小冊子「私たちのあるべき姿」の策定と活用について

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カテゴリ: 第16回
小冊子「私たちのあるべき姿」の策定と活用について Development and effective use of the booklet “What we should be” 電源開発(株) 松田 憲幸 Noriyuki MATSUDA Member 電源開発(株) 小川 達也 Tatsuya OGAWA Nonmember 電源開発(株) 本田 正人 Masato HONDA Nonmember 電源開発(株)須河内孝二Kouji SUGOUCHINonmember J-Power, which is working on the construction of the Ohma Nuclear Power Plant, has developed the booklet “What we should be” in order to promote the autonomous performance improvement of the staffs. We have redefined our vision and mission through its development. Then, to obtain a foundation (safety culture, etc.) necessary for achieving the vision, understand the framework (various performance improvement activities), and perform the work, the booklet is composed of contents that help sharing the following four points. "Relationship among various activities for achieving vision", "Mission and appropriate behavior of each section", "Safety culture, values, professionalism, etc.", "Performance improvement activities." In this paper, we will introduce the purpose of the booklet, the development process, the outline of the booklet, the status of utilization, issues, and efforts for revision. Keywords: Standards and Expectations, booklet, Safety Culture, Fundamentals, Performance Improvement 1 はじめに 原子力事業に従事する事業者社員は、安全文化を含め、プロフェッショナルとしての衿持を高くもち仕事をする ことが当然に期待されるところであり、責務であると認識される。これは 原子力発電所の事 後でわらぬものであるが、とりわけ事 後は、その重要性をより強く認識し、社員自らが、自 及び互いにエンカレッジしていくような、自律的な取り組みが望まれるところである。 電源開発掬では、海外原子力事業者との情報交換(ベ ンチマークビジット)において、小冊子「Standards & Expectations」[1]の活用により、従業員の意識向上や具体的 な行動改善(パフォーマンス向上)に効果を得ていると の知見を得たことから、これを取り入れるべく、2018 年3 月より取り組みを開始し、同年8 月に小冊子「私たちのあるべき姿」として作成・配布のうえ、活用を進めつつある。 本稿では、作成目的、作成プロセスと概要、配布後の活用状況と課題及び改訂に向けた取り組みについて紹介する。 2 作成目的 電源開発掬が建設を進めている大間原子力発電所が目指す姿を、「大間のビジョン・ヽッション」として改めて言語化し共有、その下で、ビジョン達成に必要となる土 (安全文化等)を に け、 組み(パフォーマンス改善活動等)を理解し、業務が実践できるよう、以下4 点の共有を目的とした。 ・ビジョン達成に向けた各種取り組みの関係性 ・各部署の使命、ふさわしい振る舞い(基本行動原則) ・安全文化、価値観、プロフェッショナリズム等 ・パフォーマンス改善活動 連絡先 松田憲幸、〒104-8165 東京都中央区銀座6-15-1、電源開発掬原子力技術部 安全総括室 E-mail: Noriyuki_Matsuda@jpower.co.jp 1 「私たちのあるべき姿」 3 作成プロセスと概要 記載項目と構造の検討 海外原子力事業者の小冊子、WANO のPO&C[2]、INPO 「健全な安全文化の特性」[3]及び当社として課題認識している事項から、何を記載すべきかを原子力部門の幹部が中心となり議論した。この議論を経て記載項目を確定したのち、全体の流れ・関係性を分析することで、大間ビジョン達成のモデル図を策定した。結果、本小冊子の構 造(目次)を体系化することができた。 2 大間ビジョン達成のためのモデル 3 目次 ビジョン・ミッションの制定 今般の小冊子の作成に併せて、原子力部門のトップで ある原子力事業本部長が従来から発信してきた事業遂行 上のメッセージを、「大間のビジョン・ヽッション」として改めて制定した。