女川原子力発電所2号機復水移送ポンプ電動機における振動上昇事象への対応について
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カテゴリ: 第16回
女川原子力発電所2号機
復水移送ポンプ電動機における振動上昇事象への対応について
Response to the vibration increasing event of a motor for a condensate transfer pump in Onagawa NPS unit-2
東北電力掬
清水
敬輔
Keisuke SHIMIZU
Non Member
東北電力掬
菅野
浩治
Koji KANNO
Non Member
東北電力掬
小林
重継
Shigetsugu KOBAYASHI
Member
By the vibration diagnosis, which is conducted for the purpose of condition monitoring (CM) and condition-based maintenance (CBM) in Onagawa NPS unit-2, vibration increasing of a motor for a condensate transfer pump was confirmed. We introduce the case where treatment was performed to the motor before loss of function because the diagnosis data could detect abnormal condition early and cause factor estimation.
Keywords: Condition monitoring (CM), Condition-based maintenance (CBM), Vibration diagnosis,
Condensate transfer pump
1 緒言
女川原子力発電所において,設備保全は機器の運転期間等を基準とする時間基準保全(Time Based Maintenance 以下「TBM」という)と機器の の都度,補修を実施する事後保全(Breakdown Maintenance以下「BDM」という)を基本に点検を実施してきており,平成19年度から一部の機器について設備診断(振動診断,赤外線サーモ診断, 潤滑油診断)による状態監視(Condition Monitoring 以下「CM」という)を導入し,「TBM」+「CM」の保全を実施してきた。平成29年度から TBM+ CM の機器について,機器の状態を基準として実施する状態監視保全(Condition Based Maintenance 以下「CBM」という)へ,つまり「TBM」+「CM」から「CBM」に順次移行を実施している。
本件は状態監視のうち振動診断において,電動機の振動上昇を確認し,診断データから得られた推定原因と,分解点検結果が推定通りである事を確認でき,設備の異常兆候を早期に発見して,機能喪失前に処 を行った事例を紹介する。
2 背景
女川原子力発電所2号機において,平成27年12 月に TBM+CM の保全対象である復水移送ポンプおよ 電動機の振動診断( 定 度 1 2月)で, 電動機の振動速度値に有意な上昇を確認したため,原因調査を実施した。
3 復水移送ポンプの概要
復水移送ポンプは,復水貯蔵タンクを水源に,各
に設 れている機器? ? への補給水の供給およ 点検時における機器等への洗浄水を供給するもので,新規制基準においては代替注水機能としても期待 れる(写真1)。
写真1 復水移送ポンプ
連絡先:菅野 浩治、〒986-2293 宮城県牡鹿郡女川町塚浜字前田1番、東北電力株式会社 女川原子力発電所 保全部 保全計画G
E-mail: kanno.koji.rz@tohoku-epco.co.jp
このポンプは全部で3台あり,通常運転時は1台運転だが,必要流量に応じて追加起動し並列運転する。年度毎に運転号機を切り替えるサイクル運転をしている。平成27年4月から振動上昇で停止するまで約8ヶ月間の連続運転であった。
4 振動値の上昇
振動 定部位はポンプと電動機の軸受となっており,それぞれ軸受の垂直?水平?軸3方向について振動値を計 している(図1)。
図1 復水移送ポンプ振動測定部位
平成27年12月の振動 定において,電動機の速度値が警報値を超過した(判定基準はISOを適用)(図2)。
の水 ン の 測定
図2 振動 速度値トレンド
加速度は若干の上昇が確認できるものの,しきい値に対して正常値であった(判定基準はDN値を適用)(図3)。
図3 振動 加速度値トレンド
5 推定原因調査
振幅波形と周波数スペクトル
振幅波形と周波数スペクトルにて分析を行った。速度値では 転周波数(48.8Hz)のN倍成分にピークが見られ,約3倍(149Hz)に最大ピークがある。事例サンプル波形の「内部ゆるみ」と類似している。また,振幅波形に「ひずみ」が見られる。以上より内部ゆるみ起因のガタが発生して
いると推定した(図4)。
図4 速度値 振幅波形と周波数スペクトル
加速度値では振幅波形に衝撃振動が確認 れ,周波数では 転周期のN倍成分にピークがあることから軸受部にガタが発生していると推定した(図5)。
図5 加速度値 振幅波形と周波数スペクトル
外部分析会社による所見
速度波形の傾向から負荷側軸受におけるはめあい面が摩耗して,ガタが発生している。
加速度については正常値となっているため,電動機やポンプの軸受にキズ等の異常は発生していない。
一般にガタ発生時は垂直方向で振動が大きくなる性質があり,速度値が反負荷側く負荷側となっているため負荷側でガタが発生している。
※知見を深めるためJFE殿に詳細診断を依頼
推定原因(振動診断結果から)
負荷側では速度波形に「ひずみ」が見られること, 加速度の周波数ピークが 転周期であることから, 軸受またはシャフト,ハウジングの摩耗によるガタが発生していると推定する。また,負荷側,反負荷側ともに,軸方向の加速度に 転周期で衝撃振動が見られることから,軸受のはめあい面に摩耗によるガタが発生していると推定する。
負荷側,反負荷側ともに速度値で 転周波数よりN倍成分の方が大きいことから,アンバランスやミスアライメントの可能性は低いと推定する。
6 分解点検実施結果
負荷側は軸受に付着したグリスが変色しており, 摩耗粉が混入し酸化した状態と思われる。シャフトの軸受接触面において有意な摩耗痕が確認 れた。取り外した軸受の外観から,軸受側面のシャフトと接触している箇所が摩耗し削られている痕跡が確認できた。内輪にフレッチングのような剥離痕が散
見 れた(写真2)。
写真2 軸受分解状況
反負荷側は軸受の内輪に若干の焼付きが確認 れたが,大きな異常はなかった(写真3)。
写真3 軸受分解状況
軸受箱と軸受およ シャフトの各内外径を計 結果,負荷側の軸受内輪とシャフトの締代で判定値を大きく外れており,軸受内輪とシャフト外径の摩耗によるものと断定(表1)。
表1 軸受箱・軸受・シャフト計測結果
知見を深めるため,軸受を分解し観察結果,負荷側の内輪の剥離以外に異常はなかった(写真4)。
写真4 軸受分解
7 推定原因と分解点検結果まと
振動診断から得られた推定原因と分解点検結果の評価を以下にまとめる(表2)
表2 振動診断からの推定原因と分解点検結果の評価
分解点検結果から推定 れる,摩耗に至った要因(メカニズム)を以下にまとめる(図6)。
軸受とシャフトの摩耗の処 として取替えを実施した。
図6 摩耗に至っ 推定要因(メカニズム)
8 処置結果
軸受およ シャフトを新規品に取替え結果,振動速度値が正常であることを確認できた(図7)。
図7 振動 速度値トレンド
9 結言
振動診断からの推定原因と分解点検結果から得られた原因が一致した結果となり,設備の異常兆候を早期に発見して,設備機能喪失前に処 を行った良好事例であった。今後も設備診断を通して設備のトラブルの未然防止ができるように努める。