女川原子力発電所第2号機 原子炉格納容器過圧破損防止対策の概要
公開日:
カテゴリ: 第16回
女川原子力発電所第2号機 原子炉格納容器過圧破損防止対策の概要
Summary of prevention from overpressurization damage of containment vessel in
Onagawa NPS unit-2
東北電力株式会社
菊池
琢
Taku KIKUCHI
東北電力株式会社
吉川
祐明
Hiroaki KIKKAWA
Member
東北電力株式会社
久保
亮介
Ryosuke KUBO
Abstract
Among the severe accident countermeasure works of Onagawa NPS unit-2, it is one of the characteristics to install filtered containment venting system (FCVS) facilities in the existing reactor building. Therefore, various considerations are taken about bringing in facilities, installing of facilities and future maintenance management.
Most of the severe accident countermeasure works are laying of the piping or cable way, and therefore it is necessary to set penetrations in the building. Particularly, penetrations set through the control area boundaries are confirmed carefully, and are carried out.
As further measures, alternate residual heat removal system (ARHR) is installed to add to the thickness of prevention from overpressurization damage of containment vessel. Diversity and independency are considered for each measure.
Keywords: Severe accident countermeasures, Filtered containment venting system (FCVS), Alternate residual heat removal system (ARHR), Control area boundary, Wall penetration
1 はじめに
女川原子力発電所第2号機の安全対策工事のうち,原子炉格納容器(以下,「PCV」という。)の過圧による破損を防止するための対策として,原子炉格納容器フィルタベント系(以下,「FCVS」という。)を設置することとしている。女川2号機では,既設の原子炉建屋内にFCVS フィルタ装置 を設置することが の とつとなっている。FCVS は,原子炉建屋内に大口径の配管を敷設して系統を構成することとなる。配管敷設に先立ち建屋の床面や壁面に貫通孔を施工することとなるが, 貫通孔位置調整や貫通孔の施工などについて,既設設備の設置状況等を踏まえた検討がなされている。
また,さらなるPCV の過圧破損防止対策として,新規制基準適 性審査で得られた技術的知見を反映し, FCVS と多様性および独立性を有し,位置的分散を図った代替循環冷却系(以下,「ARHR」という。)を設置することとしている。
本書では,現 工事における調整・検討事項を中心に,女川2号機のPCV の過圧破損防止対策の概要について述べる。
2 原子炉格納容器フィルタベント系の設置
FCVS は,炉心の著しい損傷が発 した におい
て,PCV 内の雰囲気ガスを放出し,圧力および温度を低下させることによりPCV の過圧による破損を防止することを目的として設置される。ベントの際,FCVS フィルタ装置を介して排気に含まれる放射性物質を低減させる機能およびPCV 内に滞留する水素を環境へ放出する機能を有する。
また,設計基準事故対処設備に係る最終ヒートシンクへ を する機能が した , つ 留 除去系の使用が不可能な において,炉心の著しい損傷又はPCV の破損を防止するため,大気を最終ヒートシンクとして を するための機能も併せ持つ。
FCVS の性能
FCVS フィルタ装置はベンチュリスクラバ,並属繊維フィルタ,放射性よう素フィルタで構成され,以下の性能を有する。
・『実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納 容器破損防止対策の有効性評価に関する審査ガイド』に定められている「Cs-137 の放出量が 100TBq を下回っていること」を達成できる性能を有する。
・事故後短期の被ばく量を低減するため,放射性よう素を除去する性能を有する。
・粒子状放射性物質に対して 99.9%以 ,無機よう素に対して 99.8%以 ,有機よう素に対して 98%以を除去する性能を有する。
原子炉建屋内への設置
女川2号機の FCVS フィルタ装置は,耐震性を有する既設の原子炉建屋内に設置され,設置 所の室内形状を考慮し,FCVS フィルタ装置 並列で1基分の容量の構成となっている。Fig.1 にFCVS の系統概要図を示す。
原子炉圧力容器
Fig.1 Schematic of Filtered Containment Venting System