制定においては、社長をトップとし て、リスクマネジメントを統括するべく立ち上げた「安全性向上レビュー会議」で審議して決定した。 ビジョン 誠実と誇りを原点に、常に自らを「超える」よう に磨き、安全最優先の価値観を持ち、世界最高水準の安全(エクセレンス)な発電所を目指し続ける。 ヽッション 安全で高い品質の設計と建設工事、安全な運転・保守に尽くし、安定した電力供給、地球温暖化対策、日本のエネルギーセキュリティ、地域と人々の幸に貢献する。 「組織の使命、ふさわしい振る舞い」の作成 リーダーが高い期待事項を示していくことは、メンバ ーのパフォーマンス向上に欠かせない。これまでも全社 的なマネジメントシステムとして、目標管理制度、人事 考課制度等によって、リーダーからの期待や業務目標の提示をしているものの、ビジョン達成及び原子力安全に かかるパフォーマンス向上を強く念頭に置いたものでは なかった。「組織の使命、ふさわしい振る舞い」は、これ を強く意識して、本店原子力部門を含む各組織(課レベル)のリーダーが自らの言葉で作成した。この際、WANO PO&C 等を参考としたが、建設段階にフォーカスされた記載は少ないことから、全体的には参考としつつも、各 組織の業務分析(ビジョンとの関係性)、現在のメンバーにおける業務レベル( の丈)、企業風土・文化等を総合的に考慮しながら、オリジナルに策定することとなった。 パフォーマンス改善活動 パフォーマンス向上のため、改善措置活動(CAP)をはじめとするいくつかの活動の導入を進めているが、その浸透を図るために、活動概要やその意味を簡潔にまと めている。また、これらの活動の関係性を示すモデル図を作成して、理解の 助としている。 4 パフォーマンス改善のモデル 4 配布後の活用状況と課題 配布に際しては、活用法の 例を米国事業者の活用方法も参考として、各種会議冒頭での唱和、本小冊子記載事項を材料とした各部署内での意見交換などを 例として周知した。 リーダーによっては、自らが提示した「ふさわしい振る舞い」に言及しつつ、部下を指導するということも実施している。 実用ツールとなるように、12 章では、巡視時の 眼点を記述した「建設所の巡視時におけるふさわしい振る舞 い」として現場巡視時のチェック項目や異常発見時の連絡先も記載しており、巡視 の確認にも活用されつつある。 しかしながら、全体的にみたときには、いまだ活用は低調気味であり、期待事項が多すぎるといった意見や使 い方がわからないといった意見もある。日々の業務に如何に役立つのか、という視点での改善や、自らが作り上げたものと感じることのできるような見直しが必要であり、継続的に取り組む計画としている 5 改訂に向けた取り組み 上述の課題については、本計画を立ち上げたときから の懸念事項であり、作成プロセスヘの巻き込み範囲を幹 部から社員全員に拡大することをあらかじめ計画しており、図5 に示す改善・検討スケジュールを掲載している。なお、社員全員が関与した形になったときに初めて、 最初の完成を見る、という考えから、2018 年8 月の配布 版を敢えて「たたき 」表現している。 5 本小冊子の改善・検討スケジュール 2018 年度上期には、原子力部門の全社員をそれぞれ十名弱の社員からなる部門横断チームに振り分け、各チー ムにINPO の「健全な安全文化の特性」の特性・属性を 割り当て、フランクな意見交換をしながら(当社ではワイガヤ活動、通称YG 活動と称している)、自らの業務や自らの言葉に置き換える作業を実施した。次回改訂では この内容を盛り込むこととしている。 2019 年度上期には、組織の「ふさわしい振る舞い」を行動例レベルヘとブレークダウンする取り組みを計画し ている。特にこのレベルでは、建設工事段階が主たる業 務である現状を考慮すると、WANO PO&C でも直接引用できる部分が少なく、自分たち自 で考えることが非常に重要になる。そのため、 つのチャレンジとして本活動に取り組むこととしており、この過程を通じて、本小冊子の理解・浸透が図られ、自らが作り上げたものと感 じるものになると考えている。 また、大間ビジョンを実現するためのモデル図についても、パフォーマンスベースの活動やコンプライアンスベースの活動と品質マネジメントシステムとの関係性を踏まえて、理解促進に役立つモデル図とできるような改善も計画している。 これらの改善活動を反映して見直し版を発行することとしたため、図5 の改善・検討スケジュールを若干見直している。 6 おわりに 大間原子力発電所は、新規制基準施行後、安全強化対策設備の許認可段階にあり、本格的な工事ができていない状況にある。このような中で社員のモチベーションを高く維持し、更に向上させていくためには、様々な取り組みを継続することで、停滞を回避し、 化し続けることが重要と考えられる。 この小冊子「私たちのあるべき姿」の取り組みは、これに資するものであり、活用と改善を継続していく。 参考文献 South Texas Project Nuclear Operating Company , "Standards and Expectations", 2018 Edition. WANO, “Performance Objectives and Criteria”, 2013-1 INPO 12-012, “Traits of a Healthy Nuclear Safety Culture”
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