ボイラ伝熱管における内挿式自走検査ロボットの試作

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カテゴリ: 第15回
ボイラ伝熱管における内挿式自走検査ロボットの試作 A Mobile Robot Prototype for Non-destructive Testing in of Heat 首都大学東京Azhar Aulia SAPUTRA ニューセンサー開発 澤山 卓也 Takuya SAWAYAMA ニューセンサー開発 澤山 智之 Toshiyuki SAWAYAMA ウィズソル 松山 雅幸 Masayuki MATSUYAMA 首都大学東京久保田直行Naoyuki KUBOTA Abstract: This paper deals with a study on the prototype development of a mobile robot for inspection in heat transfer tubes used in thermal power stations. The proposed total inspection system is composed of a sensor module, robot module, cable control module, and centralized control module (PC). In this paper, we develop a robot module with the flexible mechanism that can move inside of a small pipe where the diameter is around 100 [mm]. Next, we conduct several experiments; (1) move in a bending rail, (2) move in a small pipe, and (3) velocity and posture control. Finally, we show the effectiveness of the flexible mechanism, and discuss the future work to integrate as a total inspection system. Keywords: Inspection, Mobile Robots, Flexible Mechanism, Heat Transfer Tubes, Thermal Power Stations 1.はじめに 近年、非破壊検査[1]を含め、様々な分野で知能化[2]や ロボットが進んでおり、省力化や安全性の向上だけでな く、リアルタイムな計測データを用いて次の計測位置を 決定するようなインタラクティブな計測が期待されてい る。例えば、ボイラ伝熱管の超音波探傷検査[3]の現場で は、検査員が手作業で各ボイラ伝熱管に内挿型の超音波 探触子を挿入、取出ししているため、自動化に関する技 術への期待が大きい。したがって、本研究では、内挿式 自走検査ロボットを開発し、現在、手作業で行われてい るボイラ伝熱管の水浸式超音波探傷検査を自動化し、伝 熱管肉厚測定値および測定位置の検査精度の向上とともに、検査作業の高速化と効率化を図る。 本研究での対象は、蒸気ドラムと呼ばれる直径1.5m程度のパイプの中で行う作業であり、中腰での作業を長時 間行う(図 1)。現在は、検査員が三交代により手作業で超音波探触子を挿入、取出し、検査を実施している。超 音波探触子の挿入、取出しに当たっては、超音波探傷デ ータの常時監視が必要であり、一本あたりの検査に時間 がかかり、検査員の心身的負担も大きいため、検査の高速化、効率化が必要である。 連絡先: 久保田直行、〒191-0065 東京都日野市旭が丘 6-6、首都大学東京大学院システムデザイン研究科E-mail: kubota@tmu.ac.jp 本稿では、検査ロボットの駆動部(ロボットモジュー ル)の試作を行い、予備実験を通して、移動性能に関する評価を行う。 2.検査ロボットの試作 検査ロボットのタスク ここでは、検査ロボットを用いた作業の詳細について説明する。10~12ch の超音波探触子を用いた検査装置を、移動機構と姿勢制御機構を用いたロボットモジュールである移動機構に搭載し、水浸式超音波探傷法により肉厚データを正しく取得しながら、ケーブル制御機構を併用することにより、ボイラ伝熱管内の端から端まで移動させる。同時に、検査位置、検査データを集中管理用PC に伝送する。手順としては、検査装置が終端まで移動した後、ケーブルを巻き取りながら、計測を行う。 検査ロボットの全体構成 本検査ロボットは、センサモジュール、ロボットモジュール、ケーブル制御モジュール、集中管理システム(PC) から構成される(図 2)。センサモジュールは、超音波受信用レシーバ回路における切り替え機構を開発し、小型マルチチャンネル超音波検査部として開発を行う。ロボットモジュールは、内径約 50mm のボイラ伝熱管内で、超音波探触子を用いた検査装置を姿勢制御させる。ケーブル制御モジュールは、ケーブルの送り出し、巻き取り 機構から構成され、ロボットの位置を推定するための計尺機能を備える。また、ロボットには、センサモジュールの姿勢制御を行いながら、所定の速度、位置精度での移動を実現する制御ソフトウェアを開発する必要がある。 図 1 ボイラ伝熱管の検査作業の様子 図 2 検査システムの全体構成 ロボットモジュールの開発 本稿では、湾曲する伝熱管の中で自律走行可能なロボ ットモジュールを開発する。図 3(a)に検査ロボットの外観図を示す。伝熱管は湾曲しているため、伝熱管内での 滑りなどを考慮し、円滑な走行を実現するために、最低2 つのユニットから構成する。各ユニットの長さは100[mm]であり、駆動に用いられるホイールの直径は、 60[mm]である。ここでは、予備実験として試験機の開発 を行うため、汎用のホイールを用いた。また、ユニット 間は、ユニバーサルジョイントで結合され(図3(b))、各ユニットが、伝熱管内の内側に接触させるために、小型 のフリーホイールを装着している(図3(c))。 3.予備実験 ここでは、ロボットモジュールの基本性能を調べるた め、1 ユニットの移動実験を行った(図 4)。まずは、湾 曲部に対する移動実験であり、内側に接触しながら、旋 回できることを示した。次に、100[mm]のパイプ内での移 動試験を行い、姿勢制御や速度制御も含め、滑ることなく、移動できることを示した。 外観図 ジョイント部 (c) 湾曲部での移動図 3 ロボットモジュールの構造 図 4 ロボットモジュールの移動実験例 4.まとめ 本稿ででは、内径50mm 程度の細い伝熱管内を正確に肉厚測定しながら高速で移動可能なロボットの仕様につ いて検討した。次に、伝熱管を想定したロボットモジュ ールの予備実験を行い、湾曲する伝熱管内でも内側に接 触しながら、スムーズに移動できることを示した。 今後の課題として、センサユニットを開発して、全体 システムとして統合を行い、実証実験を行っていく予定である。 参考文献 山本鎭男(編), ヘルスモニタリング-機械?プラント? 建築?土木構造物?医療の健全性監視-”, 共立出版, 1999, pp.171-239. 小島, 久保田, 谷口, 簡略化ファジィ推論を用いた原子炉蒸気細管内のき裂深さ推定に関する計算手法, 機論C 編, 65 巻, 37 号, pp.3614-3620, 1999. 宇田川義夫 (編著), 超音波技術入門 ?発信から受信まで-”, 日刊工業新聞社, 2010.
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