プラント機器の健全性診断技術の開発
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カテゴリ: 第15回
プラント機器の健全性診断技術の開発
Development of integrity diagnosis technique for plant equipment
日立製作所
金田
昌基
MasakiKANADA
日立製作所
笠原
孝保
TakayasuKASAHARA
日立製作所
牛尾
裕一
YuichiUSHIO
日立製作所
雨川
洋章
HiroakiAMAKAWA
日立 GE
大城戸忍
Shinobu
OKIDO
日立 GE
花木洋
Hiroshi
HANAKI
日立 GE
岡澤周
Hiroshi
OKAZAWA
Abstract
In order to optimize plant maintenance, it is important to diagnose an integrity of equipment and use it for maintenance planning. We developed the integrity diagnostic method combining statistical model and physical model. The statistical model detects abnormality from process data and estimates abnormal parameters. The physical model estimates failure equipment from abnormal parameters. As a result of test data evaluation, it was confirmed that the proposed method can detect anomalies and estimate faulure equipment.
Keywords: Equipment, Integrity diagnosis, Statistic model, Physical model, Bayesian network
1 はじめに
原子カプラントの機器は、定期検査による時間基準保全が行われているが、機器の状態に応じて保全計画を策定する状態基準保全の が検 れている。 の機器を監視する手段としては、プロセス値を用いた統計処理により、正常時との違いを検知する手法が広く用いられている。異常予兆を早期検知することにより、機器異常によるプラント停止を防止し、プラント稼働率向上に寄与することが可能と考える。また、異常の原因であ る故障機器を特定できれば、保全計画に反映することにより保全作業を合理化可能である。
ただし、プロセス値の監視によって得られるのは異常 なパラメータであり、そこから故障機器を特定すること は困難な場合が多い。例えば、過去の異常事例とデータが十分にあれば、類似事例を検索して故障機器を推定可能であるが、原子カプラントでは異常事例は少ない。そこで、機器の構造や物理特性に関する知見をモデル化して診断に活用する方法が有効と考えた。
連絡先:金田昌基、〒319-1221 茨城県日立市大みか町
7-2-1、(株)日立製作所 研究開発グループ
E-mail:masaki.kanada.xw@hitachi.com
2 健全性診断システムの概要
本研究で提案する健全性診断システムの構成を図1 に示す。診断アルゴリズムは統計モデルと物理モデルから構成 れる。統計モデルでは、プラント全 に いてプロセス値の異常の有無と異常パラメータを特定する。具
的には、密度比直接推定法[1]を用いて、各パラメータ間の相関関係を監視し、正常状態から相関が変化した場合にそのパラメータを異常と判定する。
Fig.1 Configlation of Integrity diagnosis system
一方、物理モデルは機器の物理特性をモデル化したも ので、異常パラメータから故障機器を推定するために用いられる。物理モデルは機器の劣化メカニズム整理表をベースとして、機器、部位、劣化事象とパラメータヘの影響を関連付けたものである。これに機器の故障事例を もとに各事象の発生確率を設定してベイジアンネットワ ーク[2]を構成した。統計モデルで検知した異常パラメータ をもとに、機器の故障確率を求めることで、故障機器を推定することができる。
また、診断結果はリスク評価と連携して、プラント全
ヘの影響も評価し、保全計画に反映することで保全を合理化することを目指している。
3 模擬データによる評価
提案した診断アルゴリスムに いて、実機事例に基づく模擬データによる評価を行った。対象には原子炉冷却 材再循環(PLR)ポンプを選定し、PLR ポンプの物理モデルを構築して、異常の検知と故障機器の推定を行った。
図2 に統計モデルによる模擬データ評価結果の例を示す。PLR ポンプでは、第一段シール室と第二段シール室の間に圧カ差があり、その間はメカニカルシールで隔離
れている。このメカニカルシールが磨耗して、第二段シール室の圧カが上昇する事例が確認 れており、その異常を模擬した。統計モデルによる診断の結果、第二段圧カが上昇すると、パラメータ間の相関関係が変化することが確認でき、その際の異常パラメータが第二段圧カであることも特定できた。また、異常検知のタイミングは と かより早く検知可能な見 しを得た。
Fig.2 Diagnosis result of test data by statistical model
図3 にPLR ポンプの物理モデルを示す。PLR ポンプの部位、劣化事象、影響が出る可能性のあるパラメータを整理し、NUCIA(原子カ施設情報公開ライブラリー)の
故障事例をもとに事前確率と条件付確率を求め、ベイジアンネットワークを構成した。
Fig.3 Physical model of PLR pump
統計モデルで特定した第二段圧カのパラメータ異常を もとに、物理モデルで故障機器を推定した結果を表1 に示す。この結果、PLR ポンプの故障の可能性が裔く、その原因がメカニカルシールだと推定できることがわかった。ただし、故障確率の値に いては、物理モデルの対象範囲や故障事例の数に依存するため暫定的な数値であ り、今後モデルの拡充による裔精度化が必要と考える。
Table 1 Estimation result of failure equipment
Equipment / Parts
Failure probability (%)
PLR pump
95.5
Mechanical seal
93.6
Others
2.0
Others
4.5
4 まとめ
保全に活用可能な機器の健全性診断手法として、プロセス値の相関評価により異常を検知する統計モデルと、機器の劣化メカニズムを用いて故障機器を特定する物理モデルを組み合わせた診断手法を開発した。PLR ポンプを対象とした模擬データ評価により、統計モデルでは異常を検知して異常パラメータを特定でき、物理モデルで は故障機器を推定できることを確認した。
今後は、提案手法の有効性を検証するとともに、対象機器を拡大するために物理モデルを追加していく計画である。
参考文献
井出剛、杉叫呼、“異常検知と変化検知”、講談社、
2015.
本村陽一、岩崎弘利、“ベイジアンネットワーク技術”、東京電機大学出版局、2006.