ナトリウム中ルースパーツ回収装置の試作及び基礎試験

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カテゴリ: 第15回
ナトリウム中ルースパーツ回収装置の試作及び基礎試験 Trial fabrication and basic test of a recovery device for loose parts in liquid sodium 原子力機構 上田 雅司 Masashi UEDA Non Member 原子力機構 石黒 貴寛 Takahiro ISHIGURO Non Member 服部鉄工 服部 終始 Syushi HATTORI Non Member 服部鉄工 服部 司 Tsukasa HATTORI Non Member 閻NESI 白濱 卓馬 Takuma SHIRAHAMA Non Member Abstract: Sodium-cooled fast reactors need special maintenance technologies such as remote maintenance, under sodium viewer etc., because sodium is opaque, chemically active and the maintenance works must be performed in high temperature. To acquire basic knowledge for remote maintenance technology in liquid sodium, a trial product of recover device for loose parts was fabricated and tested in sodium. The positions of loose parts were approximately estimated by using ultrasound, and the parts were recovered by the device successfully. Keywords: Loose parts, Fast Reactor, Sodium, Under Sodium Viewer, Remote Maintenance 緒言 高速炉の冷却材として使われるナトリウムは、熱を伝 えやすいこと、沸点が高く運転中の圧力が低いこと、構造材料との共存性が良いこと等の優れた性質がある一方で、万一のトラブル時には、ナトリウムが不透明かつ化 学的に活性であること、炉停止中にも約200℃で予熱する必要があること等から、高速炉特有の遠隔保守技術が必要となる。例えば、原子炉容器内でルースパーツ(脱落部品等)が発生した場合、液体ナトリウム中でその位置 を特定し回収する技術は確立していない[1]。 本研究では、高速炉の遠隔保守技術開発の一環として、ナトリウム中でルースパーツを回収するための回収機構 を試作し、基礎的な試験を実施した。 ルースパーツ回収機構 不透明なナトリウム中では、ルースパーツの正確な位 置を特定することが困難であるため、正確な位置合わせ を必要としない回収機構が望ましい。また、200℃の耐熱性及び炉心近くで使用するための耐放射線性が必要であ り、装置が故障した場合でも確実に炉外に取り出せること、装置自体からルースパーツを生じさせないことも重 要である。これらの点を要求事項として、可能な限り単 純かつ堅牢な構造を検討した。 当初は、多指ロボットハンドや吸引・吸着式を候補と 連絡先 上田雅司、〒919-1279 福井県敦賀市白木1丁目、日本原子力研究開発機構 敦賀総合研究開発センター E-mail: ueda.masashi@jaea.go.jp したが、前者は機構や制御が複雑であり、変形した部品等あらゆる形状に対応することが困難であること、後者は回収可能な寸法/重量が制限されることが予想された。 検討の結果、要求条件を満足する方法として、多数の ロッドでルースパーツを挟む方式を考案した。その動作 原理をFig.1 に示す。 ① A device changes its shape when putting on a oose part ② Then tightening it from the outside, the part is ocked and recovered Fig.1 Mechanism of a recover device 多数のロッドが一定間隔で円筒状に束ねられており、各ロッドは上下にスライドする構造としている。上方からルースパーツにロッドを押し付けると、干渉したロッ ドは上方にスライドし、ルースパーツの形状に沿って凹みができる。その状態で外側からロッドを締め付けると、ルースパーツを固定することができる。ロッドの締め付けは、回収機構の上方に取り付けたエアシリンダを動力源とし、リンクを介して駆動する方式とした。また、軸 受の隙間でナトリウムが固着し、動作を阻害することがないよう、可動側・固定側ともに軸と軸受のクリアラン スを大きくし、固着しにくい構造とした。その他、構造材料には、耐熱性やナトリウムとの共存性に優れるステンレス鋼を使用した。 試作した回収機構を用いて、 中で ルースパーツの把 性能を確 したとこ 、 な形状の部品を容に固定することができ、かつ、ロッドが届く範囲であれば正確な位置合わせをせずに回収することが可能であった。さらに、同時に複数の部品を固定することができ、 ワッシャーのように薄い形状の物体を把 することも可能であった。試作した回収機構と 中試験の 子をFig.2 に示す。 Fig.2 A prototype recover device and its performance test in water 超音波によるナトリウム中の可視化 ナトリウム中でルースパーツを回収するためには、ま ず、不透明なナトリウム中でルースパーツの概略位置を把握する必要がある。