、煙はPCPS 内全体に拡散していく 向を確認できたため、垂直分離板によりPCPS 内を区切り、煙の流路がある程度定められた場合について感知試験を実施した。 Fig.9 Smoke detectors test model 2 Concrete beam side 5 m (10 pit) Table 4 Result of smoke detectors at test model 2 O Detected X Don't detect Table 3 Result of smoke detectors at test model 1 Reproducible No reproducibility O Detected X Don't detect ReproducibleNo reproducibility 前述の試験と同様に、煙は試験開 すぐにH 鋼側に広がり、次にコンクリート梁側へと拡散して全体に広がっ ていくことを確認した。しかし、分離板で区切られ流路 が定められている場合の方が、煙が遠くに流れていく動 きが分離板により限定されることで緩慢になるため、分離板がない場合に べて煙感知器が動作する範囲が狭いことを確認した。 た、吸引式の煙感知器の方が広範囲にわたり煙を感知可能であることは同様な 向であることが確認できた。 ケーブル布設状況による感知性能への影響 実際のPCPS 内にはケーブルが多数布設されているため、ケーブルの有無が煙感知性能に影響を与えるか試験 を実施した。PCPS 内のH 鋼側に占積率40%(ケーブル上部の空きスペース0~25mm)となるようにケーブルを設置し、ケーブルの有無で煙感知器の検知範囲および感知時間に差異があるか確認した。 なお、ケーブルの有無による影響確認は、一定量の煙を発生させるため、スモーク発生器(スモーク能力10~31m3/min)を使用し、煙感知器は吸引タイプの感知器にて試験を実施した。 Concrete beam side 5 m (10 pit) 開口部がある場合の感知性能への影響 PCPS においてケーブルが制御盤に入線される箇所 には開口部が存在する。開口部が存在することで煙がPCPS 内から抜けていくことが考えられるため、開口部が感知範囲に影響を与えるか確認した。開口部の大きさは、消火性能試験と同様に 1 ヒットにつき 5%として試験を実施した。試験はFig.11 に示すように煙が開口部の間にある場合(煙が流れていって途中で抜ける場合)と、Fig.12 に示すように煙 が開口部の下にある場合(煙が直上に抜ける場合)について試験を実施した。 test range Concrete beam side 5 m (10 pit) smoke source smoke detectors 5% opening per pit Fig.10 Smoke detectors test model 3 Table 5 Result of smoke detectors at test model 3 Fig.11 Smoke detectors test model 4 Table 6 Result of smoke detectors at test model 4 ケーブルが布設されていると空間が狭くなるため、煙が流動しやすく感知時間が早いことを確認した。 た、ケーブルの有無により感知範囲に差異がないことを確認 O Detected X Don't detect ReproducibleNo reproducibility した。したがって、ケーブルが布設されていない状態で の感知範囲がPCPS での煙感知器の感知範囲であることを確認した。 これ での試験と同様に、煙はH 鋼側に広がり、次にコンクリート梁側に拡散していったが、開口部がある箇所からは、煙が上部に抜けていくことを確認した。煙は開口部から一部抜けていくものの、ゆっくりと全体に拡 散していったため吸引式タイプの感知器では開口部を越えて感知可能であることがわかった。一方、非吸引式タイプの感知器では煙の動きが緩慢なため開口部を越えて感知することはできないことがわかった。 Concrete beam side 5 m (10 pit) 5 結論 本稿によって明らかになったことを以下に示す。 運転員が常駐する中央制御室 PCPS 内の消火設備にはハロン1301 を消火剤とした消火設備を設置する。PCPS 内のハロン消火設備においては、消防法に基 く消火剤量を放出することで、H 鋼側ヒット27 マス、コンクリート梁側ヒット10 マスの範囲内にノズル 1 つ設置することで当該範囲内の火災を消火することが可能である。 PCPS 内に設置するハロンガス消火設備においては、PCPS 内のケーブルの有無にかかわらず、消防法に基 く消火剤量を放出することで当該範囲内の火災を消火することが可能である。 ( )PCPS 内に設置するハロンガス消火設備において test range smoke source smoke detectors 5% opening per pit は、PCPS 内に開口部があっても、消防法に基く開口部補正した消火剤量を放出することで当 Fig.12 Smoke detectors test model 5 Table 7 Result of smoke detectors at test model 5 該範囲内の火災を消火することが可能である。 火災の早期感知のために設置する煙感知器は、非吸引タイプではH 鋼側ヒット27 マス、コンクリート梁側ヒット7マスの範囲内、吸引式タイプではH 鋼側ヒット24 マス、コンクリート梁側ヒット10 マスの範囲内の感知が可能である。 PCPS 内ではケーブル有無による煙感知器への感知範囲の影響はなく、ケーブルが布設され空間が狭い場合の方が感知時間は早い。 PCPS 内に開口部がある場合は、煙がPCPS 内から抜けていくため感知範囲が狭くなり、煙 が開口部の下の場合は吸引タイプ、非吸引タイプともにH 鋼側ヒット11 マス、コンクリート梁側ヒット2 マスの範囲内となる。 O Detected X Don't detect ReproducibleNo reproducibility 参考文献 [1] 電力中央研究所報告「チューブ式 動消火設備のケ ーブルトレイ火災への 用性評価」研究報告 煙 が開口部の下である場合については、熱による上 昇気流があるため多くの煙が開口部より抜けていくこ とを確認した。したがって、吸引タイプの感知器も非吸引タイプの感知器においても感知範囲は同等であり、 H 鋼側5 ヒット、コンクリート梁側2 ヒットの範囲であることがわかった。 N14008(平成26 年11 月)、pp.1-2.
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