女川原子力発電所サイトバンカ貯蔵プール漏えい事象への対応について

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カテゴリ: 第15回
女川原子力発電所サイトバンカ貯蔵プール漏えい事象への対応ついて The action to leakage from the on-site bunker pool storing radioactive waste of Onagawa NPP 東北電力掬 高橋 直己 NaokiTAKAHASHI Member 東北電力掬 平塚 憲司 KenjiHIRATSUKA Member When we found leakage from the leak detection piping installed behind the bottom of the storage pool in Onagawa NPP’s on-site bunker building, we once had judged there should be some damaged points causing the leakage on the bottom of the storage pool. Therefore we planned to inspect some defective points on the bottom of the storage pool after displacing the radioactive waste and draining off from the storage pool in order to repair the defective points. However, it turned out that there had been leakage from upper part of the storage pool structure as a result of continuous and basic investigative activities. We changed the initial repairing plan and achieved on-water repairing without moving the radioactive waste in the storage pool, with plant maker’s cooperation. Keywords: leakage of water, storage pool, on-site bunker, inspection, quality policy 事象の概要 女川原子力発電所サイトバンカ貯蔵プール(以下,「貯蔵プール」という。)は,女川原子力発電所で発生する放射性固体廃棄物(使用済チャンネルボックス,使用済制御棒等)を水中に貯蔵保管する設備である。(Fig.1) Fig.1 Floor plan of the storage Pool 平成 26 年 4 月,貯蔵プール(A)漏えい検出配管のうち貯蔵プール(A)底部の漏えいを示す漏えい検出配管から水の滴下を確認した。一方,貯蔵プール(A)上部の漏えいを示す漏えい検出配管からは滴下が確認されなかった。(Fig.2) そのため,貯蔵プール内に保管されている放射性固体廃棄物を隣接する貯蔵プール(B)に移動し,貯蔵プール(A)の水抜き後,貯蔵プール(A) 底部の点検および補修を計画した。 しかし,漏えい量の計測を継続し,そのデータ分析および種々の調査により,漏えい箇所が貯蔵 連絡先: 高橋 直己、〒986-2293 宮城県牡鹿郡女川町塚浜字前田1番、東北電力株式会社女川原子力発電所 保全部 原子炉G、 E-mail: takahashi.naoki.hw@tohoku-epco.co.jp プール(A)の上部にあることが確認できたことから,補修計画を変更し,貯蔵プールを水抜きせずにプール水上で点検および補修を行うことができるプラットホームを開発し,工事を実施した。ここでは、貯蔵プール(A)からの漏えい事象 の解決に向けた対応について紹介する。 Fig.2 Sectional plan of the storage pool 漏えい箇所の特定 当初計画した貯蔵プール底部の点検・補修計画は,貯蔵プール内の放射性廃棄物の移動および貯蔵プールの水抜きを含めた大規模な計画であった。 しかし,日々の漏えい量の測定を継続していたところ,漏えい量が変動していることを確認した。貯蔵プール底部に欠陥等が生じているのであれ ば漏えい量は安定するはずである。 そのため,貯蔵プール底部以外に漏えい箇所が存在する可能性が高いと考え,種々の調査を行った。 保全学 Vol. , No.(2018) 漏えい量とプール水位の関係性 貯蔵プール水循環ラインに設置されているポンプを停止したところ,プール水位が数cm程度低下すると共に,漏えい量が大幅に減少した。 そこで,貯蔵プール水循環ライン入口を調査したところ,東北地方太平洋沖地震による天井からの埃等が貯蔵プール水循環ライン入口のフィルター部に堆積し,これによりプール水循環のバランスが崩れプール水位が数cm程度上昇していたことが分かった。 また,貯蔵プール水位を上昇・下降させたところ,貯蔵プール水位と漏えい量に関係性があることが分かった。 漏えい箇所特定調査 漏えい箇所は,東北地方太平洋沖地震の影響で変動していた水位範囲に存在すると考え,貯蔵プール上部の構造を詳細に調査した。 その結果,当該水位範囲に設置されているスカッパ(プール水面の揺らぎを緩和するための雨樋状の構造物 Fig.3)上部とプールライニング部材との接合部に使用されていたシール材に劣化が生じていた場合,プール水がコンクリート躯体側ヘ流出し,貯蔵プール底部からの漏えいとして検出され得ることが分かった。 そこで,貯蔵プール上部の実寸大の供試体を製作(スカッパ上部のシール材の劣化も模擬) し,真空発砲試験の適用性を検証した上で,実機スカッパに対し真空発砲試験を行ったところ, 想定されたスカッパ上部から気泡の発生を確認したことから,当該接合箇所が漏えい箇所であると判断した。 Fig.3 Schematic drawing of upper part of the pool 漏えい箇所の補修 漏えい防止対策としては,万が一,貯蔵プール水位が上昇してもプール水が漏えいしないようスカッパ端部をシール溶接することとした。(Fig.4) 補修にあたっては,溶接工法を綿密に検討し, 貯蔵プール内の廃棄物を移動せず,プール水上で溶接作業が可能となるフラットホームを開発した。(Fig.5) また,スカッパ端部が狭監であり,プールライニングと接合されていることから,実機の溶接に先立ち,溶接品質が確保されること,スカッパおよびプールライニングヘの熱影響がないことをモックアップ試験により確認した。 プール水上で溶接作業は,当社初の試みであったが,プラントメーカとの綿密なコミュニケーションにより,無事故・無災害で補修を完了した。 Fig.4 Overview of Seal welding Fig.5 Work scenery of on-water repairing 終わりに 漏えい量の監視結果に違和感(日々のバラつき) を感じたことをきっかけに,種々の調査を実行し, 当初,貯蔵プール底部に存在すると思われた漏えい箇所が貯蔵プール上部にあることを確認した。 本件は,小さな「気付き」を無視せずに,計画段階では合理性があった対策案でも軌道修正し, 事象解決に至ったものである。これは,女川原子力発電所の品質方針である「常に間い直し間いかける習慣の定着」の賜物であると考える。 最後に,漏えい箇所の特定から当社初の試みである廃棄物貯蔵プールの水上補修まで,技術支援および工事施工の協力をいた‘いたプラントメーカに,多大なる感謝の意を表したい。
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