ナトリウム中を透視(可視化)する方法としては、超音波による方法が検討されており、多チャンネルのアレイ型プローブと開口合成法を組み合わせた技術開発が進められている[2][3]。今回の試験では、より簡便な方法として単一チャンネルの超音波探触子 (ジャパンプローブ製 PWB5C10N)を使用し、超音波を送受信しながら探触子を平面的に走査することで、エコーの到達時間と強度からナトリウム中にある物体の形状を推定する方法とした。 ただし、通常の超音波探触子は耐熱性の問題で200℃のナトリウム中では使用できないため、高温物体に対する超音波の送受信方法として一般的な導波棒(バッファーロッド[4][5])を用いることにした。通常、棒形状の物体を介して超音波の送受信を行うと、棒の側面でモード変換した超音波が「遅れエコー」として観測され計測の妨げになる。この「遅れエコー」を 制する方法として、テ ーパ形状の棒を使用することや棒の側面にクラッディングを施すことが有効とされている。今回の試験では、直径20mm、長さ200mm のステンレス棒を用い、遅れエコーを 制するため、ロッドの側面に さ約2mm のクラッディングを施した。バッファーロッドを用いてナトリウ ム中のコインを可視化した例をFig,3 に示す。 (b) 30mm 30mm Fig.3 Under sodium visualization using ultrasonic technique with a buffer rod: (a) A photo of a 500 won coin, Ultrasonic image of the coin ナトリウム中でのルースパーツ回収試験 ナトリウム工学研究施設(福井県敦賀市)のグローブボ ックス試験設 ( 下、 )を用いて、液体ナトリウム中でルースパーツの回収試験を行った。不活性ガス雰囲気の 内には、容積約30 リットルのナトリウムポットと電動ステージが設置されており、ナトリウムを使った実験を安全かつ容 に実施することができる。 Fig.4 A glove box apparatus with a sodium filled pot 本試験では、 ルースパーツをナトリウムポット内の受皿(深さ約200mm)上に置き、回収機構と超音波探触子・バッファーロッドを電動ステージに取り付けた。ナ トリウム中試験で使用した回収機構は、電動ステージの荷重制限を満足するため、ロッドの太さ及び長さを見直 すとともに、エアシリンダをより離れた位置に取り付け、 ワイヤーを介して駆動できるように改良することで、把 性能を維 しながら大幅な軽量化(6 5k →2 8k )を達成した。 試験では、はじめに電動ステージで超音波探触子・バ ッファーロッドを走査しながらナトリウム中で超音波を 送受信し、ルースパーツの概略位置を推定した。次に、位置情報に基づいて回収機構をルースパーツの上方に移動させた後、ナトリウム中に下 し、受皿上でロッドを締付けて回収の可否を確 した。なお、今回は基礎試験であることから、受皿には単純形状の平板を用いた。 試験の結果、今回 ルースパーツとして用 したボルト(M8、長さ30mm)及びヒン(直径6mm、長さ13mm)について、超音波による可視化および回収機構部による回収が可能であることを確 した(Fig.5, 6)。 Fig.5 Equivalent of loose parts (hexagon bolt : M8 x 30mm, axle pin : dia.6 x 13mm) A photo of loose parts Ultrasonic image of the parts Fig.6Recover device after picking up a loose part を確 できた。今後は、複雑形状・狭監部での回収方法や、液面から深い場所での回収等、より実機に近い条件で試験を行い、本技術の有効性を確 していく。 謝辞 本研究では、長岡技術科学大学の井原郁夫教授にバッファーロッドの設計及び試験方法に関する有益な助言をいただきました。ここに の を します。 参考文献 田他、"ナトリウム冷却型高速炉の原子炉容器内観察・補修技術の開発(7) (2)高速実験炉「常陽」でのルースパーツの探索計画と回収技術開発"、日本原子 力学会「2012 年春の年会」C10 A. Tagawa and T. Yamashita,"Development of real time sensor for under sodium viewer",Proceedings of 19th International Conference on Nuclear Engineering, ICONE19-43187 (2011) 武石他、"高速増殖実証炉に向けた保守技術開発 (2) ナトリウム中検査装置の開発(体積目視検査装置の開発)"、日本原子力学会「2010 年秋の大会」P44 井原、"高温物体の超音波センシングとその展望"、非破壊検査第64 巻2 号(2015) C. K. Jen,"Experimental evaluation of clad metallic buffer rods for high temperature ultrasonic measurements", NDT&E International 33, pp.145-153 (2000) 結言 200℃の液体ナトリウム中で、 ルースパーツの回収 試験を行い、①超音波によりナトリウム中でルースパー ツの概略位置を把握できること、②試作した回収機構により ルースパーツを回収できることを確 した。これにより、回収手順および回収機構の基本構造の妥当性
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