原子力プラント建屋貫通部における地震追従性向上シールの開発

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カテゴリ: 第15回
原子カプラント建屋貫通部における地震追従性向上シールの開発 Development of seismic improvement seal structure for nuclear plant building 二菱重工業(株) 松橋 洋輔 Yosuke MATSUHASHI 非会員 二菱重工業(株) 津村 康裕 Yasuhiro TSUMURA 非会員 二菱重工業(株) 近藤 祐司 Yuzi KONDO 非会員 二菱重工業(株) 岩田 知和 Tomokazu IWATA 非会員 二菱重工業(株) 高木 克実 Katsumi TAKAGI 非会員 二菱重工業(株) 岩本 洋一 Yoichi IWAMOTO 非会員 二菱重工業(株) 福家 康隆 Yasutaka FUKE 非会員 二菱重工業(株) 田中 峻介 Shunsuke TANAKA 非会員 MHI Jリューションテク) ロシ,ー ,(株) 須田 康晴 Yasuharu SUDA 非会員 Abstract The building of the nuclear power plant has a through hole for passing piping. A sealant is filled in the gap between the through hole and the pipe to secure the sealing property of the portion. When an earthquake occurs, relative displacement occurs in the through hole and the pipe. There is a concern that the seal material may be damaged if the relative displacement is large. Therefore, we have developed a seal structure with good displacement followability. Keywords: Nuclear Plant Building, A through hole for passing piping, Seismic, Seal Structure 1 はじめに 原子力発電プラントの建屋外壁等には貫通孔が設けられ、配管等を設置し、建屋内外の流体等の供給、排出を 可能としているが、貫通孔の水密性を確保するために、貫通孔と配管の隙間にシール材を充填するシール構造が適用されている。 2011 年に発生した東日本大震災を受け、原子力発電プラントに対して更なる水密性の向上が求められている。過大地震等が発生すると配管と貫通孔に相対変位が発生することがあり、その変位が大きい場合にシール材が破損する懸念があり、破損に至ると建屋水密性確保が困難になるという課題がある。 そこで、上記課題を解決する変位追従性に優れたシール構造(地震追従性向上シール構造)を開発した。 松橋洋輔、〒652-8585 神戸市兵庫区和田岬1-1-1 二菱重工業(株)原子力事業部7゜うント設計部配管設計課 yosuke_matsuhashi@mhi.co.jp 2 建屋貫通部のシール構造 従来構造 原子力発電プラントの建屋貫通部に適用されている一般的な貫通部シール構造をFig.1 (a)に示す。 このシール構造は建屋貫通孔と配管の隙間にシール材を充填し、シール材の受圧側表層に伸縮性部材であるシリコーン系材料を塗布した構造である。 このシール構造では、以下の理由から配管軸直方向に対する許容変位が小さいという課題がある。 ?シール材(Fig.1 (a)の5 部材)は壁部、配管との接着性に乏しく、配管軸直方向に対する追従性が低い。 ?シール材の表層に塗布したシリコーン系材料(Fig.1(a)の6 部材)は壁部、配管のみならず、シール材とも接着する。シリコーン系材料はこの高い接着性と伸縮性によりシール材の界面剥離後も高い水密性を保持するがシール材と強固に接着しているため、一定変位を超えるとシール材の界面剥離に引きずられる形で局部ひずみが大きくなりシリコーン系 材料の破断に至る。 地震追従性向上シール構造 従来のシール構造に対して、変位追従性に優れたシー ル構造(地震追従性向上シール構造)をFig.1 (b)に示す。 このシール構造の構成、特徴を以下に示す。 ?シール材(Fig.1 (b)の5 部材)と受圧側表層に塗布する伸縮性の高いシリコーン系材料との接着による局部ひずみを回避するために、低接着性且つ低摩擦の素材(Fig.1 (b)の8 部材 発泡ポリエチレンシート等)をシール材とシリコーン系材料の界面に設置する。 ?シリコーン系材料を塗布する前に低接着性且つ低摩 擦の素材を設置するだけで容易に設置が可能であり、施工性に問題はない。 3 検証試験 試験概要 変位追従性に対する効果を確認するために、静的破壊試験及び加振・耐圧試験を実施した。 