FCVS フィルタ 置の設置(搬入・ )
Fig.2 らFig.4 に,FCVS フィルタ装置設置 の工事状況を示す。FCVS フィルタ装置は原子炉建屋の壁面で支持される構造となっており,まず室内の壁面に支持構造物用の並物が設定される。 の後,FCVS フィルタ装置搬入のための仮設開口部より搬入され,室内で起立・移動後に所定の位置に据え付けられる。
Fig.2 Post-cast hardware for support structure of FCVS
filter vessel
Fig.3 FCVS filter vessel brought-in from temporary opening
Fig.4 Installation of FCVS filter vessels
FCVS フィルタ 置の
FCVS を据え付ける室内は狭監なため,機器,配管および支持構造物等の り い調整が 要となる。 のため,工事を請負う東芝エネルギーシステムズ(株)で は,事前に3D-CAD による設計段階での調整を行った。また,現 施工段階では,部品点数が多く施工イメージが共有しにくいことが課題だったが,作業をより確実な ものとするため,3D プリンタを使用し1/20 スケールの モデルを作成し,詳細な作業指示を実施した。Fig.5 およびFig.6 にFCVS フィルタ装置の据付調整状況を示す。
Fig.5 Completion image of FCVS installation
Fig.6 Confirmation in the meeting using 3D-model
3 貫通孔施工
女川2号では,FCVS 以外にも様々な安全対策工事が行われているが,工事の大半は配管や電路の敷設であ る。 れらの敷設に先立ち建屋の壁面や床面に貫通孔を施工する必要がある。
貫通孔施工までの流れ
貫通孔施工までの確認の流れをFig.7 に示す。既設建屋への後施工のため,施工に先立ち設計要求箇所に対し て鉄筋探査,干渉物確認,躯体強度評価が行われる。
は,原子炉建屋の健全性が損なわれないよう以下の手順で工事が行われる。Fig.8 に貫通孔施工の概要を示す。
作業前に閉止板を り付け,躯体との隙間をコーキング処理。
躯体貫通防止策を講じたボーリングマシンにより,途中までコア抜き実施。
C.コア抜き側に閉止板を り付け,躯体との隙間をコーキング処理し,空気ポンプによる加圧および発泡剤にて気密性を確認。
d.コア抜き側の閉止板が故意に り外されないよう, 殊ナットにより閉止板を り付ける。
.管理区域側のコアは管理区域側 ら回 し, を分析する。
検証,監視・測定,妥当性確認
各種会議 へ付議
貫通孔施工許可
系統隔離,ケーブル引抜等
安全処置実施
貫通孔施工
Fig.7 Flow chart of the penetration setting
管理区域境界における貫通孔施工
管理区域境界へ配管・電路等の貫通孔を施工する際に
Fig.8 Method of the penetration to the control area
boundary
4 代替循環冷却系の設置
さらなるPCV の過圧破損防止対策として,新規制基 準適 性審査で得られた技術的知見を反映し,ARHR を設置する。
ARHR の仕様
ARHR は,サプレッションチェンバを水源として, ARHR ポンプにより原子炉圧力容器へ注水およびPCV 内へスプレイするとともに,原子炉補機代替冷却水系の
交換器ユニットおよび大容量 水ポンプを用いて海を最終ヒートシンクとして除 することで循環冷却を行い,PCV バウンダリを維持しながらPCV 内の圧力および温度を低下させる設備である。
Fig.9 にARHR の系統概要図を示す。
Fig.9 Schematic of Alternate RHR System
PCV 過圧破損防止対策の多様性・独立性
ARHR はFCVS と多様性および独立性を有し,位置的分散を図った設計としている。また,ARHR はPCV の過圧破損防止のための 大事故緩和設備として位置づけられるが,信頼性向 のため設計基準事故対処設備である 留 除去系と多様性および可能な限りの独立性を有し,位置的分散を図った設計となっている。
ARHR は,非常用ディーゼル発電機に対して多様性を有するガスタービン発電機 らの給電により駆動できる
設計とする。また,FCVS は,非常用ディーゼル発電機に対して多様性を有する125V 蓄電池,125V 代替蓄電池等 らの給電により駆動できる設計とする。
FCVS は,人力により排出経路に設置される隔離弁を操作できる設計とすることで,ARHR に対して駆動源の多様性を有する設計とする。
Table.1 に,PCV 過圧破損防止対策の駆動電源等について示す。
Table1 Diversity of the power supply
項目
設計基準事故対処設備
大事故等対処設備
RHR
ARHR
FCVS
電源等
非常用ディーゼル
発電機
ガスタービン発電機
125V 蓄電池
125V 代替蓄電池
125V 代替蓄電池,
125V 代替充電器および電源車の組み わせ
非常用ディーゼル
発電機
人力手動操作
5 まとめ
女川2号機のPCV 過圧破損防止対策については,新規制基準適 性審査で得られた技術的知見を反映し,対策の厚みを増している。
PCV バウンダリを維持しながらPCV 内の圧力及び温度を低下させるための設備として,ARHR を設ける。また,PCV 内の圧力を大気中に逃がすための設備として, FCVS を設ける。
現地では,大型機器の据付や配管・電路等の貫通孔施 工の際には,対 機器や躯体構造物に要求される機能を考慮の ,発電所全体の健全性が損なわれないよう確認しながら工事を進めている。