静的破壊試験では、配管軸方向(配管の長手方向)、軸直方向(配管の半径方向)、45゜方向の各方向に静的に強制変位を付与し、破壊変位(貫通部の受圧側に微小圧で水張りし漏水の有無で破壊を判定)を求めた。 加振・耐圧試験では、配管軸方向、軸直方向、45 度方向の各方向に対して加振(正負交番の繰り返しで強制変位を付与)し、加振後速やかに水圧で耐圧試験を実施した。なお、加振回数は200 回、耐圧評価は10 分間圧力保持とした。 試験体の構造図をFig.2、試験体の写真をFig.3 に示す。また、試験装置(代表例 配管軸直方向載荷)の概略をFig.4、試験状況の写真をFig.5 に示す。150A の試験体容器(貫通孔を模擬)にシール材を充填し、中心の50A 配管(貫通配管を模擬)に対して加振装置にて変位を付与 した。また加振装置の可動部先端と配管の間にロードセ ルを接続し、荷重を測定した。 変位を付与後、電動ポンプにて加圧装置に速やかに注水し、シール材に水を加圧した。 UsualEarthquake Conventional seal structure Fig.2 Structure of specimen Side of Water pressure UsualEarthquake Seismic improvement seal structure Fig.1 Seal structure for nuclear plant building 1:Wall 2:Through hole 3:Piping 4:Sealing material 5:Filled seal material 6:Silicone-based material 7:Primer 8:Breaker material Opposite side of water pressure Side of water pressure Fig.3 Picture of specimen Fig.4 Test apparatus (Loaded in the piping axis perpendicular direction) Fig.5 Picture of installation of specimen 静的破壊試験 静的破壊試験の結果をTable1 に示す。 いずれの試験ケースにおいても、最終破壊形態はシリ コーン系材料が破壊して漏水した。Table1 より軸方向については、地震追従性向上シール構造の破壊変位の向上 は見られない結果であ たが、軸直方向で約30%、45゜方向では10%の破壊変位の向上が見られた。 Table 1 Test results of the static failure test 加振・耐圧試験 地震変位をパラメータに200 回繰り返し変位を強制変位として与えた後、規定の水圧に対する耐圧性を有する ことを試験で確認した。 試験結果をTable2 に示す。Table2 より、軸方向に対して同一変位(士14mm)に対する耐圧性能は従来構造と同 度の結果であ たが、軸直方向については、従来構造の約3 倍の地震変位(従来構造では士6mm に対して、地震追従性向上シール構造では士20mm)に耐え、規定の水圧に対する耐圧性を有することを確認した。 Table 2 Test results of the cyclic loading test Applied displacement Piping axis direction Piping axis perpendicular direction 45 direction Conventional seal structure ±14mm ±6mm ±4mm Seismic improvement seal structure ±14mm ±20mm ±16mm 4 まとめ 原子力発電プラントに対して、地震随伴津波に対する建屋貫通部の水密性に対して更なる性能向上を求められ ており、当該貫通孔の水密性を確保するために、貫通孔 と配管の隙間にシール材を充填するシール構造が適用されている。このシール構造について、従来に て配管軸直方向の許容変位を向上できるシール構造を開発した。 開発したシール構造に対しする検証試験の結果、従来構造に対して配管軸直方向の許容変位は約3 倍向上することを確認した。 参考文献 [1] 藤本、 の振動 、 高分子 、Vol.12、 No.3、1963 [2] 、 微 ラ の とひずみ の用 、土木 会論文集、No.445/ill-18、pp.47-54、1992 Failure displacement Piping axis direction Piping axis perpendicular direction 45 direction Conventional seal structure 49.0mm 17.7mm 20.0mm Seismic improvement seal structure 32.7mm 23.9mm 22.6mm
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